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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科36巻12号

1982年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・302

副腎皮質ホルモンが有効だったLigneous conjunctivitis

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.1444 - P.1445

 緒言:眼限瞼を触診した際に木質のように触れることからBorel1)によってLigneous conjunctivitisと命名された慢性再発性偽膜性結膜炎は稀な疾患である。すなわち本邦では小口2),有賀ら3)の報告がみられるのみである。慢性化する偽膜の刺激で角膜潰瘍から穿孔へと進み失明に至ることもある。その原因は不明であり治療法も確立されていない。今回ステロイドの内服が有効であった1例を経験したので報告する。
 症例:10歳,男(56-0044)。1980年9月下旬両眼の眼脂充血がありA医にてアレルギー性結膜炎の診断の下でステロイド点眼により一時的に緩和。1981年1月に右眼眼脂再発B医でアレルギー性結膜炎ということで非ステロイド剤投与,両眼に眼脂がみられ異物感・眼痛が出現,C医で角膜潰瘍ということで菌培養Staphyloceccusepidermidis MCI-P ⧻ TC ⧻ CER ⧻ CET ⧻の感受性テストの結果に応じて抗生剤の投与開始するも効果なく,1981年5月2811初診,Ligneous coniunctivitisの診断の下にウロキナーゼ(200単位/ml),ヒアロニダーゼ(200単位/ml),α—キモトリプシン(200単位/ml)の点眼,偽膜剥離を行うも偽膜は再発性であった。

臨床報告

マクログロブリン血症(Waldenström)における眼底の変化—特に初期症状について

著者: 原田敬志 ,   徳田浩子 ,   森井一江 ,   水野計彦 ,   伊藤桂子 ,   藤井滋樹 ,   一山智

ページ範囲:P.1447 - P.1454

 Waldenströmのマクログロブリン血症患者の両眼眼底に特異的な変化を認めたが,螢光眼底造影の結果本症の初発病変は網膜周辺部にあるものと考えられた。

角膜ムンプスの症例

著者: 藤関能婦子

ページ範囲:P.1455 - P.1458

 27歳の女性の片眼(左眼)に,円板状実質性角膜炎の病像を呈し,典型的な臨床経過をたどった角膜ムンプスの症例を報告した。ウイルスが表層よりもより深層に影響を及ぼし,浮腫混濁とデスメ膜襲を形成した。さらに虹彩炎,高眼圧を伴ったが,約1週間にて治癒した予後良好な角膜炎であった。

5歳女児の遠視眼にみられた両眼性黄斑円孔の1症例

著者: 秋澤尉子 ,   牧野道子 ,   鈴木弘一

ページ範囲:P.1459 - P.1463

 初診時に左眼黄斑円孔を認め,2週間後には右眼も穿孔し,両眼性黄斑分層孔となった5歳女児の1症例を報告した。本症例には遠視がみられた以外には外傷の既往や全身疾患はなく,炎症所見や硝子体牽引も認められず,穿孔機序は不明であった。調べえた限りにおいて,両眼性黄斑円孔の症例としては最年少の極めて稀な症例と思われた。

Bloch-Sulzberger症候群と眼症状

著者: 藤原久子 ,   上野信也 ,   花房路子 ,   三村茂

ページ範囲:P.1465 - P.1469

(1)生後13日日に発見されたBloch-Sulzberger syndromeの女児に未熟児網膜症様網膜血管形成異常を伴った1例の報告を行った。
(2)右眼は後極の網膜静脈の拡張が見られたが,次第に正常化した。左限は網膜静脈の拡張蛇行が著明であったが,耳側周辺血管の異常分岐吻合が出現し,無血管帯次いで境界線が出現した。左眼の病変悪化に対し網膜光凝固術を2回施行し病変の進行を停止させることができた。
(3)本症候群の報告例について文献的考察を加えた。
(4)本症候群は生直後より発症し眼合併症の頻度は28.1%で高い。眼合併症の初発病変は網膜血管の異常性にあり,これが見過ごされると重篤な合併症となるので早期の眼底病変の把握と適切な治療が必要である。
(5)この網膜症の病因は現在のところ不明であるが,生後病変が進行し,しかも進行度に左右差があること等から先天的遺伝的素因の上に血管形成異常をきたす網膜循環不全発症の局所的環境要因が考慮される。

アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離

著者: 桂弘 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1470 - P.1475

 アトピー性皮膚炎に網膜剥離を合併した3症例の臨床所見について報告した。
 3例とも10代の男性で,症例1のみアトピー性白内障術後であった。網膜剥離は症例2のみ両眼性で,3例とも鋸状縁断裂を認め,症例2,症例3では色様体上皮剥離を伴っていた。症例3では両眼とも毛様体扁平部に嚢胞を認め,網膜剥離を認めなかった左眼では,経過中に,嚢胞部に一致して鋸状縁断裂を生じた。
 アトピー性皮膚炎に網膜剥離を合併した症例は,現在までに22例31眼の報告があり,これに自験例を加えた25例36眼の臨床的特徴について検討するとともに,その原因について若干の考察を加えた。

網膜芽細胞腫の1例—特に腫瘍細胞と網膜色素上皮細胞のinteractionに関する病理形態学的検討

著者: 相楽正夫 ,   金成拓二

ページ範囲:P.1485 - P.1491

(1)白色憧孔を主訴とした1歳3ヵ月女児の片眼発症網膜芽細胞腫の1例について,若干の文献的検討を加え報告した。
(2)初診時眼底検査上,耳側網膜を主座とする灰白色隆起性病変が観察され,超音波検査,CT-scan上,充実性腫瘤を示す所見が得られた。
(3)腫瘍が網膜の過半分を占めていたため,眼球摘出術を施行した。
(4)病理組織学的検索の結果,(i)光顕的には典型的なFlexner-Wintersteinerロゼットも観察され,ロゼット形成傾向の強い網膜芽細胞腫と診断された。(ii)電顕的には網膜色素上皮細胞と腫瘍細胞との間にZonula adherens類似の接着装置が観察されたことより,本腫瘍の脈絡膜への浸潤形式の一つとして,まず腫瘍細胞がこのような接着様式をもとに網膜色素上皮細胞に定着し,ついで破壊するという新たな機構が推測された。

カラー臨床報告

網膜動脈macroaneurysmの臨床像と治療

著者: 板垣隆 ,   宇山昌延 ,   糸田川誠也

ページ範囲:P.1476 - P.1483

 最近3年間に網膜動脈に発生したmacroaneurysmを11例経験し,その臨床像,治療法について検討した。10例は高血圧症,動脈硬化症をもつ高齢者で,1例のみが46歳で慢性関節リウマチの患者であった。動脈瘤は全例乳頭近くの太い動脈に発生した。動脈瘤の破裂により眼底後極部に硝子体出血や広範囲の円盤状の濃厚な網膜出血をおこして,突然高度の視力障害を来たした症例が8例あった。硝子体出血の原因として,また老人性円盤状黄斑変性症との鑑別診断に本症の診断が重要になる。診断確定には螢光眼底造影が必須であるが,新鮮例で出血が濃厚であると出血によるmaskingのため動脈瘤が見えず,出血の吸収を待ってはじめて診断された。検眼鏡によって,動脈瘤は動脈の赤い球状の拡大としてみえた例よりも,出血巣内の小円形の黄白色斑としてみえた例が多かった。
 止血剤,出血吸収剤の投与によっても自然治癒傾向のない8例にアルゴンレーザーで動脈瘤を軽く直接凝固し,何ら合併症なく,全例平均2カ月で器質化に成功した。残る3例は凝固せずに自然治癒したが,平均8ヵ月を要したので,動脈瘤の自然治癒を待つよりも比較的早く動脈瘤の直接光凝固を行うのが治療としてすすめられる。

眼科手術学会

角膜穿孔および角膜欠損の角膜移植

著者: 早坂征次 ,   水野勝義

ページ範囲:P.1492 - P.1495

 穿孔性角膜炎に対し,強膜半層円板と生体接着剤(アロンアルファA)にて穿孔を塞ぎ,前房形成を待ってトレパン術を行う方法を考案した。また,外傷性角膜欠損に一次縫合を行い前房を保持し,その後に角膜移植術を行った。このように,角膜穿孔や欠損に前房形成後に全層角膜移植術を行い,視力改善に成功した。

眼内レンズ挿入後発生した網膜剥離

著者: 山中昭夫 ,   五藤宏 ,   池内輝行

ページ範囲:P.1496 - P.1499

 我々は最近6年半の間に214眼に対しIOL挿入術を行ったが(ICCE 183眼,ECCE 31眼),うち7眼に網膜剥離が発生した。網膜剥離が発生した7眼は,すべてICCE群であった。1例は心臓疾患のため手術不能であり,他の6例に対して手術を行い,うち5例に解剖学的復位を得た。復位を得た5例の術後視力は,0.9が1例,0.15〜0.1が2例,0.02が1例,指数弁が1例であった。

薬の臨床

細菌性眼感染症に対するCefotiamの基礎的・臨床的検討

著者: 大石正夫 ,   永井重夫 ,   徳田久弥 ,   戸塚とし子 ,   嶋田孝吉 ,   澤充 ,   北野周作 ,   秋野薫 ,   内田幸男 ,   金子行子 ,   田中直彦 ,   佐々木隆敏 ,   原二郎 ,   三井幸彦 ,   塩田洋 ,   中屋由美子 ,   小林俊策 ,   小寺健一 ,   東堤稔

ページ範囲:P.1500 - P.1510

 新しいセフェム系抗生物質,Cetbtiamの緑膿菌をのぞく細菌性眼感染征に対する基礎的・臨床的検討を行い,次の成績を得た。
(1)細菌性眼感染症74例中,除外・脱落の8例を除く66例において臨床効果を判定し,Cefotiam 1日0.5〜2gを1週間投与することにより,著効37例,有効26例,無効2例,不祥1例の結果を得た。有効率は,95%であった。
(2)疾患別有効率は,結膜炎,餅・腫,涙のう炎,眼瞼膿瘍,眼窩蜂窠織炎・全眼球炎,淋菌性膿漏眼ではいずれも100%,角膜潰瘍では91%,角膜炎および瞼板腺炎では75%であった。
(3)分離菌別有効率では,S. aureus,S. epidermidis,Corynebacterium sp. で,それぞれ,92%(11/12),96%(25/26),94%(16/17)であり,グラム陽性菌全体でも93%(56/60)と良好な治療効果であった。グラム陰性菌(11例)および嫌気性桿菌(6例)では,いずれも右効率100%であった。特に,特定菌感染例の5例(N. gonorrhoeae 1, Morasella sp. 3, H. aeg-yptius 1)では,著効2例,有効3例の成績であった。
(4)臨床分離のMoraselta lacunataおよびHaemophilus aegyptiusに対するCefotiamのMICを測定した結果,M. lacunataでは,CefotiamのMICは,<0.1~≧100μg/mlに分布し,0.2μg/mlにピークがあり,6.25μg/ml以下の濃度で,91%(39/43)の菌の発育が阻止された。

GROUP DISCUSSION

緑内障(第23回)

著者: 澤田惇

ページ範囲:P.1515 - P.1521

〔主題〕 緑内障手術の長期観察
1.慢性閉塞隅角緑内障に対する虹彩切除術とtrabeculectomy
 1966年から1980年までの15年間に京大眼科で,初回手術として虹彩切除術またはtrabeculectomyを行った後,1年以上経過を観察できた慢性閉塞隅角緑内障93眼を対象とした。術後に点眼治療を併用した症例を含めて虹彩切除術では61%,trabeculectomyでは75%に眼圧が21mmHg以下に調整された。初回手術ではtrabeculec—tomyの方が成績が良い。しかし虹彩切除術後には,4眼8.7%に白内障手術を施行した他には特に合併症がみられなかったのに対して,trabeculectomyの術後にはlateinfection 2眼, malignant glaucoma 1眼を経験し,白内障手術を12眼25.5%に行っている。したがってこのような重篤な合併症のない虹彩切除術を慢性閉塞隅角緑内障の第一選択として行って良いと考える。
海谷(聖隷浜松病院):虹彩切除術とトラベクレクトミーの選択基準は?

視野

著者: 鈴村昭弘

ページ範囲:P.1523 - P.1526

1,ビデオテープを利用した簡易中心視野計
 単性緑内障の早期診断および障害の程度を決定づけるものは,マリオット盲斑付近に生ずる視野欠損である。しかしこの辺りの視野測定は優秀な検査者と理解力の高い患者でないと正確は期し難い。そこで正確なデータを得ようとする目的で,中心部およびマ盲斑付近に点視標を繰返し出現するようなビデオテープを作成し,被検者が自由に繰返し見たり,途中で停止させて確認できるようにして自らの視野を知る方法を試みた。なお,第2図形において,視野の情報量が多すぎるため検討の余地があると思われる。

抄録

第4回日本眼科手術学会抄録集(2)

著者: 上條講堂

ページ範囲:P.1527 - P.1534

12.開頭法による眼窩腫瘍摘出術の経験
 開頭法による眼窩へのアプローチとして,最初1922年Dandyが報告し,以来trans-frontal approachが主に脳神経外科によってなされてきたが,本邦では眼科領域において1971年戸塚らが初めてfront-zygornatic ap—oprachを報告し,その後,数種の報告がみられる。その後,顕微鏡手術の発達にともない,1974年府川,1979年木村らによりmicrosurgical techniqueの応用が報告されている。我々は開頭法による眼窩腫瘍摘出術として,眼窩腫瘍2例(海綿状血管腫1例,視神経鞘髄膜腫1例),眼窩一頭蓋内腫瘍2例(癌腫例,髄膜腫1例),加えて他医でtrans-frontal approachで摘出後,眼窩上壁欠損に対する骨形成術を要したもの1例を含め計5例を経験した。3例はtrans-frontal approach, 2例はfront-temporal approachで行った。 microsurgica 1tech—niqueは,形成術のみを施行した1例を除き4例に施行。4例に骨形成術を施行した。結果は全例につき広い視野がえられ,髄膜腫例では,眼窩,上顎洞,前頭蓋底にわたる広範な腫瘍を,front-temp oral approachによりmicrosurgical techniqueを用いて全摘出しえた。骨形成術も比較的容易であり.

談話室

白内障手術教育と和歌山方式の反省

著者: 上野山謙四郎

ページ範囲:P.1536 - P.1537

専門医制度と手術教育
 眼科領域における専門医制度の検討も追々と軌道にのり,関係の方々のご努力により具体案も提示される段階に達した。
 専門医教育の中で,基礎眼科学,臨床眼科学と並び,重要な位置を占める手術教育においても,「関与した手術50例以上,その中で内眼手術20例は実際に術者として経験すること」など,かなり進歩的な方向づけが行われている。これは,従来の旧態依然たる大学医局のやり方に較べれば劇的ともいえる改革であり,立案者諸氏に敬意を表したい。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(12)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1540 - P.1541

21,酣韶流眼書十二切紙巻
 酣韶流眼科を伝えるものとしては「酣韶流眼書」,「眼薬能制之記」(織豊,慶庵著?,杏雨書屋蔵書目録),「酣韶流眼目秘薬」(慶庵写,富上川文庫)等が知られているが,その眼科は内薬,指薬(煉薬を用う)および洗薬を主として,スル金,アツ金,引き刀,灸法等を用いた,と天正17年の跋文ある「慶庵治眼方」という写本に記されているとの報告もある。「酣韶流眼書十二切紙巻」なる古写本も酣韶流眼科を伝える秘伝書にして,ここに紹介するものである。
 この古写本には「酣韶流眼書十二切紙巻」の他,麻嶋流および限科諸流派の秘伝が併記されているが,その麻嶋流は尾州犬山之住人麻嶋若狹守林活,防州山口之住人麻嶋勝右衛門尉清房,丹州之住人麻嶋平左衛門尉吉勝相伝の「麻嶋灌頂小鏡一紙之巻」が記述され,諸流派の秘伝には「眼薬能製之記」,「家伝卯可方」,「煉薬之秘方」「夢想秘伝」,「漢昌流卯可秘方」,「一流指薬」,「秘伝書卯可方」等各1巻ものとして抜萃的に併記されている。

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臨床眼科 第36巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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