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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科37巻11号

1983年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・312

高安病の1症例

著者: 余敏子

ページ範囲:P.1420 - P.1421

 本症は1908年高安により初めて報告されて以来,数多くの研究がなされ,近年はステロイド投与を軸とする早期治療により,末期まで進行する症例は著しく減少した。今回,早期ステロイド治療にもかかわらず進行し,典型的な眠底所見を呈した1症例を経験したのでここに示す。
 症例:33歳,女子。

臨床報告

3歳児健康診査における視機能スクリーニング(第2報)

著者: 神田孝子 ,   川瀬芳克

ページ範囲:P.1423 - P.1426

 前回の報告で我々は3歳児健診における弱視・斜視のスクリーニングには眼位眼球運動検査と視力検査の組合せが良いと報告した。
 そこで今回は知多市の3歳児健診でこの二つの検査によるスクリーニングを試みた。その結果,眼位眼球運動検査により外斜視9人(3.5%),内斜視1人(0.4%)を検出した。眼位眼球運動検査は受診者のほぼ全員に検査可能であり,その成績からも斜視検出に有効と考えられる。
 一方,今回のスクリーニング受診者中には15人(5.8%)の視力不良者があったが,視力検査可能な者については検出できたが,検査不能者が多く,実施方法を改善する必要がある。今回我々は家庭での事前練習を試みたが,有意に不可能者を減らすことができた。練習や再検の機会を設け視力検査の不可能者を減らすことができれば,眼位眼球運動検査と共に3歳児健診の検査項目として一般化できると考えた。

同名半盲を呈した多発性硬化症3例とそのCT所見

著者: 有門卓二 ,   有賀浩子 ,   加瀬学 ,   長田廉平 ,   田代邦雄

ページ範囲:P.1427 - P.1432

 臨床経過中に同名半盲を呈した多発性硬化症3例を経験した。症例1は35歳女性で視神経炎を初発症状とし,その4カ月後に右同名半盲を呈し,さらにその4ヵ月後には多彩な大脳巣症状が出現した。症例2は25歳男性で脳幹・小脳症状を初発症状とし,その精査中に右同名半盲が検出された。症例3は26歳女性で視神経炎をくり返したのち右同名半盲が出現した。いずれも厚生省特定疾患多発性硬化症研究班の診断基準による確定症例に一致するものであった。
 さらに3症例に対してCT-scanを行ったところ,症例1と2では後頭葉白質に,症例3では左三角部周囲白質に限局性低吸収域がみられた。これらのCT上の所見と臨床症状はよく一致し脱髄性疾患に対してもCTは有力な補助診断法のひとつと考えられた。

老人にみられる黄斑部網脈絡膜変性について—non exudative typeとexudative typeの比較検討

著者: 河内英子 ,   荻田昭三 ,   布引けい子

ページ範囲:P.1433 - P.1438

 1980年5月から82年9月までの2年5ヵ月の間に,広島赤十字病院眼科で取り扱った老人性の黄斑部網脈絡膜変性のうち,non exudative type 12例18眼とexudative type16例21眼を比較検討し次の結果を得た。
(1) Non exudative typeでは性差を認めなかったが, exudative typeでは男性の方が87.5%と多かった。
(2)年齢別にみると,両タイプ共に60歳以上が多く,non exudative typeでは75%,exudative typeでは87.5%を占めた。
(3)罹患眼では初診時において, exudative typeはnon exudative typeに比べて片眼性のものが多かった。
(4)病型別にみると,exudative typeは宇山の分類によるI型が約60%を占め,病巣の大きさは2PD以下のものが71.4%と多かった。

眼瞼蜂窩織炎で発見された再生不良性貧血と思われる1例

著者: 滝昌弘 ,   馬嶋昭生 ,   本多文夫

ページ範囲:P.1439 - P.1442

 眼瞼蜂窩織炎で発見された二次性再生不良性貧血の1例を報告した。症例は60歳の男性で感冒のため抗生物質,鎮痛解熱剤,抗ヒスタミン剤などを内服していたが,齲歯を抜歯後発熱が続き,左眼に強い眼瞼蜂窩織炎が発症し,全身検査で汎血球減少症が認められた。大量の抗生物質,輸血,免疫グロブリン製剤の投与を行ったが蜂窩織炎は頬部,頸部,前胸部,後頭部に拡大し,初診から17日目に肺炎,心不全,播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し死亡した。骨髄穿刺,剖検はできなかったが発症の約1カ月前の血液検査で異常はなかったこと,末期に白血球数,血小板数の回復傾向がみられたことなどから薬物による二次性再生不良性貧血と考えられた。

両眼下直筋欠損症の1例

著者: 今井済夫 ,   園田日出男 ,   坂井豊明

ページ範囲:P.1443 - P.1446

 両眼下直筋欠損症の1例を報告した。症例は22歳女性で斜視手術を希望して受診した。頭位は顎をさげ上ひき眼位をとっている。眼位は第1眼位では正位で,左方視で左上斜が,右方視で右上斜がみられ,両眼共に外下転が不能であった。CT scanでは眼窩中央部の垂直断層において下直筋が認められず,両眼の下直筋欠損症または形成不全と診断した。手術時に両眼の下直筋欠損と右眼の内直筋,外直筋の付着部異常がみられた。手術は水平筋の移動術を施行した。術後,第1眼位での顎さげは消失し,右方視での右上斜,左方視での左上斜も減少して外見は良好となった。

白内障術後矯正眼鏡と瞳孔間距離

著者: 酒井正典 ,   加藤桂一郎 ,   小峯輝男

ページ範囲:P.1447 - P.1449

 白内障術後遠用矯正眼鏡のoptical interpupillary distanceの設定につぎ,Maddoxrod testを用いて検討し以下の結論を得た。
(1)両眼無水晶体眼患者の自己眼鏡装用の際の眼位は,約70%が内斜位,1396が正位,17%が外斜位であった。
(2)正位となるよう調整したoptical interpupillary distanceの値は,全例において角膜反射で測定したanatomical interpupillary distanceより大きく,この眼鏡を用いた時の装用感が最も快適であった。

帯状を呈した特異な黄斑発生異常

著者: 田中隆行

ページ範囲:P.1457 - P.1462

 31歳の女性と25歳の男性に入られた眼底病変についての臨床所見を報告した。この眼底所見は,中心窩反射・黄斑輸状反射および正常の黄斑の色調を欠きながらも網膜血管の異常は少なく,乳頭から黄斑および黄斑周囲が帯状いしは長楕円形に鮮黄色で,強膜が透見でき,その周囲に連続的に移行する強い豹紋状の輪をもっていた。螢光眼底造影では鮮黄色の異常部は脈絡膜相で微細な顆粒状の造影を示し,静脈相より後期まで Win—dow defectと考えられる過螢光を示した。この所見は,類似したものとしてはConnらの報告があるのみで,一般には知られておらず,黄斑の発生異常の新しい形と考えられた。

眼科手術学会

人工水晶体移植術後のPseudomonas cepaciaによる眼内炎

著者: 鈴木一成 ,   永田誠

ページ範囲:P.1463 - P.1466

 80歳,男性,計画的水晶体嚢外摘出後Shearing posterior chamber lensを挿入し術後化膿性眼内炎をおこし,硝子体からP.cepaciaが分離された症例を報告した。本菌の対策についても述べた。

涙嚢鼻腔吻合術の簡易法について

著者: 高橋久志 ,   酒井文明

ページ範囲:P.1467 - P.1469

 シリコン・スポンジを留置物として使用した涙嚢鼻腔吻合術の簡易法を8例に試み,7例で良好な結果を得る事ができた。骨窓部の鼻粘膜を除去し,面倒な涙嚢粘膜弁と鼻粘膜の縫合を排したため,術式ばより簡単になった。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(23)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1472 - P.1473

32.眼目家伝書
 一般に家伝書といわれているものは,ある家に代々伝えられている秘法などが書かれたもので,本来一子相伝の秘書として作り遺されているものが多い。この「眼目家伝書」は眼の治療についていろいろのことがその家伝として綴られたものである。
 本書の序に次のごとく述べられている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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