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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻5号

1980年05月発行

雑誌目次

特集 第33回日本臨床眼科学会講演集 (その4) 特別講演

プライマリ・ケアにおける眼科医の役割

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.617 - P.624

 第33回日本臨床眼科学会にお招きを受けまして眼科の専門の先生方にお話をする機会を与えられましたことにつき,大岡良子学会長に対して心からお礼を申し上げます。

教育講演

高眼圧症と緑内障

著者: 東郁郎

ページ範囲:P.625 - P.633

はじめに
 日常の緑内障診療においてしばしば遭遇する「疑緑内障(glaucoma suspect)」の症例をどのように取扱うべきかということを中心課題として,原発開放隅角緑内障(POAG)との関連を考察してみたい。
 明白な緑内障性(辺縁性)乳頭陥凹があり,しかも眼圧が高くて視野が特有の欠損を示しているような進展した定型的な緑内障(well established glaucoma)の診断は困難ではない。症例により差異はあっても,乳頭変化の進行と視野変化を惹起するまでに先行する眼圧亢進が相当期間みられるのが常である。

学会原著

Trabeculectomyの術後成績

著者: 飯島富士雄

ページ範囲:P.635 - P.639

 1)信州大学眼科で施行したTrabcculectomyの成績は79%であった。病型別では原発性開放隅角が90%,原発性閉塞隅角が89%,先天性が60%,続発性が72%,水晶体嚢性は4眼中3眼であった。
 2)術後60%の症例に眼圧の再上昇が見られたが,39%は薬剤使用によりコントロール可能となった。再上昇の時期は大部分6カ月以内であった。
 3)術前のC値の良い症例,術中強膜の縫合にデキソンを用いた例,徳後のbleb形成された症例などにおいて眼圧のコントロールが良好であった。
 4)視野は,術後眼圧がコントロールされても経過観察中に悪化を示す例があった。
 5)重篤な合併症は少なかった。

Implantによる緑内障濾過手術に関する研究—(その2)臨床応用

著者: 田中泰雄

ページ範囲:P.641 - P.648

 先きにImplantによる濾過手術を改良し,家兎緑内障に対する実験を行ない良好な成績を得,報告したが,今回は何らかの愁訴を有するcontrol不良の絶体緑内障21眼に対する臨床応用について検討した。術前眼圧は最高74mmHg,最低38mmHg,平均54mmHgであった。術後観察期間は23ヵ月から2ヵ月,平均11ヵ月で,全例に多かれ少なかれ眼圧の下降と共に愁訴の軽減消失をみた。術後24mmHg以下にまで眼圧の下降した症例数は,点眼等の併用例も加えると14例であった。眼球癆となった例3例,24mmHg以下に眼圧の下降が得られない例は4例であった。

経強膜argon laser毛様体光凝固の眼圧に及ぼす影響について

著者: 西元雄一郎 ,   益山芳正 ,   馬場幸夫 ,   澤田惇

ページ範囲:P.649 - P.656

 有色家兎を用いた動物実験において,経強膜argon laser毛様体光凝固の適量決定について検討した。Argon laser system900(Caherent radi-ation Co.)を用いてspot size 200μ,time 1.0secの条件で,powerを1.0Wと1.5Wの2群に分けて経結膜,経強膜的に毛様体の光凝固を行ない,3カ月間観察した。
 眼圧下降は両群共,光凝固3日後に最大となり,その後眼圧は回復の傾向を示したが,1.0W群では2ヵ月後まで,無処置の他眼眼圧にくらべ有意な眼圧下降を示し,1.5W群では3ヵ月後でも眼圧下降は有意であった。
 実験眼の病理組織学的検索により,毛様体の萎縮,線維化がみられたことから,長期間経過後の眼圧下降は房水産生低下によるものと思われるが,比較的短期間における眼圧下降には他の下降機転も検討しなければならない。
 臨床的応用では人眼においても眼圧下降効果が得られることが判明した。合併症もほとんどなく,症例を選ぶことにより臨床上有用であると考えられる。

眼窩嚢腫の2例

著者: 佐藤佐内 ,   柳田泰 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.657 - P.660

 眼窩内に原発したと思われる眼窩嚢腫の2症例について,臨床経過および病理組織所見について報告した。
 症例1は,小眼球症に合併した両眼性の嚢腫の症例で,組織学的には一層の立方上皮で被われた良性の嚢腫であった。症例2は,著明な眼球突出をきたした症例で,病理組織学検索により,嚢腫状に発育したneurinomaと判明した。

Monochromatic filterによる眼底疾患の分析(第3報)—黄斑部の増殖性変化について

著者: 富井純子

ページ範囲:P.661 - P.673

 (1)黄斑部に線維様組織増殖を来たした6症例に螢光眼底撮影,コンタクトレンズを用いた細隙灯顕微鏡による観察に加え,M.f.による黄斑部病巣の分析を行ない,その成因を推論した。
 (2)螢光眼底撮影でとらえる事ができないような血管走行異常を伴わない,またはごく軽度な,線維様組織増殖の極めて初期をM.f.による眼底写真に写し出す事ができた。
 (3)黄斑部の線維様組織増殖には硝子体の異常,網膜循環障害,術後の炎症性反応等多くの原因が考えられ,M.f.を用いた眼底写真にとらえる線維様組織と黄斑部の血管走行異常の関係はこれら黄斑部疾患の本態を推測し,経過を追うために重要と思われる。

Neovascular maculopathyの臨床(第1報)—老人性ならびに若年性円盤状黄斑変性症について

著者: 出口強 ,   石川清

ページ範囲:P.677 - P.689

 (1) Neovascular maculopathy (老人性円盤状黄斑変性症ならびに滲出性中心性網脈絡膜症)の活動期病変は,検眼鏡所見ならびに螢光眼底造影所見より,次の3型に大別された。
 Ⅰ型:網膜下の滲出・出血を主病像とする型
 Ⅱ型:網膜色素上皮剥離を主病像とする型
 Ⅲ型:網膜色素上皮下脈絡膜新生血管膜を主病像とする型
 (2)長期間の臨床経過を観察できた滲出性中心性網脈絡膜症では,60%は脈絡膜新生血管膜の退縮・瘢痕化に至り,軽度の瘢痕と周囲の色素上皮の萎縮を残したが,良好な視力を回復した。40%は新生血管膜の増大と,それによる滲出が遷延化し,若年性円盤状黄斑変性症とでもいえる病像を呈し,ついには,より大きな網脈絡膜変性巣を残し,高度の視力障害を残した。
 (3)その他の所見として,老人性円盤状黄斑変性症では,黄斑部ドルーゼ様変化または網膜色素上皮の変性萎縮像を呈していた例は,患眼では50%,fellow eyeでは52%にみられた。
 滲出性中心性網脈絡膜症の患眼においては,小円形網脈絡膜萎縮巣を伴っていた例は35.3%にみられ,近視眼が88.2%の高率に含まれていた。

錐体電位による原発性黄斑部変性の分析

著者: 河崎一夫 ,   米村大蔵 ,   仲里博彦 ,   若林謙二 ,   山本幸子

ページ範囲:P.691 - P.698

 眼底後極部に進行性の病変を呈する6症例のERGのrapid off-response,EOGのL/D,hyper-osmolarity responseとDiamox responseを検討した。
 (1) Stargardt病ないし後極部病変を伴うfundus flavimaculatusが疑われる1例2眼では上記4種のresponseは異常であった。
 (2) Bull's eyeを呈した4例8眼全例でrapidoff-responseは減弱したが,L/DとDiamoxresponseは正常範囲にあり,hyperosmolarityresponseは2例2眼を除いて正常範囲にあった。これら8眼では錐体障害が主病徴をなすと推論された。これらの症例が進行性錐体dystrophyならば,本症で錐体自体の機能異常が他覚的に検証されたことになる。
 (3) Rapid off-response,L/D,hyperosmolarityresponseとDiamox responseを併せ検討することは,主病変が視細胞または網膜色素上皮のいずれに存するかの推定の一助になることがある。

Cherry-red spot-myoclonus syndromeと思われる1例の光学および電子顕微鏡的観察

著者: 土屋清一 ,   和田真知子 ,   木村肇二郎 ,   植村恭夫 ,   鈴木裕

ページ範囲:P.703 - P.708

 Cherry-red spot-myoclonus syndrome (siali-dosis type 1)と思われる12歳男子の網膜の光学および電子顕微鏡的観察を行った。その結果,ガングリオン細胞およびアマクリン細胞の細胞質内に,燐脂質,糖脂質,ムコ多糖などの貯溜を認めた。霜子顕微鏡的には,ガングリオン細胞の細胞質内に,1枚の限界膜で囲まれ,不規則なうず巻状の膜様構造を有する円形ないし楕円形の小体を多数認め,これらはLYLB,MVB,PLB,MCBなどと非常に関連深いものであろうと考えた。

アレルギー性結膜炎の病態

著者: 多田玲 ,   湯浅武之助 ,   下村嘉一 ,   中川やよい ,   中村芳子

ページ範囲:P.709 - P.714

 (1)対象患者133例中,男68例,女65例で性差は認めなかった。年齢別分布は,男では10歳台,10歳未満,女では30歳台,10歳台が多かった。
 (2)初診月別来院患者数は,3〜5月の春8〜9月の夏〜秋へかけてが多かった。結膜花粉症患者は133例中65例にみられ,同様に春と夏〜秋が多かった。
 (3)初診時に他覚所見を有していた症例は70.3%であり,結膜分泌物中好酸球の出現頻度は56.9%であった。
 (4)血清IgEは高値を,涙液IgEはやや高値を示した。結膜花粉症の血清IgEはその他のアレルギー性結膜炎に比し有意に低値を示した。
 (5)合併症の頻度はアレルギー性鼻炎>アトピー性皮膚炎>喘息の順であった。
 (6)皮内反応ではハウスダストが78.1%と高い陽性率であった。また花粉は67.2%,真菌は41.4%であった。
 各症例別皮内反応の結果では,ハウスダスト,花紛,真菌など同種抗原にのみ陽性を示す症例の頻度は低く,多反応型を示す例の多いことがわかった。
 (7)皮内反応,血清RASTと症状の季節性について検討したところ,通年性ではハウスダスト,真菌が,季節性を有するものでは,花粉の陽性率およびRAST scoreが高かった。

角膜形状の自動計算システムについて

著者: 中山千里 ,   丸山節郎

ページ範囲:P.715 - P.720

 新しいPhotokeratometerを開発し,これに工業用テレビとマイクロコンピューターを連結し,角膜の形状を自動的に読みとるシステムを作り上げた。現在は,このシステムを,コンタクトレンズの自動処方と円錐角膜の病状の変化の記録に応用しているが,これから新しい分野に用いることができるものと考えている。

ソフトコンタクトレンズ装用による角膜新生血管について

著者: 荻野誠周 ,   松村美代 ,   浅山邦夫

ページ範囲:P.721 - P.726

 2年以上ソフトコンタクトレンズを装用している眼の12%に角膜血管新生がみられた。以下の4種類に分類した。
 (1) silent neovascularization:浮腫を伴わない一様な上皮下血管侵入。
 (2) focal epithelial edema:局所的な角膜浮腫を伴う上皮下血管侵入。
 (3) upper limbal infiltration:上方角膜縁近くの浸潤を伴う上皮下血管侵入。
 (4) stromal neovascularization:実質中への血管ループの侵入。
 使用されたソフトコンタクトレンズをウサギ角膜内に埋め込むと炎症性血管新生がおこる。したがって長期装用による血管新生反応に最も関係の深いと考えられる酸素欠乏,特異な機械的刺激の他に,レンズ内に吸着された起炎物質も血管新生に関与している可能性がある。

正常EOGを示した卵黄様黄斑変性症の1例

著者: 上野真 ,   外山喜一 ,   酒井寿男 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.727 - P.731

 両眼に典型的な卵黄様黄斑病巣を有しながら,正常なEOGを示す1症例を経験した。
 (1)症例は21歳女子。両眼黄斑部に約2乳頭径の卵黄様病変が存在した。
 (2)経過観察中,1眼がscrambled egg stageを呈した。
 (3) EOGのL/D ratioは右1.90,左1.78であった。3カ月後の再検査では,右2.15,左1.82であった。
 (4)家族歴は証明されていない。

白内障手術後の類嚢胞黄斑浮腫(cystoid macular edema)の原因について

著者: 菅謙治 ,   横瀬敏郎 ,   下地康代

ページ範囲:P.732 - P.740

 白内障手術後長期を経過した症例群(硝子体脱出のなかった122眼と硝子体脱出のあった34眼)と,嵌頓硝子体があってCMEをきたしてきた症例にanterior vitrectomyを行なった9眼,および白内障手術後4週〜12週の症例群(硝子体脱出のなかった89眼と硝子体脱出のあった14眼)の合計268眼について後部硝子体剥離とCMEの関係を検索し,CMEの発生機序を次のように考察した。
 白内障手術後には,後部硝子体剥離が発生したり,進行したりするが,この硝子体の前方への移動によって周辺部網膜や毛様体扁平部・根部などの周辺組織が牽引されると,眼球の中心に位置する黄斑部には機械的刺激が加わり,この部の血管が直接障害されたり,また,この部の網膜のprostagrandin産生が増加したりして血管の透過性が亢進し,CMEが発生する。ただし,このCMEの発生には一時的な硝子体牽引ではなく,慢性の持続的な牽引が必要である。
 この慢性の硝子体牽引説によって,CMEの発生が白内障手術後4週〜12週に多いことや,白内障手術後に硝子体剥離をきたしにくい40〜50歳代ではCMEの発生が少ないこと,また,硝子体剥離がすでに術前から完全に完成している高度近視ではCMEの発生が少ないこと,さらには,白内障手術時に硝子体脱出をきたしても前部硝子体切除によって切開創に硝子体嵌頓がなくなっているものではCMEの発生が少ないこと,などの事実が容易に理解されよう。

CT読影に必要な眼窩局所解剖に関する研究

著者: 中村泰久 ,   柿栖米次 ,   武田憲夫 ,   大谷克己 ,   山田仁三

ページ範囲:P.741 - P.744

 一体の頭部屍体標本について,同じ断面でCT検査と切片標本を作成し,両者の所見を比較検討した。その結果,CT読影上必要な諸点を見出しえたので,それらについて報告した。

Blowout fractureの臨床経過と治療

著者: 高橋春男 ,   杉田達 ,   鈴木庸一 ,   矢田清身 ,   稲富誠

ページ範囲:P.745 - P.749

 1978年6月より1979年6月まで,昭和大学眼科で手術を行なった,眼球運動障害を有した,Blowout fracture 60症例につき,その臨床経過を検討した。臨床症状の特徴ある所見としては,受傷後,日を送るに従って眼球陥凹が著明になることと,受傷後4週間以上を経験した症例16例にも,明らかな眼球運動障害を認めた点である。また手術後の症状の変化としては,眼球運動障害は88%に消褪または軽快をみているのに対し,眼球陥凹の改善度は低かった(48%)。
 手術によって眼球運動障害の増強した症例のみられないことを合せて,著者らは,眼球運動障害を有するBlowout fractureは,早期に手術療法を行なうべきであると考えている。

連載 眼科図譜・270

斑状角膜変性(Groenouw Ⅱ型)の1例

著者: 町田杏子 ,   米谷新 ,   丸山明信 ,   大西直人 ,   赤羽信雄

ページ範囲:P.614 - P.615

〔解説〕
 Groenouwの名を冠した角膜変性はBücklers1)によりⅠ型として顆粒状角膜変性bröckelige Hornhautdys-trophie (Dystrophia corneae granulosa)およびⅡ型として斑状角膜変性fleckige Hornhautdystrophie(Dys-trophia corneae maculosa)に分類される。優性遺伝であるⅠ型はその頻度も多く臨床像も確立されているが,Ⅱ型の斑状角膜変性はⅠ型とはまったく別個の疾患であるのみならず,劣性遺伝の形式をとりその症例は極めて少ない。本邦では4文献2〜5)の7症例の報告をみるが本症と断定できるものは少なく,したがって日本人における本疾患の典型的な臨床像は未だ十分に知られていないというべきである。私どもは最近かなり進行した斑状角膜変性の1例に遭遇しその臨床像と組織所見を検索した。
 症例は51歳の女性(K.K.,53-5741)で15年前から両眼の視力低下を自覚し,異物感,羞明および疲労感を訴えている。父および母の母親同志が姉妹である。家族および親戚中に同様疾患は知られていない。視力は右0.06(n.c.),左0.1(n.c.)であり,コンタクトレンズで右0.2,左0.3に矯正できる。

文庫の窓から

玉機微義(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.674 - P.675

 「玉機微義」には明,正統刊本を初見に,正徳,嘉靖の重刊本もあり,嘉靖版などは室町時代の末頃から戦国時代頃には既にわが国に舶載されていたものと思われる。筆者らの手許にも明版や江戸時代初期の古活字版があるのでそれを繙いてみることにする。
 この明版は明の正統5年(1440)原後序(補写1葉),明,嘉靖9年(1530)序刊,全50巻8冊,整版,大きさ28.8×16.2cm,四周単辺,有界,毎半葉10行,毎行21字,版心:書名,巻数,網目,丁数,各冊淡藍色原装表紙,また各冊の外装に厚紙を用い補装し,"玉機微義"なる書き題簽と"寧固斎"の署名および"蓋静"の押印が認められる。また,原表紙には各冊とも門類目録と刷り題簽が貼られ,外題簽下部および眉上位には道三自筆の"遂次詳閲"という書き入れがあり,巻末には以下のような道三自筆の書き入れと盍静翁花押および押印が認められるものである。

臨床報告

中心性漿液性網脈絡膜症患者の視覚の時間周波数特性

著者: 萱沢文男 ,   山本敏雄 ,   山出新一 ,   深見嘉一郎 ,   糸井素一

ページ範囲:P.751 - P.755

 中心性漿液性網脈絡膜症患者22例23限を対象として,視覚の時間周波数特性を測定し,次の結果をえた。
 (1)矯正視力が,1.0以上の良好な症例においても,高周波側閾値の上昇を認めた。この閾値上昇の程度は,自覚的およびAmsler grid chartによる中心暗点の程度と相関をもつことが示唆された。閾値上昇の機序については,主としてStiles-Crawford効果によるものであろうと推測した。
 (2)矯正視力不良例では,高周波側閾値上昇に加え,中間周波数域におけるpeakの消失がみられた。これは,網膜実質内病変による側抑制の障害によるものであろうと推測した。

虚血性視神経症—26例の解析

著者: 下奥仁 ,   宮崎茂雄

ページ範囲:P.757 - P.763

 (1) IONと考えられた26例33眼について考察を行なった。
 (2) IONは,篩状板近傍に病変があるante-rior type (AION)と,より後方の視交叉に至るまでの部位で発症したposterior type (PION)とに区別することができ,特に後者の診断では,視神経の炎症・腫瘍などによる圧迫性病変・中毒・脱髄・遺伝性疾患等を除外する必要がある。
 (3) IONの合併疾患としては,高血圧症,動脈硬化症が多く認められ,血中脂質成分の増加をみることが多かった。側頭動脈炎を疑われた症例はなかった。
 (4)予後は必ずしも悪くなく,発症早期よりステロイド剤を中心とした治療を行うことで,視力・視野の何らかの改善を期待することができる。

二,三の黄斑部疾患の螢光眼底所見(その3)—特異な黄斑所見を呈したStargardt病の2症例

著者: 湯沢美都子 ,   刑部慶子 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.765 - P.771

 著者らは,中心窩周囲毛細血管網より螢光色素のもれを認めた1症例と,後部網膜硝子体牽引症候群を合併した1症例のStargardt病を経験したので報告した。造影後期に黄斑部類嚢胞浮腫を呈すると考えられる中心窩周囲毛細血管網の異常は変性過程の局所的・二次的反応であり,後部網膜硝子体牽引症候群は,広範な変性に付随しておこる二次的現象であると考えた。

GROUP DISCUSSION

高血圧・眼底血圧

著者: 松山秀一

ページ範囲:P.772 - P.775

1.Aminonucleosideネフローゼラット網膜の形態学的変化
 ラットにaminonucleoside (AN)を投与して生ずる腎症が,人ネフローゼ症候群のfocal glomerular sclerosisによく似た病変を示すことが知られている。今回,ウイスター系ラット8匹にANを投与のもと6カ月間飼育し,尿蛋白増加,血清蛋白低下を確認したのち屠殺し,その眼,腎組織を光顕,電顕的に検索した。
 ANラット腎組織には多数のhyaline沈着,毛細血管基底膜肥厚,上皮細胞の崩壊など,ネフローゼ症候群に属する病変が認められた。眼組織では後極部の網膜色素上皮細胞(RPE)に著明な病変を認めた。これらRPEに目立つ所見は,細胞質内の巨大空胞の出現であった。しかしこれらの細胞膜および細胞間接合部の多くはなお正常構造を保っていた。また一部には胞体内に多数の小空胞が生じ,かつ小器管の崩壊や壊死が認められるものも観察された。いずれの変化も腎不全症状が高度になるにつれて著明となっていた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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