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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻3号

1980年03月発行

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特集 第33回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著

視神経乳頭の螢光漏出像の検討

著者: 尾島真 ,   松尾信彦 ,   高畠稔 ,   太田知雅 ,   松岡徹

ページ範囲:P.285 - P.291

 原田病,ベーチェット病,その他のブドウ膜炎,および視神経炎の炎症性疾患と,網膜中心静脈閉塞症,網膜静脈分枝閉塞症,高安病,うつ血乳頭の各疾患に螢光眼底撮影を施行し,乳頭の螢光漏出像の型の比較検討を行なつた。
 ベーチェット病,その他のブドウ膜炎の中で虹彩毛様体炎が主体のもの,視神経炎,網膜静脈分枝閉塞症,高安病では,ほとんどの症例で,乳頭の中心部にある乳頭血管から漏出する中心型を呈した。それに対して,原田病およびその他のブドウ膜炎の中で眼底変化の強いものでは大多数が周辺型を呈した。うつ血乳頭,網膜中心静脈血栓症では,経過観察が不十分なものが多く,乳頭表層の血管から強い螢光漏出を生じるものが多数であつたが,その他の症例を比較すると,前者が周辺型ないしは周辺型類以の漏出を示したのに対して,後者には中心型が多く見られた。
 疾患によつて,乳頭の螢光漏出の機序に差異があることが明らかになつた。

視神経障害時のspatial contrast sensitivity—視野および網膜神経線維層萎縮との対比

著者: 諌山義正 ,   溝上国義 ,   田上勇作

ページ範囲:P.293 - P.300

 ①原因不明の視神経症,虚血性視神経症,視交叉部腫瘍による耳側半盲および高眼圧症,緑内障など第3ニューロン障害時の空間コントラスト感度をMTF測定装置付き網膜視機能検査器(高田器械)を用いて測し,視野および無赤色光撮影による網膜神経線維層の萎縮状態と対比した。
 ②第3ニューロン疾患で空間コントラスト感度は周辺視野,周辺部の網膜神経線維層萎縮には関係なく,中心視野,乳頭黄斑線維束の萎縮程度とほぼ相関していた。また,各疾患による特徴的なパターンは得られなかつた。
 ③中心視野,乳頭黄斑線維束に明らかな異常が観察されない時にも空間コントラスト感度は3〜4cycle/degreeで低下した。中心視野,乳頭黄斑線維束に異常が存在する時は,空間コントラスト感度はすべての空間周波数で宮明に低下した。
 ①レーザー干渉縞による空間コントラスト感度の測定により,中心視機能の異常をかなり鋭敏に検出できると考えられた。

無水晶体眼における網膜剥離の治療成績

著者: 井上英幸 ,   坂上英 ,   黒木悟

ページ範囲:P.301 - P.308

 1976年10月12日より1979年6月30日までの約2年9カ月の間に愛媛大学眼科に入院し,対網膜剥離手術を施行した無水晶体眼の網膜剥離24例28眼について統計的観察を行ない,次の結果が得られた。
 (1)同期間内で対網膜剥離手術を施行した特発性網膜剥離症例246例(260眼)の中で占める割合は9.8%(10.8%)で本邦における従来の報告例より高頻度にみられた。
 (2)性別は男79.2%,女20.8%で男性に多くみられた。
 (3)年齢別では50歳代が41.7%で最も多く平均年齢53.8歳であつた。
 (4)罹患側別では左眼に多くみられた。
 (5)近視の占める割合は42.9%で−6.0D以上の近視は32.1%であつた。
 (6)水晶体摘出後,網膜剥離発症までの期間は老人性白内障では1年未満のものが多く,53.8%と半数以上を占めた。
 (7)裂孔検出率(老人性白内障術後症例)は80.8%であつた。
 (8)主裂孔の形は弁状が61.9%で最も多く,大きさは1P.D.以下の小さな裂孔(80.9%)が多くみられた。裂孔の数では1個のものが多く57.1%を占めた。
 (9)主裂孔の経線位分布では耳上側に多く(61.9%),照準角分布では40°から60°の範囲に76.2%と圧倒的に多くみられた。
 (10)剥離の様態では胞状剥離が64.3%と最も多く,2象限以上の剥離は64.3%を占め全域剥離は28.6%にみられた。

蛍光眼底造影による網膜静脈分枝閉塞症の陳旧性病変の検討

著者: 竹田宗泰 ,   田辺裕子 ,   木村早百合 ,   中嶋乃婦子

ページ範囲:P.309 - P.320

 172例184眼の静脈分枝閉塞症の陳旧性病変を螢光造影により分析し以下の結論を得た。
 (1)静脈分枝閉塞症は網膜血管反応として虚血型と漏出型に分類され,全症例の64%を虚血型が占めた。
 (2)虚血型に発生する病変は新生血管,網膜裂孔,黄斑部萎縮,黄斑部前線維症であり,漏出型の分枝閉塞症に生ずる病変は嚢腫状黄斑部浮腫,漿液性網膜剥離,輪状網膜症があげられる。
 また虚血型病変の中で黄斑部萎縮は黄斑部周囲毛細血管網閉塞の高度のものに発生するが,黄斑部前線維症では黄斑周囲血管網はほぼ保存されているのが特徴であつた。
 (3)視力の予後については黄斑部周囲毛細血管網の閉塞程度に密接な関係が認められた。

格子状変性の遺伝機構に関する研究(予報)

著者: 村上文代

ページ範囲:P.321 - P.323

 格子状変性の遺伝に関する系統的な研究を行なつているが,今回は予報的な結果として,格子状変性には家族集積性の現象が著しいことを報告した。その遺伝機構として,現在までにえられた資料からは,浸透率の不完全な常染色体性優性遺伝もしくは多因子遺伝の二つの可能性が残る。そのうちのどちらかであるかは,さらに資料を集めて結論をえたい。

先天性鎌状剥離の臨床—九大眼科における最近10年間の症例の検討

著者: 西村みえ子

ページ範囲:P.325 - P.333

 (1)最近10年間に九大眼科を受診した成熟児のretinal fold 23例の臨床所見を検討した。
 (2) retinal foldを無血管帯の有無により,成熟児の未熟児網膜症と,posterior PHPVとに分類した。前者は眼底周辺部に無血管帯をともない,foldは耳側,下耳側に多く,両眼性で,家族性発生が少なくない。これに対して後者は無血管帯をともなわず,foldの位置は不定で,片眼性が多く,家族性発生はみられない。
 (3)両者は発生学的には近縁関係にあると推定されるが,臨床所見の相違から,区別しうると考えられる。

眼科高圧酸素療法の研究(第1報)—切迫性網膜循環不全に対する応用

著者: 鈴木仁 ,   入江純二 ,   堀内二彦 ,   福田順一 ,   松崎浩

ページ範囲:P.335 - P.343

 激症型大動脈炎症候群,眼窩腫瘍,頸動脈−海綿静脈洞瘻などで網膜動脈圧の低下,網膜静脈の怒張,うつ滞,網膜の浮腫,混濁などをおこし,放置すると重篤な網膜機能障害が予想される状態を"切追性網膜循環不全"とし,この時期の高圧酸素療法が臨床的意義の高いことを報告した。
 "切迫性網膜循環不全"に対しては,高圧酸素療法に抗凝固剤,線溶酵素剤などを併用する療法は,手術などによつて血流の改善が期待されるまでの黄斑部機能維持に対する緊急補助的手段として有意義である。

EOG測定の臨床応用に関する研究—その3.杆体—錐体ジストロフィーの病型について

著者: 湯沢美都子

ページ範囲:P.345 - P.354

 黄斑部病変を有する原発性網膜色素変性症24症例48眼を,杵体−錐体ジストロフィーという疾病概念にたつて,検眼鏡および螢光眼底造影所見,眼球電図(EOG),網膜電図(ERG),色覚検査などの所見によつて,下記の四つの病型に分類できるものと考える。
 (1)黄斑部dark spot縮小型:周辺部病変が徐々に黄斑部におよぶもので,螢光眼底造影ではmacular dark spotの縮小としてみとめられるもの。
 (2)黄斑部色素上皮萎縮型:黄斑部中央に色素上皮の萎縮のみとめられるもので,進行例では脈絡膜毛細管板萎縮の加わるもの。
 (3)標的黄斑病巣型
 (2)および(3)はabiotrophicな変化が黄斑部にもあつて出現する病型と考えられる。
 (4)黄斑部類嚢胞浮腫型:黄斑部類嚢胞浮腫のみとめられるもの。ジストロフィー過程で生ずる血管の変化にもとづく二次的な病型で,比較的軽症の網膜色素変性症にみとめられるもの。

日光網膜炎と予後

著者: 松元直子 ,   阿部春樹 ,   難波克彦 ,   松田章男

ページ範囲:P.355 - P.361

 1978年10月2日に見られた部分日食後,自覚症状を訴え眼科医を訪れた日光網膜炎患者16例27眼の臨床所見ならびにその予後について報告した。症例は7歳から17歳の若年者で8例は裸眼で,他は何らかのフイルターを用いて観察を行つた。日食観察時間は3分から長いものでは2時間に及んだ。初診時視力は0.3〜1.2で最終的には全例1.2まで回復し,大半は1ヵ月以内に回復した。日食観察時間が長い程回復までの日数が長く,受傷早期の視力回復に要した時間も短かつた。眼底は約1年後,27眼中3眼にlamellar macular hole様の変化が残り,7例12眼には色素沈着や脱色素斑などの異常が残つた。中心視野は,初診時に検査した8例12眼全例に暗点を認め,約1年後3例5眼になお残存した。1例に輪状暗点を認めた。観察に用いられたフイルター類につき分光透過率を測定したが,いずれも透過率が2%以上でススやスミガラスでも安全とはなし難い結果であつた。したがつて太陽に向つて直接観察するのは,フイルターを用いても危険がありピンホールカメラ等の間接法による観察が望ましい。

急性網膜色素上皮炎

著者: 吉岡久春 ,   杉田隆

ページ範囲:P.367 - P.376

 過去に久留米大学眼科を受診した患者のうち,Krill and Deutmanが記重成した急性網膜色素上皮炎の臨床所見および螢光眼底所見の特微を有する14例について検討し,以下の成積ならびに結論を得た。
 (1)14例のうち男性10例,女性4例で男性に多い。
 (2)年齢は23歳から63歳,平均42歳である。
 (3)2例を除き片眼性で左右差がない。
 (4)自覚症は軽度の視矇または中心(傍中心)暗点でそれぞれ半数にみられる。
 (5)初診時視力は87%が0.7以上で視力障害の程度ば軽い。
 (6)10眼中8眼は1〜3ヵ月後に自然治癒し,自覚症状が消失した。
 (7)1例に本病から円盤状黄斑部網膜剥離を起した。
 (8)全身的に糖尿病を有するものが3例あつた。
 以上より本病は上記の臨床的特徴を示す一つのclinical entityであり,わが国でも決してまれな疾患ではなく,本病には円盤状黄斑部網膜剥離を伴わぬ軽症例とこれを伴う重症例とがあり,とくに後者は特発性中心性脈絡網膜症と区別すべきであることが結論される。

家族性停止性錐・杆体機能不全症候群

著者: 三宅養三 ,   安間哲史 ,   粟屋忍

ページ範囲:P.377 - P.385

 自覚的には視力障害,強度色覚障害,羞明,眼振それに夜盲を訴える同胞とその家系が調べられた。この同胞の錐体と杆体視路の異常はどちらもERGの錐体と杆体要素に強い障害がみられたことから,ERGに関与する網膜の視路に少なくとも異常があることが証明された。7年以上の経過観察で全く視機能は低下することはなく,また同一家系にみられた高齢者に同じ自覚症状を持つ者が2名あり,生涯眼症状が停止性であつたことより,本症は停止性疾患と考えられる。本症ではEOGと眼底,螢光眼底所見はほぼ正常であり無色素性網膜色素変性とは明瞭に区別される。EERにあまり異常がなかつたことより視神経機能の障害はあまりないことが証明された。
 同一家系にみられた異常者4名が自覚的には極めて類似した症状を呈したことから,本症は停止性夜盲と全色盲が偶然に合併したとは考えられず一つの症候群と考えられる。

他覚的な暗順応経過観測の問題点

著者: 吉田輝也 ,   宇治幸隆 ,   吉井義秀 ,   前田邦子

ページ範囲:P.387 - P.394

 (1) ERG閾値測定法による暗順応経過は正常人でも病的眼でも視覚閾値測定法によるそれとよく一致する。しかしERG閾値法では明確なkohl raushの屈曲点が認められない。
 (2) ERG反応測定による暗順応経過は視覚閾値測定によるそれとは明確には相関性を有しない。特にxenon flashは病的眼では遅い暗順応(slow dark adaptation)にも影響する易合がある。
 (3)早期暗順応(rapid phase dark adapta-tion)は杆体色素の光化学反応が引き金となつて生ずるがその回復は杆体色素の再生能とは比例せず,neuralな反応と思われる。

A modern strategy for visual field examination

著者: A. I.

ページ範囲:P.395 - P.397

 It is accepted by almost all serious workers in visual field examination techniques, that static perimetry is a much more sensitive, accurate, and reproducible method for the examination of the central visual fields. The world is beginning to turn more and more away from purely kinetic perime-try, and to use either static perimetry alone, or static for the central field and kinetic for the peri-pheral fields.
 This paper will concern itself with a completely new instrument, the visual field analyser Mark Ⅱ, although anyone who is acquainted with the visual field analyser Mark I will not feel entirely strange to it.

連載 眼科図譜・268

片眼性Purtscher病の1例

著者: 塩野貴 ,   木村良造

ページ範囲:P.282 - P.283

〔解説〕
 Purtscher病(以下P病)はPurtscher1)が頭部外傷と眼底病変との関係を示唆したことに始まり,現在までかなりの報告があるが,片眼例は稀である。今回我々は片眼性で,しかも白斑出現後に出血が加わる特異な経過をとつた症例を経験したので報告する。
 症例は44歳の男で,1978年6月12日の宮城県沖地震発生時に,その時の事故で胸部,頭部,腰部を打撲した。受傷直後から左眼の視力低下を覚え,翌日,某眼科受診し,当科を紹介された。

臨床報告

片眼性Purtscher病の1例

著者: 塩野貴 ,   木村良造

ページ範囲:P.399 - P.402

 地震時の胸部打撲が原因と思われるPurtscher病を報告した。本例は検眼鏡的にも螢光眼底像でも片眼性であり,受傷直後に存在しなかつた出血が1週間後に認められるという興味ある経過をとつた。

Cockayne症候群の家族例について

著者: 小森敏郎 ,   申京煥

ページ範囲:P.403 - P.409

 健康な血族結婚のない両親より出生した3人の子供のうち長男(6歳10カ月),三男(2歳6カ月)にみられたCackayne症候群を報告した。
 長男は全身的にも眼科的にも本症候群の主要症状をほぼ全て満した定型例であり,三男はなお年齢的に幼少のためか部分症を示すものであつた。
 内外の文献より58例を集めこれにわれわれの2症例を加えて本症候群を分析したところ,その発現は約2歳でこの年齢を過ぎた頃より全身的な退行変性が始まり,7〜8歳にはほぼ症状が完成することが示された。性別では男子に比較的多かつた。ただし症状のうちのいくつかはその出現の遅れがあり,60症例中には眼症状を欠くものもある。
 また,眼では網膜変性と視神経萎縮がほぼ必発の症状となつているが,後者が前者に継発するものであることはわれわれの幼若な症例2ではなお前者のみであるのに少年期となつた症例1では両者を完備していた点より立証された。
 家族発生の頻度が高く,多くは両親が健常なことから本症候群は常染色体性劣性遺伝疾患とするのが妥当であろうと考えられた。

白内障手術の際,球後注射により生じた水晶体の硝子体内脱臼の1例

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.411 - P.413

 50歳男子の成熟白内障摘出に際し球後麻酔を行つた所,水晶体が網膜上迄脱臼した。患者の体位は通常の仰臥位のままとし,ピン等による固定も行わず,ループを用いた円滑な水晶体全摘出術を行つた。その際特に留意したのは,強膜圧迫により水晶体を常に顕微鏡視野の中央に保つ事と,大量に脱出する硝子体に対し徹底したanteriorvitrectomyを行うという二つの点があつた。術後経過は良好で,視力は21日目に1.0に達し,4年間の追跡において認むべき合併症も無い。

Retinal arterial macroaneurysmの3例

著者: 萱沢文男 ,   久山元

ページ範囲:P.415 - P.421

 Retinal arterial macroaneurysmの3例について,その臨床像を報告した。内1例は両眼性の症例であつた。網膜動脈瘤の早期診断,治療における片眼所見の重要性を強調し,光凝固の効果については,自然経過例との比較検討が今後も必要であろうと述べた。

視覚障害者のリハビリテーション—その2 ベーチェット病

著者: 小林直樹 ,   環龍太郎 ,   天神光充 ,   堀内二彦 ,   松崎浩 ,   市川文昭 ,   中村哲夫 ,   伊豆利昭

ページ範囲:P.422 - P.426

 ベーチェット病による重症視覚障害者を対象に,リハの現状を紹介し,併せてその問題点を述べた。
 (1)本症による重症視覚障害者は,障害が多様性であり,訓練中にも眼科をはじめ,内科,皮膚科などの医療需要が多い。そのためには更生施設においては,医療管理体制の強化が必要である。
 (2)本症治療,入院中の極度の安静,副腎皮質ホルモンの使用などが,基礎体力の低下や耐久力を招くと考えられる。
 (3)リハ開始の遅れる理由は,発作の頻度,続発性緑内障による眼圧のコントロールの問題,片眼の残存視力が多少ともある場合などが考えられる。
 (4)訓練効果は視力喪失後,3年以内のものに好成績を得た。すなわち,比較的早期に障害の受容と更生意欲を持たせることが大切である。

眼科手術学会

嚢内摘出された水晶体を使用した嚢外法諸手技の解析

著者: 三宅謙作

ページ範囲:P.427 - P.430

 嚢内摘出された水晶体を使用して,嚢外法における前嚢切除,核摘出および後嚢研麿の3手技を行つてみた。当法では可視性が生体眼で行うよりすぐれており,各手技の実態が把握でき,生体眼における実際の手技の訓練と分析に役立つ。
 前嚢切開は一気に行わず小刻みな小切開孔をミシン目状に作製し,後に全体に切開線を広げる方法が最も安全であつた。核の摘出は予めチストトームかdisposable needleで核を刺入し,水晶体の中央を中心にかるい円運動をするか上下左右にかるく運動させることにより皮質部における後嚢と核の接着を離断することにより容易になされる。また後嚢はScratcherによる研麿にたえる強靱な膜であることが分つた。さらに後嚢研麿により残留皮質はある程度除去しうることが直視下で観察できた。

薬の臨床

Glycerol (CG-A30)の眼圧下降効果について

著者: 西田祥蔵

ページ範囲:P.431 - P.435

 (1) Glycerol (CG-A30)500mlを正常者33例50眼,緑内障患者11側13眼に点滴静注し,全例に眼圧下降作用を認めた。正常者の平均眼圧下降率は53.5%,続発性緑内障を除く緑内障患者では60.2%で,15〜20%mannitol,およびフルクトンM3とほぼ同程度の眼圧下降率を得た。
 (2)正常者では点滴速度が90〜120分間では,眼圧下降率,および最低眼圧に達する時間に差が認められなかつた。
 (3) Rebound現象は正常者には見られず,単性緑内障,急性緑内障各1眼,計2眼に認められた。
 (4)糖尿病患者3例に本製剤投与後,明かな血糖増加を認めた以外,問題となる副作用は認めなかつた。

文庫の窓から

医学正伝(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.436 - P.437

 各病門は更に論,脈法,方法および祖伝経験方などの順に従って述べられている。眼科はその第5巻に第42目病門として次のごときものについて記されている。
 病論,脈法,丹渓方法凡10条

GROUP DISCUSSION

神経眼科

著者: 大庭紀雄

ページ範囲:P.438 - P.439

 臨床眼科学会の際に開催されるグループディスカッションに「神経眼科」はその初期から参加しているが,近年はもつぱら教育講演が企画される。これは数年前に日本神経眼科学会が設立され,この方面に関係する基礎的および臨床的研究の成果は,2〜3日の会期による独立の学会で発表討議されるからである。昭和54年のグループディスカッションもこの慣行にしたがつて,やや境界領域的な話題をとりあげ3名の専門学者に総説的な教育講演をお願いした。
 「代謝性神経疾患と眼症状」(東京大学小児科・鈴木義之助教授)。演者は小児神経学,とくに生化学的手法を応用して先天性代謝異常の解明に多くの貢献をしている。この方面の研究の現状について眼症状と関連させながら解説した。先天性代謝異常は1970年頃から急速に知識が増加し,現在も日進月歩の進展をみせている分野である。眼症状を発現する疾患としては代謝異常にもとつく諸臓器への物質の蓄積病(storage disease)がある。生化学的検索がすすむにつれて,蓄積物質の実態だけでなく,欠損酵素が明らかにされた疾患も少なくない。いずれも遺伝子異常によるが,表現型としての臨床症候は,生化学的異常に基礎をもつのであり,従来は臨床的に単一と思われた疾患も生化学的,遺伝的に別個の疾患であると理解が改まつたものも少なくない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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