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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科36巻6号

1982年06月発行

文献概要

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 学会原著

脳卒中における障害脳動脈と眼底所見の関連性について

著者: 中尾雄三1

所属機関: 1国立循環器病センター

ページ範囲:P.545 - P.549

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 脳梗塞と脳出血の患者について障害脳動脈と眼底所見の関連性を検討し,以下の結果を得た。
(1)穿通枝系動脈の脳梗塞患者と脳出血患者では高血圧症の合併率が高かった。穿通枝系脳梗塞患者の多くは罹病期間8年以上の高血圧症を合併し,穿通枝系脳出血患者の多くは高度の高血圧症を合併していた。
(2)脳梗塞患者の眼底所見のうち,網膜動脈硬化性変化Ⅱ度以上の出現頻度は穿通枝系脳梗塞患者で高く,皮質枝系脳梗塞患者では低かった。特に高血圧症の罹病期間が8年以上の穿通枝系脳梗塞患者で高く,高血圧症を合併しない皮質枝系脳梗塞患者で低かった。
 また高血圧性変化Ⅱ度以上の出現頻度は皮質枝系脳梗塞患者に比べて穿通枝系脳梗塞患者の方がやや高かった。しかし,網膜動脈硬化性変化ほど両脳梗塞患者間に差はなかった。
(3)穿通枝系脳出血患者の眼底所見のうち,高血圧性変化Ⅱ度以上の出現頻度はいずれの脳梗塞患者よりもはるかに高く,特に高度の高血圧症合併例では高かった。しかし,網膜動脈硬化性変化Ⅱ度以上の出現頻度は高くなかった。
 以上の結果から,次の結論を得た。
(1)眼底の網膜動脈硬化性変化は長期間の高血圧症を共通の因子として,穿通枝系脳梗塞には関連性をしめすが,皮質枝系脳梗塞には関連性をしめさない。
(2)眼底の高血圧性変化は高度高血圧症を共通の因子として穿通枝系脳出血に関連性をしめす。
(3)眼底検査は脳動脈のうち,穿通枝系動脈の病変を推察するうえで臨床上,有力な手段である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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