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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻4号

1980年04月発行

雑誌目次

特集 第33回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 教育講演

眼科における超音波導入の意義

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.453 - P.466

緒 言
 第34回日本臨床眼科学会の「超音波の眼科的応用」のシンポジウムの前座講演ともいえるこの講演の意図するところは,眼科でいかに超音波が利用されているかを知っていただき,今後の興味につなげていただきたいということにあります。

学会原著

両眼開放視野計AS-Ⅱ試作とその応用

著者: 鈴村昭弘 ,   加藤勝利 ,   小林明美

ページ範囲:P.467 - P.473

 臨床用実用器として両眼開放視野計AS-IIを試作した。本装置は巨大プリズムを使用することによって,測定視野範囲を拡大し,検者,被検者ともにより測定が容易かつ安定した。
 本装置を使用し,動的視野計測を行い,対照として同条件で測定したゴールドマン視野計による成績と比較検討した結果,測定値が安定し,イソプターがわずかに拡大の傾向を示した。この原因について両眼視力累加と類似の中枢における感覚閾の上昇,調節動揺,縮瞳傾向が片眼固視条件より少ないことによることが考えられた。
 中心絶対暗点症例の計測時に,斜位による偏位が,実験的方法では認められるが,軽度の場合は問題となる差は認めない。従来の測定法による成績とは明瞭な差が認められた。
 小児の場合も本装置により成人と同様に安定した成績が得られた。
 以上の結果から本装置は臨床用実用器として,動的,静的中心視野計として価値あることが認められた。

新しい視野計による中心視野測定

著者: 大鳥利文 ,   法貴隆 ,   浜田陽 ,   初川嘉一 ,   安慶名康寿 ,   恵美和幸 ,   池田雅晴

ページ範囲:P.475 - P.484

 Park Central Field Tangent ScreenとAuto-plot Tangent Screenを改良して,新しい中心視野計Central Field Screenerを開発した。
 この視野計は,古典的黒板視野計や中心視野のscreening campimeterとしてばかりでなく,flicker campimeterやquantitative projectioncampimeterとして用いることができる。

健康成人に対する視野異常スクリーニング

著者: 前田修司

ページ範囲:P.485 - P.490

 視力良好な15〜64歳の成人1,811名を対象に視野検査を行ったところ21例(1.2%)に視野異常を検出した。21例中9例は頭蓋内疾患によるもので,また21例中11例は眼底にも異常を認めなかった。
 視野検査に要した時間は1人につき2〜3分であった。
 視野検査を眼科スクリーニング検査として行うことは予防医学上,特に頭蓋内疾患の早期発見のために有用であると思われた。

視神経疾患の眼底直視下の視野の検討

著者: 荻田洋二 ,   曾谷尚之 ,   可児一孝

ページ範囲:P.491 - P.498

 (1)各種視神経疾患の経過を眼底視野にて測定した。
 (2)眼底視野で測定された中心部視野は,従来の視野計で測られたものにくらべて非常に複雑な形状を示し,再現性は高かった。
 (3)正確に中心窩を刺激し感度を測定することができた。
 (4)中心寓の視覚感度と視力とは有意に相関していた。
 (5)中心窩の感度が周辺より高い場合に,よい視力が得られた。
 (6)回復期に眼底の耳側上下血管に沿って乳頭側に感度の高い部位が出現した。

最近の情報処理技術を利用した緑内障診断システムの開発の試み

著者: 北沢克明 ,   溝口文雄

ページ範囲:P.499 - P.508

 人工知能の手法のうちproduction systemを利用して作製した新しい緑内障consultation systemG4−EXPERTの構造を述べ,その診断能力,構造上の特性などについて先に開発された緑内障consultation systemであるCASNETと比較検討した。G4−EXPERTはCASNETにほぼ匹敵する診断能力を持つ上に,結論に至るルールがすべて開放されているというCASNETにない長所を持つことから,今後,さらにそのconsultationsystemとしての性能を向上させることができる。

新しい緑内障集団検診システム

著者: 塩瀬芳彦 ,   小室邦子 ,   伊藤照子 ,   天野みゆき

ページ範囲:P.509 - P.517

 今回われわれは自動化人間ドック検査の一環として眼底写真判定を主体とした新しい緑内障集団検診システムを開発した。このシステムはパラメディカルによる一次スクリーニングと医師による二次スクリーニングからなる。
 被検者は,1979年3月〜6月までに外来人間ドックを受診した5,971人である。
 1)眼底写真評価法:一次スクリーニングでは乳頭量定パターン(塩瀬)を画像対比プロジェクター上で適合させ,pailorが安全域にあるものはすべて正常と判定。二次スクリーニングではCup縁,NFBD, splinter hemorrhageを参考として要精検者を出すものである。
 2)眼底写真判定で40人(0,67%)の視機能異常者が発見され,その内訳は緑内障11人,低眼圧緑内障19人,初期緑内障疑10人であった。
 3)眼圧スクリーニングで異常疑とされたもののうち実際視野異常あったものは,27人中4人(14.8%検出率)であったのに対し,眼底スクリーニングでは異常疑者62人中視野異常者Ib以上は30人(48.4%検出率)であった。
 4)眼底スクリーニングは熟練すればパラメディカルでフィルム約90枚は,15分以内に読影可能でかつ緑内障検出率も高いことから,この方法が今後の主体となり,眼圧スクリーニングは補助的手段と考たい。

緑内障眼における角膜の形態計測的研究—(1)内皮細胞および角膜厚について

著者: 浜田嶺次郎 ,   村松隆次 ,   松尾治亘

ページ範囲:P.519 - P.523

 1)広隅角緑内障13例の角膜中央部の厚さと,Specular microscopeによる角膜内皮の定量的観察を行ない細胞面積,細胞数,細胞の変形度を検討した。
 角膜の厚さは0.455±0.05mm (P<0.05),細胞面積464.8±74.9μm2(P<0.01),細胞数2151.2±346.7/mm2(P<0.01)と正常に比較して有意の差を認めた。また変形度は円を1とした時の値で0.8±0.03と正常と有意の差はなかった。
 2)両眼性の早期緑内障においては,進行した眼に角膜の厚さの減少と細胞の大型化を認めた。低眼圧緑内障では,眼圧が正常範囲であるにかかわらず,すでに厚さの減少と細胞の大型化を認めた。
 3)広隅角緑内障において,角膜内皮は眼圧に反応し,機能的および形態的に変化することが推察された。

牛眼の長期予後—(その1)視力予後に影響を及ぼす諸因子について

著者: 早川むつ子

ページ範囲:P.533 - P.541

 1)過去11年間に当科で手術を受けた3歳以前発症の原発性先天性緑内障患者46例,75眼を対象に,長期予後に影響する諸因子,予後改善の余地について検討した。
 2)眼圧コントロールが確認されたのは75眼のうち61眼81%である。
 3)全体の視力結果は,0.1未満が45.3%,0.4以上が38.7%である。また継続した経過観察と治療で,眼圧コントロールに成功した眼では,視力0.4以上は50.9%,0.1未満は35.1%である。
 4)視力と発症時期,手術までの期間,手術回数の問にそれぞれ統計学的に有意な相関関係が認められた。また発症時期と発症から手術までの期間の間にも有意な相関関係が認められた。
 5)屈折状態では,高度な近視および近視性乱視が増加し,直乱視が減って倒乱視,斜乱視が増加していた。
 6)予後改善のためには早期発見,早期治療に加え,長期的,定期的な経過観察を行なって適切な処置を追加することが重要である。
 7)視神経萎縮や重篤な合併症,光学部にかかる角膜障害を免れた眼では,早期の屈折矯正と弱視予防により視力改善の可能性があると推測された。

急性期血管新生緑内障(neovascular glaucoma)の治療

著者: 内野允 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.542 - P.548

 隅角閉塞の軽度なneovascular glaucomaを2症例経験した。第1例は,糖尿病のコントロール不良で,片眼は糖尿病性網膜症の増殖性変化が強くほぼ失明状態であり,健眼にneovascular gla-ucomaを発症した。日々に症状は増悪し,内服薬,点眼薬ではコントロールができない状態となり,止むを得ず網膜周辺部冷凍凝固術を行ったところ著明な眼圧の下降をみた。更に後日汎網膜光凝固術を追加して1.2の視力を保っている。第2例は,一眼は視神経萎縮で手動弁,他眼は原因不明の硝子体出血で6ヵ月前より手動弁であった。vitrectomyを行なって視力がでてきたが術後13日目にneovascular glaucomaを発症した。内服薬,点眼薬で眼圧の降下を計っていたがrubeosisは増強するので,第1例と同様に周辺部網膜冷凍凝固術を行なった。術後経過は順調で0.5の視力を維持している。
 まだ隅角閉塞の完成されていない上記のような時期では,適当な治療により眼圧上昇をコントロールすることができる可能性があり,neovas-cular glaucomaの急性期と考えた。眼圧上昇はrubeosisによる房水産生量の増大とplasmoidaqueousが主因と考えた。

循環障害をエピソードとする低眼圧緑内障の5例

著者: 荻田昭三 ,   飯田貴士 ,   追中松芳 ,   調枝寛治

ページ範囲:P.549 - P.555

 1)5症例はいずれも正常眼圧を示し,典型的な緑内障性の視神経乳頭陥凹と視野狭窄を示した。
 2)病歴に低血圧,動脈硬化,糖尿病,外妊出血,ピル服用後の網膜出血をエピソードとする循環異常動態を併有していた。
 3)5症例とも緑内障負荷試験によって眼圧調整機能障害が認められた。
 4)5症例とも血液学的検査に特に異常はなかった。また,脳神経学的検索にも異常は認められず,頭部病変は否定された。
 5)治療としては,循環促進剤の投与を,視野狭窄の進行例ではエピスタ点眼の投与,あるいはトラベクロトミーを行なった。

β−遮断剤点眼の作用・副作用

著者: 高瀬正弥 ,   新家真

ページ範囲:P.557 - P.561

 1)正常有志者を対象とし,propranolol,befu—nolol,bupranolol,timolol点眼液の1回点眼の眼圧下降効果比較を行なった。propranolol効果を基準とするとbefunololは2.5倍,bupranolol5.0倍,timololは11.0倍の効果を有する。
 その他,動薬理学的解析因子の値を各薬剤について得た。
 この実験では,瞳孔径・自覚屈折・血圧・脈拍の変化は認めなかった。
 2)1.0%befunolol,0.5%bupranolol,0.25%timolol溶液点眼剤を1日2回,開放隅角高眼圧者を対象とし,8週間の間継続的に治療を試みた。
 その結果,眼圧下降力価は各群間に有意差を認めなかった。
 adverse reactionとしては,各群とも表層角膜炎,Schirmer's testによる涙液分泌減少を認め,timolol点眼群では20例中3例に徐脈を認めた。

出血性緑内障の治療に関する臨床的研究

著者: 福田雅俊 ,   山田義一 ,   月本伸子 ,   前久保久美子

ページ範囲:P.563 - P.570

 糖尿病性網膜症眼15眼,網膜中心静脈血栓症眼1眼の16眼に合併した出血性緑内障に対し,数種の外科的療法を試みた結果,線維血管膜が隅角部に完成されない早期(新分類Ⅲa以前)に,減圧療法としての線維柱帯切除術と,眼底循環改善療法としての汎網膜光凝固療法または網膜周辺部冷凍凝固療法とを併用実施することが,視力の保持ならびに眼圧の正常化に対し有効であると結論した。

連載 眼科図譜・269

小児にみた周辺性ぶどう膜炎の1症例

著者: 中道明 ,   越生晶 ,   糸田川誠也

ページ範囲:P.450 - P.451

 周辺性ぶどう膜炎についてはわが国ではいまだ疾患概念が十分理解されていない。われわれは本症の21例33眼の経験からその臨床像を明らかにすると共に,びまん性炎症と限局性滲出性炎症を示すものの2病型があることを述べた1)。最近典型的な限局性滲出性炎症を示す症例を経験したので紹介したい。
 症例:8歳,男子。

臨床報告

視神経膠腫3症例(その治療方針について)

著者: 井上正則 ,   平松邦夫 ,   諌山義正 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.581 - P.586

 発生部位の異なる視神経膠腫3症例を経験し,各症例の治療方針を検討した。視神経膠腫に対して,いかなる治療も加えずに経過観察するという考えもあるが,我々は,一側の視神経のみに限局した症例では,開頭術により視交叉前より腫瘍を摘出した。視交叉部に進展した場合は,腫瘍摘出は積極的に行なわず,経結膜的に球後腫瘍の生検を行ない,組織診断を確定した。内分泌異常を伴い,視交叉周囲にも進展したと考えられる症例では,生検を含む試験開頭術を行ない,頭蓋咽頭腫や鞍上部germinomaなどと鑑別診断を行なつた。放射線療法は,腫瘍を積極的に摘出できない場合に施行し,経過観察を行なっている。

葡萄膜炎に併発した網膜裂孔についての臨床的研究

著者: 砂川光子 ,   西麗子

ページ範囲:P.587 - P.592

 京大眼科葡萄膜疾患外来で治療中の患者208例322眼のうち,9例9眼に網膜裂孔を認めた。これは治療眼の2.8%にあたる。このうち黄斑円孔は3例3眼(治療眼の0,9%),周辺部裂孔は6例6眼(治療眼の1.9%)であつた。黄斑円孔の3眼は葡萄膜炎の反復経過中に嚢腫様浮腫,lamel-lar hole, full thickness holeと典型的な経過をとり,葡萄膜炎の合併症とみなしうる。一方周辺部裂孔は特発性のものとの判別が困難であつた。裂孔発現眼9眼のうち4眼はベーチェット病患者であり,罹患期間も考慮せねばならないが,ベーチェット病患者に裂孔が発現しやすいものと推察された。

カラー臨床報告

Choroidal Osteorna の2例

著者: 萱沢文男 ,   島本史郎

ページ範囲:P.575 - P.579

 33歳と36歳の2女性にみられた黄斑部病変についてその臨床経過を報告した。この黄斑部病変は,年齢,検眼鏡所見,螢光眼底造影所見,CTスキャン,超音波検査の所見よりGassらの報告したChoroidal Osteomaと一致すると考えられた。Choroidal Osteomaの臨床像,鑑別診断,成因について述べた。

眼科手術学会

眼科手術患者のHBs抗原陽性頻度について

著者: 高橋ひとみ ,   山城敏嗣 ,   鈴木英司 ,   加藤晴夫 ,   小暮文雄 ,   関亮

ページ範囲:P.593 - P.596

 獨協医大病院開院以来,眼科において手術を受けた患者575名のHBs抗原を調べ0.7%の陽性率を得た。同結果を年齢別,性別に検討し,他の診療科とも比較した。
 HBウイルスは血液,その他に存在するので医療施設を感染源にせぬよう,また診療スタツフ自身も感染を受けぬよう注意が必要である。

文庫の窓から

玉機微義(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.598 - P.599

 室町時代の末期に所謂李朱医学が僧月湖(享徳2年,明に渡り銭塘と云う所に住み医を行った僧医)の影響を受けた田代三喜(足利学校で医を学び,後ち明に渡り李東垣,朱丹漢の方術を月湖及び恒徳の孫に受け,凡そ12年間の留学の後帰国)によって導入され,それが曲直瀬道三(初代)等の努力もあってわが国に拡められたことについては,前掲「啓迪集」の処でふれたが,道三流医学の真髄を伝えるといわれる「啓迪集」の中には中国の古医書「八十一難経」をはじめ60余種が引用されていることも衆知のことである。道三は「啓迪集」を編集するに当って「玉機微義」を常に座右の書とし,その基本にしたという。これは道三が享禄4年(1531)田代三喜に遇い,「素問」や「玉機微義」の医論を学んだからであろうと思われる。
 「玉機微義」は金・元医学の四大家(劉完素,張従正,李東垣,朱丹溪)の学を伝える私撰の医学全書であると云われているものであるが,元末明初の医家,徐用誠の著「医学折衷」を劉純(明・陜西咸寧の人,宇,宗厚)が増添した治方の書であるともいえる。

GROUP DISCUSSION

第5回ぶどう膜炎研究会

著者: 小暮美津子

ページ範囲:P.600 - P.603

 本研究会が,グループディスカッションに加えていただいて2回目になる。先ず,会場のお世話から会の運営その他万端にわたり,こまかい御配慮をいただいた東邦医大,大岡良子会長はじめ教室員諸氏に心から御礼申し上げるしだいである。
 応募いただいた演題が28題と多かったため,開始時間を8時45分と15分早くし,終了は12時半まで延長し,なるべく多くの方に御発表いただけるよう,各演者とも講演時間6分という短い時間内で御協力願ったところ,22題の演題を消化することができた。報告の機会のなかった演者には,まことに残念で申しわけないことをしたが,次回は優先的に御発表戴くことでお許し願いたいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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