icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科36巻9号

1982年09月発行

文献概要

特集 第35回日本臨床眼科学会講演集 (その6) 学会原著

眼内悪性リンパ腫によるぶどう膜炎

著者: 宇山昌延1 山下秀明1 加賀典雄1 大熊紘1 越生晶1

所属機関: 1関西医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1166 - P.1171

文献購入ページに移動
 最近10年間に,組織診断の行われた眼内に初発した悪性リンパ腫を4例7眼経験した。患者は中・高齢者で,激しいぶどう膜炎を示し,とくに黄白色の広範囲に拡がる網膜・脈絡膜の濃厚な滲出斑,多量のみぢん状硝子体混濁を主症状とし,やがて虹彩後癒着,虹彩rubeosisと血管新生性緑内障を合併し,数ヵ月で視力が失われた。1例は前房蓄膿と虹彩結節,球結膜下腫瘤,眼球突出を示した。
 この時期には何ら全身症状がなく診断は確定しなかったが,数ヵ月おくれて多中心性に全身に悪性リンパ腫の症状があらわれた。2例は全身哀弱で死亡した。死後剖検(2例),皮膚結節の生検(1例),摘出眼球の検査(2例)により,ぶどう膜炎の原因が2例はlymphocytic lymphoma,2例はhistiocytic lymphoma (reticulum cell sarcoma)であることが判明した。腫瘍細胞はlymphocytic lymphomaではぶどう膜に,histiocytic lymphomaでは網膜に浸潤していた。
 最初の3例は診断困難で失明したが,最近の1例は房水の細胞診を行って本症であることを確認し,眼部へ放射線療法(4,000rads)を行い消炎しえた。
 本症が疑われる原因不明の難治のぶどう膜炎には前房水,または硝子体の細胞診を行い早期に診断を確定し,眼部へ放射線療法を行うのが眼球を救いうる手段としてすすめられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?