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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻11号

1984年11月発行

雑誌目次

特集 第7回日本眼科手術学会 シンポジウム 手術と眼の損傷

Fluorophotometryによる手術損傷の評価各種術後眼硝子体腔からのFluorescein能動輸送について

著者: 三宅謙作

ページ範囲:P.1091 - P.1095

 Kinetic vitreous fluorophotometryとBlairらにより提出された解析法を使用し,血液硝子体柵におけるsodium fluoresceinの外方透過と内方透過の比を,10mg/kgのfluoresceinを静注した正常者および各種眼内手術を行った例で計測した。汎網膜光凝固した1週および2カ月後,強膜内陥法,硝子体切除,白内障嚢外摘出および白内障嚢内摘出を行った各々2カ月後および12カ月後に検査を行った。外方へのfiuoresceinの透過は,内方へのそれの正常者で27.45±19.63,術後1週の汎網膜光凝固で12.21±5.61(P<0.02),術後2カ月の汎網膜光凝固,強膜内陥法,硝子体切除術,嚢外摘出術および嚢内摘出術で,各,々22.02±4.04(P<0.3),14.62±4.58(P<0.05),11,82±2.06(P<0.02),13.73±5.90(P<0.05)および9.05±5.05(P<0.01)であり,術後12カ月の強膜内陥法,硝子体切除術,嚢外摘出術および嚢内摘出術で,各々26.92±10.22(P<0.3),26.66±8.16(p<0.3),15.74±4.34(p<0.1)および11.54±3.35(p<0.02)であった。汎網膜光凝固では,術後1週ではfluoresceinの能動輸送の低下がみられたが,2カ月では正常化していた。

原著

固定斜視とその手術

著者: 丸尾敏夫 ,   広瀬温子 ,   岩重博康 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.1097 - P.1100

 後天性に発症したと思われる固定内斜視7例を報告した。6例は片眼,1例は両眼が極度に内転した状態に固定され,運動不能で他動的にも外転が不可能であった。本態は内直筋の強い伸展障害,外直筋のEMGが正常,術後外転可能となる症例のあることから,眼窩鼻側内直筋部の異常が主因で,視力障害による両眼視異常,強度近視による眼軸長延長が誘因ではないかと推定した。
 手術として内直筋後転および外直筋前転をまず行い,不十分な場合は上下直筋移動を追加し好結果を得た。

天理病院における超音波白内障乳化吸引術(KPE)7年間の総括—その1.併発症と長期予後

著者: 禰津直久 ,   荻野誠周 ,   池田定嗣 ,   山川良治 ,   永田誠

ページ範囲:P.1101 - P.1105

 今回われわれは当院で白内障超音波乳化吸引術を行った1,137眼のカルテによるretrospective studyと長期予後を知るための145眼の呼び出し調査を行い,以下の結果を得た。術中併発症として全症例中硝子体脱出を3.4%,後嚢破損を1.8%に認めたが,その予後は比較的良好であった。一方,核落下は発生数は少なかったが,術後低視力例があり特に注意すべき併発症であった。長期併発症では網膜剥離が6限(0.53%)に発生した。併発症のうちで最も多い後発白内障はカルテ調査では5.1%あったが呼び出し調査では17.9%あり実際にはもっと多い併発症と考えられた。

高齢者における人工水晶体移植術後の視機能—とくに術後乱視について

著者: 小松真理 ,   清水公也

ページ範囲:P.1107 - P.1111

 平均74.5歳の高齢者の117眼に人工水晶体移植を行い,術後3カ月間の視力と乱視の変化を調べた。術後3カ月で,86%が0.5以上の矯正視力を得た。ほとんどの症例が,術直後は強い直乱視を示すが,時間経過につれ乱視度は軽減し,倒乱視の方向に変化した。倒乱視化の傾向は,特に前房レンズ二次移植の例で著しかった。また,縫合糸および縫合方法の工夫により,術後乱視を軽減することができた。

計画的嚢外白内障摘出術後の後発白内障について

著者: 坂西良彦 ,   沢充 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.1113 - P.1119

(1)嚢外摘出術後3カ月以上経た症例88例100眼を対象として,後発白内障の臨床像につぎ分類,検討を行った。
(2)後発白内障は72眼にみられ,発症時期により,術直後よりみられる遺残群後発白内障と術後しばらくして生じる増殖群後発白内障とに大きく分類された。前者は水晶体皮質の遺残により生じるもので,さらに,ベール型(21眼)とSoemmering型(4眼)とに分類された。後者は水晶体上皮細胞の線維化生により生じる線維型(63眼)と,Elschnig型(11眼)とに分類された。Elschnig型は,さらに進行亜型と周辺部限局亜型とに分けられ,Elschnig型進行亜型の発症年齢は,他の型に比べて有意に低かった。
(3)後発白内障による視力低下(0.7以下)例は7眼にみられ,いずれも増殖群後発白内障によるものであった。
(4)フルオロフォトメトリーによる血液房水柵機能の定量的検討を,後発白内障存在群7眼および後発白内障非存在または軽度存在群11眼に対して行ったところ,両群間に有意差を認めなかった。

人工水晶体手術の検討—第1報大学における人工レンズのあり方と手術教育の試み

著者: 藤関能婦子 ,   川勝朝代 ,   稲富昭太

ページ範囲:P.1121 - P.1124

(1)眼内人工レンズの需要の増大に伴い,眼科専門医が基本的手技として修得するために,大学における卒業教育のカリキュラムの中にルーチンとしてその手術をとり入れ教育を試みた。
(2)移植された人工水晶体の種類は,前房レンズで,計画的嚢外摘出術にひき続き一次移植で行った。前房レンズでとりあげられてきたかっての合併症の問題の見直しも含め検討した。
(3)対象は60歳以上の老人性白内障で,片眼の手術適応例31人31眼であった。
(4)術後視力の改善は全例術後0.5以上の矯正視力を得た。
(5)術中合併症はiris tuck 5,浅前房4,前房出血2,デスメ膜剥離1であった。
(6)術後合併症は,瞳孔異常4,レンズの回転3,眼圧上昇(一過性)2,虹彩炎2,嚢胞状黄斑浮腫1であった。しかし,いずれも臨床上重大な問題となるものではなかった。
(7)角膜内皮のcell lossは,平均18.4%であった。
 以上の結果から,教育の場においても,人工水晶体手術を計画的に行えば,安定した成績が得られ,シムコタイプの前房レンズは,手術手技が容易であり,重篤な併発症が少なく,我々の意図を満足するものであった。

後房レンズパワー決定におけるSanders・Retzlaff・Kraff式と術中スキアスコピーの屈折度誤差について

著者: 石郷岡均 ,   山元力雄 ,   上野聡樹 ,   安渕幸雄 ,   高橋義公

ページ範囲:P.1125 - P.1128

 後房レンズを挿入した187眼を対象に,眼内レンズパワー決定の方法による術後屈折度誤差について比較検討を加えた。
 +19.0D〜+20.5Dの標準パワーレンズの使用は術後屈折度誤差が大きく,特に−5.0D以上の誤差を5%にも認めた。
 術中スキアスコピーによる眼内レンズパワー決定法は術後屈折度誤差が全例±3.0D以内であり,計算式の代用として十分使用しうる方法と考えられた。
 術中スキアスコピーとS. R. K.式を比較すると正確度および屈折度誤差を生じる要因を考慮して,安定性および一般性という点において現段階ではSanders・Retzlaff・Kraff(S. R. K.)式の方が好ましいと考えられた。

硝子体手術の眼内観察システム

著者: 山中昭夫 ,   大島健司 ,   M.Spitznas ,   安藤文隆 ,   五藤宏 ,   池内輝行 ,   中前勝彦 ,   高倉孝一 ,   山本英 ,   阿部國臣 ,   大橋敏夫

ページ範囲:P.1129 - P.1134

 硝子体手術用の種々のコンタクトレンズを考案,開発,検討してきたが,表面親水性fioatingコンタクトレンズおよび照明付きinfusionコンタクトレンズは.臨床上極めて有用であった。前者は術中灌水可能,レンズの眼球への附着性の向上,角膜表皮障害の減少等の利点を認め,後者は照明系を眼内に挿入せずに行う硝子体手術,シリコンオイル追加注入,術直後の観察,通常の網膜剥離手術等に有用であった。

最近行っているシリコン注入法について

著者: 大島健司 ,   山中昭夫 ,   五藤宏 ,   安藤文隆

ページ範囲:P.1135 - P.1139

 硝子体手術後に補助手段として用いられるシリコンタンポナーデのために,シリコンナイル注入器を制作して紹介した。なお本器を用いての注入法を具体的に,水—シリコン交換法,空気—シリコン交換法についてのべた。

黄斑部網膜上膜に対する硝子体手術の検討

著者: 前保彦 ,   佐藤幸裕 ,   島田宏之 ,   佐藤節 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.1141 - P.1147

 18例18眼の進行性網膜上膜に対して硝子体手術により膜剥離を行い,17例に膜剥離が可能であった。18例中9例に視力改善を認め,7例は術前からの黄斑合併症および黄斑神経上皮剥離,ぶどう膜炎の再燃,白内障の進行などのために視力不変であった。視力低下した2例のうち,1例は網膜上膜の再発,1例は網膜との強い癒着のため膜剥離が不能であったものであった。
 6例の網膜上膜について組織学的検索を行うことができた。術中に採取した膜組織中に内境界膜を3例に認めたが,3例とも網膜上膜の再発は認めなかった。膜を構成する細胞成分としてはfibrous astrocyte,macrophage,fibrocyte,myofibroblast-like cellなどを認めた。

網膜剥離復位後シリコンオイルを抜去した症例の検討

著者: 安藤文隆 ,   三宅養三 ,   大島健司 ,   山中昭夫

ページ範囲:P.1153 - P.1157

 シリコンオイル注入により復位した50例50眼において,網膜剥離消退後汎網膜光凝固術を行って網膜剥離再発防止策を施したのち,眼内のシリコンオイルを抜去した。
 前部硝子体皮質が残存していて,あるいは網膜前増殖組織が再発して網膜を牽引している症例では,シリコンオイル抜去時これを切除あるいはpeel offした。また,抜去後に網膜前増殖組織が再発し,牽引性網膜剥離を再発した症例もあった。50眼中4眼では網膜剥離再発のため,また3眼では反復性硝子体出血のためシリコンオイルの再注入が行われ,シリコンオイル抜去前の状態に復した。

CO2レーザー光を利用した網膜下液の排除について

著者: 千代田和正 ,   芳賀照行 ,   寒河江豊 ,   野寄喜美春

ページ範囲:P.1158 - P.1159

 13例13眼の網膜剥離愚者の網膜下液の排除にCO2レーザー光を使用したが,確実に網膜下液排除ができ,従来の方法による合併症は全くみられず,大変優れた方法であると思われた。

糖尿病性牽引性網膜剥離眼に対する硝子体手術成績

著者: 高塚忠宏 ,   上谷彌子 ,   月本伸子 ,   秋草正子

ページ範囲:P.1161 - P.1165

 1981年3月より1983年8月までの問に硝子体切除術を行った糖尿病性牽引性網膜剥離眼69例86眼の手術成績について報告する。
 硝子体に対する手術操作に加えて60眼(69.8%)に輪状締結術を行い,26眼(30.2%)に強膜切除術を行った。更に術前の光凝固治療が不充分であった29眼(33.7%)では経強膜網膜冷凍凝固を同時に行った。
 術後,52眼(60.5%)で視力が2段以上改善,19眼(22.1%)で視力が2段以下に低下,失明した症例は12眼(14.0%)であった。
 視力不変群および視力低下群の中で視野の改善が認められた症例が14眼あり視力改善群と合せ考えると,計66眼(76.7%)に視機能の改善が認められた。

連載 眼科図譜・324

3年後に再発をみた角膜輪部悪性黒色腫の1例

著者: 竹内勉 ,   田川義継 ,   田中邦枝

ページ範囲:P.1088 - P.1089

 悪性黒色腫は白人に多く,日本人では比較的少ないとされている。また,その多くは脈絡膜に原発し,メラノサイトの存在する角膜輪部での発生は諸外国においても比校的稀れとされており1〜3),本邦における報告例は未だにみられない。
 今回,我々は56歳男性の角膜輪部に発生した黒色腫を切除し,約3年後,同一部位に腫瘍の再発をみた症例を経験した。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(35)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1166 - P.1167

44.医事眼療雑記
 この「眼療雑記」は31葉,全1冊(25.3×18.3cm)よりなり,後世において写し伝えられたものと思われるが,その書名に示されている通り限科諸流派の秘伝書を断片的に収録したものである。その主な見出しには「眼目論」,「靏鳴先生秘伝」「相州一眼科伝」(近藤氏方)及び「橘本流鍼術論」(花岡良平伝之)等が挙げられているが,本稿にはその「橘本流鍼術論」精写全文を掲載し参考に供したいと思う。

臨床報告

内頸動脈血行不全による虚血性網膜症の2例

著者: 藪下えり子 ,   西田祥藏

ページ範囲:P.1169 - P.1174

 内頸動脈狭窄あるいは閉塞に起因する虚血性網膜症2症例を報告した。
(1)眼底所見は,症例1は網膜耳側動脈閉塞症所見を,症例2は網膜中心動脈閉塞症を伴う前部虚血性視神経症の所見を呈した。螢光眼底造影検査で2例共に脈絡膜螢光充盈遅延・網膜循環時間の遅延を認めたが,特に症例2ではそれが著しかった。
(2)頸動脈血管造影で症例1では,左内頸動脈の起始部に著明な狭窄と眼動脈の閉塞所見を認め,症例2では右内頸動脈起始部の完全閉塞と外頸動脈から眼動脈へ吻合する側副血行路の形成が認められて,2例ともに内頸動脈の狭窄あるいは閉塞による虚血性網膜症であることが診断された。
(3)治療はウロキナーゼによる血栓溶解療法を施行したが無効で,特に症例2では虹彩ルベオージスが進行して血管新生緑内障を続発し,眼圧のコントロールができず,強い眼痛のために眼球摘出術を施行した。

涙小管放線菌症の3例—ガスクロマトグラムによる菌同定

著者: 大石正夫 ,   永井重夫 ,   坂上富士男 ,   米山恵子 ,   高野操 ,   尾崎京子

ページ範囲:P.1175 - P.1178

 47歳53歳,56歳の3例の女性に発症した,涙小管放線菌症を報告した。
 うち,1例からガスクロマトグラフィーにより,Arachnia ProPionica (Actinomyces propionicus)が菌同定された。
 本症は頻度が少ないため,日常診療上みのがされやすい。治療に抵抗性の片眼性の結膜炎には,一応本症を疑って検査,診断して,根治的治療を行うことが必要である。
 また,本菌同定に,ガスクロマトグラフィーが必須であることを述べた。

慢性閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術の検討

著者: 相馬啓子 ,   勝島晴美

ページ範囲:P.1179 - P.1182

 慢性閉塞隅角緑内障(CACG)24例46眼に対し,アルゴンレーザー虹彩切開術を行い,照射前後の隅角,眼圧,トノグラフィーC値および負荷試験の変化について検討した。その結果,CACGに対するレーザー虹彩切開術は有効であり,観血的虹彩切除術に代わりうる方法であると思われた。しかし経過観察中18%に眼圧コントロール不良例が認められその原因として原発性開放隅角緑内障の合併した症例あるいは隅角閉塞のために不可逆性の線維柱帯の障害をきたした症例において,照射時の色素散乱が流出抵抗を増大させたためであろうと推定された。この点においては照射数を最小限にする等,更なる工夫が必要であり今後の課題と思われた。

夜間視力の年齢別推移と水晶体の影響の検討

著者: 渡辺雄二 ,   本村英子 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.1183 - P.1187

 Rodenstock社製Nyktometerを用い,正常眼,無水晶体眼,中心性漿液性脈絡網膜症の夜間視力を測定し次の結果を得た。
(1)20〜49歳群ではほぼ同じ値を示すが,その後年齢がすすむにつれて,夜間視力は低下し,特に60歳以上の人では眩輝光があると,その識別能は高いコントラスト値の方にずれる傾向が強かった。なお19歳以下群でも20〜49歳群より低値を示した。
(2)無水晶体眼と有水晶体眼の比較では,無水晶体眼の方が術後長期間経過した者でも夜間視力は低下していた。
(3)中心性漿液性脈絡膜網膜症の患眼では,明所視力が回復しても夜間視力は低下していた。
 これらの結果から高年齢者や無水晶体眼での夜間視力の低下や眩輝光下の識別能の低下は老化に伴う水晶体の変化によるものではなく,黄斑部領域の器質的変化によるものと推定した。

網膜色素上皮病変の臨床的検討—その1.急性網膜色素上皮炎

著者: 木村早百合 ,   竹田宗泰

ページ範囲:P.1188 - P.1193

 急性網膜色素上皮炎の眼底像をもつ片眼性急性視力障害例4症例を報告する。全例視力は良好で初診視力は0.5以上で18週以内に1.0以上に回復した。螢光眼底造影所見にて脈絡膜からの螢光漏出を初診時より伴う症例は今回除外したが,4例中2例がある期間をおいて2次的に脈絡膜過螢光増強を示すのが観察された。また患眼他部位に病変とは別に脈絡膜螢光漏出を同時に伴う症例が2例あり,急性網膜色素上皮炎と中心性漿液性脈絡網膜症の両方の眼底像の特徴を合わせ持つことから,両者の発生基盤に共通項のあることが示唆きれた。今回急性網膜色素上皮炎の立場から,過去の報告例と文献対比した結果,中心性漿液性脈絡網膜症として一括されてきた病態は臨床像からさらに細かく検討されるべきであり,その中には急性網膜色素上皮炎と考えられるものが含まれている可能性がある。

新しい硝子体フルオロフォトメターの試作

著者: 吉田晃敏 ,   保坂明郎

ページ範囲:P.1195 - P.1199

 Haag-Streit (Model 360)スリットランプを改造し,新しいvitreous fluoro—photometerを開発した。本装置の概略は以下の通りである。
(1) sensitivityが高く,しかもfilter leakの小さいexciter・barrier filter (SE4, SB50C)の組み合わせを用いた。
(2)眼内の非螢光要素を測定するためyellow filter (SB 50)を装備した。
(3)高感度な光電管(RCA 4516)を用い,電磁波,電波からの影響が最小限となるようシールディングを行った。
(4)観察系にビームスプリッターを設け,測定時の測定部位の観察を可能にした。
(5)以上の考慮により,linearityの範囲は7.0×10−11〜8.0×10−7 g/mlとなり,測定限界が著しく向上した。retinal spread functionは1.5%前後と良好であった。またin vivo,in vitroでの良好な再現性を有することが確認された。

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第7回日本眼科手術学会口演抄録集

著者: 福田雅俊 ,   新里幸徳

ページ範囲:P.1200 - P.1212

◎特別講演
1)手術と眼組織反応
 手術は人体に外傷を加えながら,治療目的を達しようとする行為であり,それによって受ける傷害にくらべ,利益の大きい時に,その手術の適応があると判定される。なかでも眼組織は繊細で,形態的なわずかな乱れも大きな損傷となるため,その損傷は最小限にくいとめるべきで,顕微鏡下手術もこのために開発された。手術による損傷を抑えるためには,手技の合理化,器具の精密化のほか,手術によってひき起こされる生物反応を知る必要がある。この研究を手術のbiology (病態生理学)と呼ぶが,その研究発展のためには,術中,術後の組織反応をprospectiveに観察する必要がある。その手段として,角膜の透過性と厚さ測定,角膜内皮観察,眼内螢光測定などが現在あり,プロスタグランジン,ブラジキニンなどの放出による反応や,灌流液中のCa添加,インドメサジンの点眼などによる傷害予防効果などが,角膜,前房,虹彩,網膜(とりわけCMEの発生)に対して考慮されねばならず,今後は手術時の光による傷害も無視できないから,手術用顕微鏡の内部照明をズーム化するなどの配慮も必要となる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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