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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻11号

1981年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・288

アルゴンレーザー光凝固を行ったBourneville-Pringle母斑症の1例

著者: 余敏子 ,   矢部京子 ,   千代田和正

ページ範囲:P.1696 - P.1697

 本症は顔面脂腺腫,痙攣発作,知能発育障害を三主徴とする遺伝性疾患で,発現率の低い常染色体優性遺伝を示し,全身諸臓器にも種々の腫瘍や先天奇形を合併する。今回,本症の完全型の1症例の眼底に病期の異なった数個の腫瘍を認め,病期の進行している腫瘍にアルゴンレーザー光凝固を試み,有効な結果をえた。
 症例:19歳,女子。

臨床報告

Pit-macular syndromeとその光凝固による治療経験

著者: 池田定嗣 ,   池田たか ,   服部昌幸 ,   加賀典雄 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1699 - P.1704

(1)最近経験した視神経乳頭窩に黄斑部扁平網膜剥離を合併した3例を報告した。
(2)全例に乳頭耳側縁網膜に光凝固を行い,網膜剥離の消槌・視力の回復,中心暗点の消失を認め,その後の長期観察中にも剥離の再発はないので本症の治療に有効であると考えた。
(3)このような光凝固法では視機能への障害・合併症の発生は全くなかった。
(4)今回の経験から視神経乳頭窩に黄斑部扁平網膜剥離を伴った症例には乳頭耳側縁への光凝固療法が行われてよいと思われる。この際網膜剥離の全領域に一致して乳頭耳側縁に沿う光凝固を行い確実な網膜脈絡膜瘢痕を形成することが必要である。

糖尿病性網膜症者の中心フリッカー値について

著者: 新美勝彦 ,   平岩紀子

ページ範囲:P.1705 - P.1710

 糖尿病による視神経障害は比較的稀とされているが,検眼鏡的所見に比して視力の悪い例に時折り遭遇することから,その関与を検討する口的で,網膜症者の中心ブリッカー値を測定検討した。
 対象は網膜症の合併のあった56例114眼で,ダイレクトフリッカー装置(日本キーラー社製)により測定した。この結果,螢光撮影により,乳頭より異常漏出のみられたものにブリッカー値の低下するものが多く,視力は0.1以上あってもフリッカー値が29Hz以下であったものが11.4%あった。経過観察の結果,乳頭面に異常螢光のあるもので,ブリッカー値が漸次低下するもののあったことから,循環障害による栄養障害がneuropathyに結びつき存在すると結論した。メコバラミン製剤を併用してその効果をみたところ,10Hz以上改善したものが10眼,10Hz以上低下したものが5眼観察された。

外斜視優位眼決定に関する他覚的方法—衝撃性眼球運動潜時測定法

著者: 斉藤喜代子 ,   野崎S・綾子 ,   藤山由紀子 ,   松本奈緒美 ,   石川哲

ページ範囲:P.1711 - P.1718

 4分両光電素子3個利用による新しい眼球運動記録装置を利用して,頭の動きを完全に除外し,40人の成人外斜視患者の水平10度の衝撃性眼球運動を測定した。優位眼の決定は,前もって他の方法で行われた。
1)潜時・耳側への衝撃性運動で優位眼が短縮していたものは37例(92%),非優位眼が短縮していたものは3例(8%)であった。次に鼻側への衝撃性運動で優位眼が短縮していたのは22例(55%),非優位眼は18例(45%)であった。
2)速度・耳側への衝撃性運動で優位眼の速度が大きかったものは27例(67%),非優位限の速度が大きかったものは13例(33%),次に鼻側への衝撃性運動で優位眼の速度が大きかったものは18例(45%),非優位眼の速度が大きかったもの22例(55%)であった。
3)加速度:耳側への衝撃性運動で優位眼の加速度が大きかったものは23例(57%),非優位眼では17例(43%),鼻側への衝撃性運動で優位眼の加速度が大きかったもの16例(40%),非優位眼で24例(60%)であった。
 以上から,耳側への衝撃性運動の潜時が優位眼で最も短いことがわかった。すなわち,成人外斜視患者の優位眼決定に関しては片側による耳側への10度衝撃性運動の潜時の短縮の認められる眼が92%以上の精度で優位眼であると決定できると結論された。

3歳児健康診査における眼位スクリーニング

著者: 神田孝子 ,   川瀬芳克 ,   伊藤桂子

ページ範囲:P.1719 - P.1724

 我々は愛知県知多保健所で行われる3歳児健康診査の項目に眼位検査を加え,眼位スクリーニングを行い,異常が疑われるものに対し愛知県総合保健センターで精密検査を行っている。
 1974年度から1979年度までの6年間の3歳児健診受診者は25,257人で,全員に対し眼位スクリーニングを実施した。そのうち異常が疑われた者は613人(2.43%)であった。異常疑者のうち既に治療中の者を除いたものを要精検者とした。精密検査を受けた者489人(受診率95.0%)のうち眼位異常者は280人で,そのうち内斜視68人,外斜視は174人,その他の斜視が38人であった。今回の眼位スクリーニングより斜視の頻度を算出するとおよそ1.30%になった。

開瞼失行症の5症例

著者: 吉村長久 ,   本田孔士

ページ範囲:P.1737 - P.1740

 Apraxia of lid-opening開瞼失行症の5症例を報告した。症例1は76歳女性,半年前に開瞼因難が発症する。開口運動あるいは頸部後屈の動作により開瞼可能となる。症例2は左片麻痺の58歳女性。症例3は65歳女性で,CT scanにてdilfuse cortical atrophyを認めた。症例4は48歳男性,精神状態の変化,あるいはストレスの多寡により症状に相当の変動が認められるのが特徴である。症例5はアルコール中毒の54歳男性。本症は症候性眼瞼痙攣より開瞼失行症へ移行したと考えられる症例である。
 開瞼失行症の鑑別診断問題点につき若干述べるとともに,眼科領域におけるその重要性につき強調しさらに,これまで開眼失行症という不適切な日本語が用いられてきたことを指摘した。

カラー臨床報告

網膜分離症を伴った後部硝子体網膜牽引症の1例

著者: 伊藤宣子

ページ範囲:P.1731 - P.1736

 特発性と思われる不完全後部硝子体剥離後に起こった硝子体網膜牽引症により,網膜分離症を続発した1例を報告した。牽引性網膜剥離と牽引性網膜分離症の鑑別を行い,後硝子膜面に認めた膜形成の機作について考察を加えた。

眼科手術学会

出血性緑内障におけるPars-Plana Filtrationと硝子体手術後における眼圧上昇

著者: 清水公也 ,   田中道子 ,   高瀬正弥 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1741 - P.1744

 Pars-plana filtrationは,房水を毛様体偏平部より濾過する新しい手術である。この手術の最良の適応は出血性緑内障である。我々は出血性緑内障を合併した糖尿病患者6例(内硝子体手術後3例)および,網膜静脈血栓症1例(硝子体手術後)の計7例に対し,この手術を施行し良好な結果を得た。
 硝子体手術を施行した54例で,術後眼圧の上昇したものは17例であり,それらは炎症性眼圧上昇2例,Ghost cell glaucoma 8例出血性緑内障7例であった。それらの眼圧上昇17例中13例は無水晶体眼であり,水晶体および,前部硝子体膜の有無が,硝子体手術後の眼圧上昇に影響するものと考えられた。

顔面神経麻痺の眼瞼手術における保存強膜の応用

著者: 菊池隆二 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.1745 - P.1747

 70歳,男性の顔面神経麻痺による下眼瞼下垂および下眼瞼の麻痺性外反に対し,保存強膜を用いて手術を行い良好な結果を得た症例を報告し,その手術方法を紹介した。

手術ノート

上下斜視の手術

著者: 稲富昭太

ページ範囲:P.1748 - P.1749

 上下斜視の手術を行うには水平斜視とは異なる点が少なくない。ここではその手術をするにあたって必要な最小限の知識と留意点をまとめてみる。
(1)手術手技よりも手術のプランニングが大切である。このためには上下斜視の種類と診断を確実にする必要がある。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1750 - P.1751

3.江源流大灌頂錦嚢眼科秘録
 この写本は天地人の3冊(平均27丁)よりなり,書写年代は示されず,各冊末尾に馬嶋高慶花押と書き込まれている。
内容見出し項目を拾ってみると

薬の臨床

Epinephrine点眼治療に不耐性であった緑内障患者へのDipivalyl Epinephrine点眼液の使用経験

著者: 荻野紀重

ページ範囲:P.1753 - P.1756

 Epinephrine (EP)点眼により副作用のみられた症例を主として,Dipivalyl epi—nephrine (DPE)点眼で副作用がどのように現われるかを検討し,あわせて眼圧下降作用をみた。EP点眼によるアレルギー性眼瞼皮膚炎34例において,DPE点眼では4例(12%)は同様の症状で中止したが,30例(88%)は無症状か軽症で継続使用可能であった。結膜充血,アレルギー性結膜炎,鼻粘膜刺激症状,頭痛でも,DPEでは副作用例ははるかに少数であった。眼圧下降作用については0.1%DPE点眼は1.25%EPと同程度かそれ以上の効果があると思われる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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