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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻2号

1981年02月発行

雑誌目次

特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (2) 学会原著

水晶体偏位に合併した毛様体上皮断裂と網膜剥離

著者: 吉田雅子 ,   塚原勇

ページ範囲:P.161 - P.166

 水晶体偏位に伴って毛様体上皮の断裂を生じ,これが原因として網膜剥離が生じた4症例につき報告した。
 2例は両眼性で外傷の既往のない特異な症例であった。この中の1例に緑内障を合併していた。1例は外傷に伴って発症したものであり,残り1例はMarfan症候群に伴ったと思われる症例であり高眼圧を伴い,術後復位とともに眼圧は正常化した。4例とも網膜剥離は再発をくり返し,難治性であった。

Cryoretinopexyによる裂孔原性網膜剥離手術の臨床的評価

著者: 武田憲夫 ,   飯島幸雄 ,   石川清

ページ範囲:P.167 - P.172

 裂孔原性網膜剥離158例,160眼に対し,cryoretinopexy, episcleral buckling,排液を主とする術式を,特に適応を定めずに施行した。その結果を,diathermy凝固,intrascJeral buckling,排液を主とする術式を施行した,187例,191眼と比較しつつ,cryo—retinopexyの臨床的評価を試みた。
 その結果,cryoretinopexy症例においては,91.3%の治癒率を得,以下のような利点,欠点を指摘しえた。
 利点:(1)網膜裂孔周囲を直視下において,確実に凝固できる。(2)合併症としての眼内出血が少ない。
 欠点:(1)初回手術無効例および再発例の原因として,網脈絡膜癒着の弱さと眼内隆起の平坦化を指摘できる。(2)合併症として,exudative retinal detachment, cryoretinopexyによる新裂孔形成を認めた。(3)無効例の原因としてMPPを高頻度に認めた。
 以上より,cryoretinopexyはすぐれた治療法ではあるが,その特徴を十分念頭におきつつ施行する必要がある。

興味ある網膜血管異常を呈した網膜分離症の一家系

著者: 薄葉澄夫 ,   吉本弘志 ,   松山秀一

ページ範囲:P.173 - P.181

 典型的なSex-linked juvenile retinoschisisの所見を有する2家系について検索を行ない,眼底所見,螢光眼底所見,およびERG所見などについて既報の所見と比較検討し,その発生機転につき若干の考察を加えた。その結果,本症の発生機転および増悪因子として,先天的な血管異常が無視できないと考えられた。

X染色体劣性網膜分離症における暗順応障害と網膜電図

著者: 谷野洸 ,   岡本道香 ,   岡島修 ,   楊弘吉 ,   飯島裕幸

ページ範囲:P.183 - P.189

 X染色体劣性網膜分離症の7名の患者において暗順応障害の機序に関する分析が行われた。
 自覚的暗順応感度は全例軽度に低下した。他覚的網膜感度は100μVのERG b波を基準としたが,全例に低下が認められた。
 自覚的暗順応感度と他覚的網膜感度の間には有意な相関があり直線回帰が可能であった。
 2例のロドプシン光学濃度は正常であった。
 以上の結果から本症の暗順応障害は網膜分離に基づく網膜内層における神経伝達系の異常に初発の主因を有するものと考えられる。

水晶体偏位,毛様体上皮剥離を伴う網膜剥離について

著者: 井上暁二 ,   調枝寛治

ページ範囲:P.191 - P.195

 水晶体偏位に毛様体上皮剥離を伴う網膜剥離の2症例の概要を報告した。
(1)本症の臨床的特徴として,若年者で鈍力外傷歴のある眼に,水晶体の鼻側偏位と耳側の虹彩・水晶体間に毛様体上皮剥離がみられ,耳側網膜に徐々に進行する扁平な剥離が認められた。
(2)本症の発生機序は鈍力外傷によって水晶体偏位,毛様体小帯の牽引とともに硝子体基底部の牽引が働いて毛様体上皮剥離を生じ,それにひき続いて網膜剥離が起こったものと考えられる。
(3)本症の治療は,毛様体上皮裂隙の完全な確認が困難であり,眼球全周に均等な力を加えて,水晶体偏位,網膜剥離の増強を防ぐとともに,裂隙を完全にblockできるencirclingが適当と思われる。

多変量解析による正常眼圧値の検討

著者: 塩瀬芳彦 ,   川瀬芳克 ,   佐藤隆子 ,   中西直子

ページ範囲:P.197 - P.206

 過去数年間に愛知県総合保健センター・外来人間ドックを受診した約12万8千人の暦年統計データを基に眼圧と人間ドック諸項目との重相関分析を行なった結果,眼圧にもっとも貢献度の高い因子は肥満に関する指数,最大血圧(正相関),年齢(負相関)であった。
 実際的見地から本報告では性別,左右眼に分類されたデータをさらに最大血圧別,年齢別に眼圧統計を作製したが,その結果若年者で高血圧のものは正常眼圧値が高く,高年者で低血圧のものは低い傾向が一定の規則性をもって示された。
 従来からの文献に見る年齢別眼圧統計は年齢と共に増大する肥満および高血圧の眼圧に対する"プラス効果"と加齢による"マイナス効果"の相殺現象を観察したものであり,西欧人ではこの"プラス効果"が"マイナス効果"を上廻るため眼圧は年齢と共に上昇し,本邦人では"マイナス効果"が"プラス効果"を上廻ることにより眼圧は年齢と共に下降するものと推論された。

狭隅角眼の前房深度,隅角所見と負荷試験について

著者: 玉田康房 ,   笹森秀文 ,   森敏郎

ページ範囲:P.207 - P.213

 前駆期原発閉塞隅角緑内障(PCAG)の診断上留意すべき検査所見を検討するため,前駆期PCAGの疑いのある症例に対し散瞳試験(MT)とprone position test(PPT)を行い,その結果と前房深度,隅角の広さ,虹彩周辺癒着(PAS)などとの関連性について検討した。対象は1.8〜2.7mmの浅前房とShaffer I,II度の狭隅角をもつが,視野と視神経乳頭に緑内障性変化のない50〜79歳(平均64.3歳)の50名100眼である。
 その結果,MTおよびPPTの陽性率はそれぞれ38%,および40%であったが,浅前房ほど,また狭隅角なほど負荷試験,ことにMTの陽性率が高かった。PASは40眼に認め,上側,鼻側の順に多かったが,PASのある眼のMTとPPTの陽性率はともに45%で,PASの無い眼の陽性率はMTが33.3%, PPTが36.7%であった。片眼PAS眼では,PASのない他眼に比し陽性率が高かった。年代によって負荷試験の陽性率には差はあまり無かった。

眼圧上昇による角膜形状変化について

著者: 山下秀明

ページ範囲:P.215 - P.219

 眼圧上昇による角膜形状変化をフォトケラトスコープを用いて観察した。結果は以下のごとくである。
(1)眼圧が7〜8mmHg以上上昇すると,水平と垂直方向の曲率半径は推計学的に有意差をなして大きくなった。
(2)水平方向より垂直方向の変化が著しく,倒乱視傾向を示した。
(3)高齢者ほど,眼圧上昇時の角膜形状変化は著明であった。

アルゴンレーザーによる開放隅角緑内障の治療(II)

著者: 田邊吉彦 ,   安間正子 ,   原田敬志

ページ範囲:P.221 - P.227

 25例,25眼の点眼による眼圧コントロール不良の開放隅角緑内障にargon laserの照射を行ない1年以上の経過観察をした。その結果は次の通りである。
(1)10眼(40%)は眼圧<20mmHgにコントロールされ,うち1例は無治療,他の9眼は点眼でコントロールされた。8眼(32%)は眼圧20〜24mmHgにコントロールされ,うち1眼は無治療,7眼は点眼でコントロールされた。7眼(28%)は無効であった。
(2)原発性開放隅角緑内障に対しては続発性緑内障より有効であった。
(3)さして重大な合併症は認めなかった。
 以上よりargon laser照射はtrabecular collapseによる開放隅角緑内障に有効であると結論する。

リウマチ性疾患とブドウ膜炎

著者: 西山愛子 ,   望月學 ,   南波藍子 ,   伊沢保穂 ,   増田寛次郎 ,   山上悠一 ,   三井弘 ,   宮永豊 ,   茆原忠夫 ,   赤城邦彦

ページ範囲:P.229 - P.236

 リウマチ性疾患に伴う眼合併症およびその頻度を知る目的で,全身的にすでに確定診断された強直性脊椎炎16例,慢性関節リウマチ33例,および若年性関節リウマチ8例を対象として,眼症状の有無および性状を検討し,次のような結果を得た。
(1)強直性脊椎炎では16例中8例(50%)にブドウ膜炎が見られた。その特徴は線維素性の前眼部を主体としたブドウ膜炎を示すものが多く,また片眼性で再発性の傾向が見られた。
(2)慢性関節リウマチでは33例中2例(6%)にしかブドウ膜炎の合併はなく,むしろ乾性角結膜炎を示す症例(30%)の方が多かった。
(3)若年性関節リウマチでは8例中2例(25%)に重篤なブドウ膜炎とそれによる多彩な眼合併症が見られた。

Behçet病患者の自律神経機能異常について—睡眠ポリグラフ分析を中心に(抄録)

著者: 福田敏雅 ,   若倉雅登 ,   石川哲

ページ範囲:P.237 - P.238

 Behçet病患者13例とneuro-Behçet症候群患者1例について,睡眠ポリグラフ記録分析を行ない,あわせて末梢自律神経機能検査であるpilocarpine testを行なった。
 睡眠分析においては,深い睡眠の減少,REM潜時短縮,%REMの増減さらにREM期中筋肉攣縮の頻発が認められ,これらの所見は脳幹橋部cholinergic systemの異常を示唆するものであった。
 Pilocarpine testにおいては,12例が中等度以上の強陽性を示し,末梢副交感神経受容器の過敏性の存在を意味した。
 以上の所見より,神経症状のみられないBehçet病患者においても中枢および末梢の自律神経系異常が存在することが推定された。

家族性にみられた特発性uveal effusion

著者: 吉岡久春 ,   上田寿美子

ページ範囲:P.243 - P.256

 家族性出現を示した特発性のuveal effusionの2例を報告し,従来色々な名称で呼ばれている続発性網膜剥離はuveal effusionの後極部型であって,特発性中心性漿液性網膜症とは異なる疾患である。

原田病の長期観察により見出された播種状網脈絡膜萎縮巣について

著者: 星兵仁 ,   渡辺敏明 ,   森敏郎 ,   筑田真 ,   油井秀夫

ページ範囲:P.257 - P.266

 原田病を初期より長期にわたって観察した結果,以下の結果を得た。
(1)発症初期から2年以上観察しえた15例の原田病のうち6例(40%)に播種状網脈絡膜萎縮巣を認めた。
(2)萎縮病変は両眼性であり,眼底下方野,殊に中間周辺部下耳側領域に好発する。
(3)早期に十分な副腎皮質ホルモン剤による治療がなされない症例に多いと思われる。
(4)網膜色素上皮の結節状隆起と脈絡膜環流障害とにより網膜の二次的変化として,本病変が惹起されることを推論した。
(5)中心視力は良好であるが,視野,暗順応および電気生理学的検査において,軽度ながらも異常が検出された。

ベーチェット病患者における高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の検索

著者: 大口正樹 ,   広瀬茂人 ,   長田廉平 ,   大野重昭

ページ範囲:P.267 - P.272

 ベーチェット病患者97例,サルコイドーシス患者と原田病患者各13例,健康人42例についてHDL-CとTCを測定し,ベーチェット病患老のみにHDL-C値が有意に低いという結果を得た。
 ベーチェット病患者では視力が不良になるに従ってHDL-Cは低値を示し,また男性患者は女性患者よりも有意に低い値であった。一方,年齢,治療法,罹病期間,HLA-B 5はHDL-C値に影響を与えなかった。また,TC値はベーチェット病患者と健康人との間に差はなかった。
 本病患者におけるHDL-C値低下の意義は今後さらに検討しなければならない。

Behçet病の眼症単一型について

著者: 鬼木信乃夫 ,   倉員健一 ,   井上透

ページ範囲:P.273 - P.283

 Behget病に定型的とされている急性・一過性の再発性虹彩毛様体炎(時には前房蓄膿を呈す),ないし出血・白斑をともなう再発性網膜ぶどう膜炎が存在しながら,発症後5年−18年経過後もなお再発性の粘膜・皮膚・外陰症状などの眼外症状が出現していない9症例について,その臨床経過・螢光眼底所見・臨床検査所見・病理組織像を報告した。これら所見はBehçet病にみられる眼症と酷似していることから「Behçet病の眼症単一型」と仮称した。
 このような「眼症単一型」の場合は,とかく原因不明のぶどう膜炎として,ステロイド剤内服療法が第1選択とされやすいが,Bchget病の眼症状に対してはステロイド剤内服療法は視力予後に悪影響をおよぼすので,「眼症単一型」の治療に際しても,ステロイド剤内服療法をさけるというBehçet病治療の原則を守ることを強調した。

サルコイドーシス患者におけるインターフェロンおよびアンジオテンシン変換酵素の動態

著者: 大野重昭 ,   加藤富士子 ,   竹内勉 ,   根路銘恵二 ,   樋口真琴 ,   松田英彦 ,   藤井暢弘 ,   皆川知紀

ページ範囲:P.285 - P.290

 サルコイドーシス患者63例113検体を対象として血清IF活性およびACE活性を測定し,次のような結論を得た。
(1)正常対照群のIF活性は18.2±2.8IU/mlであるのに対し,本病患者では47.9±6.2IU/mlと有意の高値を示した(P<0.0001)。これらのIFはいずれもType II IFであった。
(2)正常対照群のACE活性は31.8±1.0nmol/ml/minであるのに対し,本病患者では41.3±1.3nmol/ml/minと有意の高値を示した(P<0.0001)。
(3) IF活性とACE活性の相関をみると,γ=1.73×10−4と有意の相関を示さなかった。
(4) IFおよびACE活性の推移をみると,IFは変動が大きく臨床経過とは必ずしも平行しないのに対し,ACEは炎症の活動性をよく反映し,経過観察時のよい指標と考えられた。

連載 眼科図譜・279

脳回転状網脈絡膜萎縮症

著者: 渡辺忍 ,   村上文代 ,   吉村睦雄

ページ範囲:P.158 - P.159

〔解説〕
 脳回転状網脈絡膜萎縮症(Gyrate atrophy of the cho—roid and retina,以下GACRと略す)はFuchs (1896年)により記載された古い疾患である1)。網脈絡膜ジストロフィーのうちの原発性脈絡膜萎縮のカテゴリーに所属し,進行性の夜盲および視野異常を主症状とし,特異的な検眼鏡的異常所見,すなわち脳回転(gyrus)をおもわせる形状の網脈絡膜萎縮病変をもたらすことで知られる。かようなGACRの臨床像はつとに確立されているが,その病因に関する知識はまったく皆無であった。ところが,最近になって体液成分の異常が明らかになった。すなわち,SimellとTakki (1973年)はGACR患者の血漿アミノ酸成分であるオルニチンが異常に増量することを発見した2)。この新しい知見は,まもなくいくつかの追認がなされ,さらに当該アミノ酸代謝に関係するオルニチン・アミノトランスフェラーゼが患者では欠損すること,またいくつかの関連代謝物質にも異常のあることが確認されつつある3〜6)。そしてこれらの知見を治療に応用しようとする試みもはじめられようとしている10〜11)
 GACRは稀な常染色体劣性遺伝子異常によりひきおこされ,その有病率もおそらく微々たるものと考えられるが,上述のような新しい知見の展開を考えるとき,注目しておいてよい疾患である。

臨床報告

全眼球炎および眼内炎の20例

著者: 吉武秀子 ,   吉村長久 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.299 - P.302

 全眼球炎および眼内炎の20症例を報告した。穿孔性眼外傷によるもの2例,白内障手術によるもの2例,結膜下注射によるもの1例,角膜潰瘍穿孔によるもの2例,緑内障手術後濾過瘢痕感染によるもの6例,転移性と思われるもの7例であった。
 患者側の素因として糖尿病が重要であり,20例中4例が糖尿病患者であった。
 濾過瘢痕感染6例のうち4例までがトラベクレクトミー後のものであった。トラベクレクトミーは従来の濾過手術と明らかに同じ危険性をもっている。
 起炎菌は16例中12例に検出され,以下のごときものであった。Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosa, Diplococcus pneumoniae, Streptococcus haemolyticus (α—haemolytic type), Streptococcus haemolyticus (β—haemolytic type), Enterobacter, Klebsiella aeurgenes.

白内障手術中の駆逐性出血例について

著者: 宮地誠二 ,   須藤伸 ,   松崎匡子 ,   岩本一郎

ページ範囲:P.303 - P.306

 69歳女性で,緑内障を合併した老人性過熟性白内障手術時に,駆逐性出血を生じ,その手術中の写真を供覧し,手術処置について報告した。

結節性硬化症に対するargon laserを用いた光凝固療法例

著者: 唐木剛 ,   三宅三平

ページ範囲:P.307 - P.312

 我々は発生部位として比較的めずらしい黄斑輪にかかる網膜腫瘤の出現した結節性硬化症の1例を経験し,argon laserを用いた光凝固療法を行ない,併せて腫瘤の局在について統計的考察を行なって以下の結果を得た。
(1)黄斑輪にかかる網膜腫瘤の症例に対して,argon laserを用いて光凝固療法を行なって良好な結果を得た。
(2)本邦における報告例と自験例の統計的考察により,網膜腫瘤の局在は,乳頭に近いほど多いこと,耳側と鼻側の間には差が認められないこと,黄斑輪にかかる頻度の少ないことから,この腫瘤は網膜血管の解剖学的位置と密接な関係があると思われる。
 我々は網膜腫瘤の位置,視機能に及ぼす影響,悪性度により光凝固療法を行なって十分な効果を期待できると考えるが,結節性硬化症の本態や網膜腫瘤の性質がまだ不明であり,光凝固による腫瘤の散布の可能性も否定できないので,十分な検査・経過観察を行なって,慎重に光凝固療法の適応を決定する必要がある。

カラー臨床報告

脳回転状網脈絡膜萎縮症

著者: 渡辺忍 ,   村上文代 ,   吉村睦雄

ページ範囲:P.293 - P.297

 脳回転状網脈絡膜萎縮症は,稀な劣性遺伝子による遺伝性眼底疾患であるが,近年,体液生化学異常が発見され注目されつつある。17歳男子と23歳男子にみられた症例を報告した。両症例とも定型的な臨床像をしめし,かつ高オルニチン血症およびオルニチン尿の所見が追認された。本疾患に対する認識を広める目的で眼底写真とともに症例を提示した。

眼科手術学会

後房人工水晶体(Shearingレンズ)移植術に関する考察(予報)

著者: 馬嶋慶直 ,   野川秀利 ,   江崎淳次

ページ範囲:P.313 - P.317

(1) Shearing後房レンズ移植術は,近年白内障嚢外摘出術が殆んど完成され(例えばKPE法,計画的嚢外摘出術)たために,合目的な人工水晶体として期待のもてるものであろう。
(2)術後視力も良好で,挿入後の安定感も良く,短い観察期間ではあるが,特に視力に影響を及ぼす合併症はみられなかった。
(3)縮散瞳が自由で特に眼底の観察は容易であった。
(4)光学的にも挿入後の解剖学的な位置関係からみても,従来の眼内人工水晶体に比し長所も多いが,反面短所もあり今後更に考察を加えたい。

網膜剥離手術50例の経験とDetachment Operation Chart

著者: 窪野正 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.318 - P.323

 網膜剥離手術の訓練は良い指導医のもとに,適正な選択基準によって最適な症例を選んで行うべきである。さらに,Detachment Operation Chart等を活用し,図上手術を行って,術前に演習しておくことで,あらかじめ手術の進行に基づいて,正確な予測を行いうる能力を養う。こうすることにより,初学者においても,十分納得のいく手術成績が得られるものと考えられた。

白内障嚢内摘出術の改善—間欠的眼球指圧法,Dutch切開法および全層穿孔角強膜縫合法

著者: 竹内光彦

ページ範囲:P.324 - P.327

(1)間欠的眼球指圧法を7〜10分間用いることにより著明な硝子体脱出予防の方法として認められる。
(2) Dutch切開はsuperblade 30°を用いて輪部出血が少なく,前房内が注視しやすく短時間に輪部切開が行える。
(3) Vicryl 9-0を用いる全層穿孔角強膜縫合はデスメ膜レベルで確実な創口閉鎖が行える。

手術ノート

超音波白内障手術(K.P.E.)

著者: 宮田典男

ページ範囲:P.328 - P.329

 筆者は白内障手術の約80%をK.P.E.あるいは計画的嚢外法で行っているが,K.P.E.手術の問題点はいかに角膜内皮をいためずに,また後嚢を破らないように手術するかということにつきると思っている。角膜内皮をいためると修復不能のE.C.D.(Endothelial corneal dystro—phy)の原因ともなり,また後嚢をいためると硝子体脱出のみならず,水晶体核の硝子体内脱臼を生じ重篤な合併症となるからである。
 筆者が現在最も安全と思って行っている方法を以下述べることにする。

文庫の窓から

医的方

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.330 - P.331

 現行の医師法第24条(診療録の記載および保有)には『医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない』と定められているが,わが国の中世期においては医家はすべて診療録を作成しなければならないという法的定めが確立されていたわけではない。しかし診療に際して診療録的なものがそれなりにあったのではなかろうかと考えられる。その代表的1例として挙げられうるものに曲直瀬道三(玄朔)の記した「医学天正記」がある。
 「医学天正記」については矢数道明博士を初め先輩諸先生の研究・考証により衆知の通りであるが,これは曲直瀬道三(玄朔)が天正年間より慶長年間にかけて,いろいろな患者を実際に治療した際の記録で,病目およそ60余を挙げ,患者の名前,年令,病状および治療法等を記述したもので,慶長12年(1607)に著わされ,乾巻(上,下),坤巻より成る。

GROUP DISCUSSION

超音波

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.332 - P.335

1.Xenotec ULTRASCAN 500における使用経験について
 硝子体手術における超音波診断は近年著しい進歩がある。今回我々は,新しいXenotec ULTRASCAN 500を用いて,硝子体出血,網膜剥離眼内腫瘍等の眼内病変に超音波診断を施行したので,その使用経験を述べる。
 本装置は,(1)コンタクトタイプであるが,その解像力は水浸法に劣らないものであり,解像領域50°と広角である。(2) Ascan,B scanおよびその拡大画像に対応するscaleが,同時に同一画面に写し出される。(3)Ascanは,ベクトルAscanであり,Bscanを見ながらその目的物に対し正確にAscanを撮ることができ,QUANTITATIVE ECHOGRAPHYは,より正確におこなえる。(4) NEAR REJECTIONがあり,B scanにおいて,その目的とする所の解像画像が明確となり,写真撮影においても明瞭な撮影ができる。(5) A,Bscan以外にDscanがあり,これはBscanの濃淡にあたるところを振幅におきかえ165本のAscanの結集にてBscan様の画像を造り出し,立体的な感覚で超音波診断が行なえる。(6)角膜接触用のプローブを用いる事により簡単に,前房の深さ,水晶体の厚さ,眼軸の測定がデジタルに表示される。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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