icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科37巻12号

1983年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・313

Dinobdella ferox (ヒル)の人結膜嚢寄生の1例

著者: 玉井綱彦 ,   政岡則夫 ,   和田秀文 ,   上野脩幸 ,   野田幸作 ,   岸茂 ,   伊与田加寿 ,   鈴木了司 ,   吾妻健

ページ範囲:P.1482 - P.1483

 ヒル類の人体内部への寄生例は必ずしも少なくない。中でもDinobdella feroxによる寄生例は,日本を含めて東南アジアにかなり多くみられる。しかし,眼への寄生は稀で,わずかに1例紹介されているにすぎない1)。今回,Dinobdella feroxの人結膜嚢寄生の工例を経験したので報告する。
 症例:34歳,男性。

臨床報告

輻湊痙攣を伴う調節痙攣のアモバルビタールによる治療

著者: 上原雅美 ,   佐野貴之 ,   中道明

ページ範囲:P.1485 - P.1488

 調節痙攣による視力低下および高度の近視化と輻湊痙攣による内斜視および複視を合併した3例に対して,中枢神経抑制剤であるアモバルビタールを静注し,全例に劇的な改善を認め,その効果は持続的であった。
 従来,この種の症例に対する治療は困難であったが,調節痙攣と輻湊痙攣を合併する症例に対しては,アモバルビタールによる治療が有効であると思われる。

コロニー中央病院眼科における小児診療の工夫

著者: 唐木剛 ,   堀口正之 ,   太田一郎

ページ範囲:P.1489 - P.1492

 眼科における小児診療は,大人のそれと比べ協力を得られないことが多い点から,非常に難しいことは周知のとおりであるが,我々の愛知県心身障害者コロニー中央病院においては,精神発達遅滞や自閉症等の患者が多く,一般の小児病院よりさらに困難である。そこで我々は種々の工夫を行って,現在では比較的スムースに診療を行うことができるようになっているので報告した。
 主な工夫は以下の4点であり,これらの工夫はきわめて効果的であった。
(1)抑制帯の使用
(2) GOFのマスクによる吸入麻酔
(3)懸垂型に改良した眼底カメラ
(4)暗室の照明の調節

正常レーレー均等を示す色覚異常(1)—色覚特性

著者: 徳田浩子 ,   安間哲史

ページ範囲:P.1493 - P.1496

 仮性同色表を誤読し,アノマロスコープ検査で正常均等を示す症例は,Pigment—farbenamblyopieと名づけられている。今回我々はこれに存すると考えられる10家系,17人について,各種の仮性同色表,ランタンテスト,パネルD−15,およびアノマロスコープ検査を行った。また,flicker photometryによる視感度測定も行った。
 その結果,これらは通常の先天赤緑色覚異常と同じく性染色体性劣性遺伝をし,アノマロスコープ検査では正常域に入るが,仮性同色表を誤読して,それによりProtan型とDeutan型に分けられることがわかった。また視感度比でも正の群と負の群に二分され,それぞれ,正常とは異なるが,負の群は第1色覚異常と正の群は第2色覚異常と分離できないことがわかった。
 このことから,我々の検査した先天色覚異常者,いわゆるPigmentfarbenamblyopieは,本来,標準的先天性赤緑色覚異常に属するものであり,アノマロスコープが正常域に入る点を特微とするものと考えた。

両眼性synergistic divergenceの1例

著者: 江口秀一郎 ,   大平明彦 ,   小沢哲磨

ページ範囲:P.1497 - P.1500

 両側方視に際し,両眼が外転し開散位となる異常眼球運動を示す14歳の男子の症例を報告した。本症例は過去の症例と異なり視標を示して左方視を命ずると異常な開散運動は示さなかった。右眼は内転にのみわずかな運動制限があり,全てのむき運動で衝動性眼球運動速度の低下を認めた。左眼ば外転運動以外の著明な眼球運動制限が存在したが,対光反応の縮瞳系には大きな異常を認めなかった。本症例は水頭症や錐体路徴候を伴っており,これらの事より異常眼球運動の原因として脳幹部の障害が推定された。

ディスポーザブル皮下注射針を用いた眼内レンズ洗滌法

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1501 - P.1504

 ディスポーザブルの25G皮下注射針を用いることにより,完全にclosedの状態で眼内レンズ表面の虹彩色素や線維片の洗滌,線維膜や眼内レンズと周囲組織との高度癒着剥離および後発白内障の切開などを行うことができる。本法は器具は安価,調達容易,手技は簡単で効果確実,合併症も少ないという長所があり,眼内レンズ術者にとり,修得すべき術式の一つに加えられるべきものである。

眼科手術学会

白内障術後合併症と考えられる両側性角膜辺縁潰瘍および強膜炎の2症例

著者: 松鵜嘉文 ,   渡部富美雄 ,   上野泰志 ,   高久功

ページ範囲:P.1505 - P.1509

 白内障術後,3カ月前後を経て両側の上力輪部を中心とする角膜および強膜の病変を呈した2症例を報告した。1例は85歳女で,上方の角膜辺縁潰瘍と重篤広範な壊死性強膜炎を両眼に生じ,病変は難治進行性であったが,自覚症や眼内炎症所見は軽度であった。他の1例は72歳女で,両眼上方球結膜の深層充血を伴う上方角膜の辺縁潰瘍がみられた。2例とも,ステロイド頻回点眼によく反応したが,1例に広範な強膜菲薄化を残した。

内角贅皮手術症例の検討

著者: 山本節 ,   奥田斗志 ,   金川美枝子

ページ範囲:P.1517 - P.1520

 内角贅皮の手術術式は数多くみられるが,中でもMustardé法と内田法は比較的よく用いられ,すぐれた方法と思われる。
 今回,内角贅皮19症例中18例に対して行った術後成績から二つの術式の比較検討を試みた。両者は共に内角部の形成がすぐれており,一般によく目立つといわれている術後瘢痕も長期の経過では,それほど目立たず,双方に大差をみなかった。どちらの術式を選ぶかは,瞼裂縦幅が比較的よく開いている場合,Mustardé法で,狭い症例は内田法を用いる方がよいと考えている。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(24)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1522 - P.1523

33.高山司慶流眼科書
 秘伝書によってはその相伝者を辿ることによってその秘伝書のもとを知ることができる。本書は田原流眼科(須恵の眼科)の秘伝書の一つとして挙げられているものであるが,その巻頭に記された相伝者と思われる名前には九州筑前国末邑高田七兵衛伝授書真田了二,高場順清,田原養伯とあり,そもそもの伝授者は筑前国末邑(現在の福岡県粕屋郡須恵町上須恵)の高田七兵衛と考えられる。そしてそれは真田—高場—田原の順に相伝されたものと思われる。
 高田七兵衛の興したといわれる高田流眼科が何時頃創められたか明らかでないが,その流れをくむ並河一敬眼科書に正保3年(1646)のものがある(小川剣三郎)と識されているところから高田流眼科の興りはそれ以前のことと考えられる。また,この高田流から出たといわれる田原流も田原稱吉が眼科を創めたのが寛文年間(1661〜1672)といわれ,幕末文政より天保年間には尾張の馬島流,諏訪の竹内流,江戸の土生流と並んで当時わが国の四大眼科の一つとして世に田原流の名が知られていたといわれる。

--------------------

臨床眼科 第37巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?