icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科37巻3号

1983年03月発行

文献概要

特集 第36回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 学会原著

眼鉄錆症における鉄成分の局在と細胞障害に関する組織学的研究

著者: 田原昭彦1

所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.321 - P.324

文献購入ページに移動
 飛入した鉄性異物を放置したため眼鉄錆症を起こした眼球の組織を電子顕微鏡で観察した。
 1例は眼鉄錆症で,難治性の眼内炎を起こしたため眼球が摘出された。摘出眼球の角膜,隅角,虹彩,毛様体,脈絡膜,網膜,強膜の各組織を観察した。他の1例は眼鉄錆症に緑内症を続発した症例で,持続する高眼圧のためにトラベクレクトミーを施行した。その手術の際に得られた角膜,隅角,虹彩の組織を調べた。その結果,2症例とも観察したすべての組織において,組織固有の細胞の細胞質内にフェリチンが存在していた。また細胞質内にsiderosomeを有する細胞も見られた。大量へ鉄成分が蓄積した細胞のなかには,細胞質に空胞変性を生じ,さらには崩壊しているものも認められた。
 今回の観察で,眼鉄錆症において,鉄成分がフェリチンとして眼球の各組織の細胞の細胞質内に蓄積し,さらにsiderosomeを形成することが明らかになった。また眼鉄錆症の発症原因として,大量のフェリチンが細胞の細胞質内に蓄積して,細胞が変性・崩壊を起こすことによる鉄の直接障害があることが結論された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?