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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻12号

1980年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・277

新生児にみられた神経膠腫(Astrocytoma)の1例

著者: 浅原典郎 ,   浅原智美

ページ範囲:P.1586 - P.1587

〔解説〕
 今回,生下時すでに腫瘤が観察され,組織学的にneuro-genic tumorが疑われた症例に遭遇したので報告する。
 本例は腫瘍が出産時すでにかなりの発育を呈しており,その発見時期および病理組織学的所見などから,診断に困難をきたした症例であった。

座談会

緑内障の薬物療法(最近の動向)

著者: 東郁郎 ,   高瀬正弥 ,   三島済一 ,   北沢克明

ページ範囲:P.1589 - P.1598

 三島 「臨床眼科」は創設されました中村先生,それからそれを引き受けて今日の「臨床眼科」の基礎を築かれた中泉先生,このお2人の先生がこの雑誌を作るに当ってモットーとされたのは,日進月歩の学問と実地医家との橋渡しを目的とするということでありまして,そのプリンシプルはいつの時代も変わらないと思います。そこで最近の学問的進歩の結果を一般の方に知っていただくということで,幾つかのテーマを取り上げまして,座談会をするということにしました。
 そのひとつとして緑内障が選ばれたわけです。緑内障につきましては,とくに最近いろいろな薬物療法が現われまして,お互いに相補うというかたちで非常に有用だということがわかってまいりまして,これが近い将来,一般にも使われることになるという時代です。

第3回日本眼科手術学会シンポジウム:手術による角膜侵襲

緑内障手術による角膜侵襲

著者: 東郁郎

ページ範囲:P.1599 - P.1606

 (1)代表的な緑内障手術trabeculectomyについて術後合併症を調査した。合併症(+)は81眼/230眼(35%)で,前房形成不全・低眼圧に次いで角膜合併症がみられた。
 (2) Trabeculectomy前後の角膜内皮細胞の変化をspecular microscopyで観察した。細胞面積や細胞密度は本法によって有意な変化を認めなかった。
 (3) Trabeculectomyの術後合併症について考察し,その間題点を指摘した。

臨床報告

特異な螢光眼底造影所見を示した中心性漿液性網脈絡膜症の1例

著者: 萱沢文男

ページ範囲:P.1607 - P.1611

 36歳男性にみられた両眼性中心性漿液性網脈絡膜症の1例につき報告した。右眼の螢光眼底造影では,噴水拡散型→円型拡大型→下力漏出型→円型拡大型と漏出様式が変化し,下方漏出型になると共に漿液性剥離は下方周辺部に拡大し下液の移動性を伴った続発性網膜剥離の臨床像を示した。一方,左眼底では色素漏出点に一致してドーナツ型灰白色滲出斑の出現をみた。本症例の臨床経過より,CSCの螢光像および胞状網膜剥離の病因論につき考察を加えた。

アルゴンレーザーによる続発性開放隅角緑内障の一治験例

著者: 田邊吉彦 ,   安間正子 ,   原田敬志

ページ範囲:P.1613 - P.1616

 Uveitisに続発した51歳男子の開放隅角緑内障で手術後,濾過孔が閉塞し眼圧32mmHgに上昇した症例にargon laserによる治療を行なった。Coherent社Model 900を使い,power 600〜650mW,照射時間0.2秒,beam-size200μ径にセットし,6時の部を中心に120°近くのtrabecularmeshworkにわたって38発の照射を行なった。術後1年以上にわたって眼圧は現在も20mmHg以下,平均19mmHgにコントロールされており,何らの合併症も認めていない。argonの照射条件,範囲等まだ検討すべき問題はあるが症例によっては有力な方法であると考える。

Chandler症候群の2例

著者: 馬嶋明 ,   田邊吉彦 ,   三宅三平 ,   邱信男

ページ範囲:P.1617 - P.1620

 1)48歳男性と50歳男性のChandler症候群2例を報告した。
 2)症例の特徴は他覚所見として,角膜内皮変性と角膜浮腫,軽度の虹彩萎縮,強い周辺虹彩前癒着,軽度の眼圧上昇などがあり,自覚症状として視力障害を訴え,いずれも片眼性で,家族発生をみていないことである。
 3)治療は主に角膜液腫に向けられ,降圧剤の点眼・内服,高張液の点眼などの対症療法を行ない,現在,良好な経過をとっている。

網膜剥離手術の統計的観察

著者: 横山靖子 ,   相沢芙束 ,   音無克彦 ,   鈴木亘

ページ範囲:P.1621 - P.1625

 1974年7月より1979年6月までの5年間に当院において施行した網膜剥離手術例173例192眼について裂隙のtear型とhole型とを比較しつつ統計的処理を行った。その結果は下記のごとくである。
 (1) tear型とhole型との年齢分布には著しい差がある。つまりtear型では,ほぼ90%が40歳以上に集中する。
 (2)裂隙がtearでは上耳側に多く,holeでは耳側に均等にある。
 (3)復位率はtear型88%,hole型90%であった。
 以上tear型とhole型を区別して網膜剥離患者の統計的処理をしてきたが,今後,裂隙成因を考える際の下地としていきたい。

Choroidal osteomaの2症例

著者: 石崎孝彦 ,   河本泰 ,   秋山健一 ,   小口芳久

ページ範囲:P.1627 - P.1631

 26歳女性および30歳女性の片眼に生じたcho-roidal osteomaの2症例の検眼鏡的所見の経過につき述べた。本疾患の診断には,特有な眼底所見に加え,X線,超音波検査,CT scanによる検査所見が重要であることを述べ,かつ鑑別上の問題点についても述べた。

遠視性不同視におけるTNO stereotestの評価

著者: 神田孝子

ページ範囲:P.1633 - P.1639

 random-dotstereotestの一つであるTNO stcreo-tcstを正常小児(3〜10歳),および遠視性不同視のあるものに対して行ない,その結果をTit-mus stereotestと比較して次の結果を得た。
 (1)正常小児のstcrcoacuityはTNO stereo-testではPlatc Ⅵ (120 sec)以上,Titmus stereo-testではcircle No.5(100 sec)以上である。
 (2)遠視性不同視があると両テストによるstcrcoacuityは悪化するが,弱視の有無,眼鏡の有無などいずれの条件の場合にもTNOの方が厳しく判定される。すなわちTNO screening platesでは不合格者があるが,Titmus fly testではほとんどの者が合格する。定量表でstercoacuityをみても常にTNOの方が正常範囲に入る者が少なく,また個々の症例毎にみてもほとんどの例でTNOによる判定の方が悪い。
 (3)不同視を眼鏡により矯正すると両テストによるstereoacuityは改善される。

眼科手術学会

シリコンループ留置による涙道形成術

著者: 山本節 ,   文順永 ,   立神英宣

ページ範囲:P.1641 - P.1644

 小児の鼻涙管閉塞で何回もブジーを通しても治らない症例があるが,これらの患者に以前は適切と思える治療法がなかった。
 最近,逆行シリコン留置術など報告されているが,今回私たちはこのような症例にGuiborのCanaliculus Intubation Setを用い,涙嚢部切開を行わずにシリコンチューブ留置し,涙道形成を行った。本法は涙道本来の経路を通り小児の顔面に傷を作らない上に,手術操作になれれば,手術時間も短くて終るなどの利点がある。また涙道に留置したシリコンチューブは今のところ長期間おいても何ら障害がみられず,刺激症状も出ないのですぐれたものと考える。

水晶体嚢内摘出に続くBinkhorst 4−loop lens挿入,連続383例の成績—第4報 合併症 その2 眼内レンズ脱臼と硝子体脱出以外の合併症に関する成績

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1649 - P.1653

 水晶体嚢内摘出に続くBinkhorst 4—loop lens挿入,連続383眼に生じた144例の合併症のうち,眼内レンズ脱臼と硝子体脱出以外のものについて報告した。内訳は次の通りである。広隅角の高眼圧—緑内障28例,瞳孔領の線維膜形成16例,虹彩炎6例,瞳孔ブロック4例,前房出血4例,角膜浮腫3例,角膜とIOL接触3例,デスメ膜剥離2例,虹彩とIOLの高度癒着1例,網膜剥離1例,硝子体出血1例。第3報で述べた二つの合併症も含めて予後は良好で,視力0.1以下に終ったのは晩期に発生した角膜浮腫の3例のみであった。合併症のほとんど全ては手技および経験の不十分さから生じたもので,症例,No.350以後はほとんどその発生を見なかった。

薬の臨床

スギ花粉症アレルギー性結膜炎に対する2% disodium cromoglycate点眼剤の治療成績

著者: 三国郁夫

ページ範囲:P.1655 - P.1659

 スギ化粉症アレルギー性結膜炎患者32例を対象に2%disodium cromoglycate点眼剤の有効性および安全性について検討し,以下の成績を得た。
 1)総合効果では32例中著効4例,有効20例,やや有効7例,無効1例で,有効以上の有効率は75.0%であった。
 2)効果発現の時期については,効果の認められた31例中29例(93.5%)が2週以内であった。
 3)掻痒感を訴えた32例のうち,31例(96.9%)が改善された。
 4)本剤点眼による副作用として,点眼時に一過性の軽度刺激感(しみる)を2例に認めたが,その他の重篤な副作用はみられなかった。
 以上の結果から,本剤はスギ花粉症アレルギー性結膜炎に対し有用な薬剤として期待されるものと考える。

文庫の窓から

證治準繩(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1660 - P.1661

 「医方問餘」の眼目門には「證治準繩」のほか,「銀海精微」(孫思邈),「眼科全書」(哀学淵),「原機啓微,附録」(薛己),「医学綱目」(樓英)等の諸書が引用(「医方問餘」眼目門,巻之三)され,また,「銀海精微」および「眼科全書」に所載の五輪図,八廓図,他81図の眼病図が引用附加されている。「医方問餘」の眼目門が優れていると称せられるのは,つまり「證治準繩」の眼目が優れているということであり,1943年千葉大学伊東弥恵治博士が「證治準繩」所載の『視赤如白證』を閲読し,これを世界最初の色盲論として論文にまとめ発表(日本医史学雑誌No.1313,p.117)されたことからしても本書が学術的にかなり進んでいたことを示すものと思われる。
 「證治準繩」の編者,王肯堂は字を宇泰,号を念西居士,明,金壇縣の人といわれ,本書の稿が成っても家が貧しかったために資金もなく出版できなかったという。たまたま鶴陽公という人が援助してくれたので本書を世に著わすことができたといわれる。それにしても当時の医学全書は,そのほとんどが,権力の大きい皇帝の勅命による,いわゆる勅撰が多かった時代にもかかわらずよく古今の方論を採取し編集し,これだけの大著にまとめ立派な医学全書を作成したことは誠に王宇泰の超人的努力の賜物といえよう。

抄録

第3回日本眼科手術学会抄録集(2)

著者: 酒井成身 ,   小野繁 ,   太根節直 ,   林龍男 ,   上石弘

ページ範囲:P.1663 - P.1671

8.Orbital Hypertelorismに対するcraniofacialsurgeryによる眼窩周囲の骨切り術の経験
 重度の顔面奇形を示すorbital hypertelorism (眼窩隔離症)に対して,今までは眼窩壁には何ら手を加えることができず,軟部組織の移動のみでは満足な結果が得られなかったが,近年頭蓋顔面奇形に対する,craniofacialsurgeryの発達はめざましく,Tessier, Convcrseらによる頭蓋内アプローチにより眼窩周囲や,眼窩そのものに対して骨切り術を施し,眼窩を,眼窩内容とともに,上下左右に移動することが可能になって来た。我々も眼窩隔離症に対し眼窩周囲の骨切りを行い,左右両眼窩間余剰組織を切除し,両眼窩を内側へ移動することにより,顔面の奇型を修正することのできた症例の手術々式の概要を述べる。これらの手術には形成外科医のみならず,眼科,脳外科,麻酔科,耳鼻科など各科の協力が必要となって来る。また眼科的には,眼位の違い,両眼視における眼球運動と複視,視軸,視神経への影響が問題となる。これらを術前術後のCT,Hess法による複像検査などにより分析した。

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臨床眼科 第34巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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