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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻1号

1984年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・314

YAGレーザーによる黄斑裂孔

著者: 浅野俊弘

ページ範囲:P.6 - P.7

 Neodymium, yttrium-aluminum-garnet Iaser (YAGレーザーと略称)は,近年,工業用,医学用としての応用が盛んになってきている。眼科領域でもアメリカにおいてcapsulectomyに用いられ好結果を得たという報告1,2)がある。
 しかし,もし不用意に強力なYAGレーザーが眼内に照射された場合,網膜,脈絡膜に重篤な障害をきたす。

臨床報告

未熟児網膜症の視機能に関する追跡調査

著者: 江口甲一郎 ,   多田桂一 ,   若林憲章 ,   横谷千晴

ページ範囲:P.9 - P.16

 函館地方における未熟児網膜症の視機能の追跡調査を行い次の結果を得た。
(1)屈折異常の程度,視力,斜視の発生,両眼視機能などの予後の視機能は瘢痕の程度と深い関係があった。
(2)瘢痕期GradeII以上の重篤な症例では,正常な視機能を将来獲得することが非常に困難である。
(3)有効な治療と思われる光凝固は,I型活動3期の中期ならびに混合型,II型において,必要な症例に対して行い,予後の視機能を良好に保つことができた。

後極部裂孔に原因する網膜剥離に対する経毛様体扁平部ビトレクトミーとガスタンポナーデによる治療

著者: 荻野誠周 ,   永田誠 ,   浅山邦夫 ,   塚原勇

ページ範囲:P.17 - P.24

 後極部の硝子体牽引による網膜裂孔が原因となった網膜剥離5例に経毛様体扁平部ビトレクトミーとガスタンポナーデを施行し,いずれも網膜の復位を得た。赤道部弁状裂孔による網膜剥離3例にも試み,この方法の適応と問題点および眼内灌流液の問題点について論じた。

体位変換によって網膜下液が移動する非裂孔原性網膜剥離

著者: 峯則子 ,   湯沢美都子

ページ範囲:P.25 - P.31

 体位変換によって網膜下液が著明に移動する非裂孔原性網膜剥離の17症例を,検眼鏡的に限局性色素上皮病巣の有無によって2群に分類した。その結果,後極部に限局性の色素上皮病巣の認められるI群11例は,宇山の報告した後極部多発性色素上皮症およびGassの報告した胞状網膜剥離に相当するものであった。そして,同一症例に両者の病巣が認められたものが3例存在したので,両者は同一の疾患であり,表現型が異なるものであろうと考えた。また,検限鏡的には後極部に限局性の色素上皮病巣の認められないII群 6例は,臨床的にはSchepcnsの報告したuveal effusionに類似していたが,originalの報告では螢光眼底造影所見の記載がないため,同一の疾患であるという根拠は確認できなかった。しかしII群では,一時期,脈絡膜からの高度な螢光色素の漏出が認められるので,網膜剥離の原因として一過性に脈絡膜網膜関門のbarrierの機能的障害が生ずると考えた。
 治療は,I群では光凝固が有効であり,II群では予後は不良であった。

結節性硬化症における非定型的網脈絡膜欠損

著者: 桐渕和子

ページ範囲:P.49 - P.54

 結節性硬化症86例(172眼)の臨床像を検討し,8例(9.3%)の片眼眼底にpunched-out Iesionを認めた。5例に螢光眼底撮影を施行し,網膜色素上皮の低形成,脈絡膜大血管層の残存を認め,1例に病変内網膜小嚢腫状変性を認めた。これらの限局性小病変は,神経外胚葉の分化と移動の異常に伴う先天異常と考えられ,皮膚白斑,虹彩脱色素斑と共通の機序が推察され,疾患像の側面を特徴づける眼科的所見の一つである。

カラー臨床報告

Stickler症候群(hereditary progressive arthro-ophthalmopathy)の眼病変

著者: 宮久保純子 ,   宮久保寛 ,   橋本和彦 ,   猪原貴子 ,   多田博行

ページ範囲:P.35 - P.47

 Stickler症候群は遺伝性網膜硝子体変性症のWagner病に口蓋裂,骨端形成不全および難聴等の全身症状を合併した状態である。本邦ではまだ本症の報告はない。Stickler症候群の5家系28症例について全身および眼科的検索を行い,眼病変の基本病変が何であるかについて検討した。
 自験例では口蓋裂,骨端形成不全,難聴などの全身合併症が28例中15例にあり,近視,硝子体の強い液化,網膜前膜,脈絡膜萎縮,傍血管性網脈絡膜萎縮,網膜剥離等があった。これらより,自験例はStickler症候群と診断された。自験例でほぼ全例に認められた特徴的眼所見は,高度の硝子体液化に加え,Cloquet腔の境界膜に相当する硝子体皺襞膜が水晶体後方に明瞭に観察され,眼底後極部に脈絡膜萎縮の所見があったことである。脈絡膜萎縮は,高度の例で脈絡毛細管板が消失していることが螢光眼底造影により確認され,原発性の脈絡膜萎縮と推定された。従来特徴とされた傍血管性網脈絡膜萎縮は,頻度が少ないことなどから,本症の基本的眼病変としては考えにくい。
 以上のことからStickler症候群の基本的眼病変は特異な硝子体液化と脈絡膜萎縮であり,両者を合せ持つものは他の網膜硝子体変性症にはなく,本症の診断基準として重視すべきである。本症はMarfan症候群と同じ,もしくはそれ以上の頻度で存在し網膜剥離を生じやすいことから,今後注目すべき疾患である。

眼科手術学会

保存強膜を利用した眼形成手術(VI)—先天性眼瞼欠損の形成手術(II)

著者: 田邊吉彦 ,   浅野隆 ,   柳田和夫 ,   鳥居修平

ページ範囲:P.59 - P.62

 2例の先天性眼瞼欠損に対し,眼瞼後葉の再建に保存強膜を利用し,眼瞼前葉はZ—形成を用いて再建した。
 保存強膜で再建された後葉は移植された強膜が支持となり,極めて自然で,加えて縫縮をする必要がないので機械的眼瞼下垂も起らないという利点もあり,保存強膜は極めて有益なhomograftic materialであるといえる。
 Zの形成を利用した眼瞼前葉の再建は,手技は簡単で機能的には良好な結果が得られるが,日本人では重瞼ラインが乱れ,美容的にこの手術デザインは問題があると思われる11)

CO2レーザーを利用した緑内障手術(Trephine)について

著者: 寒河江豊 ,   千代田和正 ,   野寄喜美春

ページ範囲:P.63 - P.67

 緑内障手術(Trabeculo-trephine)にCO2レーザーを応用し,強膜弁および濾過孔の作成,虹彩切除に使用した。
(1)装置は最低出力が100mWまで可変で,しかも安定した操作が可能な低出力CO2レーザーを使用した。
(2)症例は眼圧コントロールが不良の18例20眼で,主に出血性緑内障に応用し,75%に良好な眼圧のコントロールを得た。しかし無効例の多くに濾過孔の虹彩嵌頓が見られた。
(3)レーザー照射時の出血はなく,血管の凝固および止血効果は強力で,安全かつ確実な手術操作が可能であった。

硝子体手術後のinternal tamponade—Gas, silicone oil, gas-silicone oil exchangeの比較検討

著者: 山中昭夫 ,   池内輝行 ,   森下清文 ,   五藤宏 ,   文順永 ,   大沼貴弘

ページ範囲:P.69 - P.74

 重症例に対する硝子体手術の補助手段として,internal tamponadeは重要な位置を占めている。我々は75例80眼に対し,gas (airまたはSF6)18眼,silicone oil 48眼,gas-silicone oil exchange 14眼のinternal tamponadeを施行した。Gas群77.8%, siliconeoil群87.5%, gas-silicone oil exchange群57.1%の復位率を得たが,復位率と視力予後とは一致しなかった。しかし,silicone oilの導入により,従来gasのみでは復位不能であった症例も治療可能となり,症例に応じたinternal tamponade素材の選択により,治療成績は飛躍的に向上した。

411例502眼の白内障外来手術

著者: 藤田靖

ページ範囲:P.75 - P.79

 1977年より約4年間に613眼の白内障外来手術を経験した。眼内レンズ手術と経過観察のできなかった例を除く502眼についてまとめた。全身的及び局所的に大きな事故もなく,術後も良好な視力を得ることが出来た。第一選択は,やはり入院手術をとるべきであると考えるが,顕微鏡による今日の術式,とりわけ充分な創の閉鎖による白内障手術は,外来手術によっても入院との問に差を認めなかった。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(25)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.80 - P.81

34.目形相伝抄
 わが国の中世末から近世にかけて行おれた医家の抄物は実学書として著わされ,広く活用された。眼科諸流派の秘伝書もそのほとんどが,実地治療法等を主に伝えた実学書ということができる。
 「日形相伝抄」は眼科実地治療書として相伝された秘伝書であるが,流派名は示されず宝永3年(1706)書写相伝の識があるのみである。

抄録

第6回日本眼科手術学会講演抄録集

ページ範囲:P.83 - P.103

◎特別講演
Changing concepts of management of diabeticretinopathy with vitreous surgery
 過去において硝子体手術は吸収しない硝子体出血(II—group)のために行われてきた。しかしごく最近では牽引性黄斑剥離を伴った増殖性網膜症と視力は良好であるが高度の増殖性網膜症(macula attached N group)に対して行われるようになった。以前には視力の良好な糖尿病性網膜症に対してはいくつかの要因のためにvitre—ctomyをすすめることができなかった。(1)すべての眼に対するIensectomyがすすめられた。これは現在では正しくないことがわかってきており,事実vitrectomy手術によって無水晶体眼になった眼はより高率に新生血管緑内障を発生する。(2)癒着した血管膜を遊離し分割することが技術的(器械的)にむつかしかった。これはmembrane pics, microvitreal scissors,双手法と器械の進歩によっていちじるしく解決された。(3)長期にわたる硝子体混濁に伴う術中あるいは術後出血を十分コントロールできなかった。この間題は現在では双手器械間眼内ジアテルミーを針状の双極ジアテルミーの組みあわせによって分割の前にすべての血管を凝固することによって,あるいは分割後にすべての出血部を凝固することによって処理できる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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