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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻7号

1981年07月発行

雑誌目次

特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (その7) 学会原著

大脳損傷に起因する色覚異常

著者: 中塚和夫 ,   藤井薫

ページ範囲:P.1089 - P.1094

 大脳の後方部位の損傷で,後天性色覚異常を生じた3症例を報告した。病因は2例が血管障害,1例が外傷である。
 これらの症例の臨床的特徴は,次のようなものであった。色覚異常の発生を自覚している(3/3)。異常が仮性同色表で検出される(3/3)。異常分類で第一異常とされる(2/3)。異常の程度が原疾患の回復,進行とともに変わりやすい(3/3)。視力は比較的良好で左右差はない(3/3)。左同名性半盲を伴う(2/3)。相貌失認を伴う(3/3)。
 大脳性色覚異常の責任病巣は,文献的には,両側の後頭葉下方部と推定されているが,われわれの症例では,CT,脳シンチグラム,脳波,視野で,右半球に共通した責任病巣の所見を呈した。したがって,右半球が色覚異常の発生に主導的役割を果たしていると思われた。

学術展示

虹彩平滑筋腫の1例

著者: 井街譲 ,   古林晴臣 ,   曾谷尚之 ,   加藤博俊

ページ範囲:P.1095 - P.1100

 ブドウ膜炎で初発し,続いて右眼にもブドウ膜炎が発症し,その経過中に左眼平滑筋腫が発見された1例を報告し,その手術所見,病理組織学的所見について考按した。
 虹彩の平滑筋腫は,光顕像のみでは,neurofibroma, amelanotic malignant melanoma,やschwannoma等と鑑別することが困難で,その鑑別診断には電顕による検索が必要である。
 虹彩平滑筋腫は臨床的に他の虹彩悪性腫瘍と鑑別できないため,腫瘍の部位,大きさ,浸潤状態を十分に検査した上で,適当な術式を選択すべきである。

高度の硝子体出血をみた全身性硬化症の1例

著者: 本多繁昭 ,   高久功

ページ範囲:P.1101 - P.1105

 進行性汎発性強皮症(PSS)の50歳女性の右眼に広範囲の出血性網膜色素上皮剥離につづき,高度な硝子体出血をおこした。左眼底にも広い範囲に種々の形をした大小の脱色素斑が認められ,螢光撮影で網脈絡膜間のbarrierの障害と考えられた。右眼のHDPEは結果的にはchoroidal neovascularigationより出血したものと思われたが,その前段階においてPSS固有の変化の進行が脈絡膜またはBruch膜にあり,それがchoroidもしくはBruch膜のruptureに大きく影響したのではないかと推察した。
 ウイルソン病の治療薬であるD-penicillamineは血管の脆弱化作用があり,今後眼科医も投与例の眼底検査にあたって注意が必要と思われる。

完全摘出に成功した虹彩毛様体良性腫瘍の2症例

著者: 石郷岡均 ,   池田定嗣 ,   永田誠 ,   小橋陽一郎 ,   山辺博彦 ,   深尾隆三

ページ範囲:P.1107 - P.1113

 2例の虹彩毛様体腫瘍に対し,前眼部螢光撮影を施行し検討を加え,臨床的に1例は悪性腫瘍,他例は良性腫瘍と思われた。
 2例とも腫瘍摘出術を施行,その手技の詳細を述べた。更に病理組織学的に2例とも良性腫瘍との診断を得た。臨床的に悪性腫瘍が疑われても、眼球摘出する前に腫瘍摘出術を検討する必要があると考える。

Pontine動静脈奇形(AVM)により左外転神経麻痺と左橋網様体傍正中帯(PPRF)障害を示した1症例

著者: 照林宏文

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 急性発症で,左顔面神経麻痺,左外転神経麻痺,左側方注視麻痺(左PPRF障害)を生じ,CT・血管撮影・気脳写にて橋動静脈奇形と診断がついた26歳・女性の非常にめずらしい症例を経験した。
 症候より解析した神経学的責任病巣が,CTにて明確に示された(図6)。

Neovascular maculopathyにおける脈絡膜新生血管像の臨床的研究

著者: 出口強 ,   石川清

ページ範囲:P.1119 - P.1131

 特別な原因の判明していないneovascular maculopathy (N.M.)の症例につき,50歳を境とし,若年例20例20眼,老人性26例29眼につき螢光眼底造影所見を中心に検討し次の結果を得た。
 N.M.活動期病巣における脈絡膜新生血管像について次の3型に分類を試みた。①毛細血管型……a) loop pattern, b) plexus pattern, c) irregular pattern,②紐状血管型,③出血性網膜色素上皮剥離型。
 老人例N.M.と若年例N.M.では,脈絡膜新生血管像の分類に相違があることが判明した。若年例N.M.では,60%がloop patternを,40%がplcxus patternを示し,老人例N.M.では44.8%がirrcgular patternを,34.5%が出血性網膜色素上皮剥離型を示した。
 8カ月から3年(平均1年10カ月)経過観察できた若年例NM.13眼では,6眼(46.2%)は,脈絡膜新生血管の退縮により良好な視力を得,一方6眼(46.2%)は,脈絡膜新生血管の拡大,病巣の遷延により視力不良であった。前者の活動期の新生血管像はlooppatternを呈しており後者はplexus patternを呈していた。この知見は,若年例N.M.の臨床上,重要な知見と考えた。
 若年例N.M.20例中7例(35%)の後極部に2例(10%)に乳頭辺縁に類円形の網脈絡膜病巣を認めた。

最近経験した眼トキソプラズマ症の2例

著者: 村上順子 ,   坂上英 ,   樺沢泉 ,   園延美記

ページ範囲:P.1132 - P.1138

 眼トキソプラズマ症は,網脈絡膜炎の中でも決して稀なものではないが,発症早期に的確に診断することは必しも容易ではない。またその病巣部位は、後極部から赤道部にかけて存在するのが最も一般的とされており,診断に際しては,眼底所見が最も重要であり,ついで血清学的診断が有用とされている。
 最近われわれは,その眼底所見より,特に新鮮と思われる2症例を経験した。いずれの症例に対しても,アセチルスピラマイシンおよびステロイド剤の経口投与を行い,良好な結果をうることができた。
 これら2例の眼トキソプラズマ症について診断,治療および臨床経過を報告し,他の知見例を含めて考察を加えたい。

Behçet病眼内肉芽形成と網膜色素上皮病変

著者: 岸章治 ,   米谷新 ,   大西直人 ,   堀内知光

ページ範囲:P.1139 - P.1148

 Behçet病の眼内炎の結果,絶対緑内障に至った5眼を組織学的に検討し,次の結論を得た。
(1)眼内に形成された肉芽組織はぶどう膜由来であり,色素上皮の破壊されたvitreousbaseおよび色素上皮の生理的欠損部である虹彩前面と隅角から発生する。
(2)色素上皮はfibroblastの侵入に対するbarrierとなっている。色素上皮が連続性を有する後極部ではfibroblastは色素上皮直下で留まりそれを越えない。
(3)色素上皮はリンパ球,好中球,macrophage等,遊走細胞の通過を自由に許すことが観察された。この事実は色素上皮が連続していても滲出性炎がおこりうることを示唆する。
(4)色素上皮の欠落はfibroblastを含む肉芽組織の侵入を許し,眼内肉芽化(増殖性炎)への契機となる。vitreous baseで特にこの傾向が強い。
(5)色素上皮は肉芽組織(fibrovascular tissue)の発生母体である間葉系組織(ぶどう膜)をおおう上皮であり,Behçet病末期眼特有の硝手体肉芽化には,以上論述した上皮としての性質が重要な契機として関与することが推論される。

von Recklinghausen病を合併した18歳女性の"cherry-red spot"の1例—α—neuraminidase,β—galactosidase欠損症

著者: 津田尚幸 ,   秋山和人 ,   高久功 ,   小川昭之 ,   鈴木義之

ページ範囲:P.1149 - P.1155

 典型的なcherry-red spotを認めた18歳女性で,軽度の角膜混濁,錐体路障害,失調性歩行,ミオクローヌス発作などを主徴とし,さらにR病を合併したmucolipidosis症例に生化学的分析を行った結果,白血球,培養皮膚線維芽細胞のβ—galactosidase,α—neuraminidaseの特異的欠損が判明したので文献的考察を加えてここに報告した。

General fibrosis syndromeの1家系

著者: 武田啓治 ,   守田潔 ,   今井済夫

ページ範囲:P.1156 - P.1158

 general fibrosis syndromeの1家系について報告した。
 親子2代のうち,父親と同胞2名(姉,弟)中2名に本症候群が出現し,常染色体優性遺伝と考えられる。そのうちの1例に下直筋切腱,上直筋短縮術を行い満足すべき眼位をえた。
 4直筋の生検を行った結果,筋肉の変性,萎縮,結合織の増生および軽いfibrosisがみられた。また筋肉により障害の程度に差がみられた。

特異な眼底を呈したTurner症候群の1症例について

著者: 馬場敏生 ,   大串節子 ,   栃久保哲男

ページ範囲:P.1163 - P.1169

 白内障手術を施行したTurner症候群の1症例において眼科的異常を精細に検討し,眼位,視野,暗順応,ERGの異常を認め、特に,網膜において,網膜周辺部全体にわたり,後極部を中心として,びまん性光輝小円点状白斑を輪状に認め,螢光眼底造影により,同白斑にほぼ一致して微小螢光が多数出現し,一部螢光の漏出像を認めた。
 この網膜変化は白点状網膜炎と推定し,Turner症候群の眼異常の一つとして,白点状網膜炎を加えた。

慢性左側内頸動脈閉塞の1例

著者: 小島道夫

ページ範囲:P.1171 - P.1177

 59歳の男性が右下肢の脱力感,左浅側頭動脈の怒張,搏動と疼痛と左眼視力低下を初発症状とし,右側同名半盲,左眼虚血性網膜症および視神経症を発見され,以後順次左散瞳,左眼網膜中心動脈の自発搏動,虹彩rubeosis,網膜血管の血行途絶と網脈絡膜変性を起した。
 当初Urokinase点滴とsteroid内服により視力,視野と亢進していた血沈値の改善が見られたが,3カ月後の失明発作以後ほとんど回復を示さなかった。左眼の螢光眼底撮影で当初の腕・綱膜時間20秒,網膜循環時間26秒が3カ月後にはそれぞれ26秒と154秒に遅延していた。左眼の網膜中心動脈血圧は測定不能な程低かった。左側頸動脈写で内頸動脈始部の完全閉塞と外頸動脈から眼動脈への副血行路が認められ,右側頸動脈写では右内頸動脈に狭窄または閉塞はなく,前交通動脈を経て左側の前大脳動脈と中大脳動脈が十分に太く造影されたが,しかし網膜中心動脈閉塞が血管炎様な機転により起り,失明したと考える。

黄斑円孔を伴う網膜剥離の手術法の改良と視力予後について

著者: 安藤文隆

ページ範囲:P.1179 - P.1183

 黄斑円孔を伴う網膜剥離の,黄斑プロンベを用いる手術法を一部改良した。その結果,手術成績が向上し,術後の視力もよいものが多くなった。主な改良点は,
(1)4-0 Supramid糸あるいはDacron糸を,上・下斜筋腱付着部間強膜に,角膜輪部より等距離に幅7mmでZ字通糸する。
(2)黄斑プロソベの挿入路を、双眼倒像検眼鏡にて観察しながら,直視下で確実に作る。
(3)網膜下液を除去後あるいは,網膜剥離が後部葡萄腫の範囲に限局している場合には前房水を少し漏らし,限圧を低下させてからプロンベを挿入,縫合糸をしめて固定する。プロンベ後端の縫合固定は不要である。
(4)プロンベ先端のbuckling部位置の左右への移動は,プロンベを軽く振ることにより可能である。
(5)ジアテルミー凝固,冷凍凝固はもとより,光凝固も不要である。

網膜下液の生化学的研究—1.Uveal effusionの網膜および脈絡膜下液

著者: 佐藤佐内 ,   大久彰 ,   菅原正容

ページ範囲:P.1185 - P.1187

 Uveal effusionの1症例より得られた網膜下液に対し,ゲル炉過および電気泳動を行い,次の結果を得た。
(1)肉眼的には淡黄色で粘度が高い。
(2)蛋白濃度が高い(8.2g/dl)。
(3)蛋白成分の大部分はalbuminであった。

連載 眼科図譜・284

ハンセン病の眼病変—II.虹彩

著者: 藤田晋吾 ,   吉村睦雄 ,   大庭紀雄

ページ範囲:P.1086 - P.1087

 ハンセン病(らい病)は,眼のいろいろな部分に病変をおこす。前報(臨眼35:898—899)で外眼部と角膜病変にふれた。ここでは,虹彩毛様体病変を紹介する。虹彩毛様体炎は,ハンセン病の眼病変中もっともしばしばみられる。著者らの690例の観察では75.5%にみられた。
 虹彩毛様体炎は,ハンセン病の発病初期からおこるが,最初は自覚症状にとぼしい。すなわち,虹彩は一見正常であり,少量の前房微塵,水晶体表面の色素沈着,瞳孔光線反応の遅鈍などをみる。炎症はきわめて慢性につづくため,しだいに異常所見が明らかとなる。毛様充血は軽く,前房には細かな微塵が浮遊し,角膜裏面に露滴状もしくは細かな点状沈着物をみる。瞳孔はしばしば棒針頭大に縮小し,光線反応の欠如,瞳孔薬に対する反応の欠如が特徴的にみられる。虹彩色素が一度に大量に脱落して前房蓄膿の観をみることもある(図1,2)。経過とともに,虹彩の紋理や光沢はしだいに失われる。虹彩の表面,とくに瞳孔縁の近くで,粟粒大もしくは稗粒大のらい腫(iris pearls)の出現をみることもある(図3)。数年〜数十年が経過すると,虹彩萎縮はきわめていちじるしくなり,偽多瞳孔(pseudopolycoria),蝶の羽形状,車軸状の孔形成による独特の瞳孔がみられる(図4,5,6,7)。虹彩前癒着,虹彩後癒着,併発白内障も生じる。

臨床報告

眼球内悪性黒色腫の1例—診断上の問題点

著者: 大西裕子 ,   金子行子 ,   金子明博 ,   広田映五 ,   板橋正幸

ページ範囲:P.1189 - P.1195

 右眼霧視を主訴とした55歳男性に硝子体混濁を認め眼底透見不可能の症例に対し動的超音波断層検査を行った。この検査により,耳側毛様体より脈絡膜にかけて存在するsolid massを短時間で検出できた。透光検査32P, uptake testなどの総合的診断より脈絡膜悪性黒色腫と診断し,眼球摘出を施行した。病理組織学的に眼球外に浸潤のないmixed typeの悪性黒色腫と診断した。

先天性網膜分離症—不完全型およびCoats病の合併

著者: 金井清和 ,   宇山昌延 ,   近江栄美子

ページ範囲:P.1197 - P.1201

 伴性劣性遺伝型式を示す先天性網膜分離症の1家系,2症例,4眼を経験した。2例とも男性で母方の叔父と甥であった。
(1)黄斑部には典型的な車軸状の類嚢胞変性が3眼にみられた。(2)赤道部網膜にドーム状の典型的な網膜分離症が1眼にみられた。(3)典型的な網膜分離症でなく、耳下側赤道部に広い範囲に網脈絡膜の変性,萎縮が2眼にみられた。このような所見も先天性網膜分離症の不完全型として診断上重視されるべきである。(4)1眼にはCoats病が発生していた。このCoats病眼底は本症と関連して発生したものと思われ,網膜分離症とCoats病の合併は今後注目すべきであると思われる。(5)女性保因者と思われる2人の親族には眼底に何ら異常をみとめなかった。

眼鏡およびコンタクトレンズ矯正の空間周波数特性(MTF)による評価

著者: 河原哲夫 ,   横田英嗣 ,   佐藤薫 ,   尾羽沢大

ページ範囲:P.1203 - P.1209

 弱度および中等度の屈折異常眼(近視眼)に対し,各種のコンタクトレンズ(標準ハード,薄型ハード,ソフト)および眼鏡レンズによって屈折矯正した状態で,視覚系のMTFを測定した。さらに眼鏡装用では,レンズの光学中心を通して見た状態および眼球の回転による側方視(光学中心以外を通して見た状態)でのMTF測定を行った。その結果,各種コンタクトレンズによる矯正では眼鏡レンズの光学中心に比べ,ともに高空間周波数域でmodulation閾値が上昇(感度が低下)した。なお,この上昇量(感度の低下量)は眼鏡レンズでその光学中心から10mm程度偏位した部位を通して見た状態にほぼ一致し,通常の視覚状態ではほとんど影響のない量と考えられる。さらに,これらの差異は視力検査では検出されず,屈折矯正の精密な判断にはMTF測定が重要かつ有益と考えられる。またソフトコンクタトレンズでは,長期の装用によってその光学性能の低下することが予想された。さらに無水晶体眼の眼鏡による矯正では、コンタクトレンズに比べて特に側方視の状態で光学性能が著しく低下し,コンタクトレンズによる矯正の有効な点が確認された。

試作「追跡視野計」による緑内障の研究

著者: 東郁郎 ,   徳岡覚 ,   吉永健一

ページ範囲:P.1210 - P.1217

 中心および傍中心の5定点において,静的視野を測定する装置を考案作成し,「追跡視野計」と命名した。本視野計は精密視野測定を目的としたものではなく,中心部の視感度を迅速・簡便に,測定できるよう,定速で増大する視標輝度を視認する時間を自動的に測定する装置である。
 正常人および高眼圧症,原発開放隅角緑内障を対象に測定した結果,正常人と原発開放隅角緑内障との間には,各5測定点において視認時間に有意の差をみいだした。

手術ノ—ト

網膜剥離(プロンベ縫着術)

著者: 清水昊幸 ,   窪野正

ページ範囲:P.1218 - P.1219

 プロンベ縫着術は,Custodis-Lincoff法として,材料にSilicone Sponge rodを用い,網膜下液の排出を行わず,裂孔閉鎖に冷凍凝固法を使うradial bucklingが広く行われている1)。このradial bucklingの特徴を活かしつつ,材料にSolid Silicone rodを用い,網膜下液の排出を行い,裂孔閉鎖には光凝固法を使う方法がmeyer-Schwickerathにより導入されたが2),われわれもこの方法に依拠した手術をもっばら行っている。適応症例としてわれわれは,鼻側あるいは深部裂孔を有する網膜剥離を対象に選んでいる。
 次に,手術の実際を説明しよう。まず,われわれは局所麻酔下で手術を行うため,疼痛を少なくし,術野を拡げる目的で,裂孔に近い直筋を1本だけ外す。Detachment chartおよびDetachment operating chart (窪野)3)により定めた裂孔位置を,強膜上で正確に決め,その部分に裂孔の大きさに応じたプロンベを1本,裂孔が非常に大きい場合は2本,radial方向に縫着する。図1で示した固定糸は,3-0あるいは4-0絹糸を用い,深さは強膜の1/2から3/4層の深さに通し,マットレス縫合の要領で前置する。次に,図2の様に直径5mmのSolid Silicone rodを前置糸の間にはさみ,軽く締める。

文庫の窓から

格致餘論(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1220 - P.1221

 本書はこの様にわが国安土桃山時代における李朱医学の先鋒をなしたものであり,その流布本も数種をかぞえ,また,難解な哲学的医論のため,本書の砂本や諺解書等もいろいろあり,江戸時代に至って諸版が出された。
 現存するそれら主なものを挙げると,まず「格致餘論」の慶長から寛永年間にわたる,いわゆる古活字版無刊記本4種,(図書寮蔵1種,安田文庫蔵3種)を始め,以下のものがある。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1222 - P.1225

1.除去困難な睫毛をふくむ眼瞼黒色疣贅のレーザーおよび冷凍処置について
 眼瞼縁の睫毛を含んだ黒色疣贅は,大きい時には美容上のみならず視野にまで影響するものである。電気メスで除去すれば大きな睫毛禿を生じて美容上問題を残すことが多い。
 今回我々はこの様な症例数例に冷凍凝固を行い,最初に体積を減じ,回を加えるにつれて褪色させ,最後に少し残った色素をレーザーで破壊して,毛根は健在のまま美容上に著しい改善を見た。その例を報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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