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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科35巻9号

1981年09月発行

雑誌目次

シンポジウム 超音波の眼科的応用

眼科領域の超音波による生体計測

著者: 所敬

ページ範囲:P.1391 - P.1403

 眼科領域で超音波を利用した生体計測は,測定精度の向上と操作性の容易になったことで,その臨床的応用範囲を拡大してきている。この現状をふまえ,生体計測に最も重要なAモード法につき詳しく述べ,Bモード法については簡単に臨床応用についてふれた。
 現在では眼球のあらゆる部位の計測が行われてきているが,今後は更に測定精度が向上し,その測定値のもつ意義の大きくなることが望まれる。なお,現在までの計測は主として線上または面上のものであったが,将来は眼球の形状変化を立体的,しかも動的にとらえる方向に発展することを期待したい。

学術展示

慢性腎不全患者における角結膜石灰沈着の電顕像

著者: 小関武

ページ範囲:P.1435 - P.1441

 慢性腎不全10例について検索した結果,臨床所見上7例に角結膜の石灰沈着を認め,1例に結膜にのみ認められた。角膜石灰沈着は瞼裂部に相当する耳鼻側の輪部に沿って限局し,角膜を横ぎって帯状の沈着を示す例はなく,また石灰沈着部と輪部との間に透明帯はほとんど認められなかった。以上の諸点は通例の帯状角膜変性と少しく差のあることを強調したい。
 定型的な角結膜石灰沈着を示した1例について電顕的検索を行った結果,角結膜ともに上皮細胞およびその細胞間隙に異常沈着物は認めなかったものの,角膜ではボーマン膜と実質上層部に大小種々の結晶構造物を,結膜では実質内に主として大型結晶を認めた。これらの結晶内には数層から10数層におよぶ規則的な層状構造が認められた。以上の電顕観察結果は前報における帯状角膜変性と軌を一にするものであった。
 X線分析結果では結晶内にCa,Pの高いピークが得られたが,Ca/Pの質量比は従来角膜における石灰沈着の化学構造とされてきたhydroxyapatiteにおけるCa/Pの理論的質量比に比し異常に低かつた。

人眼における角膜拒絶反応—走査型ならびに透過型電顕による観察

著者: 栗林利治 ,   飯島富士雄

ページ範囲:P.1443 - P.1449

 58歳の男性の血管侵入が高度に認められた角膜白斑に対し全層角膜移植術を施行した。術後約6週間経過して拒絶反応による移植片の浮腫を生じた。ステロイド治療に反応せず,透明治癒が望めなかったため,再度角膜移植術を施行した。その際に見られた角膜紅織の走査ならびに透過電顕的観察により,この移植片の浮腫は,母角膜より手術創を経由し移植片内皮に達したリンパ球により生じた内皮障害の結果起ったものと推定された。また木症例に認められた所見は今までに報告されている動物実験結果とよく一致していた。

水晶体嚢内摘出術後における角膜内皮の変化—第1報術後処置の差による影響

著者: 小峯輝男 ,   及川徳郎 ,   大滝正子 ,   加藤桂一郎

ページ範囲:P.1451 - P.1458

 水晶体嚢内摘出術後の角膜内皮細胞面積の変化は,術後のコルチコステロイド剤局所投与,消炎酵素剤内服と相関せず,手術時の機械的刺激によりのみ影響をうけるものと推定される。

チン氏帯の電子顕微鏡による観察—マルファン症候群の1家系について

著者: 浜井保名 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.1459 - P.1466

 Marfan's syndromeの1家系6名10眼について,チン氏帯の性状を走査型および透過型電顕で観察した。
 その結果,チン氏帯の密度は対照例に比較し疎であった。また各線維束は細く,その走行は不規則であった。
 特に水晶体偏位を生じた対側,すなわち6時の部位ではチン氏帯線維の著しい減少が観察された。

Dipivalyl Epinephrine点眼液による角膜内皮細胞障害について

著者: 佐々本研二 ,   赤木好男 ,   糸井素一

ページ範囲:P.1479 - P.1483

 DPE点眼液によって家兎角膜内皮細胞に形態学的変化が生じることを光顕および電顕的に示した。この変化は一種の変性像であり,臨床的にDPE点眼液を使用するにあたっては角膜内皮細胞の障害に留意する必要があると推察された。

Zeiss microvideomat 2を用いた白内障混濁の定量

著者: 岡本俊彦

ページ範囲:P.1485 - P.1488

 白内障水晶体の混濁定量化の一方法として,徹照写真をZeiss社製画像解析装置microvideomat 2を用いて分析した。この方法では比較的簡単に白内障の混濁陰影を約5〜8段階に分け,各濃度ごとにその形状を観察し,面積を測定することができる。結果は測定値の安定度も良く,各々の混濁量を的確に表わしている事が確認された。
 しかし,現時点では徹照写真自体の再現性に問題があり,この改良が今後の課題となる。安定した徹照撮影が可能になれば,本法は比較的混濁量の少ない白内障の経過観察には非常に有効な方法と思われる。

血友病A患者における白内障手術

著者: 大久保享一 ,   栗本晋二 ,   野村恒民 ,   織田進 ,   白幡聡

ページ範囲:P.1489 - P.1495

 血友病Aの68歳の男性の両眼の白内障手術を行いその結果を報告した。
(1)両眼とも手術前日より術後3日間まで濃縮第VIII因子製剤(コンファクト8®)2,000単位の投与を行い血中第皿因子活性を20%以上に行った。
(2)右眼は瞬目麻酔,球後麻酔下に角膜内切開法による水晶体嚢外摘出術を行った。
(3)左眼は瞬目麻酔,球後麻酔下にCavitron 8,000Vによる水晶体超音波乳化吸引術を行った。
(4)両眼ともWet-Field coagulatorで虹彩根部を凝固した後周辺虹彩切除を行ったがほとんど出血はなかった。
(5)両眼とも術後黄斑部浮腫を発症し視力が一時低下したが,イドメシン,およびリンデロンの投与により視力は回復した。
(6)両眼とも術後経過は良好で最終視力右=0.04(0.7×+7.5D○cyl−1.25 D Ax180°),左=0.05(1.0×+11D○cyl−0.5D AX30°)であった。
(7)以上のような血友病A患者における白内障手術を適正な第VIII因子の補充療法と超音波乳化吸引法,Wet-Field coagulatorの使用などにより術中術後にほとんど出血なく行うことができた。

白内障手術後の角膜乱視変化について—8-0デキソンおよびナイロン使用

著者: 佐藤孜 ,   杉田孝子

ページ範囲:P.1497 - P.1502

(1)デキソンおよびナイロンを用いて白内障手術を行い,術後の乱視変化を,ケラトメーターおよびブラチド写真により経過観察した。
(2)デキソンを用いた例では,術後3〜6週頃に大きく倒乱視化し,8週頃に倒乱視側で収束した。
(3)ナイロンを用いた例では,乱視変化は軽微であり,一定の規則性を認めなかった。
(4)デキソンの場合の変化は,糸の融解吸収過程と一致し,糸の吸収時に創癒着は未完成であり,創接合部に弛みを生ずると考えた。

眼窩静脈撮影における下眼静脈および上下眼静脈吻合枝の診断的意義について

著者: 中村泰久 ,   海谷忠良 ,   麻薙薫

ページ範囲:P.1503 - P.1507

 11例の眼窩静脈撮影所見のうち,下眼静脈および上下眼静脈吻合枝が造影されたものは,全例中54.5%,上眼静脈が造影されたものの中では7596を占めた。
 下眼静脈が造影された6例中異常所見を認めたものは5例であり,そのうち1例を除いて病変と所見を関連づけることができた。

連載 眼科図譜・286

上強膜にみられたJuvenile xanthogranulomaの1例

著者: 藤関能婦子 ,   小泉屹

ページ範囲:P.1388 - P.1389

解説
 上強膜に孤立性腫瘤が観察され,組織学的に,Juve—nile xanthogranuloma (以下JXGと略す)と診断しえた症例に遭遇したので報告する。
 症例:11歳女児。

印象記

第85回日本眼科学会総会印象記

著者: 松山道郎

ページ範囲:P.1405 - P.1433

 本稿では第85回日眼総会(於千葉)第1日目(5月15日,金)午前に行われた一般溝演の中,網膜の部(1席〜12席)について印象をのべる。
 第1席佐藤佐内氏ら(山形大)のねらいは網膜剥離の病態を網膜下液中の酵素活性の立場から論じようとするもので,東北大水野教授等の研究がその基盤にある。今回演者らは実験的家兎網膜剥離眼を用い,網膜下液,脈絡膜,血清,前房水,硝子体等についてlysosomal enzymeの一つであるα—γ—fucosidaseのisozymeについて分子量の差を考慮して検索した。その結果網膜下液中に同酵素活性を証明し,それは血清,前房水および硝子体中のものと同じパターンを示し,RPE中のものとは異なり,網膜下液中に存在する酵素はRPE細胞やmacrophageの崩壊により游出されたものでなく.いわゆるlivingcellより分泌されたものであろうとし,網膜剥離の発生,進展に関与しているものと推論した。これに対して東北大より.肝臓をRPEと同じレベルで論じてよいか,fucosidase分泌とRPE崩壊との関連について質問があり,また毛様体の方がRPEより活性が高いとの追加があった。網膜剥離の機講をさぐる先端の研究と思われるが,さて臨床の場でどのように理解すべきか首をひねりながら拝聴した。

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第35回日本臨床眼科学会プログラム

ページ範囲:P.1468 - P.1477

臨床報告

4年間経過観察しえたプラスチック眼内異物の1例

著者: 松本光希 ,   馬場裕行 ,   岡村良一

ページ範囲:P.1509 - P.1513

 15歳,男性,自作したペンシルロケットの爆発により右眼球内に異物が飛入し,外傷性白内障の術後,硝子体内のプラスチック異物が認められた。異物はかなり大きく,結合織に取り囲まれていたため,あえて摘出すれば,網膜剥離や眼球ろうに陥る危険性があったため,保存的に4年間経過観察した。その間の検眼鏡検査では特に増悪傾向はみられていないが,視野やERGの検査にて網膜にいく分,進行性病変がおこっている事を示唆するデータが得られ,今後もより慎重に経過をみていく必要があるものと思われた。

Triamcinolone acetonideによる排卵抑制作用の奏効したと思われる後部強膜炎の1症例

著者: 磯邊雅子 ,   所敬 ,   小山嵩夫

ページ範囲:P.1515 - P.1518

 25歳女性。左上強膜炎として通院中,右眼球突出,眼痛,視力低下をきたした。CT scanning所見を参考にして,後部強膜炎と診断しmethylpredonisolone, hydro—cortisoneの全身投与にて軽快したが,前眼部の炎症を月経周期毎に繰返した。基礎体温測定の結果,上強膜炎様症状が月経初期,排卵数日前に出現する点に着目し,Triamcinoloneacetonideを排卵抑制の目的で月経第10に40mg投与。その後基礎体温は4ヵ月間一相性となり,前眼部炎症は消退。基礎体温の二相性が回復してから現在まで再発をみていない。

外傷性毛様体解離に対する解離部直接縫合法

著者: 藤野雄次郎 ,   北沢克明

ページ範囲:P.1519 - P.1523

 外傷性毛様体解離によって低眼圧症を起こした症例に対し,冷凍凝固,ジアテルミー凝固,アルゴンレーザー光凝固による治療を試みたが,症状の改善を得られなかったため,最終的に強膜毛様体縫合術を行い治癒せしめた。この術式は直接機械的に閉鎖を図る事ができるため,保存的治療または他の外科的治療が無効な場合,試みられてよいと考えられた。

眼窩偽腫瘍のCT像と病理組織所見

著者: 石橋安彦 ,   渡辺孝男 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1525 - P.1530

 Orbital pscudotumor 4症例のCT所見およびその病理組織所見について報告した。
 Orbital pseudotumorのCT所見としては,外眼筋の肥厚を示したものが2例,scleral—rimの肥厚を示したものが1例,眼窩後部にhigh density areaを示したものが1例であった。
 病理組織所見では血管炎が1例,リンパ球の浸潤が著明な炎症が1例,非特異的炎症が1例であり,他の1例では採取標本に炎症所見を認めなかった。
 4症例に眼窩減圧術を施行したが,術後,眼球突出および外眼筋の運動障害が改善された。

虹彩異色を呈した結節性硬化症

著者: 稲葉和代 ,   飯島裕幸 ,   谷野洸

ページ範囲:P.1531 - P.1535

 典型的な結節性硬化症の1家系3症例を報告した。1例に虹彩異色と眼底網膜色素上皮層における色素の減少,皮膚色素減少が片側にみられた。体表温低下が色素減少側にみられたことより色素異常に対する全身の片側の交感神経系の機能低下の関与が疑われた。

Paracentral serous chorioretinopathyを併発したfundus albipunctatusの1症例

著者: 林倫子 ,   藤岡孝子 ,   近藤武久

ページ範囲:P.1536 - P.1540

 Fundus albipunctatusに傍中心性網脈絡膜症を併発した症例を報告した。症例は34歳の男性で,飛蚊症のため精査を希望し来院された。眼底には,大きさ一定の黄白色小斑点が,黄斑部を含む後極部から赤道部まで散在していた。諸検査の結果,典型的なFundus albipunctatusの症例と診断された。
 定期的に経過観察を行っていたところ,初診から1年3カ月後に,耳側赤道部に限局性の漿液性網膜剥離をきたし,螢光眼底造影にて,その部に1個の点状螢光漏出点が認められた。アルゴンレーザー光凝固を行い,症状は軽快した。
 Fundus albipunctatusの病理組織学的な検索はこれまでになされていないので,この疾患の本態については憶測の域を出ない。螢光眼底所見から網膜色素上皮の障害は論じられていたが,本症のようにneuro-sensory retinaの限局性剥離を併発する例があることは,本症の本来の病変である斑点の存在,あるいは色素上皮の変化の拡大により,色素上皮のbarrier機能に破綻を生ぜしめたことが推定できる。
 Fundus albipunctatusにこのような2次変化を来たした症例報告は,これまでにないが,本症例も病巣が黄斑部から離れているために自覚症状を欠き,定期的な眼底検査で偶然発見されたものであった。詳細な眼底検査により,同様な変化の検出は,もっと高率にみられるものと期待される。

後頭葉病変による視覚障害について

著者: 白川弘泰 ,   本田孔士

ページ範囲:P.1541 - P.1545

 我々が最近3年間に扱った患者で,初診時,量的視野計測にて,同名半盲を認めた66例中,CT像にてその原因が後頭葉病変によると診断された22例について種々の検討を加えた。その結果,本症は循環系疾患の既往歴を持つ50歳代の男性に発症例が多く,大部分は発症前に何らかの虚血性の前駆症状を示すことがわかった。また,精神症状やAnton微候の合併は病変の側頭葉や頭頂葉への拡がりに密接に関連し,後頭葉のみに限局した症例にはみられなかった。原因疾患としては脳血管硬塞が約2/3を占めた。予後については保存的治療例中4例が改善を示し,うち2例は黄斑回避を伴う中大脳動脈閉塞であり,全例発症後3カ月以内に改善した。これは病変範囲が比較的小さいことと,脳浮腫改善,吻合血管発達,閉塞血管再疎通などに要する時間とに関連するものと思われる。改善例の視野欠損の程度は必ずしも病変の拡がりと一致しなかったが,この点については,今後,視野と皮質との立体的対応関係の検討が必要と思われる。

川崎病の急性虹彩炎を示した2例

著者: 藤原久子 ,   津田和良 ,   産賀恵子

ページ範囲:P.1546 - P.1548

(1)急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)の7歳と6歳の女児に漿液性虹彩炎を合併した症例を報告した。
(2)虹彩炎は後遺症もなく2週間で消褪した。
(3)川崎病と虹彩炎の関連について考察した。

斜視外眼筋の筋病理学的研究

著者: 木下真男 ,   若田宣雄 ,   大岡良子 ,   牧幸

ページ範囲:P.1549 - P.1554

 種々の病態,発症年齢を示す18例の斜視患者について,手術中に得た外眼筋(18例)を病理学的に検索した。その結果,8例(44.4%)では正常筋が得られ,7例では採取量の不足に起因すると思われる結合織標本しか得られなかった。3例(16.7%)では筋原性の要因が考えられる所見を得たが,そのうちの1例は炎症性ミオパチー,他の1例はこれまでに報告のない筋病理所見を有する肝糖原病の1例であった。これらの筋の変化が,非麻痺性斜視の原因になりうるか否かは,現在のところ明確ではないが,これまでにそうした症例の筋所見を観察した文献が乏しい点から考えて,将来の研究をまって,結論を明確にする必要があると考えた。

薬の臨床

眼科領域における線溶療法—Urokinaseの投与法の検討

著者: 三根亨 ,   内藤恵子 ,   平松君恵 ,   横尾夏代 ,   内藤智子 ,   山下一

ページ範囲:P.1555 - P.1559

 血栓性疾患に対して行う薬物療法として現在では線溶療法は最も合理的な方法であると思われるが,現在尚その投与量ならびに投与方法について確立された方法がない。我々は各種の眼科領域における血栓性疾患に対してUrokinase療法を行い線溶活性の面からその効果を調べて次の様な結論に達した。
 30×103IU/dayの投与最では十分の線溶活性を得るには少なすぎた。60×103IUをoneshotで静注しひきつづき30×103IU/hourの割合で連続6時間点滴静注を行った結果治療開始10分後にはELTが短縮し,euglobulin分画fibrin/平板法,α2—PI,SK活性化ELT等を指標として血中線溶活性の程度を判定した場合十分な活性が得られたと考えられる。
 以上の結果ならびに臨床成績からUrokinaseの投与量は1日量240×103IUを必要とししかも十分な線溶効果を得るためには最初に60×103IUを静注し引きつづき180×103IUの量を6時間持続点滴静注する方法が最も効果的な投与力法であると考えた。

手術ノート

楕円角膜回転移植法

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1560 - P.1561

 提供眼球がないまま放置されている角膜混濁患者の角膜を良く観察すると,角膜のどこかに直径2.5mm以上の透明部分を見出す事は稀ではない。このような場合,この患者は提供角膜の出現を待つ事なく視力回復の可能性がある。瞳孔領を被う角膜混濁に対する治療法としては一般に次の四つが挙げられる。(1)薬剤による散瞳。(2)光学的虹彩切開または切除。(3)自己角膜を利用する角膜回転移植(RKと略)。(4)提供角膜を利用する全層角膜移植。このうちRKは眼球銀行からの角膜入手が比較的困難である一般開業医にとって有用であると同時に,拒否反応を除外できるために,例え提供眼球が豊富な場合でも混濁角膜の中に2.5mm以上の透明巣が残っている場合には,ひとまず試みるに値する方法である。数あるRKの中でも,我々が10余年間行っている楕円角膜回転移植法(ERKと略)は幾つかの利点を有するので紹介する。
 適応:一般に提供眼を利用する全層角膜移植の場合と同じであるが,次の2点で異なる。

文庫の窓から

本草綱目(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1562 - P.1563

 本書は万暦18年に初刊本(金陵本)が出版されて以来,多くの読者をもったものと思われる。したがってその中国版もその後万暦31年に刊行された江西本の他幾種類もでている。その主なものだけでも30種以上におよぶ(龍伯堅:「現存本草書録」等参照)。
 本書のわが国への舶載年代はさだかではないが,慶長12年(1607)に林羅山(信勝,道春,1583〜1657)が長崎に赴いた折,本書(金陵本?)を得て駿府の家康に献じたのが最初といわれている。また,曲直瀬(一渓)道三所作の「薬性能毒」(寛永6年開板)に書かれた慶長13年(1608)曲直瀬(玄朔)道三の識語に『本草綱目来朝予検閲之摭至要之語又之増添云云』とあるように慶長年代には確かに本書の明版がわが国に渡来していて,その閲読もされていたとも老えられる。その後,本書の利用は慶長17年(1612)林羅山が「本草綱目」を抜萃上梓して「多識編」(5巻,「古今和名本草井異名」)を著わしたのを初め,以下に挙げるようなものが次々と翻刻され,また本書に関連をもつ能毒書等が陸続として著わされた。

GROUP DISCUSSION

感染症

著者: 田中直彦

ページ範囲:P.1565 - P.1567

特別講演
ヘルペスウイルスの基礎的諸問題
 抗体保有率について最近20年間のデーターをみると,初感染の時期が幼時・小児期でなく,成人期にずれてくる傾向がある。20歳前後の人々の抗体保有率を測ってみると,20年前より低い陽性率を示す。このことから考えると,従来は眼科方面に関係深い単純ヘルペスウイルスは,1型だけといってもよかったが,将来はgenitalの感染をおこす2型のヘルペスウイルスによるものが増えてくることも予測される。これは動物実験的に2型の方が激しい角膜の症状の現われることから見て,かなり重視すべきことと思われる。診断に関する最近の方法的進歩,新生児感染の危倹増大傾向に関すること,子宮頸癌との因果関係についても最近の知見について解説をした。

光凝固

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1568 - P.1569

 今回の主題は糖尿病性網膜症へのPanretinal photoco—agulation (P.R.P.)であり前半の手技と効果については5題報告された。
 第1席蓮沼敏行氏(群大)はpanfundoscopeを用いたPRPを紹介した。Panfundoscopeは一般の三面鏡と比較すると次の様な特徴がある。背が高くやや重いこと,結像位置がより検者側にあること,眼底は倒像として観察されること,一視野が広くとれるが低倍率であること,鏡を使わないので眼底のイメージが途切れないこと,実際の光凝固実施にあたってはパワーの効率が違うので条件を新たに設定しなおす必要があること。以上のことを掲げ,Panfundoscopeと三面鏡の得失を使い分けると有効なPRP実施が可能であると述べ,スライドを供覧した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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