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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科37巻10号

1983年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・311

モルガニ白内障の1例

著者: 樋口眞琴

ページ範囲:P.1310 - P.1311

 過熱白内障の被膜が厚く,皮質が液化してくると核が下方に沈み,眼球運動につれ振盪し,これをモルガニ白内障とよんでいる。Brownら1)は本症をさらに三つに分類している。すなわち,①乳状の皮質を伴う膨化した水晶体,②褐色の核を有する古典的なモルガニ白内障,③水晶体線維すべてが吸収されてしまって嚢のみが残ったものの三つである。本症は古い時代にはごくありふれたもので,1764年のモルガニの記載では白内障の一般的経過とみなされているが,手術治療の進歩につれ本症はまれなものとなり,わが国においてもその報告は少ない2)。今回,Brownの分類の②に相当する典型的なモルガニ白内障にぶどう膜炎を合併した例を経験したので報告する。
 症例:66歳女性で,1965年頃より右白内障の診断のもと,近医で治療を受けていたが,約10年前より右視力はほとんどなくなった。1981年9月右充血が出現し,某医にてぶどう膜炎と診断され,治療後一時症状は軽快したが,1982年1月1国より強い充血1と眼痛が再び出現したため1月5日当科を受診した。既往歴,家族歴には特記すべきことはない。

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第87回日本眼科学会印象記

著者: 吉岡久春・他

ページ範囲:P.1313 - P.1339

 第101席能美俊典氏ら(島根医大)はサルに週2度タルクを静注し,3〜4週後眼摘し,病変部網脈絡膜を光顕および電顕で観察し,病変部はタルク粒子の直接作用と脈絡膜循環障害による二次的なものとによると考えた。これに対し,慢性閉塞実験としての特色の有無(宇山氏)色素上皮レベルよりの螢光漏出があるにかかわらず,検眼鏡的限局性網膜剥離がみられない理由および螢光漏出部はどの時期で,その大きさ(吉岡)などの質問があった。
 第102席菅田安男氏ら(都立駒込病院)は超音波Aモード法のR.F.信号を利用し,生体眼の網膜などの薄膜厚の計測を目的として,A.時間領域,B.周波数領域を用い,もっとも可能性の強いのは,ケプストラム法で0.1mmまでわかったが,対応は慎重であるべきで,すぐれた振動子の開発が望まれると結論された。これに対し,波形が少しきたないようで,もっときれいな波形がとれないか(三重大?)の質問と座長太根教授より将来臨床的応用がひろがるだろうとの追加があった。

臨床報告

Fundus flavimaculatus group 2の姉弟例の十数年後の眼所見について

著者: 早川むつ子 ,   中島章

ページ範囲:P.1341 - P.1346

 進行して検眼鏡的にはinversc retinitis pigmentosa様の所見を呈し,機能検査の結果からはprogessive cone-rod dcgeneration (dystrophy)と診断される例の十数年前の眼底写真から,fundus Havimaculatus with atrophic macular dcgenerationの進行例である事が明らかとなった一家系2症例について眼底所見を中心に報告した。初診時はFishman分類のstage 2の状態で,再診時はstage 3〜4の移行期まで進行した状態と判断される。本症のstage 3以降は他の黄斑変性症の進行期との鑑別が困難だが,中間周辺部から赤道部近くまで散在する灰色斑が診断の際に有用な所見である。

眼圧上昇を伴った虹彩melanocytomaの1症例

著者: 鈴木まち子 ,   小椋祐一郎 ,   近藤武久

ページ範囲:P.1347 - P.1351

 開放隅角緑内障を伴った虹彩melanocytomaの1例にsector iridectomyによる腫瘍摘出術を行い眼圧の正常化を得た。
 隅角部に著明な色素沈着を認めたことから,色素あるいはmelanophageの線維柱帯への沈着による眼圧上昇が示唆された。
 虹彩のmelanocytomaとmalignant melanomaの鑑別は臨床的にはきわめて困難であること,また虹彩malignant melanomaは概して予後良好であることから眼圧上昇を伴う症例でも,可能な限りまず薬物による眼圧調整あるいは腫瘍摘出術を試みるべきである。

真菌性眼内炎の治療

著者: 小口和子 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.1353 - P.1358

 我々は今回,抗生剤やステロイドの投与を受けた50歳男性に見られた真菌性眼内炎を経験し,副作用に対処しながらもAmphotcricin Bを投与して治癒に導きえた。
 真菌性眼内炎は,全身性真菌症の一つの表われであるばかりでなく,それ自体,適当な処置がなされねば失明するという点で重要な眼疾患の一つである。我々の症例にも見られるごとく抗生剤やステロイドの投与,その他手術,全身状態の悪いものなどが素因となる。初期には確定的な臨床症状に乏しく,また培養同定が困難であることなど,本疾患の早期診断には困難な点が多い。
 Amphotericin Bは副作用が強く,眼内移行が悪いが,他に有力な薬剤が無い以上,第一選択となる薬剤である。副作用としては,発熱,悪寒に始まり種々にわたるが,多くは対症的に克服可能である。我々の症例では,30mg/日の維持量で,約1gの使用で治療効果をみた。

Leber特発性星芒状網膜症と思われる1例

著者: 小川葉子 ,   秋山健一

ページ範囲:P.1363 - P.1366

 当初,原因不明と思われた片眼乳頭浮腫を初発症状とし,経過中に星芒状白斑および遠隔病巣を伴い,約4ヵ月の経過で自然治癒したLeber特発性星芒状網膜症と考えられる1症例を報告した。

KPE手術教育の経験(続報)

著者: 仲河正博 ,   吉村利規 ,   黒田純一 ,   倉淵信哉 ,   平原将好 ,   小西則子 ,   大八木康夫 ,   上野山謙四郎

ページ範囲:P.1367 - P.1369

 1980年4月より1982年6月までに行ったKPE手術を可能な限りビデオに収録し,超音波使用時間,液量,前房内挿入時間,前房内挿入回数,全体の縮瞳率,超音波使用中の縮瞳率の6項目につき検討した。
 超音波使用時間,液量,前房内挿入時間は硬度の上昇につれて増加したが,前房内挿入回数には差を認めなかった。インドメタシン点眼併用にて,術中および超音液破砕中の散瞳保持が認められた。

視力障害を伴った結節性硬化症の2症例

著者: 桐渕和子

ページ範囲:P.1371 - P.1376

 結節性硬化症73例(146眼)の臨床像を検討し,2例(2.7%)の片眼に視力予後の不良な症例を認めた。第1例には,瞳孔反応の異常を伴う視神経乳頭過誤腫がみられた。第2例では巨大な網膜過誤腫と陳旧性網膜剥離・後極白内障・視神経萎縮がみられ,虹彩および水晶体の非定型的欠損を伴った。

悪性リンパ腫の治療中に発症した胞状網膜剥離の1症例—大量ステロイド剤による影響

著者: 松本雄二郎 ,   石橋康久 ,   河野恵子 ,   本村幸子

ページ範囲:P.1377 - P.1383

 悪性リンパ腫の43歳男性にみられ,典型的な経過をとった胞状網膜剥離の1症例について報告した。本症の臨床および治療経過所見より胞状網膜剥離の発症三には,悪性リンパ腫の治療に使用した大臆ステロイド剤と上気道ウイルス感染がひき金になっているのではないかと推察した。また胞状網膜剥離は脈絡膜毛細血管板—Bruch膜—網膜色素上波レベルの機能低下により生ずる病態と考えられる点で,増田型中心性網脈絡膜症と共通の基盤にあると思われるが,増田型中心性網脈絡膜症の激症型とするより,一つの疾患単位と考えるのが妥当ではないかと考按した。

Fundus photo-perimeterによる中心性漿液性網脈絡膜症の静的視野について

著者: 友永正昭 ,   太田安雄 ,   鈴村弘隆 ,   花房晶

ページ範囲:P.1385 - P.1389

 Fundus photo-perimcterを使用して,中心性漿液性網脈絡膜症における中心量的静的視野を45°から225°および135°から315°の2経線上で計測した。その結果,網膜浮腫に一致した網膜感度は,周辺に向ってなめらかな感度低下を示すのではなく,2経線上でいずれも凹凸のある網膜感度閾値が認められた。また,網膜中心部の機能障害を検出するには,青視標を用いる時最も鋭敏に検出でき,中心性漿液性網脈絡膜症の予後判定に最も適していると考えられた。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(22)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1390 - P.1391

31.田代三喜法印目伝之書(仮称)
 室町時代の末,田代三喜*によってもたらされた,いわゆる李,朱医学(李東垣,朱丹渓の医学)が,そのよき後継者曲直瀬道三(一渓)によってわが国の各地に広められたことについてはよく知られているが,田代三喜の眼療秘法が秘伝書に残されていることについては案外気付かれていない。ここに仮りの書名で挙げた「目伝之書」はその秘法を伝えたものであると認められる。
 この秘伝書は他の流派の秘伝書のようにはっきりした書名が付けられたものではないが,本書の末尾に『右ノ法田代三喜ホウインヨリ小笠原信相伝之書也』と記されていることより,もともと三喜法印の秘法と考えられる故,仮に書名を「田代三喜法印目伝之書」とした。

抄録

第5回日本眼科手術学会抄録集

ページ範囲:P.1393 - P.1412

シンポジウム〔I〕
1.Faden Operationについて
 Faden operationは1972年Cüppersにより開発された新しい斜視手術法で,主にドイツでMühlendyckおよびDe Deckerらにより1000例前後の臨床報告が存在する。我々の教室でも限られた症例について1974年以来Faden手術を施行している。今回は当教室で得られた症例を中心に本手術法の利点,欠点,および改良すべき点について紹介する。
 本手術は外眼筋のかなり奥に糸を強膜を通して縫いつける手術であるため,特殊なFaden鉤を試作した。今回は手術法についてはビデオを見ていただくことにして,本法の適応を中心に若干の知見を紹介する予定である。なお,時間により最新の基礎的研究結果についても報告を加える予定である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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