特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (その6)
学会原著
特異な慢性多発性神経炎,膜性増殖性糸球体腎炎の経過中に認められた網脈絡膜症の2症例
著者:
本村幸子1
能勢晴美1
河野恵子2
尾崎行雄2
所属機関:
1筑波大学臨床医学系眼科
2筑波大学附属病院
ページ範囲:P.975 - P.986
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色素異常・剛毛・浮腫・免疫グロブリン異常などを伴う慢性多発性神経炎で,しかも膜性増殖性糸球体腎炎を伴う2症例の経過中に,続発性網膜剥離を伴う眼底後極部に比較的限局する特異な網脈絡膜症の発症を経験した。この網脈絡膜症は症例1では両眼に,症例2では片眼に認められ,その臨床像の特微から,様々な呼称はあるもののGassのいう胞状網膜剥離と診断しうるものであった。この2症例に認められた新しい症候群はなんらかの免疫グロブリン異常が存在し,それが全身の多彩な症状の発現に深く関係していること,更にこの2症例では免疫病理学的疾患の一つである膜性増殖性糸球体腎炎を伴っていることから,なんらかの免疫異常が眼底病変の発症にも深く関係していること,その障害部位は色素上皮細胞—Bruch膜—脈絡膜毛細血管板のレベルであること,また色素上皮細胞の強い障害を認めることから体液性組織障害因子の存在も推定しうることを述べた。
この新しい症候群に網脈絡膜症を伴った症例はまだ内外で報告されておらず,本症例が最初のものであることを,また最近眼科医に注目されているこの特異な網脈絡膜症で全身所見を伴うものは本症例が最初のものである。