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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科36巻7号

1982年07月発行

文献概要

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その4) 学会原著

Tilted disc syndromeに関する研究—変視症について

著者: 張由美1

所属機関: 1東京医科歯科大学眼科学教室

ページ範囲:P.782 - P.789

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 従来報告をみないtilted disc syndromeに伴う変視症について検討した.対象はtilted disc syndromeを呈する52名86眼とした。この中,変視症を自覚した7名10眼を含む38名65眼につき,螢光眼底撮影を施行した。
(1)65眼中14眼(21.5%)では黄斑部付近にある下方ぶどう腫の辺縁の一部に,斑状または帯状をなす顆粒状の過螢光が認められた。この顆粒状過螢光は色素上皮層が主に障害されるものから脈絡膜毛細血管板の萎縮まで,程度の違う変化であった。
(2)変視症のある10眼は前述した顆粒状過螢光のある14眼の中に含まれた。この10眼中8眼では経過中に変視症は消失した。このうちの3眼は顆粒状過螢光の中に一部螢光のleakageがみられ,leakageの消失に従って,変視症の症状の改善が認められた。したがって,tilted disc syndromeに伴う変視症の原因は単なるぶどう腫の形態的変化による網膜像の歪みよりも,ぶどう腫により生じた網膜色素上皮層の障害に起因する一過性の網膜浮腫によると思われた。
(3)変視症の発症年齢および病態より,本症は漿液性中心性網脈絡膜症と同様であるが,両者の相異点は本症では広範囲の色素上皮層の障害が基板にあることと考えた。
(4)網膜皺襞は9名12眼に認められたが,変視症と直接の関係はなかった。
(5)変視症はtilted disc syndromeの合併症の一つと考えて良いと思われた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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