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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻10号

1981年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・287

特異な網膜色素上皮症と思われる1例

著者: 直井信久 ,   沖波聡 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1588 - P.1589

 網膜色素上皮症retinal pigment epitheliopathyの概念は,1968年Gassら1)がacute posterior multifocal pla—coid pigment epitheliopathyを報告して以後,しだいに普及し知見が増大しつつある。われわれは網膜色素上皮症の新しい一型と思える症例を経験したので報告する。
 症例:K.U.(ID02-123-074),41歳女子。

臨床報告

興味ある経過を示した内頸動脈海綿静脈洞瘻

著者: 山崎芳夫 ,   関本幸子 ,   石川弘 ,   北野周作

ページ範囲:P.1591 - P.1595

 右外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻において両側眼球運動障害が出現し,特に健側の左眼に症状が顕著であった症例を経験したので,眼球運動障害の出現機序と瞳孔について神経解剖学的見地から考察を加えた。

全身皮膚色素異常を伴ったSclerocorneaの症例

著者: 水流忠彦 ,   堀貞夫 ,   西山愛子 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.1597 - P.1602

 両側のTotal sclerocorneaに全身の皮膚色素異常を伴った生後1ヵ月の男児の症例を報告した。生後2歳時に左眼に対し表層角膜移植を行い良好な結果を得た。光学顕微鏡による組織検査にて,角膜上皮の浮腫,Bowman層の欠如,実質内への血管侵入および膠原線維の不規則な配列等の特徴が見られた。眼合併症,全身合併症との関連性に於て,発生学的見地よりsclerocorneaの病因の文献学的考察を行った。

脂腺が原発と考えられる眼瞼腫瘍の1例についての考察

著者: 牧幸 ,   篠原淳子 ,   渡辺博 ,   矢野哲男 ,   大岡良子

ページ範囲:P.1603 - P.1607

 53歳女子で,右上眼瞼外嘴部結膜皮膚移行部あるいは眼瞼結膜より発生した脂腺癌と考えられる症例で,眼瞼腫瘍の一部を生検後約2週間目より急速に眼瞼腫瘍および耳下腺腫瘍が増大し広範な転移をきたし,全身衰弱激しく,眼瞼腫瘍発生後1年2ヵ月,生検後約4週間で死の転帰をとった症例について報告した。病理組織学的には,脂腺癌と考えられ一部squamous cell carcinomaおよび未分化なbasal cell carcinoma様の像を呈していたが,脂肪染色ができなかったので脂腺癌を確定することはできなかった。また,転移巣は全て未分化なbasal cell carcinoma様の像で分化傾向は全くみられなかった。

Lateral brow approachにて全摘出しえた涙腺良性混合腫瘍

著者: 照林宏文 ,   井上節 ,   中路裕

ページ範囲:P.1609 - P.1612

 CT scanを術前に行う事により,初期の涙腺腫瘍を発見できると共に,腫瘍の大きさ,広がり方(位置関係),骨の変化などを正確に把握できる。これにより,手術方法に対する術前検討が容易となる。
 lateral brow approachにて,涙腺腫瘍に到達し,眼窩縁骨を小さく(3×15mm)切除するだけで,限局した比較的小さい腫瘍は,被膜ごと全摘しうる。このapproachによれば,Krönlein operationと比較して,術後のcomsmeticな面でも,切開創が眉毛に隠れるという利点がある。頭蓋内への穿孔が本法による最も重要な合併症であると思われるが,これに対する注意も,CT scan像で術前検討を加える事によって,十分に可能である。

Uveo-parotid fever (Heerfordt症候群)の1例

著者: 合田佳都子 ,   近藤和義 ,   荻田玲子 ,   調枝寛治

ページ範囲:P.1613 - P.1618

 47歳の女性で両側顔面神経麻痺に続いて,両側耳下腺炎を生じ,1ヵ月後に前房隅角に小結節を伴う虹彩毛様体炎と眼圧上昇を呈し,全身的諸検査によってサルコイドーシスと確定診断された1例を報告した。
 本症例は顔面神経麻痺,耳下腺炎,ぶどう膜炎の3症状を合併したことから,サルコイドーシスの1病型であるUveo-parotid fever (Heerfordt症候群)の完全型と考えられる。
 さらに,1961年から1980年までの約20年間に,広島大学第2内科でサルコイドーシスの確定診断を受けた88例のうち,眼科的異常所見を認めたものは41例であった。そのうちで上記の完全型の1例を除いて,顔面神経麻痺を伴う4例(4.5%)と,耳下腺腫張を伴う1例(1.1%)の計5例に,uvco-parotid feverの不全型が認められた。

上眼瞼が原発と思われる横紋筋肉腫の1症例

著者: 馬場敏生 ,   渡辺ひろみ ,   繁田裕美子 ,   栃久保哲男 ,   大岡良子

ページ範囲:P.1619 - P.1625

 4歳女児の左上限瞼内嘴部に腫瘤を認め,その大きさは約1ヵ月間で約縦1.2cm×横1.0cmから約縦1.7cm×横1.5cmに増大したが,疼痛,圧痛,眼瞼下垂,眼球突出,視力障害等の眼科的訴えはなかった。外科的に腫瘍の摘出を行ったが,腫瘍は左篩骨洞,左鼻腔まで達しており完全摘出は困難であった。術後摘出標本の病理組織学的検索を行い,光学顕微鏡,電子顕微鏡および走査電子顕微鏡的所見において,本腫瘍を眼瞼原発の胎児型横紋筋肉腫と考えた。

高感度薄膜長巻ILFORDフィルムを用いた蛍光眼底撮影

著者: 岡野正

ページ範囲:P.1629 - P.1638

 高感度で超薄フィルムベースを特色とする新製品ILFORD72枚撮りフィルムを螢光眼底撮影に応用して,高速度頻回連続撮影(3frames/sec.45°画角)を臨床例11眼に施行した。結果は従来の36枚撮りフィルムに比べて2倍の連続撮続が可能で,眼内循環動態の評価のための各種parameterを,血行速度の遅い疾患も含め一般の眼底カメラで収録しうる可能性が増大した。

眼球鉄錆症における水隅角鏡下の角膜黄色反射について

著者: 黄樹春

ページ範囲:P.1643 - P.1649

 本文では著者の眼球鉄錆症の早期診断法を紹介した。角膜黄色反射の発生機序,春田らの螢光消失法との比較および真仮黄色反射の鑑別診断などの問題について簡単に討論した。本法は眼球鉄錆症の早期診断に対して非常に有用であった。

胞状網膜剥離の臨床像についての検討

著者: 萱沢文男 ,   山本敏雄

ページ範囲:P.1650 - P.1655

 胞状網膜剥離12例の臨床像につき検討し報告した。
 本症の基本病態は,網膜血液関門の破綻であり,ドーナツ型滲出斑,両眼性,下液の移動性を伴った網膜剥離,視力不良等は,2次的な修飾された変化であり,本症を中心性網膜炎の重症型として位置づけることが可能ではないかと考按した。

カラー臨床報告

Petriellidium boydiiによる角膜真菌症の1例

著者: 柏井聡 ,   大田実 ,   平塚俊三 ,   田中壮一 ,   広永正紀

ページ範囲:P.1659 - P.1663

 角膜を穿孔し水晶体内に膿瘍形成をきたしたきわめて稀な真菌Petrieltidium bqydii(=Allescheria boydii)感染症の1症例を報告した。症例は47歳男子で木の枝で眼を突いた後に難治性角膜潰瘍が発生し,Amphotericin Bを局所および全身投与したにもかかわらず症状が著しく悪化したため,患眼は発症後約2ヵ月後に摘出された。摘出眼球のPAS染色標本では,水晶体前嚢下に菌糸と少数の胞子様構造物を確認した。P.boydiiによる角膜真菌症は本邦第3例目である。

手術ノート

硝子体手術(器具の選択)

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1626 - P.1627

 硝子体切除術にはいろいろな術式があるが,ここでは経毛様体偏平部硝子体切除術pars plana vitrectomyに限って,手術装置の選択について述べてみたい。ここでいう手術装置の選択という問題は,手術対象の病態に応じてどのような装置をえらぶべきかということが主体であり,これに有水晶体眼と無水晶体眼とで装置の選択に多少の問題が加わると思う。
 さて,硝子体切除術は,切除一吸引,灌流,照明という本手術にとって基本的に不可欠な機能を,どのように組合せるかによって,one port,two port,three portsystemとに分けることができる。また,上述の機能が硝子体切除装置の眼内挿入部にどのように組合わされているかによって,full-function tipとsingle function tipとに分類される。

文庫の窓から

眼科諸流波の秘伝書(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1656 - P.1657

 『支那ノ眼科史ト蘭学的歴史ヲ述ブレバ,日本眼科史ノ大概ハ知リ得ベキナリ』(河本重次郎博士)といる様に,わが国の眼科史は極めて中国(明・清代まで)の眼科史と関係が深い。また同時にその発展の過程においては眼科諸流派の存在が大きな位置を占めている。
 わが国の眼科諸流派はその雄たる馬嶋流を初め次々と興り,殊に室町,安土桃山時代以降江戸時代半頃にかけてはかなりの数の眼科諸流派が興亡した。そこで筆者の手許にある資料によって眼科諸流派を紹介する。

眼科手術学会

Phacoemulsification手術の初期合併症とその防止対策

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.1664 - P.1667

 Phacoemulsification (KPE)手術の最大の技術的問題点は,通常の手術器具の20ないし30倍も重く,しかも嵩張って扱いにくい超音波チップ(US tip)をいかに支え,いかに動かせば,眼球に力を加えずに思いどおりの動きができるかという事柄にある。
 術中の虹彩損傷は,術前極大に散瞳し,術中これを維持することにより,大部分避けることができる。
 術中の角膜内皮損傷は,水晶体が軟く手術時間が短くてすむものを選択すれば避けられる。
 後嚢の損傷は,注入・吸引チップ(I/A tip)使用時におこりやすいので,後嚢を吸引しないための注意が必要である。
 糖尿病患者の白内障手術にはKPEは不適当である。

上顎洞粘膜を利用した眼窩嚢再建手術

著者: 田邊吉彦 ,   近藤俊 ,   丹羽英人 ,   鳥居修平

ページ範囲:P.1668 - P.1671

 先天性無眼球症による小眼窩,および人工無眼球症後の萎縮眼窩の各1例に対し,上顎洞粘膜を全眼窩に裏打して眼窩嚢形成を行い良好な結果を得た。
 上顎洞粘膜は採取に耳鼻科的技術を要するが,採取部に目を見える瘢痕を残さず,通例片側で眼窩全体を裏打するに足る量が得られる。また,袋状をしているので採取後の眼窩形成手術は極めて簡単である。粘膜に軽度の炎症があっても利用して差支えない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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