icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科36巻7号

1982年07月発行

文献概要

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その4) 学会原著

トラベクレクトミー術後の脈絡膜剥離発生について

著者: 内野允1 吉田公雄1 江川知子1 安田典子1 永楽皓人1 神力忍1 景山万里子1

所属機関: 1東京警察病院眼科

ページ範囲:P.743 - P.748

文献購入ページに移動
 Trabeculectomyと白内障手術の術後経過を観察し術後の脈絡膜剥離発症の様態を調べた。Trabeculectomyでは27眼中15眼56%に脈絡膜剥離の発症がみられたが,白内障手術では74眼中3眼4%に認められたのみであった。Trabeculectomy後多くは2〜4日目に発症し,10日間ほど継続して急速に消褪した。前房深度の平均減少率は発症眼で44%,非発症眼でわずか1%であり,眼圧の平均値は前者で2.8mm,後者で6.4mmHgであった。手術による隅角部組織切除片の大きさと脈絡膜剥離発症との間に相関は認められなかった。発症した全例は散瞳薬とステロイドで治療し,手術的操作は必要とせず重篤な合併症へ進展するものはなかった。脈絡膜剥離の発症には手術による炎症と低眼圧が不可欠因子であるのはもちろんであるが,Trabeculectomy後の発症眼では非発症眼にくらべ,浅前房,低眼圧の程度が極めて強いことから,濾過口形成がこれに最も大きく関与しているものと考える。術後精密に検査をすればTrabeculectomy後の脈絡膜剥離発生は,今までに報告されているものよりはるかに頻度の高いものであることを強調したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?