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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻1号

1981年01月発行

雑誌目次

特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (その1) 学会原著

重症糖尿病性網膜症のERG—1.硝子体手術前検査としてのERG

著者: 吉田輝也 ,   藤岡千重子 ,   奥田恵子 ,   中条真也

ページ範囲:P.35 - P.40

重症糖尿病性網膜症の網膜電図による検討は従来,on応答であるa波,b波についてのみなされている。今回,明順応下でon応答とその網膜内起源の異なっているoff応答急峻部(d波)の障害される割合を検討した。off応答(d波)は糖尿病性網膜症(DR)の進行程度にほとんど影響を受けず,on応答はDR進行程度に比例してその反応性が減弱しており,そのためon/off率を検討することにより,重症糖尿病性網膜症のERGによる程度判定の可能性を示した。off応答(d波)は綱膜剥離を伴って始めて強い影響を表現しており,電症糖尿病網膜症における網膜剥離の診断にはd波の検討が必要である

ERG,超音波検査による硝子体手術の予後判定について

著者: 清水公也 ,   箕田健生

ページ範囲:P.41 - P.45

(1)糖尿病性網膜症25例,静脈血栓症22例,Eales病3例の計50例を対像とし,硝子体手術前に超音波,ERG検査を実施し,術後視力との相関をみた。
(2)超音波にて完全硝子体剥離で,かつERGにてnomalのものは,術後平均視力0.95(0.6〜1.5)と良好で,超音波にて不完全硝子体剥離で,かつERGにてflatのものは術後視力は不良であった。
(3)術前の超音波,ERG検査の組み合わせ分類は,術後視力とよく相関した(P<0.01)。すなわち術前の超音波,ERG検査の組み合わせにより,術後の視力予後推定の可能性が示唆された。

網膜芽細胞腫の診断についで

著者: 浜田陽 ,   初川嘉一 ,   浜田路子 ,   米本寿史 ,   新里悦郎 ,   法貴隆 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.47 - P.51

 超音波診断装置Bronson-Turner型OphthalmicContactB-scan,Echo-Ophthal—mograph 7200 MA,Ocuscan400を用いて網膜芽細胞腫36例とその他の白色瞳孔12例を比較検討し,その中で診断に苦しんだ2症例について報告した。
 超音波像により,網膜芽細胞腫の診断は多くの症例で可能であるが,硝子体中に腫瘍が増殖したり,壊死をきたす症例では,診断に苦しむことがあり,超音波像のみに頼ると誤診する可能性があることを警告した。

Vitreous fluorophotometryによる血液網膜柵諸病態の研究Ⅲ—慢性糸球体腎炎(その1)

著者: 三宅謙作 ,   前田憲志 ,   今井常喜 ,   野村武彦 ,   太田和宏

ページ範囲:P.53 - P.59

 慢性糸球体腎炎における血液網膜柵の変化をvitreous fluorophotometryを使用して調べた。症例は種々の腎障害を有する慢性糸球体腎炎46症例(92眼)で,このうち13症例(26眼)は血液透析に移行していた。10mg/kgのfluorescein-Na液を静注後1時間における後部硝子体のfluorescein-Na濃度を測定して2×10−8mg/ml以上を示したものを陽性と判定した。クレアチニンクリアランス値が50ml以上の症例では22例中9例が,50ml未満の症例では44例中41例が,そして透析移行症例では26例中24例で陽性であった。前者と後二者の間には統計学的有意差があったが後二者の間には有意差がなかった。
 進行例の慢性糸球体腎炎では高頻度に血液網膜柵の破壊が起りまた血液透析は破壊を修復せずむしろ進行せしむることが示された。さらに螢光眼底造影法で著明な色素漏出を示さないような多くの症例でvitreous fluorophotometryで後部硝子体に螢光色素の増加をみとめた。以上からこの方法は慢性糸球体腎炎の網膜病変の診断分類に有用であると考えた。

各種疾患に対するclosed vitrectomyの成績

著者: 大田実 ,   小泉京子 ,   片上千加子 ,   千原恵子 ,   柏井聡

ページ範囲:P.61 - P.64

 1978年9月より1年11ヵ月間に行ったclosed vitrectomyの手術例よりopen skyvitrectomy,瞳孔形成,外傷眼における前眼部整復を目的とした手術をのぞき,67例71眼に行ったclosed vitrectomyの成績を報告した。
 手術例は糖尿病性網膜症による硝子体出血23例26眼,その他の原因による硝子体出血,硝子体混濁34例35眼である。
 糖尿病性網膜症に対しては69.2%の成功率,他の症例に対しては82.8%の成功率が得られた。

周辺部網膜血管形成異常と若年性網膜剥離

著者: 沼賀哲郎 ,   宮久保寛

ページ範囲:P.65 - P.77

 網膜剥離292例309眼を対象に,通常の検眼鏡的観察,細隙灯顕微鏡観察に加え螢光眼底造影を行い,網膜血管patternに注目し若年性網膜剥離の原因を検索した。
 網膜血管形成異常を伴う剥離が10歳代にピークを有し,若年者に高頻度に見られ,20歳未満の網膜剥離の24%を占めた。格子状変性由来の剥離は20歳代と40歳代にピークを持つ二峰性を示し,裂隙由来の剥離は60歳代にピークがあった。若年性網膜剥離では網膜血管形成異常を伴う剥離が高頻度にあり重要な発症要因の一つである。
 この網膜血管形成異常を伴う剥離眼では,(1)網膜血管走行の異常(網膜血管の直線化,分岐角度が鋭く異常多数分岐),(2)耳側周辺部の無血管野の存在,(3)耳側周辺部の網膜硝子体癒着,(4)嚢胞変性の合併,(5)両眼性が特徴であり,これらの所見は瘢痕期未熟児網膜症と酷似しているが未熟児の既往がなく,生下時に酸素投与も行われていなかった。これらの特徴を有する網膜血管形成異常の中には同一家系内発症が4例あった。
 以上の結果より網膜血管形成異常はその血管型,硝子体変化,網膜変化,両眼性より先天的な要因によるものと考えられる。

強度近視の後部ブドウ腫の形態に関する研究(予報)

著者: 井上博隆

ページ範囲:P.78 - P.80

 強度近視の後部ブドウ腫の形態変化をより立体的に検討するために,網膜形状を生体計測可能なAおよびBモードを組合わせた超音波診断装置を試作し測定を行い,立体眼底観察装置による観察と比較検討した結果,次のような結論が得られた。
(1)後部ブドウ腫の全体像を捉えるためには立体眼底観察装置による観察が十分有用であった。
(2)後部ブドウ腫の辺縁の変化については,まずその急峻な辺縁の位置を立体眼底観察装置により捉え,次に試作装置による測定を行うことによって,その変化を数量的に表示しより立体的な変化として捉えることができた。
(3)後部ブドウ腫の底は,試作装置の測定結果より容易に捉えることができ,辺縁の急峻部の位置および程度との関係より後部ブドウ腫の形態変化を三次元的なものとして考えることができた。
(4)試作装置の測定結果より後部ブドウ腫の模式図を描くことにより,その深さ,面積さらには容積をも算出できることもわかった。

後極部に裂孔を有する網膜剥離眼の超音波所見

著者: 額田朋経 ,   坪井俊児 ,   佐藤勝

ページ範囲:P.81 - P.86

後極部に裂孔を有する網膜剥離眼,34眼を超音波診断装置を用いて眼球の形状について検討した結果
 1.眼軸長について:(1)34眼の眼軸長の平均は27.33mmあった。(2) C群:黄斑孔と同時に周辺部に裂孔を有するものは,他の2群とは異なり,眼軸長の延長は認めなかった。
 2.後部ブドウ腫について:(1)後部ブドウ腫は34眼中25眼に認めた。(2) C群:黄斑孔と同時に周辺部に裂孔を有するものは,後部ブドウ腫を全例認めなかった。(3) B群:黄斑孔以外の後極部裂孔を有するものは,後部ブドウ腫を全例認め,突出度,轡曲度のいずれも,A群にくらべて大であった。(4) A群:黄斑孔のみを有するものでは,剥離の範囲が1度のものが,II度以上のものにくらべて,突出度,轡曲度のいずれも大きかった。
 3.眼軸長と後部ブドウ腫:眼軸長と後部ブドウ腫の間には,正の相関関係を認めたが,その程度は,個々の症例においてまちまちであった。

眼筋型重症筋無力症患者のserum angiotensin converting enzyme

著者: 小原博亨 ,   成木黎 ,   神谷貞義

ページ範囲:P.91 - P.97

 われわれは重症筋無力症のocular typeの7例とocular typeより全身型に転進した1例についてSACEを定量した。(1)1歳6ヵ月の女子と3年6カ月の男子ではSACEの値は基準値の範囲内にあった。(2) prcdonisolon 1日35 mgを内服している49歳の患者ではSACEは35 uと基準値の範囲内であった。(3)その他の5人の患者ではSACEはいずれも40 u以上であった。(4)この8例ともAngiotensin Iは基準値(起立時1,000pg/ml以下,安静時200 Pg/ml)をはるかにこえている。このことはMyastheniagravisのACE以上の特徴であろうか。(5) Angiotensin Iが極めて高値であるにもかかわらずAngiotensin IIの値は基準値の範囲内である。基準値を越えるものはわずかに3例で,Angiotensin Iの値が7,900 pg/ml 5,460 pg/mlと極めて高値を示した幼児の症例と対高血圧治療中の2症例のみである。他の4例は基準値の範囲内にある。(6) AngiotensinIの値が基準値をはるかにこえている値であり,Angiotensin IをAngiotensin IIにcon—vertするACEの値も基準より高いにもかかわらず,Angiotensin IIの値が基準値内であることはACEの働きを阻害する物質が体内に存在することが考えられる。

連載 眼科図譜・278

網膜血管の蛇行を伴って嚢腫様黄斑変性をきたした症例

著者: 遠谷茂 ,   吉田雅子

ページ範囲:P.6 - P.7

 嚢腫様黄斑変性は種々の疾患に合併して生じるが,今回我々は片眼に網膜血管の蛇行があり,嚢腫様黄斑変性を伴った1例を経験したので報告する。
 症例:N.M.(91-583-025),23歳,男子。

特別講演

老化と眼の機能

著者: 市川宏

ページ範囲:P.9 - P.26

 老化の生理的現象はひとの正常成長過程の延長線上にあり本来無自覚なものである。老化現象を臨床的手段で把えることは容易でないが,眼の生理機能における老化の尺度化は臨床上の基本的資料として今後ますます重視されるものと思われる。著者は視力の年齢的推移のデーターをもとに老化の眼の機能を次の三つのカテゴリーに分けて検討した。すなわちカテゴリー1は本質的加齢に関するもので,今日まで主にocular mediaの光学的要因が論じられてきたが,視力を測定する条件での加齢因子を,老人性縮瞳と水晶体の光学的濃度変化について検討し,網膜から中枢側ことに網膜機構内の加齢の存在を機能の面から明らかにした。カテゴリー2では血液網膜柵,特にそのouter barrierの脆弱化が推測される対象,すなわち高度近視限の柵機構と,白内障手術後の柵修復能(三宅)について硝子体内螢光濃度測定法による資料をもとに,柵機構に加齢が潜在する可能性を述べた。最後にカテゴリー3として眼疾を入居の条件としない特別養護老人ホームの入居者を対象にその臨床所見と剖検眼の光顕所見から,網膜後極部における脈絡膜萎縮と黄斑部網膜の萎縮性病変がはじめは互いに独立して発症しやがて共存して75歳を超える頃から老人特有の後極部病態を呈するに至る状況を述べた。

座談会

網膜色素上皮細胞の疾患(最近の動向)

著者: 吉岡久春 ,   松井瑞夫 ,   大庭紀雄 ,   塚原勇

ページ範囲:P.27 - P.34

 塚原(司会)本日は,お疲れのところありがとうございました。吉岡先生,松井先生,大庭先生ら,お三人の眼底疾患の専門家にお集まりいただいて,網膜色素上皮細胞の障害に関する座談会を開きたいと思います。
 綱膜色素上皮細胞は,最近いろいろな機能が分かってまいりまして,たくさんの話題があるわけですけれども,今晩はそのうちの二,三についてお話をお伺いたいと思います。

臨床報告

片眼中心性網膜炎(増田)の所見を示した胞状網膜剥離の3例

著者: 萱沢文男

ページ範囲:P.99 - P.104

 片眼に増田型中心性網膜炎の所見を認めた胞状網膜剥離3例の臨床経過を報告した。胞状網膜剥離が両眼性の疾患であるという見地より胞状網膜剥離の軽症例と増田型中心性網膜炎とは臨床像からは鑑別が困難ではないかと考えた。

眼科手術学会

緑内障に対するSclerangloreconstruction (強膜隅角再建術)

著者: 百瀬皓

ページ範囲:P.105 - P.110

 Sclerangloreconstruction (以下SARと略)は緑内障に対する新しい手術である。この手術は角膜輪部で強膜を3層に剥離し血管に富んだ外層を前房隅角に挿入する手術で,技術的にはある程度の習熟を要する手術であるが,決して不可能な手術ではない。この手術の適応は,眼圧上昇が中等度までの各種の開放隅角緑内障(隅角が開放されており,炎症症状のない続発性緑内障を含む)で著しい限圧上昇を伴う慢性隅角閉塞緑内障には不適応であると考えられる。この手術は,他の緑内障手術と比較して合併症の少ない手術である。
 筆者は35眼にSARを行い,術後3ヵ月で,薬物療法なしに限圧が21〜25 mmHgの間にあったものが9眼,20mmHg以下が20眼,点眼薬を併用して20 mmHg以下のものが3眼,コントロールに失敗し他の予術を行ったものが3眼の成績を得た。

片眼に施行された眼内レンズ移植術における不等像症の検討

著者: 三宅三平 ,   磯村悠宇子 ,   粟屋忍 ,   三宅謙作

ページ範囲:P.111 - P.115

 AulhornのPhase Difference Haploscopeを使用して片眼人工水晶体移植患者23名のaniseikonia量を測定した。今回の症例におけるaniseikonia量は最小0.0%,最大7.6%であった。これらの患者にaniscikonia,眼精疲労が自覚症状として無かったこと,文献的に7.6%という値がaniseikonia tolerance内と考えられることより人工水晶体はanisei—konia減少に関して非常に優れていることが明らかになった。

手術ノート

白内障嚢外法

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.116 - P.117

I.嚢外法の特徴とメリット
1.特徴:
(1)水晶体後嚢が残る。
(2)チン氏小帯に損傷がない。

文庫の窓から

真流真教之巻

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.118 - P.119

 かの有名な「病草子」(鎌倉時代初期作)にみられるような眼病を治療する医師らしい者は,既に鎌倉時代には現われていたが,南北朝から江戸時代にかけて実地医術の眼科が馬嶋流によって広められるようになって,穂積(住),山口,佐々木,青木,酣〓,南蛮等の諸流派が興った。
 これら諸流派は一流一派をなしていたものの,その眼科の内容においては大体中国,明代の眼科を主体としている馬嶋流眼科と大差なく,いわゆる五輪八廓説を規範とし,それに自己の治験や一寸した処方の差異を加えた一方一術にすぎなかったように解される。というのは当時の各流派問の差異がほとんど"口伝有り"という語に秘められているからである。

薬の臨床

緑内障治療点眼薬の運転適性に与える影響

著者: 若松慶二 ,   田中衣佐子 ,   鈴木仁 ,   蒲山俊夫 ,   常岡寛 ,   環龍太郎 ,   小池裕司

ページ範囲:P.120 - P.127

 緑内障治療点眼薬が視機能に与える影響を測定し,どの点眼薬が運転上適当であるかを知る目的で,一般に用いられているPilocarpine,1—Epinephrine,および新しい治療薬であるβ—bloker (Bupranolo1)の3種の作用機序の異なる薬を点眼し,その前後で視機能に与える影響を測定し,次の結果を得た。
(1)遠距離,中距離,近距離視力,対比視力,動体視力,三桿法においては,3剤とも点眼前後において著明な変化はなかった。
(2)夜間視力ではBupranololが他の2剤に比べ有意な改善傾向を示した。(その30秒値はpilocarpineに対してはp<0.01,1—Epinephrineに対してはp<0.05, 1分値ではPilocarpine,1—Epinephrineに対してともにP<0.05)。
(3)スタティックカンピメトリーでは,Pilocarpinc点眼により暗点の増大する症例が多く,Epinephrine, Bupranolol点眼では不変であるものが多かった。
(4)本測定結果からBupranololは副作用も少なく,夜間視力を改善させ,スタティックカンピメトリーに影響を与えることが少なく,運転時の情報処理課程と考えあわせ,緑内障患者の運転時,とくに夜間運転時の適性に与える影響が比較的良好な点眼薬であると考える。

GROUP DISCUSSION

小児眼科

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.128 - P.129

教育講演
I.小児の屈折異常の管理に関する問題
 屈折異常は眼科診療における基本となる検査であるが,小児の屈折検査にはまだ問題となる点がいくつかある。今のところ小児の視機能と発育に関する経年変化のデーターがまだ不十分である。そして乳幼児の検査はすべて患児の発育状態に関係しており,単に年齢だけでなく,その小児の発育程度に応じた能力を考えることが大切である。検査方法も年々進歩しているが,小児に対して信頼性のある検査法の確立が強く望まれている。これらの事柄は今後も研究を進めながら,現在,使用できる検査法を如何に用いて,小児の屈折異常を管理していくかが今日の話題である。

抄録

第3回日本眼科手術学会抄録集(3)

ページ範囲:P.130 - P.137

26.Barraquer-Mateusの電動式角膜Trephineの使用経験
 Barraquer-Mateusの電動式角膜Trephineを使用し5例5眼の角膜移植を行ったので報告する。
 この装置はドライブユニットに内臓されたニッケル,カドミウム蓄電池を電源としてハンドピース内部のマイクロモーターを回転させている。その回転運動をシャフトに接続しているトレパンに伝動することによって角膜を切り取るようになっている。そのため術辞はトレパンを角膜上に垂直に固定することだけに注意を集中すれば良くその使いやすさ,切れの良さからも満足できた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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