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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻2号

1984年02月発行

雑誌目次

特集 第37回日本臨床眼科学会講演集 (その1) 学会原著

各種白内障手術の血液房水柵に及ぼす影響について

著者: 坂西良彦 ,   沢充 ,   新家真 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.115 - P.120

 正常若年者7例,嚢内法(ICCE)群38例,嚢外法(ECCE)群32例,嚢外法および後房レンズ移植(PC-IOL)群23例を対象として術後血液房水柵(BAB)の経時的変化および術眼の僚眼における交感性反応出現の有無につきフルオロフォトメトリー静注法により検討した。10%フルオレセインナトリウム液1mg/kg体重静注30分後の前房内フルオレセイン濃度(Fa)と血漿限外濾過液中遊離フルオレセイン濃度(Fp)の比Fa/Fp (%)値をBAB透過性を表わす定量的指標として検討した。(1)術後3日,1週の時点ではICCE,PC-IOL群のFa/Fp値は25〜30%であり,ECCE群のFa/Fp値15%に比べ有意に高く,前記二術式においては,柵破壊の強いことが考えられた。(2)術後柵機能の経時変化は,ECCE群では1ヵ月以内,ICCE群,PC-IOL群では3ヵ月以内にFa/Fp値の術前レベルへの回復がみられ,修復されると考えられた。(3)各術式とも同一症例の僚眼におけるFa/Fp値は,術前,術後3日,1週でいずれも有意差を認めず,今回の検討では交感性反応を認めなかった。(4)術前のしかも白内障の存在しない健常老齢者群のFa/Fp値の平均は3.5%であり,健常若年老群の平均値1.9%に比べ有意に高く,老齢者群においてのBAB透過性の亢進が示唆された。

QスイッチNd:YAGレーザーによる後発白内障切開

著者: 中尾文紀 ,   林文彦 ,   大藪由布子 ,   林英之

ページ範囲:P.121 - P.126

(1)眼科用Nd:YAGレーザー装置で後発白内障115眼(無水晶体眼88眼,人工水晶体眼27眼)の切開を行った。
(2)小児例(4歳〜15歳)の9例10眼では全麻を必要とせずに切開に成功した。
(3)大多数の症例で視機能の著明な向上を認めた。
(4)合併症として前房混濁,一過性眼圧上昇,虹彩出血,硝子体ヘルニア,IOLのpit,crack形成などがあったが,視力に影響しなかった。
(5)角膜内皮のcell loss{よなく,その他角膜や網膜に損傷は認められなかった。
(6) Nd:YAGレーザーによる後発白内障切開は重篤な合併症なく眼球を開放せずに行いうる極めて有効な治療法である。

Nd-YAGレーザーによる水晶体嚢切開術

著者: 馬嶋慶直 ,   江崎淳次 ,   山内和義

ページ範囲:P.127 - P.132

 我々はpulsed Nd-YAGレーザーを用い白内障手術と関係の深い前嚢ならびに後嚢切開術を試みたのでその結果をのべる。
(1) Pulsed Nd-YAGレーザーにはQ-switchとMode-locked装置があるが,今回これら2種の装置を用い,KPE術前に前嚢切開を更に嚢外法,KPE,後房人工水晶体移植後の後発白内障切裂術を,また白内障術後における虹彩後癒着についてsynechiotomyを行った。Q-switch装置は,American Medical optics社,Mode-locked装置はMeditec社のものを使用した。
(2)症例は前嚢切開術,後嚢切開術,synechiotomyを含む216例250眼であった。
(3)これら手術に使用したenergy doseは,Q-switch装置では2mJ前後で目的を達し,Mode-lockcd装置ではエネルギー量が一定のため5mJで手術を行った。
(4)合併症として次のものを認めた。
a)眼圧上昇:前嚢切開術後31.8%に,後嚢切開術後13%にみられ,すべて一過性であった。
b)縮瞳:前嚢切開術において3.6%に縮瞳をみた。
c)人工水晶体(PC-IOL)移植術後の後嚢切開術でIOLのレンズ部にピットの形成を認めた。視力その他に影響はみられなかった。

人工的無水晶体眼に対する人工水晶体移植症例の検討

著者: 稲富誠 ,   河井克仁 ,   谷口重雄 ,   安藤仁 ,   杉田達 ,   深道義尚

ページ範囲:P.133 - P.136

(1)白内障手術後の矯正が行われていないか,あるいは行われていても不十分な無水晶体眼77人87眼に対し,二次入工水晶体移植術が行われた。
(2)対象のうちわけは老人性白内障61人,外傷性白内障12人,先天性白内障2人,若年性白内障2人で,両眼移植は10人,片眼移植は67人であった。
(3)移植された人工水晶体の種類は前房レンズ63,iris clip型レンズ16,後房レンズ8であった。手術はFlieringa ringの使用とviscosurgeryを原則とし,先に行われた白内障手術の術式と前房,隅角の所見によって使用するレンズと術式が選ばれた。
(4)レンズパワーはSRK formulaによってまず後房レンズパワーを求め前房レンズパワーに換算された。多く使われたレンズパワーは+19〜+20Dであった。
(5)術後視力の改善は無矯正群に著明で,術前視力0.1以下の70%が術後0。6以上の矯正視力を得た。術後視力0.4以下のものの視力不良原因の主なものは瞳孔偏位5,CME 3,硝子体混濁2であった。
(6)術中合併症は軽度の前房出血5で術後合併症は高眼圧5(治療を要したもの2),ぶどう膜炎4,限局性の角膜浮腫2,網膜剥離2,CME 3であった。
(7)角膜内皮のcell loss (19眼)は平均約7%であった。

前房レンズループの固定状態

著者: 三宅謙作 ,   三宅武子 ,   小林弘子

ページ範囲:P.137 - P.139

 術後6ヵ月以上(平均9.9ヵ月)経過した各種前房レンズ挿入眼のレンズloopの固定状況を,隅角鏡検査および螢光隅角鏡検査にて検討した。28症例(56 loop)中,48loop (86%)は強膜岬から虹彩根部の間にIoopは固定されており,8 loop (14%)は周辺虹彩で固定されいわゆるiris tuckをおこしていた。iris tuckはヘスバーグ型の前房レンズにおいてより高頻度にみられた。この他の隅角鏡異常所見としては,隅角色素沈着40loop (71%),固定部付近の虹彩の萎縮10 loop (18%)がみられた。螢光隅角造影法においては,毛様体バンドからのびまん性の螢光色素の漏出が,7 loop (12%)で,血管拡張が4 loop (7%)でみられた。また,周辺虹彩血管の透過亢進が4 loop (7%)でみられた。上記結果は,これら前房レンズの支持要素として毛様体,虹彩の一部が関与しており,loopによりこれら組織が機械的刺激を受けることが示唆された。

眼内レンズ挿入眼の予後とその合併症・遠隔成績

著者: 山岸和矢 ,   永田誠

ページ範囲:P.140 - P.143

 1973年より1979年の間に眼内レンズを113眼に挿入しうち84眼について4年以上の術後経過を観察しえた。これら眼内レンズ挿入眼の長期経過後の視機能予後とその合併症について検討した。
(1)矯正視力0.5以上は69眼82%であった。(2)合併症のうち最も多かったのは後発白内障で,術後2年以上して混濁の強まるものが多かった。(3)虹彩支持レンズの脱臼は虹彩に縫着することによりその数は激減した。(4)高眼圧(21mmHg以上)を7眼に認めた。(5)高眼圧の症例中隅角にScheie III度以上の色素沈着を5眼に認め,これらはpigment dispersionとの関連が推察された。
 術後晩期に後発白内障,続発性緑内障を認める症例があり,眼内レンズ挿入はそのタイプと適応を慎重に決定して行い,術後経過良好でも十分な経過観察が必要である。

網膜芽細胞腫における腫瘍細胞と網膜色素上皮細胞のinteractionについての病理形態学的検討第2報

著者: 相楽正夫 ,   金成拓二 ,   近藤聖一

ページ範囲:P.144 - P.150

 網膜芽細胞腫における種瘍細胞と網膜色素上皮細胞のinteractionに関して既報1)の1症例につき病理形態学的に検討し,さらにいくつかの興味ある所見が得られたので,文献的検討を加え報告した。
 腫瘍細胞は微小な細胞質隆起をのばしながら網膜色素上皮細胞に接近し,そのmicrovilliを圧排,断裂し,両細胞間にzonula adherens類似の接着構造を形成していた。
 本腫瘍の脈絡膜浸潤における一形式として,このような接着構造をもとに網膜色素上皮細胞に定着,ついで破壊し,脈絡膜浸潤を完成させることが推測された。

網膜芽細胞腫のglial fibrillary acidic (GFA) protein

著者: 大平明弘 ,   大島健司 ,   菊池昌弘 ,   猪俣孟 ,   大西克尚

ページ範囲:P.155 - P.160

 PAP法による,網膜芽細胞腫30例30眼におけるGFA蛋白の局在を調べることにより,本腫瘍の発生起源について,免疫組織化学的な観点から検討を行った。
 GFA蛋白陽性所見は,腫瘍組織内の血管周囲や本来の網膜が巻き込まれたもの,ロゼット形成のない未分化型腫瘍細胞の一部に認められた。これらの所見は30例巾26例に見られ,その由来はreactive astrocyteと考えられた。
 Homer-Wright型とFlexner-Wintersteiner型ロゼットの一部にGFA蛋白陽性所見を認めた。またmitosis像にも陽性所見が見られた。このことから本腫瘍の発生の一部にグリア細胞の関与が明らかとなった。この陽性細胞はグリア細胞への分化が決定された細胞と考えられた。
 本腫瘍のロゼット形成は視細胞への特殊分化としてとらえるよりも,ロゼット形成の見られる脳腫瘍と同様に,神経管の再現と考えやすい。
 したがって本腫瘍はグリアならびに神経系細胞へのbipotentialityを有する細胞に由来するものと考えられた。

人工水晶体挿入眼の偽調節と近距離明視域について

著者: 渡辺清敬 ,   河合憲司 ,   天野肇 ,   杉谷幸彦 ,   早野三郎

ページ範囲:P.161 - P.164

 老人性白内障で後房レンズ挿入の手術をうけ,術後3ヵ月以上経過,視力の安定した症例11例,13眼についてその近見視機能を検査し,すでに報告したGifu lens II挿入眼の成績と比較検討した。
 Gifu lens II (iridocapsular lens)挿入眼と後房レンズ挿入限の近距離明視域および調節力は,それぞれ11.2±2.0(cm),2.11±1.47(D),10.8±5.8(cm),2.19±1.08(D)であり,両者の間に有意差を認めなかった。
 赤外線optometer AS III型の改良装置により,他覚的に調節運動と瞳孔反応を同時記録して検討したところ,近見時に縮瞳反応は認められたが,積極的な調節運動は記録されなかった。
 これらより,後房レンズ挿入眼にみられる偽調節はGifu lens II挿入眼と同様に瞳孔径による焦点深度増大を主とした散光圏効果によるものである。そして,近見時に縮瞳反応が他覚的検査法で示されたことは,縮瞳が偽調節の効果に関与していることを裏付けるものと考察した。

網膜静脈分枝閉塞症の発生要因について

著者: 岡田潔 ,   鈴木みゆき ,   戸張幾生

ページ範囲:P.165 - P.168

 網膜静脈分枝閉塞症(以下BRVO)が耳側ことに上耳側に多い原因を調べるため,BRVO 244人244眼と,対照として成人病健診者244人488眼の眼底写真について,動静脈交叉の部位,乳頭緑から交叉までの距離および交叉の角度を測定し,比較検討した。その結果は(1)成人病健診者の動静脈交叉は上耳側が下耳側より多く,鼻側は稀である。(2)成人病健診者およびBRVOの乳頭縁から動静脈交叉までの距離(以下PCと略)は,上耳側が下耳側より短かい。(3) BRVOのPCは成人病健診者に比べ顕著に短かい。(4)下耳側静脈閉塞症はその上耳側に動静脈交叉が少なく,交叉がある場合PCは下耳側の短かいことが多い。(5)成人病健診者およびBRVOの動静脈交叉の角度は,ほぼ等しい。
 以上から,BRVOが耳側ことに上耳側に多い原因は,耳側の血管が曲線的に走行し,動静脈交叉が多いこと,および上耳側のPCが短かいことにあると考えられた。

学術展示

金沢医科大眼科における眼部帯状ヘルペス症例の検討

著者: 山秋久 ,   柊木雅晴 ,   北川和子 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.170 - P.171

 三叉神経領域の帯状ヘルペスは皮膚症状のみならず多彩な眼症状を呈することはよく経験するところであるが,著者らが現在までに治療・観察してきた本症患者についてretrospectiveに検討を加えた。
 対象:1973年9月より1983年7月までに金沢医科大学眼科を受診した眼部帯状ヘルペス69症例であり,これは同時期に当院を受診した帯状ヘルペス患者445例の15%にあたる。

涙小管断裂49例の予後

著者: 河井克仁 ,   安倍勇 ,   小出良平 ,   桜井やよい ,   三村松夫 ,   深道義尚

ページ範囲:P.172 - P.173

 緒言眼外傷のなかで,眼瞼裂傷に伴う涙小管断裂はまれな疾患ではない。第一次救急医療で眼瞼裂傷に対する応急処置をうけ,その後流涙を訴えて眼科医を受診する陳旧例も少なくない。今回我々は最近5年間に当科で経験した涙小管断裂について,受傷機転,受傷後日数,損傷の程度および再建術の内容などから,その予後の検討を試みた。
 対象対象は1978年6月より1983年5月までの5年間に当科を受診した涙小管断裂49例で,男性39例,女性10例である。

ウイルス性結膜炎の混合感染

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.174 - P.175

 目的乳幼児のウイルス性結膜炎における角膜潰瘍が主に溶連菌の感染であると報告されてから,ウイルス性結膜炎の混合感染が注目されている1)。抗生物質の点眼がEKCなどによく用いられているが,ウイルスに抗生物質は無効であり,抗生剤の点眼は正常結膜細菌叢を攪乱させる。すなわち病因としてのウイルスと細菌,宿主としての年齢と正常結膜細菌叢およびこの両者に関与する抗生物質とステロイドの使用という三者の相互関係を解明する必要がある。
 対象と方法札幌市の眼科診療所において臨床的にウイルス性結膜炎と診断した生後16日目から81歳までの80名を対象とした。初診時において結膜擦過物をHEKおよびMK細胞に接種2)しウイルスの分離同定を,細菌の分離にはチョコレート寒天あるいは血液寒天培地を用いた。

結膜における血管透過性とIgEの局所産生

著者: 中川やよい ,   多田玲 ,   阪下みち代 ,   笹部哲生 ,   若野育子 ,   湯浅武之助

ページ範囲:P.176 - P.177

 緒言すでに著者らは結膜アレルギー,とくに春季カタルにおける涙液IgEと眼症状の関連について検討し,同一症例においては涙液IgEの増減が眼症状の消長と密接に関連していることを報告した。今回は眼局所では産生されないアルブミンを指標として,血清蛋白の血管外漏出率を算定し,涙液IgEのうちで血清に由来し血管外漏出によって涙液中に出現したものの比率を求め,結膜で産生されたIgEの量を推定した。また耳gEの局所産生量と眼症状との関連につき検討を加えた。
 対象・方法 春季カタル,アレルギー性結膜炎および流行性角結膜炎患者を対象とした。涙液の採取は前報どおり希釈法にて行い,血清と同時に採取した。血清蛋白の血管外漏出のマーカーとしてアルブミンを用いた。アルブミンの測定はsingle radial immunodiffusionにて行い,IgEの測定はPRISTにより行った。

ヒト結膜濾胞のリンパ球subsetに関する免疫組織学的検討

著者: 田川義継 ,   竹内勉 ,   佐賀徳博 ,   斉藤学 ,   松田英彦 ,   臼井朋明 ,   小柴博文 ,   菊地浩吉

ページ範囲:P.178 - P.179

 ヒト結膜にしばしばみられる結膜濾胞は,リンパ球を主体とする細胞により構成されており,外界からの抗原刺激に対する結膜局所における生体防禦の一つの発現と考えられるが,その詳細について十分解明されているとはいえない。今回我々はヒトリンパ球に対する各種のモノクロナル抗体を用い,結膜濾胞を構成するリンパ球subsctについて免疫組織学的立場から検討し,その意義について明らかにすることを目的とした。
 材料および方法北大眼科外来を受診し結膜濾胞を認めた男3例女1例計4症例を用いた。その内訳は濾胞性結膜炎2例,chlamidia感染が疑われた濾胞性結膜炎1例,I.D.U点眼によると思われる結膜炎1例であった。いずれの症例も点眼麻酔下に下眼瞼結膜濾胞を生検し,ただちにドライアイスーイソペンタン中で凍結しその後クライオスタットにて4〜5μの切井を作製し,神谷らの方法1)に従い酵素抗体法(PAB法)により検討した。抗ヒトリンパ球血清として,Leu−1(Pan T cell),Leu—2a (suppressor/cytotoxic T cell),Leu−3a (helper/indu—ccr T cell)(以上Beckton・Dickinson社製),HLB−3(B cell)2)の単クローン抗体を用いた。

連載 眼科図譜・315

大腿筋膜移植で治癒した翼状片術後強膜軟化症の晩発例

著者: 臼杵祥江 ,   中野秀樹

ページ範囲:P.112 - P.113

 翼状片術後に,まれではあるが遅発性の重篤な強膜合併症を見ることがある。再発防止の目的で用いられたマイトマイシンC点眼4)やβ線照射2)による局所の血管の障害が原因と考えられている。著者らは今回,翼状片術後18年経過した片眼に生じた強膜軟化症の1例を経験した。後療法の有無については不明であるが,強膜合併症の所見に酷似しており,この様な晩発例もあることに注意を喚起したい。なお病巣の中央部が穿孔しており,緊急手術の適応と考えられた。組織の修復補填には自己の大腿筋膜1)が用いられた。大腿筋膜は,強膜と類似した組織成分を有し(17.5%のコラーゲンを含有する3)),しなやかで適度の強度をもっているので,曲面を被覆するのに好都合であり,また眼内圧に十分耐えることができる。その上自己の組織であるので,同化性が強い。今回の症例では,術後に外眼部螢光撮影を行い,移植片の癒着と同化が予想以上に良好であることが観察された。術後の経過から,大腿筋膜はこの種の強膜軟化症に用いる被覆材料として優れていると思われるので併せて報告したい。
 症例:42歳男性。

臨床報告

黄斑円孔による網膜剥離のビトレクトミーとガスタンポナーデによる治療

著者: 浅山邦夫 ,   塚原勇 ,   荻野誠周 ,   永田誠 ,   奥田隆章 ,   菅謙治 ,   山元力雄

ページ範囲:P.183 - P.188

 Machemerらが発表した黄斑円孔による網膜剥離症例に対するvitrectomyとgas tamponadeによる手術療法の追試を行った。対象は21例21眼で,手術時他に裂孔の存在しない症例に限った。うち15例は手術の既往のない,単純な網膜剥離眼で,本術式のみにて13例87%が復位した。最終的には21例全例復位したが,3眼については円孔のジアテルミー凝固やbucklingを要した。結局21例中16例(76%)が本術式のみにて復位し,黄斑円孔に光凝固を追加したが,bucklingを行わず復位した症例を含めれば85%が本術式が効を奏して復位した事になる。また,後極部限局性稲平剥離の症例は本術式では再発しやすく,広範囲胞状剥離の症例に特に本術式が有効であった。

愛知県における重度視覚障害児の実態第1報—愛知県内盲学校在籍者および名大病院眼科外来受診者

著者: 唐木剛 ,   太田一郎 ,   堀口正之 ,   三宅三平 ,   市川宏 ,   薗部光子 ,   尾川尚子 ,   田辺竹彦

ページ範囲:P.195 - P.198

 我々は重度視覚障害児の診療・訓練にあたってきたが,理想的な診療・訓練がなされるためには,多くの問題を解決しなければならないのが現状である。そしてこれらの問題を解決するためには,重度視覚障害児の実態を正確に把握して報告することが大切と考え,愛知県における重度視覚障害児の実態調査を行った。この論文では,愛知県内の盲学校在籍者と名古屋大学医学部付属病院眼科外来受診者のうちの重度視覚障害児について視覚障害の原因疾患についての結果を報告した。また併せて,原因疾患の分類に原因と部位の相関分類法を用い,その有用性と改良すべき点等について言及した。

カラー臨床報告

急性リンパ球性白血病者にみられた乳頭腫瘍の1例

著者: 小嶋一晃 ,   斉藤裕 ,   北川周一 ,   市川宏

ページ範囲:P.189 - P.193

 急性リンパ球性白血病の診断後1年経過した14歳男子の片眼に,硝子体への突出度10Dの乳頭腫瘍をみた。眼窩へのライナックX線照射により,乳頭腫蕩は著明に縮小したが,照射前よりみられた視機能の障害は改善されなかった。視機能の障害は乳頭への腫瘍細胞浸潤や乳頭周囲脈絡膜,後毛様体動脈の循環障害による機械的,虚血性変化が神経線維におよんだためと考えられる。したがって乳頭腫瘍には早期の眼窩照射が必要不可欠な有効手段となる。
 以上全身的には末梢血,骨髄像以外著変をみず,放射線療法により著明に消退した急性リンパ球性白血病者の片眼にみられた乳頭腫瘍について報告した。

眼科手術学会

眼窩腫瘍に対するfrontal approach (trans cranial approach)における3次元CTの意義

著者: 野村隆康 ,   馬嶋慶直 ,   四宮陽一 ,   片田和広

ページ範囲:P.199 - P.203

 眼窩腫瘍9例に対し,開頭法(frontal approach)による摘出術を施行し良好な結果を得たが,その術前検査として3次元CT scanが有効であった。眼窩腫瘍については同検査法が術式の選択を始めとして,開頭法を術式と決定した際には,特に重要な検査法と考えた。

片眼白内障手術後の各種レンズ矯正法による不等像視の検討

著者: 鈴木福江 ,   菅原美雪 ,   三浦元也 ,   粟屋忍 ,   三宅謙作

ページ範囲:P.205 - P.210

 片眼白内障手術後の患者で,眼鏡およびコンタクトレンズ矯正各20例,前房レンズ移植23例,後房レンズ移植14例において,Phase Difference HaploscopeおよびNewAniseikonia Testsを用いてaniseikoniaを測定した。
 Phase Difference HaploscopeとNew Aniseikona Testsでの測定結果はよく近似したが,New Aniseikonia Testsにおいて抑制される症例もみられた。
 各群のaniseikoniaの平均値は,眼鏡では+23.7%,コンタクトレンズ+4.7%,前房レンズ−2.3%,後房レンズ+2.4%であった。
 眼鏡矯正以外の方法はいずれもaniseikonia tolerance内にあり,特に眼内レンズでは,aniseikoniaが小さい。前房レンズでは像の縮小を示す負のaniseikoniaを示す傾向にあり,aniseikoniaの観点からは後房レンズが勝れていると考えられる。

GROUP DISCUSSION

眼感染症

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.211 - P.213

座長矢野啓子講師(杏林大),大石正夫助教授(新大),金子行子講師(東女医大),佐々木一之教授(金沢医大)—以下敬称略—

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(26)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.214 - P.215

35.留春園眼療原秘録
 わが国の眼科諸流派は年代によって消長がみられ,寛文初年の頃には馬島流,穂積流,佐々木流,背木流,須磨流および山口流等が眼科の流派として一家をなしたといわれ(黒川道祐著「本朝医考」),その後,馬島流,家里流,笠原流,井花流等の流派が名をなし(小川剣三郎著「稿本日本眼科小史」),さらに文化,文政より天保年間には尾州の馬島流,信州の竹内流,江戸の土生流,あるいは筑前の田原流等が眼科諸流派興亡の中,一家をなしていたといわれている(福島義一著「日本眼科史」)。
 前述のように文化,文政より天保年間の頃,馬島,竹内,土生,田原流等がそれぞれ盛業にあり,当時わが国四大眼科として知られていた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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