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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科37巻9号

1983年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・310

黄斑部cherry-red spotと角膜混濁を呈したsialidosisの1成人例

著者: 林みゑ子 ,   辻省次 ,   作田学

ページ範囲:P.1220 - P.1221

緒言
 黄斑部cherry-red spotはTay-Sachs病にみられる事で良く知られており,Sandhoff病,Niemann-Pick病,Farber病などにもみられるが,成人眼底にみられる事は非常に稀である。今回,全身的にaction myoclonusのみられる38歳男性で黄斑部cherry-red spotならびに角膜混濁を呈し酵素学的に白1血球β—galactosidase, siali—daseの活性低下をみる稀な例を観察したので,これを報告する。

臨床報告

国産硝子体螢光光度計の改良について

著者: 萱沢文男

ページ範囲:P.1223 - P.1227

 GAMM-INAMI type vitreous fluorophotometerに下記の改良を加えた。①X—Y recorderを組み込み眼内位置と螢光強度の関係を記録した。②photomultiplierを冷却し,S/N比の向上をはかった。③励起光源の負荷電圧を定電圧電源にてコントロールし,測定中変動のないことをモニターした。④細隙灯顕微鏡の左右への動きを機械的にロックした。特に②によって,螢光検出力が向上し(検量限界2.5×10−10g/ml)その実用性が高まった。
 Slit bcam幅600μ, probe size 450μ,測定角21°, photomultiplier印加電圧を,10−6g/mlフルオレスチングラスが5.0ナノアンペアとなるよう定めた条件下での,検量線の作成方法とその結果を示した。

ヒマラヤ登山者にみられた網膜出血の1例

著者: 村上雅一 ,   山名泰生 ,   鬼木信乃夫 ,   谷口慶晃

ページ範囲:P.1229 - P.1233

 今回,我々は高所登山中に両眼黄斑部に出血を起こした29歳の女性の症例を経験し,螢光眼底検査において毛細血管瘤様の毛細血管拡張,毛細血管の充盈欠損と,毛細血管よりの螢光漏出の所見を認めた。これらの網膜毛細血管の変化は,hypoxiaに起因するものと考えられた。

光凝固が奏効した網膜症を伴うincontinentia pigmentiの1症例

著者: 楠田美保子 ,   松山道郎 ,   高橋邦明

ページ範囲:P.1235 - P.1240

(1)典型的なincontinentia pigmentiの初期眼底病変が,両眼にみられ,経過中に活動性病変の進行増悪を呈したため,光凝固を施行し,病変の沈静化・退縮をみた症例を報告した。
(2)初期網膜症は未熟児網膜症と類似した点も多いが,網膜静脈の著明な拡張・蛇行や,動静脈の異常吻合形成などが特有であった。
(3)本症例の治療経験より,光凝固はincontinentia pigmentiの初期眼底病変に対する有効な治療になりうると考える。患児の眼底において,滲出性・活動性病変が進行増悪し,網膜剥離への進展が予測されるような場合は,期を逸せず光凝固を施行すべきである。

網膜黄斑静脈閉塞症におけるアルゴンレーザー光凝固法の適応

著者: 原田敬志 ,   矢ケ崎悌司 ,   太田一郎 ,   三枝淳子 ,   原田景子

ページ範囲:P.1241 - P.1246

 11例11眼の網膜黄斑静脈閉塞症のうち10例10眼にアルゴンレーザーによる光凝固を施行し良好な結果が得られた。精密凝固により十分に黄斑部浮腫の軽減に寄与し視力の回復に意義があると考えられた。

前房内増殖型網膜芽細胞腫の1例

著者: 滝昌弘 ,   馬嶋昭生 ,   塩瀬芳彦

ページ範囲:P.1247 - P.1250

 12歳の女性に発生した前房内増殖を伴う網膜芽細胞腫の1例を報告した。患者は右眼下方視時の霧視を主訴として来院し,右眼前房内の白色綿花状塊状物と微細な浮遊物,硝子体下方の混濁,下方網膜血管の怒張および鋸状縁付近の白色腫瘤が認められた。視力は両眼ともに1.2(矯正不能)で右眼圧は38mmHgであった。前房水の細胞診で悪性腫瘍細胞が検出され,網膜芽細胞腫と診断され,眼球摘出術が行われた。病理組織学的にはロゼット形成の多い分化型の網膜芽細胞腫で,前房内の塊状物も腫瘍細胞から形成されており,瞳孔を経て前房内に腫瘍が増殖したものと考えられた。眼球摘出後20カ月経過したが再発,転移は認められていない。

糖尿病患者の虹彩血管における透過性亢進の機序について

著者: 嚴富燮 ,   石橋達朗 ,   岩崎雅行 ,   谷口慶晃

ページ範囲:P.1251 - P.1254

 糖尿病群19例(24眼)およびコントロール群20例(23眼)の虹彩血管を用い,透過性の変化を電顕的に検討し,以下の結果を得た。
(1)コントロール群の虹彩血管内皮細胞は連続性で,細胞間はtight junctionにより接合されていた。
(2)糖尿病群の虹彩血管の一部にはtight junctionの離開がみられた。
(3)内皮細胞単位面積あたりのvesicleの数はコントロール群に比べ,糖尿病群で有意に増加がみられた。
 以上より糖尿病患者の虹彩血管は透過性の亢進を示し,それは内皮細胞の細胞間接合部を介しての輪送およびvesicular transportの亢進が考えられた。

カラー臨床報告

高度の網膜血管炎を呈した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 児玉保子 ,   古賀敏朗 ,   中尾多香昭 ,   宮本祐一

ページ範囲:P.1259 - P.1267

 両眼の激しい網膜血管炎を呈し,高度の網膜血管閉塞をきたした全身性エリテマトーデス(SLE)の1例(38歳男性)を報告した。
 初診時,軽度のぶどう膜炎を伴い,両眼底には著明な網膜静脈周囲炎が認められたが,3日後には静脈閉塞症様の強い網膜出血をきたし,同時に網膜剥離を併発した。網膜動脈周囲炎も数日遅れて明らかとなった。
 ステロイド大量投与により,眼底の著しい滲出性病変および多彩な全身症状は速やかな改善を示し,血管炎も鎮静化したが,罹患網膜動静脈の多くは高度の閉塞を残した。
 全身的にも皮膚,筋,腎の各生検で壊死性血管炎が認められた。本症例の病初期の眼底像は実験的アレルギー性網膜血管炎に類似しており,両限の著明な綱膜血管炎の発症には,SLEに基づいた免疫学的機序の関与が推察された。

薬の臨床

Sisomicin点眼液の細菌性外眼部感染症に対する有効性・有用性の二重盲検法による研究

著者: 岡村良一 ,   鎌田龍二 ,   松本光希 ,   小林俊策 ,   浅山琢也 ,   兼子勉 ,   筒井純 ,   市橋進 ,   武田純爾 ,   原二郎 ,   田中康夫 ,   塩田洋 ,   井上須美子 ,   小川剛史 ,   市川宏 ,   村上正建 ,   田中直彦 ,   秦野寛 ,   石川哲 ,   宮田幹夫 ,   内田幸男 ,   金子行子 ,   大西裕子 ,   北野周作 ,   山西政昭 ,   吉沢徹 ,   徳田久弥 ,   清水干尋 ,   有本啓三 ,   嶋田孝吉 ,   沢充 ,   大石正夫 ,   永井重夫 ,   田沢豊 ,   近藤駿 ,   熊谷俊一 ,   松田英彦 ,   根路銘恵二 ,   宮島輝英 ,   三井幸彦 ,   小寺健一 ,   東堤稔 ,   坂本雅子 ,   三浦創

ページ範囲:P.1269 - P.1282

 市販の0.3%ゲンタマイシン点眼液(GM)を対照として,0.3%シソマイシン点眼液(SISO)の有効性,安全性および有用性を,多施設二重盲検法によって比較研究した。
 細菌性外眼部感染症348例に1日4回,1回2滴点眼することを原則として使用した。除外例,脱落例を除き,SISO群128例,GM群137例が解析対象例となった。両群の背景因子の同質性保証をたしかめた後,両群の臨床効果,安全性および有用性を眼感染症研究会制定の判定基準によって比較して,つぎの結果が得られた。
(1) SISOは著効率64.84%,有効率96,88%,GMは著効率59,85%,有効率92.70%で,臨床効果に差はなく,眼感染症研究会制定の評価基準では,共に汎用性抗生物質点眼液として優にランクされた。しかしSISOの方がGMより多少「切れ味」がよいのではないかという可能性が示唆された。
(2)副作用の発現率は両薬剤間に推計学的に有意差はなく,また重篤な副作用も発生しなかった。しかし眼感染症研究会の評価基準を適用すると,従来GMの欠点とされていた刺激性が,SISOでは使用者がその差に気づく位軽微である可能性が推定された。
(3)特定疾患はSISOは前回の二重盲検法を含め19例,GMは31例あり,共に著効率50%以上,有効率95%以上であって,全症例の結果と矛盾しなかった。

GROUP DISCUSSION

ブドウ膜炎

著者: 藤原久子

ページ範囲:P.1283 - P.1288

1.ぶどう膜炎患者における遅発型皮内反応の検討
 ぶどう膜炎患者の細胞性免疫能の検索を目的として5種類の抗原を用い遅発型皮内反応を行った。抗原はCandida菌体蛋白100倍液,mumps lmg/ml, PHA-P 50μg/ml, PPD 0.5μg/ml, SK-SD 100/25μ/mlを0.1ml前腕部に皮内注射し,24時間,48時間の発赤径を計測してその最大径を採用した。判定はPHA-Pは20mm以上その他は10mm以上を陽性とした。結果は正常対照群では5抗原中4抗原陽性例が半数以上を占め,これをピークとする正規分布をえがくのに対し,サルコイドーシス患者群では3抗原陽性をピークとする大きな分布を示し,有意の反応低下を認めた。特にPPDでは著明に低下していた。ベーチェット病患者群では4抗原陽性例が多くみられたが,全体に反応のばらつきが大きかった。原田病でも興味ある結果を得た。

抄録

第21回白内障研究会講演抄録集

著者: 小暮文雄

ページ範囲:P.1289 - P.1300

I.一般講演
1.水晶体におけるカルシウムポンプとそのモジュレーター
 水晶体におけるCaイオンは,Na-K ATPaseの調節,膜不整化の防止など,水晶体の透明性に関与する多くの恒常性維持機構に重要である。このCaイオンの膜輸送のメカニズムについては,Ca-ATPaseの存在が示されているが,その生化学的特性についての十分な知見は得られていない。今回は,マウス水晶体におけるCa—ATPaseの特性を検討し,そのカルシウムポンプに関するより詳細な情報を入手することを目的とした。
 マウス水晶体Ca-ATPaseは,そのホモジネート中で1×10−6Mのfree Caイオンの存在により最大活性を示す。しかし,28,000×G遠心沈査では,ほとんどその活性を示さない。また,このCa-ATPaseは,種々の薬物での阻害が示されたが,特にカルシウム結合タンパク質として脚光をあびているカルモジュリンの阻害剤であるchlorpromazineおよびW−7によって,このCa-ATPaseの活性が阻害された。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(21)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1301 - P.1302

30.眼病一切の大妙薬家伝一方いやなが目薬
 以前は"万金丹"とか"反魂丹"といった薬名をよく耳にしたことがあるが,江戸時代末期の売薬(正しくは"買い薬")は内服薬。外用薬ともその種類もかなりあり,一般大衆の手頃な救急医薬として役立ち利用されたようである。
 売薬の中には目薬も幾種類かあり,各地の薬師,寺社などから霊宝薬として授けられていた目薬の他にも薬種商から売り出されていた。例えば益田友嘉の眼薬五霊膏,笹屋目薬光明膏,松井目薬神授清霊膏,大阪の医師浅田寿庵の入残膏,奈良屋平七目薬北斗香,久喜周伯目薬金明丹等数々の目薬が売られていた(花咲一男著「絵本江戸売薬志」)。しかし,これら売薬は"しまず,いたまず○○目薬""一切の眼病に用いて効能神のごとし"等と巧な看板広告によって買い薬利用者の心を引きつけ,買い気をさそい,薬は売られていたようである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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