文献詳細
特集 第36回日本臨床眼科学会講演集 (その2)
学術展示
ぶどう膜炎症状を示した小児の網膜芽細胞腫の症例—前房内浮遊細胞および硝子体混濁の細胞学的検索の意義
著者: 山下秀明1 宇山昌延1 文元章能1 本間哲1
所属機関: 1関西医科大学眼科教室
ページ範囲:P.218 - P.219
文献概要
症例10歳男児。1980年3月,右眼充血血に気づくも放置,5月に視力低下を自覚し某医受診,眼内炎の診断のもとに抗生剤,ステロイドの大量投与を受けたが軽快しないので,1980年5月20日当科受診した。初診時,矯正視力右0.3,左1.5,眼圧右49mmHg,左20mmHg。右眼所見;中等度毛様充血,前房水は大型滲出物を含み混濁,虹彩上に灰白色の円形の塊状滲出物を多数認めた。更に硝子体中に濃厚な惨出物と,網膜に白色の滲出物を認めた。強力な眼圧降下薬物治療を開始した。その後前房混濁が増悪し前戸蓄膿を認めたため(図1),7月10日と11月5日の2回前房水を採取し電顕にて細胞を観察したところ,悪性腫瘍細胞を認めたので1981年1月7日よりCo60を150rads,10回照射した。前房水混濁と虹彩上滲出物はほぼ消失したが,水晶体混濁が出現した。5月中旬より再び前房水混濁と虹彩上滲出物の出現をみ,7月29日前房水採取と同時に硝子体手術の上,水晶体吸引と硝子体滲出物を採取し,細胞診を行い,その結果,網膜芽細胞腫の診断を得た。
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