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連載 眼科図譜・279
脳回転状網脈絡膜萎縮症
著者: 渡辺忍1 村上文代1 吉村睦雄1
所属機関: 1鹿児島大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.158 - P.159
文献購入ページに移動脳回転状網脈絡膜萎縮症(Gyrate atrophy of the cho—roid and retina,以下GACRと略す)はFuchs (1896年)により記載された古い疾患である1)。網脈絡膜ジストロフィーのうちの原発性脈絡膜萎縮のカテゴリーに所属し,進行性の夜盲および視野異常を主症状とし,特異的な検眼鏡的異常所見,すなわち脳回転(gyrus)をおもわせる形状の網脈絡膜萎縮病変をもたらすことで知られる。かようなGACRの臨床像はつとに確立されているが,その病因に関する知識はまったく皆無であった。ところが,最近になって体液成分の異常が明らかになった。すなわち,SimellとTakki (1973年)はGACR患者の血漿アミノ酸成分であるオルニチンが異常に増量することを発見した2)。この新しい知見は,まもなくいくつかの追認がなされ,さらに当該アミノ酸代謝に関係するオルニチン・アミノトランスフェラーゼが患者では欠損すること,またいくつかの関連代謝物質にも異常のあることが確認されつつある3〜6)。そしてこれらの知見を治療に応用しようとする試みもはじめられようとしている10〜11)。
GACRは稀な常染色体劣性遺伝子異常によりひきおこされ,その有病率もおそらく微々たるものと考えられるが,上述のような新しい知見の展開を考えるとき,注目しておいてよい疾患である。
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