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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科36巻8号

1982年08月発行

雑誌目次

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その5) 学会原著

Leber's congenital amaurosisについて

著者: 濱田恒一 ,   小口芳久 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.849 - P.854

 1973年7月より1981年6月までの8年間に当科を初診し,Leber's congenitalamaurosisと診断された22症例につき検討した。性別は男子10例,女子12例であり,初診年齢は6歳未満が16例(73%)を占めており,主訴は視力障害が21例(95.5%),眼振が1例(4.5%)であった。親が視力障害に気付いたのは全例乳児期であった。視力は全例0.1以下で,重篤な視力障害を示した。差明を呈するものが3例(14%),眼振を呈するものが8例(36%)で,指眼症候を10例(45%),眼振様運動を6例(27%)に認めた。眼底所見は正常より定型的網膜色素変性症の所見を呈するものまで,多種多様な所見を呈した。ERGは全例に施行し,3例(14%)に著明な減弱を認め,他の19例(86%)には反応を認めなかった。精神発達遅延の合併は6例(27%)に認められ,家族歴のあるものは6例(27%)であった。

網膜芽細胞腫の放射線療法について

著者: 安慶名康壽 ,   恵美和幸 ,   春田恭照 ,   真野富也 ,   中尾雄三 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.855 - P.859

 過去5年間に治療した網膜芽細胞腫23例27眼の臨床所見と経過について,網膜芽細胞腫の治療における放射線療法の臨床的意義につき再検討した。放射線療法をしなかった症例に眼窩内再発をみとめたり,眼球摘出に放射線療法を併用した群でも3例に死亡例をみとめた。病理組織学的には23例中4例に眼窩内浸潤をみとめた。両眼性の症例では,第1眼を摘出し第2眼に放射線療法を行った症例では,白内障がみられたが,眼球摘出せずにすんだ。腫瘍塊が小さければ,放射線療法と光凝固僚法による保存的療法が有効であった。

網膜色素線条症の黄斑部合併症

著者: 青木順一 ,   西尾セルジオ

ページ範囲:P.861 - P.869

 網膜色素線条症23例46眼を対象に,検眼鏡的観察,三面鏡を用いた細隙灯顕微鏡観察,および螢光眼底造影を行い,そのうち視力障害を伴う黄斑部異常について検討した。
 視力障害の白覚は40歳代に最も多く始まり,受診年代は40歳代および50歳代が最も多く,15例,65%であった。
 黄斑部異常は男子は網膜色素線条20眼中14眼,女子は26眼中6眼にみられ,両眼性は男子6例,女子2例であった。黄斑部異常は,検眼鏡的に3型に分類された,第1の型は黄斑部の出血,第2型は白色の結合織変化である増殖性線維塊,第3型は色素沈着があり,脈絡膜が透見される黄斑部萎縮の3型であり,これを黄斑部合併症とした。
 黄斑部合併症のうち,第1の型の出血は8眼にみられ,螢光眼底造影により,全眼に脈絡膜を由来とする網膜下新生血管網が証明され,この出血は,7カ月から10カ月後には全例増殖性線維塊に変化した。第2型の増殖性線維塊は,初診時既に完成した形では4眼にあり,さらに,経過観察中黄斑部出血から発展したものが8眼加わり,計12眼にみられた。螢光眼底造影では,黄斑部に新生血管が証明されるとともにfibrovascular membraneが認められた。第3型の萎縮は8眼にあり,増殖性線維塊がなく,螢光眼底造影では,新生血管網は造影されないが,黄斑部萎縮にもとづく脈絡膜血管の造影が顕著であった。

先天性眼振の病態に関する神経放射線学的研究

著者: 羅錦營

ページ範囲:P.871 - P.877

 先天性眼振60例(衝動型40例,振子様型20例)について,CT検査を行い,次の知見を得た。
(1) CTで明らかに脳内異常所見を認めたものは約50%であった。
(2)振子様眼振は衝動性眼振に比べて,CTによる異常率は高い。
(3) CT所見としては脳皮質萎縮,正中過剰腔,脳室拡大,脳幹萎縮等が認められた。
(4)出生順位では第1子と第2子との異常率は同じであった。
(5)先天性眼振の発生には胎児期または周産期の異常による中枢神経系の障害の関与が考えられた。

角膜上皮細胞の病態—Specular microscopeによる観察

著者: 葛西浩 ,   江波戸文秀 ,   崎元卓 ,   北野周作

ページ範囲:P.879 - P.889

 Spccuiar microscopeを用い結膜および角膜表層細胞の生体観察を行った。対象疾患は角結膜乾操症,糸状角膜炎,反復性角膜上皮びらんおよび樹枝状角膜炎,更に角膜浮腫については,水疱性角膜症,緑内障の観察を行い,臨床例,実験例の組織学的検索を行った。
 上皮表層の観察にはRose-Bengal染色を併用し,specular microscope下に認められた細胞の形態とその染色性および反射の異常等について検討を行った。その結果,Rose—Bengalの染色性は細胞の変性時のみならず修復過程にある活動期の細胞においても高まることが判った。また,反射の異常は細胞の剥離状態に応じて種々の程度に認められた。
 角膜上皮の中層或いは深層における細胞の形がspecular microscope下で観察可能なのは角膜浮腫が存在する時であり,この際の細胞間隙を中心とした変化を上皮の水平断による組織所見と比較し検討を行った。

増殖性糖尿病性網膜症に対する冷凍凝固術後に生じた特異な周辺部牽引性網膜剥離

著者: 西川憲清 ,   田野保雄 ,   山本保範 ,   石本一郎 ,   明石伸子 ,   福田全克

ページ範囲:P.891 - P.895

 周辺部より輪状に牽引性網膜剥離が発生したと考えられる糖尿病性網膜症6例6眼について検討を加えた。
(1)全例,剥離発生前に冷凍凝固術を受けていた。
(2)超音波像においても,周辺部に硝子体牽状物の陰影とともに網膜の挙上を認めた。
(3)術前および術中に,周辺部に円形ないし楕円形裂孔を3眼に認めた。
(4)治療は極めて困難で,視力予後は極めて不良であった。
(5)増殖性糖尿病性網膜症に対する盲目的な冷凍凝固は極めて危険であると考えられた。

保存的療法を施行された網膜芽細胞腫患児の視機能

著者: 箕田健生 ,   赤沢和美 ,   首藤公子 ,   清水公也 ,   青木恵子 ,   溝渕京子

ページ範囲:P.897 - P.902

 保存的療法を施行され,満5年以上経過した網膜芽細胞腫患児30例(32眼)の視機能を検討し,次の結果を得た。
(1)視力1.0以上が7眼(22%),0.9〜0.3が10眼(31%),0.2〜0.1が6眼(19%),そして0.1未満が9眼(28%)であった。
(2)保存療法眼の視力予後は腫瘍の大きさと,腫瘍が黄斑を含むか否かによって大きな影響を受けた。
(3)放射線の照射量が4,500 rads以上の例では,視力は全て0.1未満となり,また全例にERGの異常所見と白内障の合併がみられた。
(4)屈折は23眼中,13眼(57%)が遠視性乱視で最も多かった。

第一次硝子体過形成遺残に関する統計的考察

著者: 神園純一 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.903 - P.908

 第一次硝子体過形成遺残の研究のために,その臨床的実態を明らかにする目的で,慶大眼科において1973年7月より1981年6月までの8年間に経験した63症例,77眼について統計的観察を行なった。その結果は次のごとくである。性別は男子に多く,女子の約2倍にみられ,片眼性の症例は77.8%,両眼性は22.2%であった。Type別にみるとAnterior Type 44.4%, Intermediate Type 28.6%, Posterior Type 22.2%であった。
 超音波検査をAnterior Typeの症例に施行した結果,従来Anterior Typeとされているものの37.5%にIntermediate Typeが存在していることを明らかにした。ERG, VEPの検査によりAnterior Typeにおいても網膜,視路の機能障害を高率に認めた。このことは,治療,予後にはもちろんのこと本症の病態を研究する上に注目すべき事実である。従来Anterior Typeは,その大部分は緑内障を併発し眼球癆におちいると報告されてきたが,今回の観察では,それぞれ3例にすぎず,また網膜芽細胞腫と誤診し眼球摘出をした症例もなかった。

瘢痕期未熟児網膜症に合併する網膜孔形成と網膜剥離の治療成績について

著者: 鎌尾憲明 ,   馬嶋昭生 ,   田中純子 ,   加藤寿江

ページ範囲:P.909 - P.914

 1975年8月から1981年10月までの間に名市大眼科で網膜孔または網膜剥離を合併したために治療を行った瘢痕期未熟児網膜症が17症例あり,これらにつき検討し,次の結果を得た。
(1)両眼性が多い(70.6%)。(2)在胎期間32週以下,生下時体重1,500g以下が多い(それぞれ82.4%)。(3)軽度の瘢痕を認めるものが多い。(4)中等度以上の近視が過半数を占める(52.0%)。(5)学童期に発病しやすい(88.2%)。(6)網膜孔は耳側周辺部網膜に発生しやすい(68.9%)。(7)網膜孔は赤道部の白色瘢痕組織に近接して発生しやすい(62.0%)。

未熟児網膜症手術治療例の遠隔成績

著者: 玉井嗣彦 ,   伊与田加寿 ,   上野脩幸 ,   野田幸作 ,   岸茂

ページ範囲:P.915 - P.923

 光凝固,冷凍凝固および両者併用のいずれかの手術治療をうけた未熟児網膜症患者22例35眼の瘢痕期病変を観察し,可能なかぎり視機能の評価を試みた。観察期間は術後最短1年,最長9年半であった。
 術後眼底所見のうち,凝固瘢痕のみ,または凝固瘢痕+瘢痕期I度(鳥大変法,以下同様)の"著効"は35眼中25眼の71.5%,凝固瘢痕+瘢痕期II度の"軽快"は35眼中6眼の17.2%に認められた。
 視力に関しては,瘢痕期I度までであれば比較的良好な視力が得られたが,屈折異常の点では瘢痕期病変だけでは整理がつかない結果となった。
 眼位は27治療眼中24眼の88.9%,固視は17治療眼中14眼の82.4%,視野は11治療眼中6眼の54.5%に正常であったが,視野に関しては必ずしも正確な情報が得られたとはいえない。
 本症に対する手術療法の視機能におよぼす影響は複雑で,なお長期の観察が必要である。

上斜筋麻痺の手術療法に関する研究—第2報上斜筋麻痺における麻痺眼上直筋後転法の効果

著者: 市川理恵

ページ範囲:P.925 - P.932

 麻痺眼下斜筋減弱術を含め,麻痺眼上直筋後転術を行った上斜筋麻痺24例(平均年齢6歳)を術後1〜7年(平均2.8年)経過観察し,術後成績を検討したところ以下の結果を得た。
(1)術後の診断的むき眼位検査(Synopt.9方向眼位19名と,PDH融像背景下13.2°上下3方向眼位9名)において,第1眼位と各むき眼位との間に,上直筋後転による上下回旋偏位の有意な差はみられなかった。
(2)患眼上直筋後転量の指標としてPB量(第1眼位とBHTT麻痺側頭傾時とにおける垂直偏位量の和)を用いた。
(3)上斜筋麻痺の手術療法として,PB量を指標にし,下斜筋減弱術と上直筋後転同時手術を行うなら,優位眼側にかかわらず,PB量11Δにつき1mmの割合で上直筋を後転し,2次手術で行う場合は,優位眼麻痺群は8Δにつき1mm,NDEP群は9Δにつき1mmの上直筋後転量で有効であった。
 下斜筋過動症がなければ,非優位眼麻痺群で5Δにつき1mmの上直筋単独後転で有効であった。

下斜筋過動を伴うV型外斜視の手術の量定について

著者: 坂上達志 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.945 - P.950

(1)下斜筋過動を伴い下斜筋過動以外の上下斜視,眼疾患,顔面骨奇形などを合併しないV型外斜視40例中,水平筋手術および下斜筋減弱術を併用し,V型が消失した31例について量定を検討した。
(2)1眼下斜筋減弱術によるeso shiftは,平均第一眼位で2.19°,上むき20°で4.32°であった。
(3)外直筋後転術の効果の平均は1.03°/mmであった。
(4)下斜筋減弱術を併用する場合の外直筋後転術の量定は,下斜筋減弱によるeso shiftを差し引き,残りの斜視角に対するおよそ1.5°/mmが適当である。

まわし眼位に関する研究—第二報Fundus Haploscopeによる斜視患者のまわし眼位の計測

著者: 高橋総子

ページ範囲:P.951 - P.956

 Fundus Haploscopeおよび座標読取装置を用い,眼底像において乳頭重心と固視点を結ぶ線と水平線のなす角(P-F角)を測定し,前報における正常者の測定結果と斜視想者の結果とを比較検討した。結果は次のごとくであった。
(1)水平斜視におけるP-F角は,正常者のP-F角に比し,値のバラツキが大きかった。
(2)上下筋異常例においては,大部分の症例では,異常筋のもつまわし作用に応じて外まわしずれあるいは内まわしずれを認めた。しかし,なかには眼筋のまわし作用から推察されるまわしずれとは反対のまわしずれを示す例も認められた。
(3)上下直筋の異常例でもかなり大きなまわしずれを認めた。

両鼻側半盲を示したprimary empty sella syndromeの3例

著者: 後長道伸 ,   三嶋弘 ,   調枝寛治 ,   太田正博 ,   迫田勝明 ,   森信太郎 ,   魚往徹

ページ範囲:P.957 - P.962

 両眼の視力低下と界側半盲を主症状としたprimary empty sella syndromeの3症例について報告した。
 Empty sellaによってひきおこされた視神経・視交叉の解剖学的偏位を正常化し,視障害を改善させるために行った経蝶形骨洞法によるトルコ鞍内筋肉片充填術により,3症例すべてに視力・視野の改善が得られた。
 Primary empty sella syndromeに伴った両鼻側半盲の発生機転について考察を行った。

電流刺激による瞳孔反応(Electrically Evoked Pupillary Reflex, EEPR)の臨床的応用

著者: 谷野洸 ,   堀内一郎 ,   栗原和之 ,   川澄正史

ページ範囲:P.963 - P.968

 電流刺激により誘発される瞳孔反応(Electrically Evoked Pupillary R-eflex,EEPR)の反応量と周波数特性について正常被験者と視神経疾患患者において分析した。正常被験者において周波数特性曲線は18Hzに頂点を有する逆U字型を示した。片眼性視神経萎縮の1例において患眼刺激時には健眼のEEPRは得られないが健眼刺激時には患眼に良好なEEPRが観察された。球後視神経炎の活動期には周波数の全域においてEEPRの反応最の低下がみられ,周波数特性曲線の平担化がみられた。全般的な視機能の改善とともに反応量は増大し,曲線も尖鋭化した。視力不良な視神経疾患においてEEPRの反応量は低下し,特に高度な視力障害例ではEEPRの異常も著明である。
 EEPRは眼底観察不能な眼における視機能の評価に有用であり,EEPRの周波数特性を分析することは視神経疾患の病態を理解する上に意義のある方法と考えられる。

視神経疾患における瞳孔対光反応と視機能

著者: 鵜飼一彦 ,   村瀬俊 ,   石川哲

ページ範囲:P.969 - P.972

 瞳孔escape現象は,視路の疾患の一つの症候として良く知られている。特に視神経の疾患においてこの現象は顕著である。一方,視神経疾患の別の症候として昼盲が知られている。この現象はEnochらにより視覚疲労現象として詳細に解析されている。
 我々はこの2現象を約30名の視神経疾患に対して測定した。視覚疲労現象はCFFの自覚的測定を連続的に行い測定した。その結果,瞳孔escapeが量的に大きい患者では視覚疲労も量的に大きいことが判明した。この両現象は,視神経における類似の機能異常であると考えられる。

学術展示

CO2レーザー手術装置を用いた脈絡膜悪性黒色腫の眼球摘出

著者: 菅順子 ,   寺西秀人 ,   今田直基 ,   高橋秀児 ,   小林俊策

ページ範囲:P.974 - P.975

 緒言脈絡膜悪性黒色腫は,診断を確定したならば,眼球を摘出するのが従来の標準的な治療法である。しかし,予後は一般に不良で,5年治癒率は,平均50%とされている。Fraunfelderら1)は,眼球摘出中の眼内圧変動を測定し,種々の手術操作による急激な眼内圧上昇が,腫瘍細胞の転移を誘発するとしている。我々は今回,脈絡膜悪性黒色腫の1例に遭遇し,CO2レーザー手術装置を利用して,眼球を強く圧迫せずに眼球摘出術を行うことができたので,ここにその術式および若干の考察を述べる。
 症例S.A.,26歳,男子。

Multiple mucosal neuromaの1例

著者: 菅原正容 ,   大西正一 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.976 - P.977

 緒言Multiple mucosal neuroma (MMNと略)は,甲状腺髄様癌,褐色細胞腫,粘膜神経腫を合併する稀な疾患である。今回,著者らは両眼眼瞼腫瘤を主訴として当科を受診し,MMNと診断された1例を経験し,眼瞼の腫瘤を組織学的に検討したので報告する。

眼瞼部に発生したimmunoblastic sarcomaの1例

著者: 根本慧子 ,   根本啓一

ページ範囲:P.978 - P.979

 緒言免疫学の急速な進歩とともに,悪性リンパ腫においても概念の変革が余儀なくされ,種々の新分類が試みられ本邦においてもわが国のリンパ腫に適した分類が提案されている1)(表1)。眼科領域においてはリンパ系腫瘍が比較的多いにもかかわらず,その病理組織診断が困難なことも多いためか2,3),その治療,予後について系統的な報告が少ない。著者らは眼瞼部に発生した悪性リンパ種で,LSG分類のびまん性,大細胞型の中の免疫芽球型の1例を経験したので,その臨床および病理所見について報告する。
 症例症例は71歳男,家族歴,既往歴に特記すべきことなし。1977年8月,右下眼瞼の腫瘤に気づき摘出術を受け,組織学的に悪性リンパ腫と診断された。眼科的には視力右0.7(矯正0.9),左1.0(矯正1.2)と良好で老人性白内障以外著変を認めず,リンパ節腫脹や肝脾腫はなく,血液学的にも異常を認めなかった。1977年10月右上眼瞼、1978年7月右下眼瞼〜眼窩に再発したがその都度腫瘤を摘出し,1977年には同時発生した直腸癌の手術を受けた。直腸癌は高分化型腺癌で,全摘可能であった。その後,V-E療法,エンドキサソ50mg/dayの維持療法で経過良好であったが,CEAが最高20.6ng/mlまで上昇し,心嚢水の貯溜のほか,末期には脳卒中様症状を呈し死亡,全経過3年6ヵ月であった。解剖はできなかった。

先天性眼瞼下垂two stages吊り上げ法

著者: 新冨芳尚 ,   大浦武彦 ,   松本敏明 ,   石川隆夫

ページ範囲:P.980 - P.981

 緒言先天性眼瞼下垂に対する手術法はいろいろあるが,いずれの方法にせよ問題となるのは術直後の状態がそのまま持続しにくい点にある。したがって良い結果を得るには長期の経過を見越した手術計画が必要で結局術者の経験と熟練によって大きく左右されることになる。この点に関し,first stageで大腿筋膜を用いて吊り上げの準備をしておき,second stageで健側と患側を見比べながら吊り上げるという我々が試みたtwo stagesに分ける方法は誰にも容易にでき,しかも結果も満足すべきものであったので報告する。
 方法第一次手術(図1,2,3,4):吊り上げに用いる大腿筋膜は単眼につき1.2cm×4〜5cmあれば十分で,採取に際しては小さい縦切開のみでよい。

ソフトコンタクトレンズの終日装用および連続装用における点眼剤使用の効果

著者: 岩崎和佳子

ページ範囲:P.982 - P.983

 ソフトコンタクトレンズ(以下SCLと略)は,高含水率であるほどPore1)サイズが大きく水分の蒸発および酸素2)の供給が盛んである。またこれにより角膜へおよぼす影響も大きい3)
 Extended-wear4〜8)で一番問題なのは,Protein deposits,その他の汚れがlow water9〜13)contact lensよりも早く付着するといわれる。また瞬目が不完全で少ない人(高年齢者は一般に瞬目が少ない)は,ハードコンタクトレンズでも,SCLでも苦情が多く,角膜びらんを下方に生じやすいのはよく知られている。

連載 眼科図譜・297

発症初期より経過観察できたStargardt's diseaseの症例

著者: 南修一郎 ,   早川むつ子 ,   加藤和男 ,   丹羽康雄

ページ範囲:P.846 - P.847

 緒言Stargardt病は視力低下が始まる時期にいまだ明瞭な眼底所見が出現していないという特有な発症のしかたをするが1,2),我々はほぼ正常眼底からStargardt病の眼底へと進行した男子例と,その姉の典型例を経験したので報告する。

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第36回日本臨床眼科学会総会ご案内

ページ範囲:P.934 - P.943

臨床報告

Sturge-Weber症候群に伴う先天緑内障手術中に出現したexpulsive choroidal effusionの1例

著者: 明尾潔 ,   木村肇二郎 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.985 - P.989

 7歳男児のSturge-Weber症候群に伴う先天緑内障に対してtrabeculectomyを施行中に出現したexpulsive choroidal effusionの1症例を報告した。本症はSturge-Weber症候群に伴う緑内障に炉過手術を施行する際,周辺虹彩切除後に出現しやすいが脈絡膜剥離はほぼ2週間で消失し,視力の予後は良好である。Sturge-Weber症候群を伴う緑内障手術の際には,本症の発症の危険のあることを念頭において対処すべきである。

白血病性視神経症の1例

著者: 転馬圭子 ,   丸尾亨 ,   渡辺弥生 ,   下山哲男 ,   関温 ,   前原幸治

ページ範囲:P.990 - P.992

 完全寛解状態にある急性リンパ性白血病症例に,髄膜浸潤が白血病性視神経症で発症した1例を経験し,寛解期の眼科検査の必要性を強調した。
(1)発症時,片眼性乳頭浮腫・後極部広範囲の刷毛状出血・静脈怒張を呈し,CT所見で患側視神経の肥厚をみた。2カ月後には,動脈の閉塞性変化・視神経乳頭および網膜の萎縮像を呈した。
(2)乳頭浮腫の発生は白血病細胞浸潤に由来し,視機能障害の原因は白血病細胞の視神経への浸潤に加えて,網膜の循環障害が関与していると結論した。

3歳児健康診査における視機能スクリーニング

著者: 神田孝子 ,   川瀬芳克

ページ範囲:P.993 - P.998

 我々は愛知県知多市における3歳児健診でTitmus fly test, Animal test, TNOPlate I,II,IIIの5種のステレオテスト,視力検査,およびcover test, Hirschberg testなどによる眼位検査を用い視機能スクリーニングを試み,その結果につき検討した。
 ステレオテストはいずれも85%以上の子供に検査が可能であり,視力検査は66.9%に,眼位検査は全員に対し検査ができた。
 対象者中検影法,眼底検査その他により正常とされた者の成績によると,TNO Plate IIでは正常者の79.2%が,Fly testでは75.3%,視力検査(0.5以上を正常とした)では67.5%が正常と判定された。また眼位検査は全頻が正常と判定された。しかしTNO Plate I,IIIでは約30%のみが正常と判定されたにとどまった。また異常者の検査結果をみると,今回用いた検査はいずれも単独では異常者の見落しがあることがわかった。
 今回の結果から3歳児健診における視機能スクリーニングにはcover testを中心にした眼位検査と視力検査を組合せて行うのがよいと考えた。

周辺性ぶどう膜炎に伴って発症し,再発を繰り返したacute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy

著者: 金井清和 ,   宇山昌延 ,   越生晶 ,   桑原博子

ページ範囲:P.999 - P.1004

 片眼の周辺性ぶどう膜炎の治療中,他眼にacute posterior multifocal placoidpigment epitheliopathy (APMPPE)をきたし,さらに同一眼に2回本症の再発をみた54歳,女性の1例を経験した。
 全身的一般状態は良好であったが免疫学的異常がみられ,かつ風疹ウイルスに対する抗体価が赤血球凝集抑制反応にて異常な高値を示した。
 われわれは本症の病態は脈絡毛細管板の局所的閉塞による循環障害が主病変であって,網膜色素上皮の病変は二次的なものと考えた28)。さらに本例では慢性ぶどう膜炎が先行していたこと,APMPPEの発症時に前房,硝子体中に炎症細胞がみられたこと,乳頭の発赤をみたこと,および再三再発し,かつそれがステロイド投与によく反応したこと,患者血清に免疫学的異常がみられたことから本疾患の本態は脈絡膜の小血管のレベルに生じた免疫学的炎症であることが示唆された。
 本疾患の原因については諸説あるが,その本態を示唆する症例を経験したので報告した。

GROUP DISCUSSION

色覚異常

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.1005 - P.1007

第1席色覚異常の小・中学生をどうすればよいか
 色弱の色の判別力の程度は10色相の色票の彩度明度を適当に選び,その誤りの様相と色ならべ練習の結果から程度を推定するのが最も適切である。
 77枚の色ならべ練習を色弱の小・中学生に1月1回位の割で行う。10回位で1〜2列ずつ軽くこなせるようになる。これが最も適切な練習方法である。

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1010 - P.1012

 今年の臨床眼科学会は帝国ホテルで行われたので,G.D.も同じ所で開催されたのだが,十分の会場が取れて,総てのG.D.が参加できて誠に結構なことだった。毎年臨眼に参加できるかどうかを心配するのは困ったものである。
 ホテルで学会を行う事の利点は小部屋がたくさん取れるので便利な事と,食事やコーヒーブレイクに都合が良い点である一方欠点は何よりも椅子が悪いことであろう。ホテルの椅子は食事用の椅子なので,一日坐っているには適していない。また会場外で話をするのに部合の良い場所が少ない事で,ホテル側としては会場を出たものは帰る人と思っているらしい。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(9)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1008 - P.1009

17.八幡流眼病極秘書(眼科良方秘伝集)
 八幡流眼科は何時頃何人によって興されたのか明らかではないが,「八幡流眼病極書」はその眼科を伝えるものと思われるのでその資料として紹介する。
 「八幡流眼病極秘書」は95葉,全1冊,毎半葉10行,桂香堂蔵書刷用箋に片仮名交り和文にて墨書された写本であるが,冊子半ばにはその相伝者と思われる名前が以下のように連記されている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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