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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科37巻6号

1983年06月発行

雑誌目次

特集 第36回日本臨床眼科学会講演集 (その6) 学会原著

赤外線眼底カメラを応用したcheckerboard pattern reversal刺激によるERGとVEPの測定

著者: 戸塚清一 ,   谷野洸 ,   栗原和之 ,   瀬川雄三

ページ範囲:P.731 - P.735

 赤外線眼底カメラの光学系を応用したパターンリバーサル刺激装置を事開発した。偏光素子の組み合わせにより作製された,パターンリバーサル刺激は眼底カメラの光学路に導かれ,被検者の眼底に投映された。赤外線照明により被検者の固視の確認,刺激網膜部位の同定が行われた。環状の強角膜コンタクトレンズ電極の装着により,鮮明なパターン刺激が与えられ,被検者の眼底が観察された。正弦波刺激により,それに対応した正弦波状の反応波がコンタクトレンズ電極により導出された。片限性視神経萎縮の症例においては,コンタクトレンズ電極により,健眼からは良好な反応が得られたのに対し,患眼からはこのような反応は得られなかった。今回の装置によるパターンERGは,視神経疾患,網膜の局所ERGの測定に,臨床的に意義のある方法である。

スペックルパターンによるVEPの研究—第6報白内障眼の黄斑視機能評価について

著者: 福原潤 ,   魚里博 ,   森岡藤光 ,   西信元嗣 ,   中尾主一

ページ範囲:P.737 - P.742

 白内障眼で発生するスペックルパターンを利用して,パターン刺激VEPを記録する装置を用いて,白内障眼の黄斑視機能を評価することを試みた。その臨床的意議としての,白内障術後の視力の予測効果を干渉縞視力と比較検討した結果,次の結論を得た。
(1)本法によるVEPと白内障術後の視力との相関は,干渉縞視力と同様低かった。
(2)しかしながら手術適応となるような強度の白内障眼においても,干渉縞視力ほどには混濁の影響をうけずにVEPを記録しえた。
(3)したがって両限白内障では術後の視力の予測は不可能であるが,片眼白内障で一方の眼の混濁の影響をうけない視力がわかる場合には両眼のVEPの比較によって,他方の眼の術後視力をある程度は予測可能である。

角膜アミロイドージス—格子状角膜変性

著者: 藤原久子

ページ範囲:P.743 - P.749

 格子状角膜変性の一家系について報告した。四世代にわたる常染色体優性遺伝を示し,家系中16人中9人男(4,女5)に発生が認められた。臨床症状は10歳代の後半より発生し,両眼角膜の中央部より上皮下,実質の浅層に混濁が見られ,それは点状,結節状,線状,分枝状となり,しばしば上皮びらんを伴う。次第に病変が進行し,混濁は融合し線状体は格子状となり,実質の全層に拡大する。50歳代に至り視力低下が増強した3眼に全層角膜移植を行った。光顕的,電顕的にアミロイドの沈着が証明された。2例にSAA値が検索されたが,検出されなかった。限局性家族性アミロイドージスと確定された。

視覚誘発脳波(VEP)の臨床薬理学的研究—その1催眠薬

著者: 田淵昭雄 ,   市橋進 ,   川島幸夫

ページ範囲:P.751 - P.756

 VEPの催眠薬による影響を調べるため,覚醒時VEPと催眠下VEPを比較した。使用催眠薬はchloral hydrate系薬剤(chloral hydrate (Escre®),trichlorethylphosphate (Tricloryl®))またはbarbiturate系薬剤(phenobarbital sodium (Wakobital®)),pentebarbital calcium (Ravona®))である。正常小児13例において催眠下VEPのN90,P120頂点潜時の延長が両系統催眠薬剤で認められたが,N90—P120頂点間振幅はchloralhydrate系薬剤で減弱するのに対しbarbiturate系薬剤で増大(これをP120 enhancementと呼ぶ)した。小児の各種視覚障害例18例でのbarbiturate系催眠薬下VEPは次の4型に分類できた,,すなわらI型:正常覚醒時VEP,P120 enhancement⊕,II型:正常覚醒時VEP,P120enhancement⊖,III型:異常覚醒時VEP,P120enhancement⊕,IV型;異常覚醒時VEP,P120enhancement⊖である。P120enhancementが存在する場合は視力予後良好の傾向を示した。

Trabeculectomy切除部隅角からの前房内血液逆流について

著者: 南波久斌

ページ範囲:P.757 - P.762

 Trabeculectomy切除部後方の強膜を隅角鏡の縁で圧迫し,隅角を4分間観察し,以下の結果を得た。
 90眼中22眼で切除部内より血液前房内逆流が事認められた。ろ過胞の存在の場合と同様,血液逆流が出現した群では,眼圧コントロールが有意に良好であった。特に,ろ過胞非形成眼において,血液逆流(+)眼は逆流(—)眼に比べ有意にコントロール率が高く,かつ,outflow facilityも高かった。以上の成績から,Trabeculectomyによって,房水はろ過胞からのみならず,血管からも排出され,後者の流出路は眼圧調整メカニズムに重要な役割を持つと考えられた。術後経過期間と逆流頻度との間には,はっきりした相関はみられなかった。切除部内の血液逆流部位は,主としてSchlemm管切断端やその極めて近くに分布するcollector channelと推定された。

Neovascular glaucomaに対する治療の検討

著者: 田村充弘 ,   高久功

ページ範囲:P.763 - P.769

 糖尿病性網膜症10例11眼,網膜中心静脈閉塞症5例5眼,他疾患群(Coats病,硝子体手術後等)11例11眼に続発したneovascular glaucomaに対し種々の治療を施行した。
 治療法としては,視力保存を目的とする場合には,早期にpanretinal photocoagulation,panretinalcryocoagulationにより,網膜のhypoxiaを改善し,trabeculectomyを中心とする観血的手術を実施すべきである事,視力回復の可能性のない例には,cyclocryotherapyが適当と考えられる。
 原因となった基礎病変により予後が異なり,網膜中心静脈閉塞症の予後が最も良く,次いで,糖尿病性網膜症で他の疾患群の予後が最も不良であった。

緑内障減圧術としてのCO2レーザーの応用に関する研究

著者: 寒河江豊

ページ範囲:P.771 - P.776

 CO2レーザーの緑内障手術への応用を目的として,動物眼で強角膜の切除および穿孔を行い,術後の経過を観察記録し,また組織学的に検索した。その結果,装置および術式の安全性が確認されたので臨床応用を試みた。
(1)照射中出血は全くなく,強角膜部に境界鮮鋭な照射孔が得られた。
(2))穿孔部周辺組織の影響は限局的であり,孔の深さ,周辺組織の熱凝固層の厚さは主として照射時間に比例していた。
(3)術後,水晶体ならびに網膜への影響(凝固)はみられなかった。(4)さらに精密に穿孔の大きさや深さをコントロールするためには,低出力(500mW以下)で安定性のよい装置が必要と考えられた。

高含水率ソフトコンタクトレンズ自身を電極とした金属を用いないデスポーザブルERG電極の開発

著者: 簗島謙次 ,   沖坂重邦 ,   権丈英紀

ページ範囲:P.777 - P.781

 高含水率ソフトコンタクトレンズの有する導電性と炭素線維の導電性および柔軟性を利用して網膜電図用電極を開発した。新しい電極は金属を用いていないのでベツクレル効果を起こさず,強い光刺激を必要とするERP記録にも応用できる。素材が高含水率で酸素透過性も78%と高く,連続装用ができるほど角膜刺激が少ないためパターンERG用電極としても,また角膜裂傷後の患者の網膜機能の検査にも利用できるこことが判った。また新しい電極は角膜上でほとんど動かず,基線のゆらぎも少なく,将来的にc波,e波などのslow petentialへの応用も期待される。

シエーグレン病の眼科的治療に関する研究—第2報涙液のpHおよび点眼液の影響

著者: 宮川公博

ページ範囲:P.783 - P.787

 シェーグレン病における乾性角結膜炎の治療を目的として,患者の涙液pHに対する点眼液の影響を検討した。pHの測定には微小複合ガラス電極を直接下結膜嚢内に挿入する方法を用いた。点眼液は3%chondroitin sulfate (pH 5.14)および0.3%hydro—xyethyl cellulose (pH 7.22)を使用し,患者および正常者の涙液pHを点眼前,点眼1分後,5分後に測定した。
 患者の涙液pHは7.62±0.33と,正常持の7.32±0.17に比べ有意にアルカリ側に傾いていた。2種の点眼液使用後の涙液pHは同様の傾向を示した。患者の涙液pHは点眼1分後,5分後共に有意に低下していた。正常音では1分後有意に低下していたが,5分後には有意差がなかった。
 シェーグレン病患者の涙液はアルカリ側に傾いているが,pH 7.22の0.3%hydroxyethyl celluloseで十分低下させることができる。したがって患者眼に対し刺激がなく,涙液リゾチームへの影響が少ない中性の粘性剤を含んだ点眼液が適当である。

Atypical retraction syndromeの1例—外直筋の微細構造について

著者: 佐藤佐内 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.789 - P.792

 外直筋の組織学的な変化が本態と考えられるretraction syndromeの1症例について報告した。
 症例:21歳,男性。左眼の著明な外転および内転障害が認められ,内転時の眼球後退および瞼裂狭小が認められた。
 筋電図所見:左眼外直筋には内転および外転時のいずれにもelectrical activityは認められなかった。
 電顕所見:左眼外直筋には正常な筋組織は全く見られず,collagen fiberを主体とした線羅組織に置き換わっていた。

若年性網膜剥離と家族性滲出性網膜硝子体症(familial exudative vitreoretinopathy)

著者: 橋本和彦 ,   宮久保寛 ,   猪原貴子 ,   多田博行

ページ範囲:P.797 - P.803

 家族性滲出性網膜硝子体症(famillial exudative vitreoretinopathy FEVRと略称)に合併する網膜剥離の病態を明らかにするために,自験例86例について網膜剥離の臨床像を検索した。さらに網膜剥離全体の中で原因疾患としての本症の位置づけを試みた。
 網膜剥離を合併したFEVRは86例中42例で15例20眼は牽引性,27例35眼は裂孔原性剥離であった。牽引性剥離の発症年齢は低く,10歳以下が60%を占めたが,裂孔原性では10歳から29歳の範囲での発症が多かった(66%)。網膜裂孔は耳側に好発し,この発症には一般の裂孔原性剥離とは異なり,FEVRの特徴のひとつであるV字形変性および耳側の網膜硝子体癒着の関与が推測された。
 過去54カ月の期間の一般の裂孔原性剥離576眼の中で,FEVRが素因として関与する症例は4.8%を占め,30歳未満の若年性網膜剥離に限ると12%にFEVRの関与があった。
 以上FEVRの網膜剥離は若年者に好発し,若年性綱膜剥離の発症要因として高い頻度をしめる重要な疾患であることが示された。このことはFEVRが若年性剥離の主たる要因として注目されるべき重要な疾患であり,FEVRが稀な疾患ではないことを示すものである。

ソフトコンタクトレンズによるGiant papillary conjunctivitisの組織所見

著者: 竹内勉 ,   田川義継 ,   有賀浩子 ,   松田英彦

ページ範囲:P.805 - P.810

 ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用によるgiant papillary conjunctivitis(GPC)の2症例を経験し,その生検組織を電子顕微鏡により観察した。症例は共に約6年間のSCL使用経験を有する22歳と25歳の女性で,眼部掻痒感を伴い上眼瞼結膜全体に乳頭の増殖を認めた。組織所見は上皮層では上皮の肥厚とリンパ球,好酸球,肥満細胞,ランゲルハンス細胞(ラ細胞)などの浸潤を認めた。固有層では形質細胞,リンパ球および多数の肥満細胞と好酸球の浸潤を認め,特に肥満細胞の多くは脱顆粒像を呈していた。さらに従来報告されていないラ細胞が多数観察され,リンパ球や形質細胞などと近接している像が多く観察された。これらの組織所見は春季カタルにみられる組織像とほぼ一致しており,GPCがアレルギー性反応に基づく病変であることが示唆された。またラ細胞も体病の免疫病理に何らかの関与をしているものと考えられた。

最近経験したトラコーマの3例

著者: 鎌田龍二 ,   古吉直彦 ,   田浦輝美 ,   岡村良一 ,   岩上静子

ページ範囲:P.811 - P.815

 急性トラコーマの1例と慢性トラコーマの2例を報告した。これで日本にもまだトラコーマが存在することが明らかになった。患者の周囲に集団発生の傾向はなく,いずれも性体験のある成人女性であることから,封入体性結膜炎の成人型であろうと考えた。
(2)トラコーマは濾胞性結膜炎の代表的疾患である。濾胞形成の著明な症例や難治の濾胞性結膜炎を診たらまずトラコーマを疑って積極的に結膜擦過標本を検査する必要がある。
(3)海外渡航者が年々増加する一方で,性活動も徐々に欧米並に近づいている現状から,このような症例はこれから潜かに増加することが考えられる。我々眼科医はこのような現実に認識を新たにして,わが国におけるChlamydia感染症の実態を明らかにして行かねばならない。

眼筋麻痺の統計

著者: 妹尾憲一 ,   桐渕利次 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.817 - P.820

 帝京大学眼科における1971年9月1日から1981年8月31目までの10年間の眼筋麻痺患者1,870名の統計的観察を行った。同一例で2種類以上の麻痺のあるものは63名で,延べ1936名として,その内訳は核上性神経性障害400名(20.7%),核—核下性神経性障害879名(45.4%),神経—筋接合部障害142名(7.3%),筋性障害88名(4.6%),異常神経支配278名(14,3%)および機械的障宮149名(7.7%)であった。性別は男性1.117名,女性819名で,年齢は15歳以下799名,16歳から39歳まで518名,40歳以上619名である。
 この統計は眼科医による先天性および後天性とを含めた眼筋麻痺の統計としては最も多数例についてのものである。

学会展示

不適正眼鏡の実態—特に眼鏡レンズについて—1.近視,遠視

著者: 宮本吉郎

ページ範囲:P.824 - P.825

 患者の装用眼鏡を調べてみるとPDの不一致や過矯正,遠視に近視系の眼鏡が処方されている例がかなり認められる。そこで所持眼鏡を調査し適否の実態を知ることは,今後の屈折異常検査と眼鏡処方のあり方に資するものと考えこの研究を計画した。今回は特に近視,遠視について述べる。
 対象と方法外来を受診した眼鏡またはCL装用者で,調節麻痺下の他覚的屈折検査を行った1135名を対象とした。方法は①年齢,②所持眼鏡視力,③眼鏡の屈折値,④処方場所,⑤調節麻痺下の他覚的屈折値,⑥快適に装用できるレンズの屈折値の各項目を外来カルテより記録紙に転記しコンピューター処理を行った。

弱視の視覚周波数特性(MTF)

著者: 薗田桂子 ,   西村加代子 ,   田村純 ,   松田敏夫

ページ範囲:P.826 - P.827

 緒言今回弱視眼における空間周波数特性および時間周波数特性を測定し,弱視眼の視機能について若干の検討をしたので報告する。
 方法および対象測定に用いた装置は,空間周波数特性は大頭・河原によって開発されたHe-Neレーザーを用いたもので,網膜に干渉縞を投影し,網膜,大脳系の空間周波数特性を測定する。測定条件は視角5°,平均網膜照度は300td.,時間周波数特性の測定はKellyの装置とほぼ同様の装置を用い,測定条件は1,000td.で20°の視野を用いdark surroundで行った,,フリッカー融合頻度(CFF)を測定した。

円錐角膜に対する強角膜レンズの試み(続)

著者: 村上正建 ,   児玉安居 ,   浅野隆 ,   市川宏

ページ範囲:P.828 - P.829

 緒言円錐角膜に対し直径の大きい内面ワンカーブをもつコンタクトレンズcorneo-scleral hard contact lens(以下C.S.H.C.L.)の有効性についてはすでに発表1)したが,その後症例を追加することができたので,処方とその問題点について報告する。
 症例症例数は12例18眼である。このうち従来のハードコンタクトレンズ(以下H.C.L.)が装用不能となったもの10眼,視力低下のあったもの7眼,紛失1眼である。トライアルレンズは,size H.5〜14.0まで0.5mm毎に,ベースカーブ(以下B.C.)は7.50〜8.50まで0.5mm毎に作製し,powerはすべて0とした。これらのトライアルレンズのうち,B.C.8.00mm, size 12.5mmを第一選択として,10〜20分の試験装用の後に視力検査およびフローレスチンで染色して細隙灯顕微鏡検査を行い処方した。C.S.H.C.L.が下眼瞼に接触し,角膜下1/3程度に空気が入っているものを第一選択として(図1,2),角膜にレンズが固着するものはB.C.をフラットにするか,sizeを一段小さくして処方した。

超音波診断における眼部画像処理と臨床的意義—第13報Color gradient scale

著者: 平野史郎 ,   菅田安男 ,   冨田美智子 ,   鏑木ふく代 ,   岡田栄子 ,   松尾キミ ,   山本由記雄 ,   高山博子

ページ範囲:P.830 - P.831

 緒言近年,カラーによる画像処理が活発となり,多方面で用いられているが,医用面でもサーモグラフィー,ポジトロンCTなどに使用され始めている。
 我々は数年前から超音波Bモード断層像の凝似カラー表示を行っているが1),今回はカラー表示の方法を改良し,一層階調性のよいものとした。

水晶体の着色状態記録の試み

著者: 佐々木一之 ,   柴田崇志 ,   柊木雅晴 ,   坂本保夫

ページ範囲:P.832 - P.833

 水晶体の着色状態を生化学的な解析を目的としてとらえようとした試みはPirie1)をはじめとしていくつかの報告がある。臨床的にはこの着色状態を主観的にとらえることはあっても,記録さらには解析することは生体眼を対象とした場合にはむずかしい。
 今回,水晶体の着色に関する新たな情報を得る手がかりとしてこの着色状態を客観的にとらえることを試みたので,以下にその概要を述べる。

光凝固により誘発される眼痛

著者: 玉井信 ,   水野勝義

ページ範囲:P.834 - P.835

 緒言種々の原因で誘発される眼痛の求心路は三叉神経第一枝と考えられている1,2)。今回我々は裂孔原性網膜剥離に対する赤道部輪状締結術,増殖性糖尿病性網膜症や外傷に対する硝子体手術および赤道部輪状締結術後の症例に双眼倒像光凝固術を施行中これによって誘発される眼痛にいくつかの特徴があることに気付いた。この眼痛は特異な眼内分布をしており,連関痛様の性質ももっている。
 方法水野式双眼倒像光凝固装置(ニデック社)を用いた。光凝固(PHC)条件は表1Aに示す通りである。角膜,中間透光体,網膜の諸条件により強度を高めた場合もあったが同一眼には同一条件によりPHCし,痛みを比較した。眼痛および眼窩部痛は(表1B)5段階に分けた。また同一眼球内での部位による痛みの差を5段階に表現し,最も激しい部を5,最も軽い部を1とした時各部位がどの程度かを話してもらった。対象眼は表1C.Dに示す通りで術後2〜4週にPHCを行った。

高度遠視の一家系例

著者: 村松知幸 ,   佐藤明

ページ範囲:P.836 - P.837

 緒言+10D以上の高度遠視は極めてまれである。植村ら1)は+11.0D〜+16.0Dの高度遠視眼6例を報告し,臨床的特徴として,両眼性であること,乳頭黄斑間網膜襞の存在すること,矯正視力は0.1〜0.4にとどまること,身体的,知能的発育異常を認めないことなどをあげている。今回我々は14歳女児,策一子を発端者とし,策三子,父親のいずれもが+10D以上の高度遠視となっている一家系例を経験したので若干の知見を加えて報告する。
 症例家族構成は両親および三姉妹で,父親および第一子,第三子が高度遠視であった。また今回調査は行呈えなかったが,父親の末弟(34歳)も遠視で+5Dの遠用眼鏡を装用している。血族結婚はなく,いずれも知能あるいは身体の発育ともに正常である(図1)。

硝子体動脈遺残症における蛍光眼底所見および飛蚊症について

著者: 中山義章 ,   松本和子 ,   本田宗治 ,   宮里和明

ページ範囲:P.838 - P.839

 緒言硝子体動脈1,2)は胎生第6週頃に形成され,第9週頃最も発達する。その後次第に吸収され,第16週に硝子体動脈分枝が消失し,9ヵ月頃に本幹が消失する。未熟児では時に見られるが,成人では少なく,なかでも完全型硝子体動脈遺残症は稀である。今回我々は完全型1例を含む3症例4眼について,その形状,螢光血管撮影所見,飛蚊症の出現消退につき経過観察を行ったので報告する。
 症例症例1:63歳,女。右眼の飛蚊症を受診の3日前に自覚して来院する。右眼は硝子体中を浮遊する硝子体動脈遺残があり,本幹の中央部付近に2本の分枝遺残と思われる紐状物が付随している(図1)。本幹内は赤色で,血液が充盈しているものと思われる(図2)。水晶体側断端付近でわずかに膨らみ,先端は平坦で縁に四つの突起状物がみられる(図3)。水晶体後嚢にはなんら異常なく,他の網脈絡膜に異常を認めない。左眼は乳頭面より水晶体後嚢に達する完全型硝子体動脈遺残で,中間部の血管は鞭状に動揺する。遺残血管は乳白色で,水晶体後嚢の後極よりやや鼻側下方に付着している。付着端の横方向に短い二つの突起物がみられるが,他の部位には異常を認めない。飛蚊症の自覚はない。

周辺側に向かう馬蹄型裂孔の1症例

著者: 佐藤明 ,   林一彦

ページ範囲:P.840 - P.841

 緒言後部硝子体剥離(以下PVD)の重大な合併症として硝子体牽引による網膜裂孔形成があげられる1,2)。この場合,牽引力が眼球前方に向かうため,裂孔は馬蹄型をなしその先端が後極側に向かうのが通常である3)。今回我々は通常とは逆に先端が周辺側に向かう馬蹄型裂孔の患者を経験したのでここに報告する。
 症例:18歳,男性(57-3449)。

連載 眼科図譜・307

先天緑内障を伴ったRubinstein-Taybi症候群の1例

著者: 林みゑ子 ,   北沢克明

ページ範囲:P.728 - P.729

 Rubinstein-Taybi症候群は「特異な顔貌と太く幅広い拇指と第1趾」を主症状とするclinical entityで,この他に多くの小奇形,また,種々の限症状を伴うが,今回我々は先天緑内障を合併した本症候群の1例を経験したので報告する。
 症例:3カ月半男児。

臨床報告

先天緑内障を伴ったRubinstein-Taybi症候群の1例

著者: 林みゑ子 ,   北沢克明

ページ範囲:P.843 - P.846

 今回我々は先天緑内障に種々の小奇形を伴った生後3ヵ月半の男児の症例を経験したが,全身精査の結果,特異な顔貌と太く幅広い拇指と第1趾などの臨床症状よりRubinstein-Taybi症候群の1例と考えられた。本症候群には種々の眼症状がみられるが先天緑内障を合併した例は海外で8例報告があるのみで,わが国ではまだ報告されていない。これまで眼症状として,弓状眉,反蒙古様眼裂,内眼角開離,斜視などの外眼部症状が強調されてきたが,Rubinstein-Taybi症候群には我々の症例のように先天緑内障を伴う可能性もあり,本症候群の患者の眼科医による精査が望まれる。

非定型的な眼底所見を呈した真性赤血球増加症の1例

著者: 小野秀幸 ,   三嶋弘 ,   後長道伸 ,   井原章裕 ,   伊藤秀彦

ページ範囲:P.847 - P.853

 両眼の急激な視力障害で発症した真性赤血球増加症の1例について報告した。
 症例は49歳の男性で,網膜の浮腫状の混濁と網膜血管の変化をわずかに示すのみであった。螢光眼底撮影で,腕網膜循環時間と網膜内循環時間の軽度の遅延があり,黄斑部を含む広範な色素上皮の障害と脈絡膜の循環障害を示す所見を認めた。ERGとEOGにより深部網膜,網膜色素上皮,脈絡膜を中心とした病変が示唆された。対症療法による視機能の回復後,真性赤血球増加症と確定診断された。その後も本症の増悪・寛解に伴う視力の変動をみた。本症例は両眼にみられたことから,動脈の攣縮などの局所的要因でなく,血液の滞流が両眼の網脈絡膜におこったためと考えられる。

瘢痕期未熟児網膜症の血管変化—中心窩の毛細血管

著者: 高木郁江 ,   岡義祐 ,   西村みえ子

ページ範囲:P.855 - P.859

 黄斑部の螢光眼底撮影を行った瘢痕期未熟児網膜症の7例について検討し,次のことが明らかになった。
(1)7例全例で,無血管野であるべき中心窩域に毛細血管が存在しており,無血管野は不完全であった。
(2)7例はいずれも生下時の未熟度が強く,重症の未熟児網膜症を起こした症例であった。
(3)視力は1例を除き良好であった。

悪性高血圧症にみられた脈絡膜血行遅延と漿液性網膜神経上皮剥離

著者: 木村早百合 ,   竹田宗泰

ページ範囲:P.861 - P.867

 急な視力低下のために来科し両眼性に強渡の高血圧性網膜血管変化(Keith—Wagener IV期)と多発性の漿液性網膜神経上皮剥離を伴う54歳男性で,後に内科で悪性高血圧症と診断された1例を報告した。螢光眼底所見上両眼共に後極に網膜静脈相後期まで持続する境界鮮明な斑紋状の脈絡膜螢光の著しい流入遅延部がみられ,これに接して多発性の脈絡膜から網膜下への螢光漏出および貯溜を認めた。
 従来螢光眼底造影法においてこれほど明確に脈絡膜循環障害をとらえた報告は少なく,高血圧症が網膜循環系のみならず脈絡膜循環系にも血行障害をおこしうることを臨床的に示しており脈絡膜循環障害による漿液性網膜神経上皮剥離発生の重要性について考察した。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(18)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.868 - P.869

27.治眼通言
 馬嶋流眼科の分派には「五流」「五家」という言葉が使われた(野田昌編著,「馬嶋眼科と明眼院」)といわれているように,その分派による幾つかの系統があった。今日伝えられている,いわゆる馬嶋(真嶋,麻嶋)流眼科の秘伝書といわれる古写本の中には「此之書者真寺坊三河国鳳来寺*薬師如来十七日参籠満暁医王善逝尊夢想直伝之書也」というその書の由来をしるす数行がまま見られ,この霊告鳳来寺祈願伝受による法は馬嶋明眼院に対抗する馬嶋大智坊(明眼院の塔頭)が主唱してきたこととされているが秘伝書の本源については少なからず興味をそそられるところである。
 本書の著者は赤松定著となっているが料紙,文字の上からは時代的には新しい写本と思われる。本書はおよそ30葉,全1冊(19×13.7),本文は片仮名交り和文で書かれている。

GROUP DISCUSSION

弱視・斜視

著者: 山本節

ページ範囲:P.870 - P.872

 第36回日本弱視斜視学会総会は,たまたま同じ回数となった第36回日本臨床眼科学会総会のグループディスカッションとして,9月17日(金)神戸国際会議場メインホールで開催された。今年は春の日眼のあとすぐに演題締切りとなり,10月には国際眼科学会がサンフランシスコであることもあって,臨眼が例年より早く9月になったため,期間も短かく演題の集まりが悪いのではないかと心配していた。しかし,14題のすぐれた演題をいただき,それぞれ討論も活発で内容のある学会となったことは会員諸先生のお蔭と感謝している。
 演題は中川喬氏(札幌医大)に座長をして頂いた視力,屈折などの3題,田渕昭雄氏(川崎医大)にして頂いた輻湊,立体視に関する3題,久保田伸枝氏(帝京大)の症候群,Faden手術,奇形などの4題,最後の粟屋忍氏(名古屋大)は空間コントラスト特性を含む電気生理学的演題4題の合計14題でした。そこで本学会について,世話人の感じた主な内容と討論に関してまとめてみる。

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.873 - P.874

 これはG.D.の要旨であるが,G.D.について一般に意見を述べる機会が他にないので,毎度この場を借りて少しずつ述べている。
 学会にどのG.D.を採用するかは会長に任されているので,世話人としては毎年,採用してもらえるかどうか心配しながら暮している事になる。たしかに小会場を10も確保する事は,当番校にとっては困難な事だと思うのだが,しかしこれは定期的に決って開催できる様にしてもらわないと困る。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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