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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻3号

1981年03月発行

雑誌目次

特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 学会原著

新生児集中治療室(N.I.C.U.)と未熟児網膜症

著者: 鬼頭錬次郎 ,   斎藤正彦

ページ範囲:P.351 - P.355

 未熟児網膜症の発生について生下時体重,在胎週数,無呼吸発作,輸血,単胎と双胎との関係を検定したところ,前四者に有意の関係があった。そして,それぞれの相関係数,その各々の相関係数の検定より生下時体重,無呼吸発作,在胎週数,輸血の順で網膜症の発生に関与することが示された。
 無呼吸発作の存在は綱膜症の発生に強く関与し,生下時体重,在胎週数と同等の関与度であった。これら4要因から予測される網膜症の発生は60%であって,なお40%は不明な要因によるものである。

黄斑部脈絡膜新生血管に関する臨床的研究(その2)—特発性新生血管黄斑症idiopathic neovascular maculopathyの長期観察

著者: 永田黄

ページ範囲:P.357 - P.365

(1)特発性新生血管黄斑症には,若年型と老人型という二つの中心概念があるが,何れの性格も兼ねそなえた中間型がある。
(2)特発性新生血管黄斑症は若年型は女性に多く,老人型は男性に多い傾向がみられる。
(3)老人型にも急激な出血により発症し,比較的予後の良い出血性色素上皮剥離型がある。
(4)特発性新生血管黄斑症の検眼鏡所見である滲出斑は若年型にはみられず,老人型の特徴の一つと考えらる。

網膜静脈分枝閉塞症における網膜血管床閉塞—その発生条件と経時的変化

著者: 竹田宗泰 ,   田辺裕子 ,   木村早百合

ページ範囲:P.367 - P.377

 網膜静脈分枝閉塞症218例235眼(239分枝)について螢光眼底造影を実施し,網膜血管床閉塞の発生条件およびその経時的変化を検討した。
(1)静脈分枝閉塞症における血管床閉塞状態(虚血型あるいは漏出型)は発症時に決定される。
(2)本症の血管床閉塞には動脈不全の一次的関与は考えられず,静脈の還流障害の程度に関係する。具体的には交叉部静脈分枝の閉墓程度が強く,かつその還流領域が広範なほど血管床閉塞が発生しやすい。
(3)血管床閉塞の過程は発病時網膜出血,浮腫の出現とともに丘細血管が閉塞し,その後末梢から病変部の細動脈,細静脈が長期にわたり進行性に閉塞することが多い。
(4)再疎通,網膜内血管新生は一般に静脈側から毛細血管レベルで発芽し,いずれも局所的に止まる。

網膜循環の研究—白線血管の臨床的検討

著者: 鈴木仁 ,   堀内二彦 ,   北川洋 ,   小林直樹 ,   富井純子 ,   常岡寛

ページ範囲:P.379 - P.390

 日常臨床上遭遇した網膜白線血管59症例について細隙灯眼底検査,螢光眼底検査などで詳細に観察し,次の結論を得た。
(1)網膜白線血管をその原因,臨床所見から先天性,視神経因性,血管閉塞性,血管炎性,網脈絡膜因性に分類した。
(2)網膜静脈分枝閉塞症にみられた白線静脈は,37眼中,34眼(92%)が,虚血型の網膜静脈分枝閉塞症に認められた。
(3)糖尿病性網膜症でみられた白線静脈は,網膜静脈分枝閉塞症のと同様なものか,または網膜循環障害末期に共通する周辺部網膜血管閉塞による白線血管であり,糖尿病性網膜症特有の白線血管はなかった。
(4)網膜動脈閉塞症の白線動脈は,その動脈が毛様動脈系からの側副血行路成立の有無により臨床像に相異がみられた。
(5)動物実験として,カニクイザルの網膜中心動脈閉塞症モデル,ラットの網膜静脈分枝閉塞症モデルを作製し,臨床上みられる白線血管について考按した。

中心性滲出性脈絡網膜症にみられる新生血管の特徴

著者: 渡辺千舟 ,   中西紀典 ,   丸山俊郎 ,   中山周介

ページ範囲:P.391 - P.397

 14歳から50歳までの中心性滲出性脈絡網膜症39例39眼(男16眼,女23眼)を対象として高速連続螢光撮影を施行し,その早期像から新生血管網の大きさ,起始血管層との関係について検討し,次の結果を得た。
(1)新生血管網の大きさは,1/3PD未満7眼(18.0%),1/3PD以上2/3PD未満21眼(53.8%),2/3 PD以上1PD未満9眼(23.1%),1PD以上2眼(5.1%)であった。すなわち2/3PD未満が28眼(71.8%)を占め,本症にみられる血管網は小さいものが多いことがわかった。
(2)新生血管の起始部は脈絡膜血管層のうち,脈絡膜動脈が9眼(23.1%),毛細血管前細動脈が24眼(61.5%),毛細血管板起源は6眼(15.4%)であった。この結果より,新生血管はどの層からも発生するが,毛細血管前細動脈が最も多いことが判明した。
(3)脈絡膜動脈,毛細血管前細動脈から起始する新生血管網の大きさは区々であるが,前者では2/3PD以上,後者では2/3PD以下が多く,脈絡膜毛細血管板からは2/3DP以上のものが認められなかったことから,起始血管と血管網の大きさとに関係があると推定された。

高血圧を伴った動脈硬化症,糖尿病性網膜症,網膜静脈閉塞症における脂質動態—とくにHDL-CHについて

著者: 石川隆 ,   樋渡正五

ページ範囲:P.399 - P.406

 高血圧を伴った動脈硬化症,網膜静脈閉塞症,糖尿病性網膜症,各群はコントロール群に比しHDL-C値,HDL-C/T-cholは共に有意に低下した(p<0.01)。
 糖尿病性網膜症をScott III期を中心に軽症,中等症,重症に分類すると各群でコントロール群に比しHDL-C値は有意に低下した(p<0.01)。また中等症・重症は軽症に比し明らかに低値を示す傾向を認めた。
 血糖コントロール別ではHDL-C値,HDL-C/T-cholはコントロール群に対し各群とも有意差をもって低下したが(p<0.01),good群とpoor群の両者に有意差は認めなかった。
 糖尿病のみの群においても,コントロール群に比しHDL-C値,HDL-C/T-cholは共に有意差をもって低下し(p<0.01),高血圧あるいは細動脈硬化を合併すると,さらに低下する傾向がみられた。
 コントロール良好の患者でも治療に抵抗して反復出血を来たす症例ではHDL-C値が著しく低値を継続した。
 以上よりHDL-C値の動態を見ることにより糖尿病性網膜症の発症,進展の指標とすることができ,臨床的に応用されうる価値があると示唆される。

網膜静脈閉塞症と血清脂質

著者: 吉田秀人 ,   坂田広志

ページ範囲:P.407 - P.411

 網膜静脈閉塞症22例(中心閉塞4例,分枝閉塞18例)を対象とし,脂質化学的分析ならびにLpの電気泳動を実施して,次の結果が得られた。
(1)高脂血症の頻度は,22例中6例(27.3%)であった。
(2)動脈硬化性血管病変の進展に深く関与しているといわれているHDLコレステロール,あるいはαLpの低下は稀であった。
(3) midband Lpを22例中19例(86.4%)と高頻度に認めたが,その意義については不明であった。

網膜静脈分枝閉塞症のレーザー光凝固

著者: 矢部京子

ページ範囲:P.413 - P.418

(1)分枝閉塞症に対するアルゴンレーザー光凝固は新鮮例に対して,黄斑部の出血,浮腫の早期吸収(22例中21例)をはかることができた。
(2)陳旧例では,新生血管増殖,硝子体出血の予防に有効と思われた(10例中7例)。
(3)乳頭上新生血管に対して無血管帯のみを凝固しても滅少がみられない症例に限局性pan retinal photocoagulationを行い,消失がみられた症例があった。
(4)硝子体に変化を伴う症例(3例)に過剰な光凝固を行い,硝子体出血,牽引性網膜剥離を起こした例(3例)があった。

網膜疾患のFoveal Flicker Sensitivity Function

著者: 萱沢文男 ,   山本敏雄 ,   糸井素一

ページ範囲:P.419 - P.425

 視覚系の時間周波数特性(Foveal Flicker Sensitivity Function:以下FFSFと略す)を光学的手法を用い綱膜疾患患者106名を対象として測定し下記の結果を得た。
(1)網膜疾患患者の異常FFSFは,正常眼において平均網膜照度を変化させて測定した結果と類似し,その特徴的パターンよりA)高周波低下型,B)高・中間周波低下型,C)全周波低下型の3型に分類された。
(2)多くの症例では,中心視力とFFSFは相関を示したが,視力良好な中心性網膜炎,原田病・裂孔原性網膜剥離復位後,網膜静脈分枝閉塞症光凝固術後などでは,両者の解離がみられた。
(3)中心フリッカー値は,高周波低下型では,FFSFの異常パターンとよく相関するが,高・中間周波低下型,全周波低下型では,中心フリッカー値よりFFSFの図形を推定するのは,困難であると思われた。
 以上よりFFSFは,従来の視機能検査と共に黄斑部機能を評価する方法として有用であると考えられた。

重症糖尿病性網膜症に対する冷凍凝固療法—(2)特にその長期観察結果

著者: 大槻潔 ,   山口千鶴

ページ範囲:P.427 - P.434

 光凝固の不可能であった重症糖尿病性網膜症67例91眼に対して,冷凍凝固療法を行った。63眼に光凝固術,硝子体切除術等の追加治療が必要であったが,術後視力の改善例は48眼(53%),不変26眼(28%),悪化17眼(19%)であった。このうち2年以上経過の観察できた症例は28例38眼で,術後視力の改善例は23眼(61%),不変7眼(18%),悪化8眼(21%)であった。以上の結果から,冷凍凝固の効果は,長期にわたって期待しうるものと思われた。
 視力悪化の原因は,虹彩新生血管,牽引性網膜剥離の増強,硝子体出血の再発等が単独あるいは,これらのいくつかが合併して関与していた。

糖尿病における対光反応の分析(第2報)

著者: 難波健 ,   内海隆 ,   三宅直子 ,   菅澤淳 ,   橋本忠男 ,   北澤明人

ページ範囲:P.439 - P.443

 糖尿病患者53名(106眼)を対象にopen-loop下光刺激による対光反応を測定してみたところ,次のような結論を得た。
(1)網膜症進行と対光反応異常との間には有意な関連性を認め,網膜症に先行してcholinergicになり,網膜症が進行すればその傾向がより一層顕著になっていくことがわかった。このことから,網膜症の発生と進行を予知するために対光反応が臨床的に重要なパラメーターであることがわかった。
(2)潜伏時間は網膜症の全期間を通じて正常で,散発的にScott-II aの1例においてのみ軽度延長していた。
(3)糖尿病における自律神経系のバランスは,副交感神経系が刺激された状態(choli—nergic)にあることがわかった。

糖尿病性網膜症による黄斑部病変の診断方法についての検討

著者: 別所建夫 ,   西川憲清 ,   中川成則 ,   松田司 ,   福田全克

ページ範囲:P.445 - P.449

 中間透光体に混濁を認めない糖尿病性網膜症眼を対象に,矯正視力,レーザー干渉縞視力,Blue Field Entopic (以下BFEと略) test,中心CFFと黄斑部所見,黄斑周囲螢光漏出所見・汎網膜光凝固に対する効果との関連性を検討し,次の結果を得た。
(1) BFE値は黄斑部浮腫の検出に有効である。
 a.黄斑部障害,螢光漏出群に対し,異常検出率が高い。
 b.他の検査成績より早期に低下し,低下幅が大きい。
 c.洞網膜光凝固の適応限界値が低い。
(2)矯正視力はBFE値に次いで信頼できる。
(3)レーザー干渉縞視力は矯正視力との間に矛盾した成績を示す症例が存在する。
(4)中心CFF値は黄斑浮腫の検出手段として有効でない。
 以上の結果より,網膜浮腫の発生・増悪を診断する手段として,BFE test,矯正視力が有効な検査力法であると考える。

糖尿病性網膜症:視神経乳頭からの新生血管形成と網膜微細血管網閉塞との関係

著者: 田村正 ,   岡田むね子 ,   藤掛福美

ページ範囲:P.451 - P.455

 増殖型糖尿病性網膜症において,網膜微小血管網のnonperfused areaを定量的に検討し,その数値と視神経乳頭からの新生血管発生との関係を調べ,次の結果を得た。
(1)視神経乳頭を中心に半径6PDの範囲でnonperfused areaの占める割合が60%を越える眼では,視神経乳頭から新生血管が発生する可能性が大きい。
(2)若年型糖尿病患者の一部では,例外的にnonperfused areaが未発達のうちに,視神経乳頭から新生血管が発生する。
(3)以上の結果から,nonperfused areaの発達は,視神経乳頭からの新生血管発生に結びつく重要な因子であるが,それ以外の何らかの発生因子も存在しうる。

増殖性糖尿病性網膜症の初期像と発症機作

著者: 北川道隆 ,   村岡兼光 ,   蓮沼敏行 ,   仁木高志 ,   小林義治

ページ範囲:P.457 - P.470

 乳頭あるいは網膜に1/2乳頭径以下の新生血管を有する糖尿病性網膜症50例59眼を対象に,増殖性網膜症の初期像,発症機作,網膜症の進行速度につき検索した。
 検索方法として広範囲パノラマ螢光造影を用い,各症例の眼底を乳頭を中心に放射状に32等分,同心円状に1乳頭径ずつ等分し,その各区域単位毎に血管の拡張および透過性亢進をその程度により0,1,2の3段階に分けデジタル表示した。さらに各例毎に乳頭縁より鼻側では3乳頭径,耳側では4乳頭径の範囲内の112の区域単位における血管の拡張ならびに透過性亢進の程度の各合計点数を求め,それを全例で度数分布に示した。
 初期の増殖性網膜症には,RPCを含む後極部に血管拡張・透過性亢進の強いtypeと弱いtypeがあった。合計点数40〜50を境として,それより強い群27眼と弱い群32眼に分け両者を比較検索した。拡張・透過性亢進の強い群では,一つ一つの血管床閉塞は比較的小さいのに対し,弱い群では中間周辺部を中心に血管床閉塞域は広範囲であった。また光凝固をせずに経過を追えた26眼で,両群の網膜症の進行速度を比較した。拡張・透過性亢進の強い群14眼中10眼(71%)では,明らかな血管床閉塞の拡大があり,新生血管の増大も8眼(57%)に観察された。なかでも特にRPC領域に拡張・透過性亢進の強い例で高度であった。一方,弱い群12眼では,血管床閉塞の拡大や新生血管の増大はほとんどみられなかった。

光凝固療法無効の糖尿病性網膜症に関する検討

著者: 福田雅俊 ,   山田義一 ,   月本伸子 ,   雨宮禎子 ,   本田正志

ページ範囲:P.471 - P.476

 全身管理の的確な70例(103眼)の増殖型網膜症に対する選択的光凝固の効果と,それに相関する眼底所見を統計的に検討し,さらにそのうち無効と判定された19眼にその後経験された光凝固無効例19眼を加えた38眼につき光凝固無効眼に共通の眼底所見を調査し次の結論を得た。
(1)選択的光凝固のみでも82%(不変29%を含む)の治療効果が得られた。
(2)乳頭に連らなる新生血管ならびに乳頭浮腫を伴う網膜症は,選択的光凝固では有意に無効となるものが多い。
(3)汎網膜光凝固を加えた光凝固療法でも無効となった症例には上記の所見を持つものが多い。
(4)網膜の広範な浮腫と静脈系の著しい拡張も,その前駆所見として警戒すべきである。
 したがって(2)(4)の所見を持つ網膜症には,早期より汎網膜光凝固を実施すべきであるが,他のものは選択的凝固のみでも十分な効果が期待できると推論した。

連載 眼科図譜・280

von Recklinghausen病を合併した"Cherry-red spot"の1例

著者: 津田尚幸 ,   秋山和人 ,   高久功 ,   小川昭之 ,   鈴木義之

ページ範囲:P.348 - P.349

 cherry-red spotを呈するlipidosisとしては,GM,—gangliosidosis I型,III型,mucoli—pidosisI型,GM2—gangliosidosis I型(Tay-Sachs), II型(Sandohoff),Nicmann-Rick病,cherry-red spot-myoclonus syndrome等が考えられている1)
 臨床症状は,間代性痙攣,ガーゴイル様顔貌,知能低下,錐体路障害,肝脾腫等の様々な症状を呈する。

臨床報告

眼底所見表記法の詳解

著者: 原一

ページ範囲:P.478 - P.482

 眼底病変を詳しく記録する場合,病変をいちいち文字で記入するよりも,一定のルールの下に整理して病変を記録すると便利である。一定のルールとは6種類の色と数種の図形の組み合わせで眼底所見を表現することであった。眼底所見記録法には外来カルテと眼底記録川紙に記録する2種類の方法があることを述べた。眠底所見を一定のルールの下に記録する方法は取り扱う疾患によっても異なる。ここでは眼底全体の病変に用いる眼底表記法についてSchepensらが使用しているものを整理して述べた。

調節性内斜視に合併した周期性内斜視の2症例について

著者: 鴨下泉 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.483 - P.487

 調節性内斜視に合併した周期性内斜視の2症例について報告した。これらの症例は調節性内斜視の眼鏡装用後の経過観察において,斜視角の増加がみられ,部分的調節性内斜視の状態となり手術の目的で入院させ,術前の検査中に周期性を発見し,手術により周期性は消失し定型的調節性内斜視の状態に復帰した。

網膜中心動脈閉塞症を合併した前頭洞膿嚢腫の1例

著者: 向野妙子 ,   高木郁江 ,   本村一彦

ページ範囲:P.488 - P.490

 網膜中心動脈閉塞症を合併して失明した前頭洞膿瘤の症例を報告し,動脈閉塞の発生機序について考察を行った。

人工眼内レンズの成績—第5報嚢腫状黄斑浮腫について

著者: 三木正毅 ,   林倫子 ,   近藤武久

ページ範囲:P.491 - P.495

 水晶体嚢内摘出術による人工眼内レンズ挿入術を行なった患者につき,螢光限底撮影にてCMEの発生状況を調査し,視力予後,発生要因について検討を加えた。
(1) CMEの発生頻度は術後8ヵ月までが多い。
(2)発生年齢は60歳,70歳台に多く,高齢者の方が多い傾向が見られた。
(3)長期間CMEが存続する例がある。
(4) CMEの発生率は人工眼内レンズ挿入(31%),非挿入(35%)で差は認めない。
(5) CME発生例の視力予後は,CMEを認めない例と差はなく良好である。
(6)前眼部炎症の強い例すなわち前眼部螢光撮影で漏出の著明な例にCMEの発生率が高い。
(7)前眼部の炎症がtriggerとなりCMEが発生すると推測する。

手術ノート

眼内レンズ手術

著者: 林文彦

ページ範囲:P.498 - P.499

 ここ2年来使用してきたShearing後房レンズは従来のBinkhorst型虹彩支持レンズと比べて挿入手技の容易なことや合併症が少ないことなどにおいて幾多の優れた点がみられる。
 後房レンズはPearce型とShearing型に大別されるが,後者の方が挿入術式やレンズのセンタリングなどについて有利と思われる。

文庫の窓から

眼目精要,眼科医療手引草と医療羅合(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.500 - P.501

 杏林庵医生(日本人?)によって編述された眼科専門書,「眼目明鑑」(眼目明鑑,4巻,眼目明鑑薬名修治能毒,巻上,下)が刊行されたのは元禄2年(1689)孟春,(四条坊門通東洞院東江入町,水田甚左衛門開板)であり,これが日本で最初に刊行された眼科書であるということは周知の通りである。「眼目明鑑」はその後,富士山が噴火した年,宝永4年(1707),江戸日本橋南1町目,出雲寺和泉掾出店より「改正眼目明鑑」として開板された。
 この宝永4年版「改正眼目明鑑」がでてから約19年後の享保11年(1726)10月,藤井㠯求子見隆纂,長岡恭斎丹堂校正に係る「眼目精要」が,四条通寺町西江入町,めと木屋勘兵衛により刊行された。

眼科手術学会

Massive Periretinal Proliferationの手術経験

著者: 大島健司 ,   西村宜倫 ,   近沢健一 ,   荒川陽子 ,   三根茂 ,   橋本芳昭 ,   中間宣博 ,   緒方質 ,   世戸憲男 ,   西村葉子 ,   林英之 ,   大平明弘

ページ範囲:P.503 - P.508

 Massine periretinal proliferation (M.P.P.)の14例に対し, vitrectomy, membranepeeling, gas temponade, encirclingを行い,術後6ヵ月以上の経過観察を行った結果11例(79%)に網膜の復位が得られた。
 M.P.P.の他の手術力法,特にシリコン油注入法との比較を行ない,今後,M.P.P.の手術において望まれる諸点についてのべた。

GROUP DISCUSSION

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.509 - P.513

 昭和55年度のグループ・ディスカッションは総会長真鍋礼三先生のご配慮で全グループがすべて希望通り9月26日同一地区で開催できた。当グループも第二教室で午後1時半から4時45分まで15分間の延長にもかかわらず,2題発表できずに14題を消化して終了した。当日は生憎の雨天でありながら,会場の良さと,阪大関係諸子のご協力による運営の良さとで,180名定員の教室は終始満員で,入口で名前を記帳された方だけでも259名を数え,大変な盛況で,討論も活発に交された。演題は機能学的なアプローチによるもの4題。螢光眼底,ドップラー血流検在などによる眼底所見の解析5題。血清リボ蛋白,HbA1,,糖分解酵素活性など全身的因子との相関4題,各種治療法と,それからみた網膜症の病態3題の都合16題で,総会に出して討論して欲しいような発表も少なからず,まだまだ今後も話題は増加の一途をたどるものと推定された。例によって紙数制限のため,折角の質疑応答が収録できず残念であるが,以下各演者の提出した抄録を連記して,本会の報告としたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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