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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科36巻1号

1982年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・290

網膜細動脈瘤(retinal macroaneurysm)

著者: 鶴岡一英 ,   伊藤研一

ページ範囲:P.6 - P.7

 網膜細動脈瘤はRobertsonが提唱したretinal macro—aneurysmの訳語である。網膜細動脈に発生する血管瘤という意味で,この訳語を採用してみた。
 症例は網膜細動脈瘤と診断し,7年9カ月の長期間にわたって経過観察を行ったものである。

臨床報告

硝子体腔内へ沈下した水晶体核の硝子体手術による摘出

著者: 金井清和 ,   浦口敬治 ,   大熊紘 ,   岡本和郎

ページ範囲:P.9 - P.13

 老人性白内障全摘出術中に破嚢して生じる水晶体核の硝子体腔内への沈下は,白内障手術の重大な合併症で従来種々の処置が試みられている。今回,老人性白内障手術中に生じた水晶体核の硝子体腔内沈下の症例2例に対し,毛様体扁平部硝子体切除吸引術を応用して核の摘出に成功した。いずれも他院で白内障手術時の合併症として発生し,強角膜創を閉じて翌日本院へ転送され,本院にていったん消炎療法の上,6日後に本手術を行った。1例は前部,中部,後部硝子体切除吸引の上,灌流液にて核を前房内へ誘導し,白内障手術の強角膜創を開いて核を娩出した。他の1例は硝子体切除吸引ののち核の前房への誘導を試みたが成功せず,強角膜創を開いてopen skyとし,鑷子にて核を前房内へ移動させた上で娩出した。その後何ら合併症なく,1例は12カ月間,1例は9カ月間経過良好である。
 白内障術中に硝子体腔内へ核が沈下した際は,あわてることなく十分準備を整え,このように硝子体切除吸引術を施行して核の娩出を試みるのが良いと思われ,経験した2症例を紹介した。

前眼部手術におけるpars plana vitrectomyの応用

著者: 岡本和郎 ,   浦口敬治 ,   上野明廣 ,   大熊紘

ページ範囲:P.15 - P.20

 前眼部疾患に対して,VISC-Xを用いたpars plana approachによる硝子体手術を行った。症例は瞳孔領に硬い膜様の白内障を生じていた膜様白内障の8眼,穿孔性強角膜裂傷後瞳孔領に膨化した水晶体,滲出物や線維性血管膜を生じて瞳孔領が完全に閉塞していた瞳孔領膜様物形成の5眼,および水晶体の膨化による前房消失を来たしていた第一次硝子体過形成遺残症の2眼であった。
 手術に成功したのは11眼73%あった。膜様白内障に対する本手術成績はきわめて良く,全例成功し,第一次硝子体過形成遺残症にも良好であった。この様な前眼部疾患に対してpars plana vitrectomyの応用が勧められる。しかし瞳孔領膜様物形成の症例に対しては手術成績は不良で,今後症例によってはopen sky法による硝子体手術を考慮する必要があると思われた。

先天性筋ジストロフィー症(福山型)の眼所見—2症例についての検討

著者: 千々岩妙子 ,   西村みえ子 ,   牛島博美 ,   山名泰生 ,   山名敏子 ,   猪俣孟 ,   馮健清 ,   黒川徹

ページ範囲:P.21 - P.25

 先天性筋ジストロフィー症(福山型)の患児2例の眼科的検査を行い,従来の記載にない限異常を報告した。
(1)症例1は1歳2カ月の女児で強度近視,視神経萎縮,網膜血管走行異常,黄斑偏位,網膜の灰白色の色調のムラ,Retinoschisis様の灰白色の隆起性病変を認めた。
(2)症例2は5歳男児で白内障,虹彩ルベォーシス,網膜剥離を認め経過中に緑内障を併発した。
(3)症例1の眼病変は網膜および網膜血管の発生異常によるものと考えた。
(4)先天性筋ジストロフィー症(福山型)における頭蓋内病変と眼底病変とは,ともに発生異常に関係しているという点で関連性が推測された。

Subcutaneous pedicle flapを利用した眼形成手術

著者: 田邊吉彦 ,   星野元宏 ,   近藤俊 ,   鳥居修平

ページ範囲:P.27 - P.31

 眼瞼の皮膚は皮下脂肪がなく,眼輪筋がすぐ下をこあり,ここで作る皮弁は一種のmyocutaneous flapとなり極めて血行がよい。それ故作られるsubcutaneous pedicle flapも,myocutaneous island flapの形となって,相当細い茎部でも安全である。
 subcutaneous pedicle flapの利点は皮弁の自由度が大きく,dog earが生じにくく,onestageで手術を終える事ができる。
 我々は眉毛部母斑切除後の創閉鎖,下眼瞼外反の形成,下眼瞼悪性腫瘍切除後の再建にこれを利用し良好な結果を得た。

前房出血によるHydrogonioscopyの角膜黄色反射および眼球鉄錆症の角膜黄色反射の発生機序について

著者: 黄樹春

ページ範囲:P.33 - P.38

 前房出血におけるHydrogonioscopyの角膜黄色反射7例を報告した。例2について角膜黄色反射の経時的変化を報告した。SugarのHemosiderosis bulbi 7例と著者の7例との比較を討論した。硝子体出血量の判定は非常に困難な問題なので,Hydrogonioscopyは硝子体切除術に対して有益と思われる。
 本文は著者の仮説1)およびその図解2)について考察した。Hydrogonioscopyの発生機序は光—組織化学反応である。鉄片により起きた眼球鉄錆症におけるHydrogonioscopyの角膜黄色反射でも,前房出血によるHydrogonioscopyの角膜黄色反射でも,鉄イオンの角膜実質の侵入は黄色反射の物質的基礎である。Hydrogonioscopyの増色作用はこの方法の特色である。Hydrogonioscopyの増色作用について,決定的素因はその光学的条件および照明条件である。

乳頭上新生血管に対する直接光凝固療法について

著者: 白川弘泰 ,   内田璞

ページ範囲:P.39 - P.44

 乳頭上新生血管をみた7例に,L'Esperanceの方法に準じて直接光凝固療法を施行し,全例に新生血管の消失または縮小を認めた。7例のうち,5例は網膜静脈閉塞症,1例は増殖型糖尿病性網膜症,1例は原因不明によるものであった。また,このうち2例に対しては3回反復して光凝固を行った。施行後,1例に視野欠損,1例に硝子体出血を認めた。
 直接光凝固療法のなかでも,painting techniqueは手技も比較的容易で, spot size 50μ,power 450 mW以下を守り,網膜より硝子体腔内へ少なくとも0.5D以上離れた新生血管を選んで,十分密に頻回に凝固を施行すれば,合併症を最少限にとどめえて,しかも有効な方法になると思われる。また,血管網周囲が厚いfibrosisで囲まれていたり,血管の一部が網膜に接近していたり,血管分布により根部が観察しにいく例では,数回反復して光凝固を施行することが重要と考える。

Trabeculectomyにおける結膜輪部切開法

著者: 松鵜嘉文 ,   小林修 ,   馬詰良比古 ,   久保田治

ページ範囲:P.45 - P.49

 白内障との同時手術例5例を含む緑内障11例11眼に,結膜輪部切開法によるTrabeculectomyを行い,2〜24カ月(平均14.9カ月)間観察した。本法は結膜創の強膜への瘢痕性癒着形成による,濾過後房水の後方への流出阻害を回避するために考案したが,全体に厚く平担な濾過胞が得られる。手技は容易で,輪部での結膜創癒合は良好であった。しかし,感染および癒合不全を避けるため結膜縫合には慎重さを要する。術後合併症は,従来の結膜高位切開によるTrabeculectomyと異ならないが,1例に巨大濾過胞がみられた。術後の眼圧コントロールは,無処置にて11例中6例良好,他の5例も点眼にて可能であった。

黄斑部出血を伴った網膜細動脈蛇行症

著者: 萱沢文男 ,   町田照代 ,   中村富子 ,   本田昭道 ,   吉田和加子 ,   中山正 ,   森礼子

ページ範囲:P.62 - P.65

 58歳,女性が両眼の霧視を訴えて来院し,検眼鏡検査で黄斑部の網膜細動脈蛇行症と黄斑出血がみられた。螢光眼底造影では,異常所見を認めなかった。全身検査は,出血性素因をみとめず。1カ月後には黄斑部出血は自然吸収された。

色覚異常のダイコトマス・テストについて

著者: 今村勤

ページ範囲:P.66 - P.69

(1)ダイコトマス・テスト・パネルD−15とアノマロスコープとの誤差約15%(共同研究)の縮小とテスト方法の簡易化を企図して,試作と実験を重ねて,その誤差3%以下の6色検査盤(D−6)2)に到達した。
(2)アノマロスコープを使用せず,各種の色覚検査を単独に,あるいは組合せによって,ダイコトマス・テストとして判定する場合には,それらのアノマロスコープと一致する確率を併記して,その判定の信頼度を表現することを提案する。

冷凍凝固術で治癒した網膜芽細胞腫

著者: 飯島富士雄

ページ範囲:P.71 - P.73

 両眼性網膜芽細胞腫の8カ月の男児の進行眼を摘出した後に非進行眼に対して視力保存的療法として冷凍凝固術を試みた。初発巣の4乳頭径大の腫瘍に対しては2回の冷凍凝固を行い,後発巣の1乳頭径大の腫瘍に対しては1回の冷凍凝固を行い,ともに腫瘍を消失させ治癒させる事ができた。
 冷凍凝固術は網膜芽細胞腫自体に対して破壊作用を及ぼすと考えられ,中等度の大きさの腫瘍に対しても十分な凝固を反復する事により消退させる事ができる。また手技上からも容易であり,さらに適応を広げて試みられるべき治療方法と考えられる。

われわれの経験した網膜細動脈瘤(retinal macroaneurysm)

著者: 鶴岡一英 ,   伊藤研一

ページ範囲:P.79 - P.86

 1973年9月より1981年4月までに駿河台日本大学病院眼科でretinal macroan—eurysmと診断された9例9眼の臨床像,および治療について検討し従来の報告と比較検討した。年齢は55歳から81歳の平均67歳で,男女比は1:2で高齢の女性に多い傾向が見られた。macroaneurysmは全例網膜動脈の第3分枝以内に認められ,また経過中にmacro—aneurysmから何らかの出血が認められた。しかし吸収は比較的速やかで高度の視力障害を残した症例はなく視力予後は比較的良好であった。しかし,網膜前出血,黄斑部浮腫などが発生し,それらが吸収しても中等度の視力障害を残す症例が多いので,出血や浮腫が黄斑に及ぶ可能性のある症例,もしくはすでに黄斑に何らかの影響が及んでしまった症例に対しては積極的に光凝固を行うことが必要と考えた。

カラー臨床報告

虹彩炎,ドルーゼ,および網膜血管炎を特徴とする若年性ぶどう膜炎の2例

著者: 小椋祐一郎 ,   沖波聡 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.55 - P.61

 次のような共通点を持つ,原因不明のぶどう膜炎の2症例を報告した。
 ①若い女性である。②両側性の軽度の虹彩炎が遷延する。③軽度の網膜血管炎を伴う。④網膜色素上皮レベルに,黄灰白色の点状あるいはその融合した斑状病変が,黄斑部外の主として赤道部に集族・散在し,それらは,螢光眼底撮影において,pigment epithelialwindow defectを示す。臨床的には,drusenと同一のものとみなされる。⑤下肢の関節炎の既往がみられ,1例は,sero-negative spondyloarthritisと診断された。⑥霧視が唯一の症状であり,視力は良好である。

手術ノート

初心者のためのKPE手術事故防止ポイント集(1)

著者: 上野山謙四郎

ページ範囲:P.74 - P.75

 和歌山医大では1979年にKPEを開始し,著者ができるようになった時点で,直ちに医局員の手術教育にとり入れた。この大部分の手術はビデオテープに記録されており,これらを検討することによって,事故発生の原因を見出すことが可能である。以下経験にもとづく要点を述べる。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.76 - P.77

5.極撰流眼目之治方
 眼の治療方にはいろいろあるが,江戸時代の眼科諸流派の間では,それぞれが一流一派を誇る秀れてる技倆,得意とする治療方をもっていた。例えば真嶋流においては内障の治療方が優れているとか,あるいは夢想流では外障の治療方が他の流派より勝っていたといった具合である。
 ここに掲出した「極撰流眼目之治方」は真嶋流および夢想流両流派の極意を抜萃して一つの流派の秘伝書としてまとめ,極撰流と名づけて相伝されたもので,巻尾の識語には元和二年(1616)卯月吉日,世戸口拾兵衛永祐とあり,世戸口拾兵衛がその門人某氏に相伝されたものと思われる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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