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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科36巻5号

1982年05月発行

雑誌目次

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著

漿液性円盤状黄斑部網膜剥離を伴う急性網膜色素上皮炎に対する光凝固治療の効果について

著者: 杉田隆 ,   永浜正浩 ,   小嶋嘉生

ページ範囲:P.421 - P.425

 漿液性円盤状黄斑部網膜剥離を伴う急性網膜色素上皮炎の14例に光凝固治療を行い,平均6年経過観察し,自然経過例と比較した。その結果,視力の予後,再発,自覚症状および限底所見等において両者間に差はなく,光凝固治療は必ずしも本疾患に有効とはいえなかった。この結果から,本疾患は黄斑部を中心とした後極部に広範な病変が存在するものと推測される。また増川型中心性脈絡網膜症に対して光凝固を行う場合,予後の異なる本病を除外して行うべきと考える。

光輝小斑のみられる網膜動脈閉塞症の光凝固治療について

著者: 福喜多光一 ,   玉置政夫 ,   福喜多秀二

ページ範囲:P.427 - P.433

(1)44歳男子の右眼にみられた特異な網膜動脈閉塞症と,61歳男手の右眼網膜中心動脈閉塞症(不完全型)と思われる症例において,光輝小斑のみられる動脈分岐部に対し治療の目的でキセノン光凝固を行った。
(2)症例1は光凝固後約2週間目には視力の改善がみられ,経過中の血管走行の変化は回復過程を推察するうえで重要な所見と思われた。
(3)症例2では上耳側働脈第1分岐部に著明な光輝小斑がみられた症例で,光凝固後の視力,視野についてその経過を報告した。

コーツ病光凝固後の長期観察例—蛍光眼底造影所見における二,三の新知見

著者: 宇治幸隆 ,   藤岡千重子 ,   森一満 ,   竹内文友 ,   江見和雄

ページ範囲:P.435 - P.443

 6歳女子のコーツ病に対して光凝固を行い,その後7年余にわたり,螢光眼底造影により経過を観察し,以下の知見を得た。
(1)既存の血管瘤はprecapillary arterioleの細動脈からの分岐部にみられ,直接凝固されずとも,近傍の漏出著明な血管瘤の凝固により,小血管瘤は消失し,静脈側毛細血管の著明な異常透過性亢進も改善された。
(2)眼底周辺部における毛細血管網の螢光眼底所見の改善には,凝固後7年を要した。
(3)滲相性病変の沈静化した後,まったく健常と思われていた細動脈から新たに血管瘤の発生をみ,滲出液の漏出をきたすものもあった。この血管瘤形成に先だち,その部のprecapillary artcrioleから,しみ出し状出血を認めた。血管瘤の発生後,その近傍の静脈側の毛細血管の拡張をきたした。
 以上の所見から,コーツ病の進行には,血管瘤→滲出性病変→組織圧の亢進→毛細血管床の内圧亢進→precapillary arterioleの壁の脆弱性→血管瘤という悪循環が想定され,滲出性病変を増強させる因子として静脈側血管床の透過性亢進の関与も加えられた。しかし,本症にみられたような血管異常の発端としては,この悪循環のtriggerとして組織圧亢進をおこす微妙な滲出機転が考えられ,その根底に毛細血管壁の透過性の変化が想定された。

螢光眼底所見による糖尿病性網膜症の病型分類

著者: 薄葉澄夫

ページ範囲:P.445 - P.450

 糖尿病性網膜症(DR)の本態が血管性病変(DRA)であるという立場から,螢光眼底撮影(FAG)所見を堰にDRを分類し,かつ固有血管からの色素漏出所見を参考に,活動期と非活動期に二分した所,両期においては,病態進行上明らかな差異を認めた。さらに活動期と非活動期に二分することは,光凝固の適応時期選択上,あるいは,効果の判定上有用であった。しかも各病型間の相互関係が簡潔に表わされるため,病態の進行を容易に把握することができた。
 以上の理由から,FAG所見を基壁にした新分類を提案した。

糖尿病性網膜症—光凝固の網膜毛細血管網に及ぼす影響

著者: 岡田むね子 ,   田村正

ページ範囲:P.451 - P.456

 増殖型糖尿病性網膜症患者16名(26眼)において,光凝固の,網膜丘細血管網におよぼす影響について検討した。治療後22眼には,capillary nonperfusing zoneに種々の範囲の毛細血管網の再造影が認められた。再造影された毛細血管網の大部分は,治療前の残存血管網の構造に類似していたが,一部では,血管網を構成する血管の太さ,走行などが正常のそれと著しく異なっていた。前者は毛細血管網の再疎通,後者は再形成の所見と考えられた。以上の結果から,光凝固は,網膜毛細血管網の流通性にも著しい効果を持つものと結論した。

糖尿病性網膜症と赤血球中2・3—DiphosphoglycerateおよびHemoglobin A1cとの関係

著者: 荒木實

ページ範囲:P.457 - P.462

 2年以上内科医による正規の治療を受けている糖尿病性網膜症121例について,hemoglobin (Hb A1c)および赤血球中2・3—Diphosphoglycerate (2・3—DPG)を同時測定し網膜症との関係を事調査し次の結果を得た。網膜症は非増殖性網膜症(A群63例),前増殖性網膜症(B群27例),および増殖性網膜症(C群31例)の三群に分類した。
(1) BおよびC群のHb A1c levelは,A群のそれより有意に高値を示した。一方,赤血球中2・3—DPG levelはBおよびC群においてA群のそれより有意の低値を示した。
(2) Hb A1c/2・3—DPGはBおよびC群において,A群のそれより有意の高値を示した。
(3) A群のHb A1cと2・3—DPGの相関は有意に存在したが,BおよびC群では,その相関は失調した。
 このHb A1cと2・3—DPGの相関の失調が,網膜のhypoxiaを増進し,増殖型の網膜症に進行したものと考えられた。

糖尿病性網膜症者の血液性状

著者: 小原喜隆 ,   油井秀夫 ,   門屋講司 ,   波紫秀厚 ,   大村まゆみ ,   一迫浄 ,   田沢豊

ページ範囲:P.463 - P.468

 糖尿病に合併する細小血管症の発生機序に血液性状の変化が関与していると考え,血糖値が安定している40〜60歳の外来患者を非網膜症糖尿病,単純性網膜症ならびに増殖性網膜症の3群に分け,血腋を血液レオロジー学的ならびに過酸化反応を指標とした生化学的に分析し,次の結果を得た。
(1)赤血球抵抗は抵抗幅が糖尿病群でわずかに増大していた。
(2)血腋浸透圧は糖尿病群で増大したが,その増大は増殖性網膜症群で明らかであった。
(3)血液粘稠度は糖尿病群で高い値を示し,特に増殖性網膜症群で著明であった。
(4)血清のvitamin E含有相よ糖尿病群で上昇したものの,β—リポ蛋白に対する含有量は単純性網膜症群でわずかに減少し,増殖性網膜症群では明らかに減少を示し,脂質のvitamin E保持能力が低下していた。
(5)脂肪酸組成は,血清ではC16:0, C18:1,C18:2が,赤血球ではC16:0, C18:0, C18:1,C18:2, C20:4が主要構成成分であり,血清ならびに赤血球共に糖尿病で不飽和脂肪酸が増加していた。
(6)血清の過酸化脂質は糖尿病群で上昇しており,対照群に比較してその上昇率は非網膜症群ならびに単純性網膜症群で約29.2%,増殖性網膜症群では35.6%であった。

外眼筋の形態学的研究—第1報正常眼外眼筋厚度の超音波生体計測

著者: 小松章

ページ範囲:P.469 - P.474

 外眼筋厚度の超音波計測を,聖マリアンナ医大式眼科川高解像度超音波診断装置(ZD−252)とスキャンコンバータを使用して行い,以下の結果を得た。
(1)基礎実験として,屍体眼10例の眼窩の水平断面と矢状断面の各5例ずつにおいて,水浸法Bスキャン法での観察と,Aモード法による4直筋厚度の超音波計測を行い,解剖学的実測値と比較検討した。その結果両者の間には,推計学的検定の結果,有意の差はみられず両者の計測結果に密接な一致を認めた。
(2)正常眼の外限筋厚度の超音波Aモード計測を,健常者5〜80歳の160名320眼に対し,5M Hz,10M Hzおよび15M Hzのニオブ酸リチウム振動子ならびにPZT凹面振動fを使用し行った結果,成人240眼では外眼筋厚度の平均値は,内直筋3.5±0.24mm,外直筋3.4±0.26mm,上直筋3.3±0.35mm,下直筋3.4±0.28mmであった。また,年齢,性,身長,体重などと,各々の外眼筋厚度との間には,相関を認めず,正常眼の4直筋の超音波計測平均値を,上記のごとく算出しえた。

超音波診断における眼部画像処理と臨床的意義—第10報輪郭線抽出と三次元表示

著者: 平野史郎 ,   山本由記雄 ,   菅田安男 ,   富田美智子 ,   鏑木ふく代 ,   岡田栄子 ,   高山博子 ,   松尾キミ

ページ範囲:P.475 - P.480

 新たに開発した256階調カラースケール表示の機能をもつ,マイコン内蔵超音波診断装置を用いて,眼部Bモード断層像の輪郭線抽出表示および三次元表示を試みた。
 新しいカラースケール表示法は,これまでの8階調カラー表示と比べて,階調わけが,はるかに細かくなっただけでなく,色の3要素をすべて用い,エコーレベルの強さに応じて色調が連続的に変化して行くために,自然で分りやすく,連続性の強い画像表示法である。
 三次元表示の方法は,1mm間隔で,12枚の連続水平断層像を,デジタル画像としてマイコンを介してカセットテープに収録し,コンピュータを用いて,テンプレートによる平滑化,ラプラシアン処理による輪郭線の抽出を行い,輪郭線画像(線画)をつくり,これを順次重ね合わせて線画の重ね合わせ画像とし,さらに白黒の濃淡を各線画ごとにつけて面画とし,面画の重ね合わせ画像として濃淡奥行き画法による三次元画像を作成した。
 さらにまた面積および体積の計測を行った。面積の計測は,輪郭線で囲まれた内部の画素数を数えることによって行った。体積の計測は,連続断層像における1枚ごとの面積を積算することによって近似的に計算した。
 この方法により,種々の眼部病変を可視不可視を問わず,立体的に観察することが可能になった。また,眼部病変の二次元的および三次元的な定量が行えるようになった。

色素上皮のパターンジストロフィの分類

著者: 湯沢美都子 ,   F.Deutman

ページ範囲:P.485 - P.489

 色素上皮の模様ジストロフィは筋緊張性ジストロフィに伴うものと,全身異常を伴わないものに大別でき,さらに後者は常染色体劣性遺伝性のものと常染色体優性遺伝性のものに分類できる。常染色体劣性遺伝性のものはSjögrenの網状ジストロフィに相当し,常染色体優性遺伝性のものは,黄斑部に蝶形,巨大網状,網状,顆粒状など種々の模様の色素沈着を呈する黄斑ジストロフィである。また,常染色体優性遺伝性のものに似た色素沈着を呈する散発例も存在する。

学術展示

ベーチェット病患者のLecithin:cholesterol acyltransferase

著者: 大口正樹 ,   田中邦枝 ,   大野重昭 ,   耿力

ページ範囲:P.490 - P.491

 緒言われわれはベーチェット病の病態と」血清脂質との関係について検討し,総コレステロール,中性脂肪,リン脂質は本病患者と正常人との間に大差はみられないが,流血中の脂質の存在型であるリポ蛋白の検討において,本病患者ではβ—リポ蛋白に高値を示す例が多く,逆に高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)は正常人やサルコイドーシス,Vogt—小柳—原田病患者に比して有意に低い値を示すことを報告した1,2)
 今回は本病患者の脂質についてさらに検索を進めるために,高比重リポ蛋白の生成に密接な関係を持っているLccithin:cholesterol acyltransferasc (LCAT)を測定し,同時に測定したHDL-Cとの関係についても検討したので報告する。

網膜下液の生化学的研究—3.Uveal effusionの網膜下液(続報)

著者: 佐藤佐内 ,   芦谷序子 ,   菅野馨 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.492 - P.493

 緒言uveal cffusionは無裂孔性網膜剥離を特微とする疾患であり,本邦でも種々の報告がなされている。しかし,本疾患の本態は明らかではなく,網膜下液に関する報告もきわめて少ない。
 著者ら1)Dは先にuveal cffusionの症例より得られた網膜下液の蛋白成分について報告した。今回はさらにly—sosome酵素の一つであるα—L-fucosidaseの活性および分子量について検討したのでここに報告する。

肉芽腫性ぶどう膜炎に見られる毛様体帯の過蛍光点

著者: 木村良造

ページ範囲:P.494 - P.495

 緒言肉芽腫性ぶどう膜炎による前房隅角病変についてはよく知られているが,螢光血管造影法を用いて行われた研究は著者の報告1)が内外において唯一のものである。同報告1)で著者は肉芽腫性ぶどう膜炎の際に毛様体帯にみられる過螢光点をはじめて記載したが,その本態に関して論及するまでにはいたらなかった。今回は未解決のままに残った毛様体帯の過螢光点の解明を目的とした。
 対象および方法当科を受診した眼サ・レコイドージス8例8眼,疑結核性ぶどう膜炎2例2眼,およびVogt—小柳—原田症候群1例1眼を対象とした。各対象とも十分な全身的および眼科的検査ののち,著者の方法2,3)により前房隅角螢光血管造影を施行した。眼手術や眼外傷などの既往を有する例は対象より除外した。

眼窩壁骨折におけるCT検査の重要性

著者: 三木弘彦

ページ範囲:P.496 - P.497

 緒言近年,眼外傷の増加と共に眼窩壁骨折の患者は増加する傾向がみられる。眼窩壁骨折の確定診断は時として難しい。従来の単純レソトゲン,断層レントゲン検査所見が有力な診断の根拠となる。ところで,一般に骨折の診断にはCT検査(ComputerizedTomography)はあまり有用ではないと考えられており,眼窩壁骨折の診断にはCT検査所見は重要視されていない。今回,orbital blowout fractureを含む限窩壁骨折の患者につき,従来のレントゲン検査所見とCT検査所見を詳細に検討してみたところ,CT検査は眼窩壁骨折の診断に有用であることが分ったので報告する。
 方法と症例確定診断された眼窩壁骨折の22症例23眼につき従来の単純レントゲン,断層レソトゲン,CTの所見を解読し比較を行った。CT検査は水平断と垂直断(冠状断)の2方向で行うのを原則とした。

新しい眼科用超音波診断装置TRISCANの使用経験について

著者: 馬場幸夫 ,   井村尚樹 ,   澤田惇

ページ範囲:P.498 - P.499

 緒言メモリー装置を内臓した眼科領域における最新の超音波診断装置TRISCANを使用する機会を得たので,その臨床的有用性について検討した。
 本装置の特長①A,B,Dモードおよびベクタ「スキャソが可能である。②各モードで像のストップモーションが可能である,,③像をストップさせて.すべてのベクターの検査ができる。④スクリーンは磁力偏差付TVタイプのスコープで,像にゆがみがない。⑤モードはKretztechnik 7200MAと同様にS-shaped amplification1)を採用し,quantitative echographyが可能であり,またdynamic rangeが25dBおよび40dBのlogarithmicamplificationもとり入れている。⑥Bモードディスプレイの時,2個の小さな十字を配置することによって,Bモードで組織間の距離や病変の大きさをmm単位でデジタル表示できる。⑦デジタル表示の眼軸長計測が可能である。以上の様な多くの特長をもった直接型装置であり,これを用いて眼部疾患の検索にあたった。

暗室下眼位の観察

著者: 山本敏雄 ,   前田和子 ,   佐々本研二 ,   田村純 ,   萱沢文男

ページ範囲:P.500 - P.501

 1979年,赤沢・三井ら1)は,斜視の原因と光刺激との関係を研究する目的で,斜視患者の眼位を明室と暗室下で写真撮影をして調べ,外斜位や斜位—斜視の眼位は,暗室下では正位となることを証明した。
 われわれもこの報告に興味を持ち,暗室下眼位を撮影してみたが,赤沢,三井の報告とほぼ同様の結果を得た。しかし,写真撮影のみでは,一瞬の眼位しか知ることができない。もっと精密にしかも継時的にその動ぎを知る必要があると考え,今回,赤外線光電素子を用いたphoto-EOGにて,若干名の正常者および斜視患者の暗室下眼位(水平方向のみ)を観察したので報告する。

正常眼および弱視眼における視力と感度

著者: 乾敏郎 ,   近江栄美子 ,   海老名登柴子 ,   中村孝子 ,   谷塚多江子 ,   植田潤子

ページ範囲:P.502 - P.503

 緒言弱視眼における視感度分布が詳細に検討されているにもかかわらず,視感度が視力とどのように関連しているのか明らかではない。また,弱視限の偏心視力についても十分検討されていない。我々は正常眼および偏心固視眼における偏心視力と感度分布をしらべた。
 方法赤外線Fundus Haplescopeを用いてLandolt視力をしらべる方法およびLandolt環をスクリーンに投影する方法によって,偏心視力(および,その逆数である最小分離閾M.A.R.)をしらべた。Fundus Haplo—scopeを用いる方法ではLandolt環はいわゆるposltlvechartであり,その輝度は1,000asbであった。視感度(今回で増分閾の平方根√ΔIを測定した)は直径4'の視標を用い,極限法によって測定した。すべて背景輝度は10asb,視標の提示時間は200msであった。被験者は正常者4名および偏心固視弱視者7名であった(表1)。

赤外線Fundus Haploscopeによる網膜対応の観察—第5報斜視眼と固視眼の視感度

著者: 近江栄美子 ,   海老名登柴子 ,   中村孝子 ,   谷塚多江子 ,   植田潤子

ページ範囲:P.504 - P.505

 目的日常,斜視を診断し治療方針を決定する場合,まず第1に斜視眼と固視眼を鑑別する必要がある。今回,赤外線fundus haploscopeを用いて,網膜視感度を測定した結果を,外斜視,内斜視,上斜視,などの種々の斜視眼と固視眼について検討した。今回は,特に水平の網膜視感度について報告する。
 症例8歳〜46歳までの斜視患者で,外斜視24例,内斜視4例,上斜視4例である。いずれも手術前の症例であり,異常対応の症例は除外した。

アモバルビタールによる内斜視治療効果(筒井法)のEMGによる解析

著者: 田村修 ,   三井幸彦

ページ範囲:P.506 - P.507

 緒言筒井は内斜視に対してamobarbitalを応用し,斜視角が減少または消失することを報告している1)。一方著者らは全身麻酔下で内斜視患者の水平4直筋のEMGを記録し,内斜視の約70%の者に,全麻下でも両内直筋に異常放電が見られることを報告した2,3)。今回はこの全麻下に見られる両内直筋の異常放電に対してamobarbitalがどのような効果を示すかを検討した。
 実験方法内斜視患者に全身麻酔(フローセン・笑気混合麻酔)をかけて,血圧および脈博が安定した時点でEMGの記録を始めた。

眼窩嚢腫を伴う小眼球の1例

著者: 酒井文明 ,   佐藤昌子 ,   桜木章三

ページ範囲:P.508 - P.509

 眼窩嚢腫を伴う小眼球はそれほど稀な先天異常でもないが,今回,やや非定型的と思われる症例を経験したので報告する。
 症例11ヵ月男児。生来の左小眼球で外来にて経過観察中であったが,左上眼瞼鼻側に次第に増大する腫瘤のために義眼装着が困難となり,腫瘤摘出ならびに結膜嚢形成の目的で1981年6月入院した。生下時体重3,155g,在胎40週。染色体を含む全身検査は正常で,他に奇形は認められない。家族歴,母親の妊娠経過にも特記すべきことはない。

未熟児網膜症予防の目的で行った両眼帯の視機能に対する影響について

著者: 山本節 ,   奥田斗志 ,   文順永

ページ範囲:P.510 - P.511

 緒言未熟児網膜症の発生に光が関与しているか否かを検討するため,1974年7月より1976年6月まで2,000 g以下の低出生体重児について,眼帯を用いて遮光した群と非着用群とに分けて網膜症の発生頻度を調べ,第21回未熟児新生児研究会で報告した。眼帯による遮光の効果はみられなかったが,乳幼児に対する片眼帯は視性刺激遮断弱視を来たすことで知られており,両眼帯の場合も実験的に視機能の発達に異常を来たす可能性のあることが述べられている。
 これらのことから,我々が未熟児に行った両眼帯が視力,斜視の発生,両眼視機能などに,どのような影響を与えているか,先の症例中,追跡調査できた42名の結果について報告する。

連載 眼科図譜・294

眼類天庖瘡

著者: 嶋田孝吉

ページ範囲:P.418 - P.419

 眼類天地瘡(ocular pemphigoid)は,結膜に水疱と潰瘍を形成する慢性の炎症で,多くは両眼に発症する。結膜の充血,カタール症状に始まり,繰返す水疱と潰瘍の形成は,細胞浸潤と結合織の増殖を起こし徐々に結膜は瘢痕萎縮し,強い皺襞を形成,瞼球癒着および眼裂縮小を生ずる。更に併発する涙液の分泌低下により,角結膜乾燥症を生じ,視力は極度に障害される。
 病因は未だ不明であるが,近年,自己免疫疾患との説が有力となった。すなわち.本症疾患の病変部の粘膜基底膜には自己抗体や補体の沈着が認めらね,稀には自己抗体が血中に検出される。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(6)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.512 - P.513

12.南蛮流眼目之書
 南蛮とはもと中国人が南方異民族に対してつけた呼び名であるといわれているが、わが国では16世紀の初め頃からヨーロッパ人を一般に南蛮人と呼んでいたようである。
 1543年にポルトガル船が九州種子島に漂着したのを機に南蛮貿易が開かれ,1584年にはイスパニヤ船などがルソソ島から堺,平戸あるいは長崎などの港に来航するようになっていよいよ盛んとなった。それに伴ってもたらされたのがいわゆる南蛮文化,つまりポルトガル文化を中心とする西欧文化である。

臨床報告

エリスロマイシン・コリスチン点眼液の基礎的検討

著者: 塩田洋 ,   近藤千代 ,   小川剛史 ,   徳原初恵

ページ範囲:P.515 - P.518

(1)現在眼科領域で最も広く使われている抗生物質の一つであるエリスロマイシン・コリスチン(エコリシン®)点限液について,従来行われていなかった基礎的な検討を加えた。
(2)本剤を1日9回5日間家兎に点眼した後,角膜表層を走査型電子顕微鏡で検査した結果,エコリシン®)点眼液は角膜表層に何らの障害をもおこさないことを確認した。
(3)エコリシン®)の点眼は動物において,ムチン添加法によって接種した強力な緑膿菌感染に対しても,完全な発症阻止効果があることを認めた。

Orbital hypertelorism (眼窩隔離症)に対するcranio facial surgeryによる眼窩周囲骨切り術の経験

著者: 酒井成身 ,   荻野洋一 ,   太根節直 ,   上石弘

ページ範囲:P.519 - P.523

 我々は14歳女子の顔面に重度の醜形を呈する眼窩隔離症に対し,頭蓋内アプローチにより眼窩とその周囲に骨切りを行い,眼窩を内側へ移動固定することにより,満足な結果を得たので,本症例の大要を報告し,特にその手術手技につぎ検討を加えた。

眼類天疱瘡の2症例

著者: 嶋田孝吉

ページ範囲:P.525 - P.530

 病理学的および免疫学的に眼類天疱瘡と診断された2症例を報告した。
 2症例共,両眼に結膜の強い癒着・瘢痕萎縮による皺嚢形成,瞼球癒着を起し,角膜は全面にわたり肉芽組織により覆われていた。このため視力は極度に低下しており,代用涙液およびステロイドの点眼,ならびに角膜移植により視力の回復を得た。病理検査にて,結膜には上皮下に水疱が認められ,症例2では,結膜の基底膜に自己抗体の沈着が螢光抗体法により確認された。しかし,血清中には,両症例共,皮膚粘膜に対する自己抗体は検出されなかった。

GROUP DISCUSSION

弱視斜視

著者: 加藤和男

ページ範囲:P.532 - P.534

 昭和56年11月23日午前,帝国ホテル富士の間で行われたが,演題数も多く討論も活発であった。紙面の都合上,抄録全文をのせる余地がないので各演題の要点と討論者名のみを記す。詳細は日本弱視斜視学会報(第18巻4号)を参照されたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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