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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻9号

1980年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・274

原発性マクログロブリン血症にみたHyperviscosity症候群

著者: 金井清和 ,   上野明廣

ページ範囲:P.1284 - P.1285

 多発性骨髄腫,原発性マクログロブリン血症,ホジキン病,膠原病,慢性感染症,白血病,肝硬変などでは,血清粘稠度が亢進し特徴ある眼症状を示すことがしられている。すなわち球結膜血管のsludging現象,網膜静脈のソーセージ状の拡張,蛇行,出血,静脈閉塞症,綿花様白斑,小血管瘤,乳頭浮腫,出血性緑内障などがみられる1,2)。これらの症状は血清粕稠度の亢進による静脈のうっ滞により生じるものとされ,Hyperviscosity症候群とよばれている3,4)
 我々は,原発性マクログロブリン血症の患者の網膜周辺部に多数の小血管瘤,点状出血をみとめ,その他Hy-perviscosity症候1群の特徴ある所見をみとめたので紹介する。

総説

増殖型糖尿病性網膜症に対する硝子体手術

著者: G. ,   小林義治

ページ範囲:P.1287 - P.1298

 Pars plana vitrectomy は,増殖型糖尿病性網膜症の種々の状態の処置に極めて有用である。手術の目標は明確であり,これが達成されれば視力は一般に改善され,網膜前増殖組織prcretinalfibrovascular tissueの成長はおさえられる。しかしながら術中起こりやすい併発症や,手術には成功しながら術後のルベオージスの高率の発症のために,視力低下その他の予後不良の好ましくない結果におわることもある。術後早期に出現する虹彩ルベオージスのいくつかは,光凝固scatterretinal photocoagulationに反応はするものの,他方この種の合併症に対しては,術後注意深い観察が必要である。周辺網膜への冷凍凝固や全周締結法は,術後発症する網膜剥難の予防に,必ずしも有効なものではなかった。

印象記 第84回日本眼科学会総会印象記

網膜(第1会場 第1席〜第10席),他

著者: 大庭紀雄

ページ範囲:P.1299 - P.1323

 学会第1日,第1会場では網膜に関する研究が10題報告された。研究方法として,従来からの電子顕微鏡にくわえて,生化学的方法による研究がかなりみられるようになり,今後の方向が示唆された。以下に,記述の便宜上,順不同で報告の概要を紹介する。
 視細胞外節が一定不変ではなくて,時々刻々更新されていることは10年ほど以前に記述された現象であるが,更新は概日性の周期をもっておこっているという最近の発見は,さきの国際眼科学会でYoungの特別講演で紹介されたとおりである。この新しい知見をさらによく理解するための研究が玉井信氏ら(東北大)により行なわれた。彼らによれば(ラットを使用),外節の更新に関連する過程としての内節からの外節の再生,外節先端の放出,および色素上皮細胞による放出された外節の貧食,のそれぞれで概日性リズムが成立する。そして,生後間もないラットを川いて,リズムの発達状況を色素上皮細胞における外節貧食について調べると,生後2週間ですでにリズムの形成がみられ,1ヵ月になれば完全なものとなる。このような所見は,光環境の明暗の周期下でみられるのであるが,生後5日目より持続光で飼育した場合にはどうなるであろうか。照射光の強さはそれほど強いものではなかったが,視細胞の分化や外節の発達は促進され,ついで生後3〜4週頃からは変性所見がみられるようになった。

臨床報告

Down's syndromeの眼科的管理

著者: 小原喜隆 ,   松田恭一 ,   門屋講司 ,   田沢豊 ,   鮎瀬征夫

ページ範囲:P.1325 - P.1329

 4ヵ月より19歳までのDown's syndrome 30例を検査し,本症患者に対する眼科的管理について,次の結論を得た。
 まず患者の生活環境を理解し,専門医との連携のもとに全身状態を的確に把握すべきである。その上にたって眼科的診察を丹念に,そして根気強く行うことである。その際特に留意することは,全身的にも局所的にも感染しやすい状態にあるので,感染による所見を早期に発見することである。眼局所では結膜や眼瞼のみならず,角膜の詳細な観察が必要である。視神経の炎症様所見も見逃してはならない。視力障害の進行因子と考えられる屈折異常については屈折度の測定を,また白内障についてはその進行程度の観察を定期的に行い,屈折異常に対しては眼鏡の装用を,白内障が進行した場合には手術を積極的に行うべきであると考える。

漿液性中心性網脈絡膜症の治癒経過—アルゴンレーザー凝固有無による比較

著者: 真壁祿郎

ページ範囲:P.1335 - P.1337

 著明な螢光漏出点1個を認めた漿液性中心性網脈絡膜症患者61例にアルゴンレーザー凝固を施行し,39例に保存的療法を行って経過を比較した。両群間に年齢,初診時視力に差の認められなかったものである。
 (1)保存的治療患者に比べてレーザー凝固患者では発病から治癒までの経過期間が短く,最終視力も良好であった。
 (2)特に螢光漏出点が上部黄斑部にある患者に著明な視力改善が見られた。
 (3)一般に高年者に経過が不良であるが,レーザー凝固による改善効果は高年者(39歳以上)が若年者(38歳以下)よりも著明の傾向にあった。

斜視手術に偶発した網膜中心動脈枝閉塞症について

著者: 小川徹郎 ,   臼井正彦 ,   松尾治亘

ページ範囲:P.1339 - P.1345

 術前一般検査で特に異常のない22歳女性の外斜視の手術中術眼に発症した細膜中心動脈枝閉塞症の1例を報告した。
 その閉塞機転として,自律神経系の異常を基礎とし手術時の心理的負荷,疼痛,眼局所への手術操作等が何らかの誘因となり,術眼の網膜中心動脈ことに上黄斑動脈の攣縮を惹起し,一過性視力消失および上黄斑動脈支配領域の永続的な機能障害を残したと考えた。
 さらに外斜手術翌日よりの術眼の視力低下を訴え,第26病日に来科した25歳女性の網膜中心動脈枝閉塞症を経験し,著者らの経験したものと類似の機序による閉塞の可能性もあると考えられたので併せ報告した。

白内障手術後の類嚢胞黄斑浮腫(CME)に対するanterior Vitrectomy

著者: 菅謙治 ,   奥田隆章 ,   四宮栄江 ,   下地康代

ページ範囲:P.1347 - P.1354

 白内障手術の際に切開創に硝子体嵌頓が残ったために,手術後に視力低下をきたしてきた12眼にanterior vitrectomyを行ない,次の結果を得た。
 Anterior vitrectomyの効果は,白内障手術からanterior vitrectomy施行までの期間と関係があって,白内障手術後10ヵ月までにanterior vit-rectomyを行なった5例では,全例ともに視力,CMEが改善され,しかも視力は術前の最高視力にまで改善した。これに対して,白内障手術後1年6ヵ月以上を経過してからanterior vitrectomyを行なったものでは,効果は不定で,視力が改善した場合にも0.5前後程度の改善にとどまった。したがってanterior vitrectomyは,白内障手術後10ヵ月以内に行なうべきである。
 Anterior vitrectomyの適応は,輸部切開創にかなりの硝子体嵌頓があって,白内障手術後10ヵ月頃にCMEが認められるものである。一方,白内障手術後3年〜4年の長期を経過した陳10例も,螢光色素注入後15分の螢光眼底写真で黄斑部に限局性の嚢胞状螢光貯留が認められる場合には,一応anterior vitrectomyを試みてみるべきである。しかし,後極部一帯にびまん性の螢光漏出が認められる場合には,anterior vitrectomyによって視力の回復する見込みはない。

眼科手術学会

水晶体嚢内摘出に続くBinkhorst 4−loop lens挿入,連続383例の成績—第1報 成績全般,特に術後視力を中心として

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1355 - P.1360

 1976年4月28日より1979年11月29日までの3年7ヵ月間に本院で行われたIOL挿入術のうら,水晶体嚢内摘出術に続くBinkhorst 4−loop lens(+19.5d)挿入を受けた第1例からの連続309人383眼に関する成績を報告した。観察期間は最長3年10ヵ月,平均1年2週であった。年齢は40歳から89歳にわたり平均68歳であり,60歳以上が80.2%を占めた。同期間に行われた水晶体摘出術のうち38%がIOL挿入を受けた。術前視力は0.1以下が82.8%を占めた。要点は次の通りである。
 (1)術後視力:全症例の平均は1週日で0.5,1ヵ月目で0.8,最高視力1.0であり,最後の33例では,各々0.63,0.99,1.08であった。
 (2)最高視力に達する期間:平均は3ヵ月であった。
 (3)術後矯正度:正視が最も多く32.1%を占め,±2.0d以内のものは84.8%であった。全例の平均は−0.71dであった。
 (4)術後矯正度の変化:不変およびマイナス増加型が各々30%,次いでマイナス減少型が21%であった。

GROUP DISCUSSION

第21回 緑内障

著者: 澤田惇 ,   福崎昌

ページ範囲:P.1361 - P.1366

〔主題〕緑内障治療剤としてのβ−Blockerの意義
総 説
 β−遮断作川とは"エピネフリソやイソプロテレノールのβ−作用を競合的,特異的,可逆的に遮断する作用"と定義されよう。
 したがってβ−遮断作用は,交感神経緊張状態では遮断作用効果は大きく出現する。

文庫の窓から

審視瑤凾(眼科大全)(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1367 - P.1369

 次に本書の流布本であるが,明末清初版と思われる中にも内容的に大差は認められないが,二,三の蔵板所の異なったものがでている。筆者の手許にあるものを挙げると次のものがある。
 1)傳氏眼科審視瑤凾(眼科大全),酔畊堂,煥文堂蔵板,明末清初刊。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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