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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻12号

1981年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・289

保存的治療を行った葡萄膜転移癌の3例

著者: 小松真理 ,   大西智子 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1784 - P.1785

 葡萄膜転移性腫瘍は従来,稀なものとされていたが,特に保存的治療のなされた報告例は少ない。今回我々は2例の脈絡膜転移癌および1例の脈絡膜・虹彩転移癌に対し,保存的治療として放射線照射・光凝固を行うことにより.視力を保存あるいは改善することができたのでここに報告する。
 症例1:68歳,男性。

臨床報告

大熊篤二考案「新色覚異常検査表(検出表・程度表)」(国際版1979年試作)の使用経験

著者: 宮本正 ,   清水金郎 ,   太田安雄 ,   山口淑美

ページ範囲:P.1787 - P.1792

 大熊篤二考案「新色覚異常検査表(検出表・程度表)」を用いて,先天性色覚異常者117例に色覚検査を行い,同時に行ったNagel Anomaloscope I型,大熊表,TMC表,Panel D−15の検査成績と比較検討した。
(1)本表の検出効率は100%であった。
(2)分類不能例が多かったが,第1異常,第2異常が逆に判定される例はみられなかった。
(3)第1異常,第2異常共に強度判定例が少なく,軽く判定される傾向がみられたが,弱度判定に関しては良い成績が得られた。
(4)本表は他表に比べ,いくつかの優れた点を有するが,単独の使用で程度判定を断定することは避けた方がよい。

Vitrectomy応用による完全脱臼水晶体摘出

著者: 三木徳彦 ,   大沢英一 ,   三井敏子 ,   井上一紀

ページ範囲:P.1793 - P.1798

 硝子体中に完全脱臼した水晶体を硝子体手術を応用して摘出した9症例10眼について,その術式,臨床経過につき報告した。
 術式は(1) Open sky vitrectomy後に硝子体手術用クライオにて摘出する方法。
(2) Pars plana vitrectomy後にopen skyにて硝子体用クライオにて摘出する方法。
(3) Pars planaよりvitrectomy,lentectomyを行う方法。これらの3術式は安定した力法であるから,従来よりも積極的に手術を行うべきであると考える。すなわち,重篤な合併症が生じた後では視力回復が困難であるから,脱臼水晶体が成熟白内障となれば摘出術の適応と考えられる。

黄斑部漿液性網膜剥離を伴った後部強膜炎の1例

著者: 大滝正子 ,   加藤桂一郎 ,   高橋衛

ページ範囲:P.1799 - P.1802

 10歳の生来健康な男子で,右眼痛,頭痛,右眼視力障害を訴え,黄斑部に漿液性網膜剥離を認めた後部強膜炎の1例を報告した。螢光眼底検査で,剥離部に多数の小点状,斑状の螢光色素が出現し,しだいに融合し,網膜下へ貯留する所見が得られた。剥離の消退後は二次的な色素上皮層の障害を暗示する顆粒状の螢光を示す部分と黒いhypo—flurescenceを示す所見が認められた。CT検査,超音波検査法では異常所見は検出されなかった。ステロイド剤の全身投与により症状は軽快し,視力も1.5に回復した。

ジベカシン(DKB)点眼液の手術前結膜嚢無菌法における効果

著者: 塩田洋 ,   今井睦子 ,   井上須美子 ,   小川剛史 ,   山根伸太 ,   近藤千代

ページ範囲:P.1803 - P.1809

(1)0.3%DKB点眼液を1日9回5日間家兎に点眼した。臨床的に眼に何らの異常もおこらなかった。点眼終了後走査電子顕微鏡で角膜表層を検査したが,全く異常はみられなかった。
(2)家兎角膜にmucin添加法により緑膿菌の強力感染をおこさせ,直後から0.3%DKB点眼液を1日9回2日間点眼した。緑膿菌性角膜炎の発生は阻止された(食塩水による対照実験は陽性発症)。
(3)30例の患者の手術前無菌法として,0.3%DKB点眼液を1日5回2日間点眼し,77%の菌陰性化率,および有効係数(菌数減少率の逆数)13.3という結果を得た。
(4)以上の結果からDKB点眼液は臨床治療試験に用いても安全であり,手術前無菌法にはすぐれた効果を示し,特に緑膿菌による術後感染防止には有用な抗生物質であることが示唆された。

眼球鉄錆症における水晶体の変化

著者: 黄樹春

ページ範囲:P.1811 - P.1814

 眼球鉄錆症の水晶体鉄質沈着の部位は水晶体前嚢下にのみならず前嚢上と後嚢上にもある。1974年,著者は水晶体鉄質沈着の部位についてまず前嚢上から始まり次に前嚢下に及ぶことの論点を述べた。
 水晶体鉄質沈着の深浅分布および平面分布の型を分けた。細隙灯光学断面で前嚢上および前嚢下の鉄質沈着の情況がよく見られることは眼科医に便利な方法を供与した。
 本症の漏診について簡単な分析によると新しい早期診断法が必要であることがわかった。
 著者の発見した新しいSign,すなわちHydrogonioscopyの角膜黄色反射の若干の知見を述べた。

葡萄膜転移癌の保存的治療

著者: 小松真理 ,   大西智子 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1823 - P.1828

 3例の葡萄膜転移癌を報告した。症例は,肺癌の両眼脈絡膜転移,乳癌の左眼脈絡膜転移,肺癌の両眼脈絡膜,右眼虹彩転移であった。いずれも保存的治療として放射線照射あるいは光凝固を施行し,視力を保存または改善することができた。3例ともに血漿Carcinoembryonic antigen (CEA)が高値を示した。死亡2例中1例については病理組織検索を行い,肺原発巣に一致するadenocarcinomaを脈絡膜,虹彩に認めた。

両眼性網膜芽細胞腫の放射線治療後,篩骨洞に血管周囲細胞腫(Hemangiopericytoma)が発生した1症例

著者: 張明哲 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1829 - P.1832

 両眼性網膜芽細胞腫の保存療法後,放射線照射部位に,照射後10年で悪性腫瘍と考えられるHemangiopericytomaが発生した1症例を報告した。網膜芽細胞腫に対する保存療法としてはラジウム針埋没術(総量約5,000レントゲン照射),光凝固術,化学療法としてTriethylene-thio-phosphoramide投与が行われていた。両眼性網膜芽細胞腫に続発する悪性腫瘍の発生に対して,網膜芽細胞腫の保存療法に使われる放射線が誘因になるか否かについて論じた。

カラー臨床報告

高齢者に見られた円錐角膜—続発性円錐角膜

著者: 加賀典雄 ,   山岸和矢 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1815 - P.1821

 高齢者の7例10眼に若年者の円錐角膜とは異なる型の円錐角膜を経験した。
 本症は女性に多くみられ,30歳台で発症し,極めて緩徐に進行して50歳以降に円錐の形成を認めた。角膜の曲率は前面より後面の彎曲が強く,糸井らの指摘した後部型円錐角膜を示した。円錐の形状は楕円形を示すことが多く,円錐頂点は耳下側にずれる傾向にあり,コンタクトレンズ装用が困難なばかりか,十分な矯正視力が得られなかった。症例の半数は,デスメ膜破裂による角膜急性浮腫や角膜穿孔を生じており,比較的平穏に経過していた円錐角膜が何らかの刺激で急速に進行する可能性が示唆された。またほぼ全例に瘢痕性トラコーマ,パンヌス形成,眼瞼内反応,睫毛乱生があり,これらの病変が円錐角膜の進行に誘因となっている可能性が考えられた。治療として4例6眼に全層部分角膜移植術を行い,全例とも術後経過は良好で,著明な視力改善が得られた。
 高齢者にみられる円錐角膜は,後部型円錐角膜(糸井),楕円円錐角膜(Perry)を示すものが多く,若年者にみられる円錐角膜とは異なった形態,発生機序をもち,角膜の病変にもとづく栄養障害が原因となり発生したものと考えられ,続発性ないし変性性円錐角膜と1て別個に扱うのがよいい思われた。

眼科手術学会

開頭法による眼窩腫瘍摘出術の経験

著者: 野村隆康 ,   馬嶋慶直 ,   四宮陽一 ,   片田和広 ,   神野哲夫

ページ範囲:P.1839 - P.1842

 眼窩腫瘍に対し,従来より眼科領域では主にKrönlcin法によって行われてきたが,一部眼科領域から,これに替えて前頭開頭法,あるいは前頭側頭開頭を積極的に試み,かつmicrosurgeryを併用して,その手術効果の高いことが報告されている。我々は2例の眼窩腫瘍,2例の眼窩一頭蓋内腫瘍の計4例に対し本法を試み,腫瘍の局在,拡がりによっては優れた方法であることを追試した。
 また,本法により術後経過良好な例で,術後2年で間歇的眼球突出,眼球拍動感を訴え来院した1例に,眼窩上壁=前頭蓋底の開放窓を閉鎖し,主訴の消失を見た例に対して,腫瘍摘出術後の前頭蓋底形成の重要さを感じた。

薬の臨床

ジベカシン(DKB)点眼液の外眼部感染症に対する効果—日本におけるKoch-Weeks菌,Morax-Axenfeld菌感染の現況

著者: 市川宏 ,   村上正建 ,   大石正夫 ,   永井重夫 ,   西塚憲次 ,   北野周作 ,   葛西浩 ,   田中直彦 ,   佐々木隆敏 ,   石川哲 ,   宮田幹夫 ,   小寺健一 ,   東堤稔

ページ範囲:P.1843 - P.1851

(1)113例の細菌感染によると思われる外眼部感染症患者を,0.3%ジベカシン(DKB)点眼液の1日4回点眼によって治療した。
(2) DKB点眼液の臨床効果は著効64例(57%),有効47例(42%),無効2例で,有効率は98%であった。すなわち,0.3%DKB点眼液は細菌性の各種外眼部感染症に対して,すぐれた点眼剤であることを示した。
(3)副作用は,治療の継続に支障のない軽微なものが4例,治療を中止したものが1例において認められたが,副作用に対して加療を要する程度のものは1例もなかった。
(4) Koch-Weeks菌による急性結膜炎は現在の日本においても急性結膜炎の中で重要な地位を占めており,全国的に四季を通じて発生している。その大部分は幼少年者の感染であり,その症状は古典的K-W菌感染の定型所見を呈さないため,臨床所見からは本菌の感染を推定できない。外眼部感染症の際の細菌検査の重要性を強調した。
(5) Morax-Axenfeld菌の感染も現在の日本において可成り症例がある。しかし現在本菌は古典的なBlepharoconjunctivitis angularisをおこすよりも,むしろ主として急性または亜急性の結膜炎の原因となっている疑いがある。
(6) K-W菌およびM-A菌感染に対してDKB点眼液は有効である。

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臨床眼科 第35巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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