臨床報告
外傷性毛様体解離
著者:
田原昭彦1
大西克尚1
吉富健志1
所属機関:
1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.535 - P.541
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眼球に鈍的外傷を受けて毛様体解離を起こしたために,低眼圧となって視機能に障害を来たした3症例を経験し,このうち解離部の自然閉鎖が見られなかった2例に毛様体解離部のジアテルミー穿刺凝固を行って症状の改善を得た。これら3症例の臨床経過を報告した。また,隅角の断裂に対する用語の整理を試みた。隅角鏡検査で毛様体帯の幅が広く観察される状態を隅角後退(angle recession)とし,この状態を臨床像を考慮して二つに分類した。すなわち,隅角鏡的に毛様体に深い断裂が確認され,かつそのために低眼圧を起こしている場合を毛様体解離(cyclodialysis)と呼び,低眼圧を伴わない隅角後退を隅角離断(goniodialysis)とした。そして外傷性の毛様体解離についてその臨床症状を論じるとともに,解離部のジアテルミー穿刺凝固術が手技が簡単で,安全かつ確実であり,毛様体解離の外科的治療にあたっては積極的に選択されるべき術式であることを強調した。