icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻10号

1980年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・275

Aicardi症候群の眼底像

著者: 玉井嗣彦 ,   山名忠巳 ,   立花秀俊

ページ範囲:P.1392 - P.1393

 Aicardi症候群は1965年,Aicardiら1)によって脳梁欠損,点頭てんかん,網脈絡膜症,脊椎骨の奇形,脳波異常,精神運動発達遅延,女性にのみ存在し,家族歴無しなどを呈する症候群として報告された。以後,欧米では約100例の報告があるが.本邦では現在まで5例の発表があるのみである2〜6)
 眼科的な異常所見としては,視神経乳頭の変形,陥凹,欠損のほか,脈絡膜欠損,虹彩異色症、虹彩後癒着,瞳孔膜遺残,強膜拡張症などが報告されている1,3,4,7)が,下記に報告するような特異的な網脈絡膜症が本症候群に特有のものと考えられている。

座談会

糖尿病性網膜症(最近の動向)

著者: 福田雅俊 ,   石川清 ,   野寄喜美春 ,   安藤文隆 ,   清水弘一

ページ範囲:P.1395 - P.1404

 清水(司会 )今日は,糖尿病性網膜症が話題ですが,網膜症の考え方が,10年前,5年前,かなり変わってぎている現在,どの辺に問題があって,これからどのようにこの部門が発展していくかをご専門の4先生にそれぞれお話し願いたいのです。初めに福田先生に糖尿病は全身病ですが,それがどのように目と関係してくるかということを,最近の知見や先生のお考えをお話しいただきたいと思います。

学会原著

ベーチェット病および原田病における併発白内障の手術成績

著者: 三村康男 ,   松本和郎 ,   水野薫

ページ範囲:P.1405 - P.1414

 ベーチェット病における併発白内障129眼の経過観察によって次の結果をえた。
 (1)術後の最高視力でみると視力の改善率は109眼84.5%で,そのなかで0.1以上の視力が改善したものは75眼58.1%であった。
 (2)術後3年をへて経過をみた65眼での視力で,術前より改善しているもの38眼58.4%,0.1以上の視力を維持できたものは25眼38.5%であった。
 (3)手術時の年齢と術後視力との関係は,20歳代の手術例は,30歳以上の症例に較べて視力予後は不良であった。
 (4)術前より,術後視力の予測は,ERGおよび視野測定によって可能で,ERGでlow voltage以上,視野所見で固視点機能があれば,術後0.1以上の改善視力が期待できる。なお,比較中心暗点は本症では可逆性のことが多く,80%が視力0.1以上に改善した。
 (5)手術前後1年間の重症眼発作回数を比較すると,変化は少ないが,若干の減少傾向がみとめられた。
 (6)術式については,水晶体全摘出が必要であり,1/2周以上の虹彩後癒着,あるいは年間4回以上の重症眼発作のあるときには,術後に生じやすい瞳孔領膜形成による視力低下を防ぐために虹彩全幅切除術の併用が必要であった。
 (7)手術時期については,6カ月以上の緩解期を確認しておこなうことが望ましいが,重症発作後1カ月以上を経過すれば,術後の経過に影響がなかった。

過去11年間我々の行った学童視覚巡回精密診断について

著者: 江口甲一郎 ,   多田桂一 ,   若林憲章 ,   堀野由美子 ,   保科千恵美 ,   古川孝子 ,   北野周作

ページ範囲:P.1415 - P.1423

 北海道道南地域において昭和44年より11年間に及ぶ学童の視覚巡回精密診断および指導を行った。
 その間の対象学童は47,822名,抽出検診児童は4,544名であり,次のごとき結果を得た。
 (1)調節麻痺剤点眼による精密検査により遠視,遠視性乱視が多い地域的特徴があることを推定した。
 (2)治療を必要とする種々の眼疾患を発見し,函館盲学校の協力を得て適切な治療と処置を行うことができた。
 (3)検診結果を当該児竜および父兄,担任教諭等に懇切に解説し,視覚に関する自覚を促し,地域の視覚に関する理解度を高める事に成功した。

臨床報告

Triangle症候群と黄斑部変性

著者: 三木徳彦 ,   松嶋三夫 ,   佐藤圭子 ,   佐藤孝夫

ページ範囲:P.1425 - P.1430

 Triangle症候群に黄斑部変性を合併した5症例について,臨床的検討を加え,次のごとき結論を得た。
 (1)特定領域のTriangle症候群,すなわち,①黄斑部耳下側,②黄斑部下方,③黄斑部と乳頭間の下方,と黄斑部変性が関連を有していると考えられる。
 (2)黄斑部の変性は,老人性黄斑部変性であり,病因は脈絡膜循環障害により黄斑部の加齢現象が促進された結果と考えた。
 (3)年齢的には,50歳以上で,漿液性中心性脈絡膜症の合併例40歳代に比べ,高齢であった。

一過性黒内障の主な原因

著者: 真壁祿郎

ページ範囲:P.1431 - P.1434

 一過性黒内障のため内頸動脈狭窄の疑いで紹介された患者111例に諸検査のほかOphthalmodyna-mometrieを行った。内頸動脈狭窄は21例(18.9%)に確認されたに過ぎない。大多数の72例(64.9%)の患者では眼動脈血圧に左右差はないが高度の起立性下降が証明され,全身的の循環障筈によるものであった。18例(16.2%)は眼動脈血圧の特に抗張期だが著明に上昇している高血圧患者であった。

Wegener肉芽腫症の眼症状とその治験

著者: 田渕保夫 ,   田辺詔子 ,   安藤孝子 ,   平野潤三

ページ範囲:P.1435 - P.1438

 Wegener肉芽腫症の23歳女性の両眼に,眼球突出と角膜辺縁潰瘍を生じた。右眼は急速に進行し,全角膜が壊死脱落して失明したが,左眼は角膜全周被覆術がよく奏効した。後日,左眼もうっ血乳頭から視神経萎縮に陥って視力を失ったが,角膜は術後2年半を経た今日,なお健在である。本法は手技容易で手術侵襲も少なく,効果も確実で,このような病型に対してまず試みるべき方法であろう。

ぶどう膜炎眼における角膜内皮細胞の観察ベーチェット病眼について

著者: 神鳥高世 ,   澤充 ,   伊沢保穂 ,   大原国俊 ,   望月学 ,   難波克彦 ,   小室優一 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.1451 - P.1454

 非肉芽腫性炎症の代表例として,ベーチェット病8例の虹彩毛様体炎の発作期と寛解期における角膜内皮細胞の形態をspccular microscopeにより観察撮影した。また,両時期における角膜内皮細胞面積をコンピューター画像解析装置により測定し,角膜厚をHaag-Steit製Pachomeler(Mishi-ma-Hedbys' modification)により測定した。その結果は,
 (1)発作期と寛解期で角膜の厚さおよび角膜内皮細胞面積の計測結果に,差を認めなかった。
 (2)角膜後面沈着物の接触面は,個々の内皮細胞の大きさ以下であった。

カラー臨床報告

眼球内滲潤を伴う悪性リンパ腫の1例

著者: 鎌尾憲明

ページ範囲:P.1443 - P.1449

 両眼視力障害を主訴として眼科を受診し,ぶどう膜炎症状をみた28歳男子で口蓋扁桃部の生検により,悪性リンパ腫(細網肉腫)と診断された症例を経験した。
 悪性リンパ腫の眼球内滲潤に対しては放射線療法が著効を示したが,全身症状は化学療法にかかわらず悪化し,眼科受診後約2ヵ月で死亡した。脳を除く全身臓器の剖検と両眼球摘出が行われ,眼球では主として後極部脈絡膜に腫瘍細胞の滲潤が認められた。
 腸間膜リンパ腺を使っての組織化学的検索を行なった結果,T-cell typeの悪性リンパ腫が疑われた。

--------------------

◎編集室だより

著者: 「臨床眼科」編集室

ページ範囲:P.1441 - P.1441

 小誌「臨床眼科」におきましては,本年度より掲載の論文から,従来「結語」「結論」「まとめ」「おわりに」等表記されておりましたものを「要約」と統一してきました。
 さらに来年度より「要約」をファーストページに配し,小誌をより読みやすいものにしたいと考えております。

眼科手術学会

眼科手術後にみられた過呼吸症候群

著者: 内田護人 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.1455 - P.1457

 18歳女子および19歳女子の局所麻酔手術術後にみられた過呼吸症候群について報告した。
 術前の十分な問診,前投薬の投与などにより患者の不安興奮を除去し,発作を未然に防ぐことが重要である。治療においては過呼吸症候群が神経性ショック,局所麻酔剤中毒等と類似の症状を示すため鑑別が必要である。

水晶体嚢内摘出に続くBinkhorst 4−loop lens挿入,連続383例の成績—第2報 両眼への挿入,2次挿入および糖尿病眼への挿入に関する成績

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1459 - P.1461

 水晶体嚢内摘出術に引続くBinkhorst 4−loop レソズ挿入の連続383眼の成績のうち,今回は両眼への挿入,2次挿入および糖尿病眼への挿入について述べた。成績は次の通りである。
 1.両眼IOL挿入:74人(23.9%)に行った。
 2.IOL 2次挿入:7例(1.8%)に行った。
 IOLが+19.5dの場合,術前のメガネの矯正度は+11.0d〜+13.0dの範囲であれば術後の高度屈折異常を来さない事が示された。
 3.DMへの挿入:16人(5,2%)22眼(5.7%)に挿入した。術後平均視力は0.9であり,IOL挿入による悪影響は認められなかった。

文庫の窓から

麻嶋灌頂小鏡之巻

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1462 - P.1463

 室町から江戸時代にかけて実地医学の勃興とともに眼科においても一流一派をなす諸流派が分立した。中でも馬嶋流眼科はその名声を最も広めた流派として,わが国眼科の発達史上かかすことのできない存在である。
 馬嶋流眼科については既に諸先輩の詳細な研究が行なわれ,よく知られている。

GROUP DISCUSSION

小児眼科

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.1464 - P.1471

1.ノリエ病の新家系について
 ノリエ病は1927年,ノリエが初めて記載した先天性眼異常。すなわち,両眼先天盲と白色瞳孔を主微候とする疾患である。現在まで約200例の報告がされているが,本邦にては,1978年に,藤田・大庭が1家系を報告しているのみである。我々は,新たにノリエ病と思われる他の家系を見出したので報告する。患者は生後3カ月の男で,生後2カ月半頃に目がきょろきょろとして安定しないということを主訴として近くの眼科を受診し,当科へ紹介されてきた。外眼部は正常であったが角膜の軽度混濁,浅前房,虹彩萎縮,虹彩前癒着,虹彩後癒着等の前眼部症状を示していた。また,発端者の母方の叔父(20歳男子)に,ノリエ病の進行した臨床像と考えられる両眼性の,小限球症,眼球萎縮,角膜混濁等の所見を認めた。家系内における患者の発生パターンもノリエ病にみられる,X染色体劣性で説明可能であった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?