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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

特集 第37回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著

網膜芽細胞腫における染色体異常について

著者: 金子明博 ,   佐々木正夫 ,   江島洋介 ,   田ノ岡宏

ページ範囲:P.227 - P.232

 国立がんセンター病院眼科を受診した網膜芽細胞腫患者96名とその家族13人について,肘部皮膚の線維芽細胞を培養して染色体分析を行った。両眼性症例のうち,散発性40人中5人(12.5%)と,家族性14人中1人(7.1%)に染色体異常が検出された。片眼性の症例42例には染色体異常は検出されなかった。染色体異常のうち5例は13番染色体のq14部分を含む介在欠失であり,1例は10番染色体との転座であった。2児に両眼性網膜芽細胞腫が発生して,その1児に13番染色体介在欠失の認められた家族の母親にq14の介在欠失が見られたが,腫瘍の発生は認められなかった。
 10例の腫瘍組織を培養して,腫瘍細胞の染色体分析を行った。3倍体を示すものが1例存在した。核型については1例を除き異常が認められたが,1番染色体長腕重複などの悪性腫瘍に共通に認められる変化で,網膜芽細胞腫に特異的な異常はなかった。

重症増殖1生硝子体網膜症(massive proliferativevitreoretinopathy)に対するScleral Buckling

著者: 吉田晃敏 ,   C. Ho ,   J.Wallace ,   L. Schepens

ページ範囲:P.233 - P.237

 Scleral buckling (SB)単独で治療された353眼のmassive proliferative vitreoreti—nopathy (PVR)(grade D)をrctrospectiveに分析し次の結果を得た。
(1)網膜の復位率はPVRが重症なほど有意に低下し(D−1-51.2%,D−2-43.3%,D−3-24.7%),全症例では42.5%であった。
(2)大裂孔,脈絡膜剥離,硝子体出1血は復位率を有意に低下させた。
(3)復位例の81.3%に指数弁以上の視力を得,復位例の術後視力は術前PVRの重症度と相関を示さなかった。
(4) SB単独療法はmassive PVRに対して一定の治療効果を有することが明らかとなり,PVRの治療上,基本的に重要な役割を果たすことが実証された。

黄斑円孔にバックルをしない手術方法

著者: 出田秀尚 ,   佐藤明 ,   石川美智子

ページ範囲:P.239 - P.243

 1981年5月から1983年4月までの2年間,出田眼科病院で手術を行った裂孔原性綱膜剥離379眼のうち,黄斑円孔のあるものは32眼(8%)であった。このうち後極部一帯の完全後部硝子体剥離のある18眼の黄斑円孔に対する処置は,黄斑部への眼底直視下のジアテルミー,網膜下液排出,硝子体内空気注入という術式を選択した。なお,後極部一帯の完企後部硝子体剥離がないか,あるいは不明の14眼には,さらに黄斑部へのシリコンスポンジ縫いつけによりバックルを行うという従来通りの術式を行った。また,周辺部裂孔を伴うものは32眼中9眼あったが,それらには周辺部裂孔に対する強膜内シリコン埋没術を併用した。
 その結果,バックルをしなかった18眼中17眼に,1回の手術で網膜の復位が得られた。他の眼は3回の手術を要したが,再剥離の原因は黄斑バックルをしなかったことではなく,周辺部に裂孔があったことと考えられた。また,バックルをした14眼中12眼が1回の手術で復位した。他の2眼も2回日の手術で復位した。
 以上より,完全後部硝子体剥離があり.網膜に対する硝子体の牽引がない黄斑円孔には,バックルは不要であることがわかった。これらには,このような適切な手術手技を用いれば,従来の方法よりはるかに短時間にかつ容易に治癒せしめることができる。

網膜芽細胞腫に対するヘマトポルフィリン誘導体を用いた光化学療法

著者: 大西克尚 ,   山名泰生 ,   嶺井真理子 ,   石橋達朗 ,   渡辺圭子 ,   久保田敏昭 ,   加藤大典

ページ範囲:P.245 - P.251

 網膜芽細胞腫に対する新しい視力保存療法として,ヘマトポルフィリン誘導体を用いた光化学療法を6症例に行った。ヘマトポルフィリン誘導体を光照射の3日前に静注し,光源としてはアルゴンレーザーを用い,直径は2,000μm,40〜300mW,連続10分間照射した。
 この光化学療法の効果をカラー眼底写真,螢光眼底写真や病理組織学的に検討し,本療法は網膜芽細胞腫に対し有効であると判断した。今回は顕著な副作用はなかったが,過剰照射の問題などを含め,長期間の経過観察が必要であると思われた。

急性発症,進行型糖尿病性網膜症の病像について

著者: 関伶子 ,   安藤伸朗 ,   小林司

ページ範囲:P.253 - P.259

 従来の単純型糖尿病性網膜症とは病態を異にし,急激に増殖型へと進行した8例16眼を糖尿病性網膜症がないか,極初期挙純型の時期から経過観察し,次の様な眼科的,全身的共通所見を得た。
(1)糖尿病性網膜症の経過は3期に分けられる。[期ではRPCs領を含む後極部毛細血管の拡張と著明な透過性亢進による著明な浮腫,並びに線状出血が急激に出現する。II期は限局性血管床閉塞,intraretinal micro vascular abnormalities (IRMA)を伴う前増殖.型所見が出現する時期で,III期は増殖型である。
(2) I期発症からIII期への進行は急激であり,光凝固無効例が多い。
(3) I期発症は長期未治療患者で急激な血糖下降治療開始を契機とする例が多い。

糖尿病性網膜症における蛍光眼底所見の評価に関する検討

著者: 福田雅俊 ,   岡野正 ,   別所建夫 ,   青木繁伸 ,   藤田利治

ページ範囲:P.261 - P.265

 単純網膜症を持つタイプII糖尿病患者245例(406眼)に眼底検査(検眼鏡,カラー眼底撮影,螢光造影検査)を研究開始時および24ヵ月後の2回実施し,両時期の螢光造影検査結果をそれぞれ1枚のベタ焼き陽画とし,これを資料として3名の網膜症専門眼科医が,すべての条件(内科的所見,検査日時,螢光造影以外の眼底所見)をblindとして独自に重症度を判定し,所定のアナログスケール上に記入した。一方すべての眼底検査結果を総合して重症度評価した総合判定と上記三者の判定とを比較した。この結果3名間に判定結果に相違があること,総合判定との相違も著しいことが明らかとなり,軽症網膜症の重症度判定は螢光造影検査所見のみで行ってはならないことと軽症網膜症の重症度を判定する基準作成の研究が今後大切なことを結論とした。

糖尿病性網膜症の網膜血管床に対する光凝固の効果

著者: 能美俊典 ,   渡辺正樹 ,   山本由香里 ,   瀬戸川朝一

ページ範囲:P.267 - P.271

 糖尿病性網膜症患者12例17眼について光凝固前後の螢光眼底像を5ヵ月以内の短期経過時と6ヵ月以上の長期経過時について比較し,綱膜血管非灌流野(NPA)の再造影所見を検索した。
(1)全例のNPAの大半に螢光再造影を認めたが,これら再造影像を便宜上再疎通型(C型),再形成型(V型)および血管新生型(N型)に分類すると短期経過時(平均2.8カ月)より長期経過時(平均12.1ヵ月)において,これら再造影所見が増加する傾向にあり,とくにC型が顕著であった。
(2)これら再造影所見のうちV型の短期経過時と長期経過時で同一箇所を比較するとV型をとどめるものやN型に移行するものがあったが,大多数がC型に移行していた。
(3)以上の結果は,本症に対する光凝固の網膜局所循環改善効果を示すものと考えた。

小児および若年者糖尿病の網膜症に関する研究

著者: 下舞聡子 ,   田中稔 ,   高野俊之 ,   加藤和男 ,   中島章 ,   阿部祐五

ページ範囲:P.277 - P.280

 小児および若年者糖尿病,男性16例,女性24例について以下の結果を得た。
(1)病型は男性でIDDMが15例NIDDMが1例,女性でIDDMが23例NIDDMが1例であった。網膜症が認められたのは全てIDDMであった。
(2)網膜症は男性に4例,女性に9例認められ,黄斑症の合併は少なく,網膜症の程度は経過とともに変動していた。
(3)網膜症と発症年齢,罹病期間の間には,正の相関があった。
(4)網膜症と各種性ホルモンの間で,男性では5%の危険率で正の相関があった。
(5)小児および若年者糖尿病の網膜症の発症には何らかのpuberty factorが関与していると思われる。

汎網膜光凝固の血液網膜柵に及ぼす影響

著者: 大西直人 ,   羽生田俊 ,   大川雅史 ,   村岡兼光 ,   米谷新

ページ範囲:P.281 - P.285

 汎網膜光凝固(PRP)が,血液網膜柵に及ぼす影響についてvitreous fluoro—photometcrを用いて検索した。対象はPRPの適応となる糖尿病性網膜症13例21眼で,光凝固前とPRP完了後1週間目に硝子体螢光を測定した。測定には10%フルオレセインーNaを体重kg当り7mg静注し,1時間後の硝子体中への螢光漏出を定量した。健常人12例15眼をコントロールとした。
 光凝固前の糖尿病群は,コントロールに比し有意に高い硝子体螢光漏出が観察され,血液網膜柵に障害のあることが確かめられた。
 単純型網膜症と増殖型網膜症の比較では,統計学的には有意差はなかった。
 光凝固直後を測定しえた糖尿病性網膜症3眼の螢光濃度は,いずれも凝固前より一過性に上昇したが,PRP後1週を経過した糖尿病群の硝子体螢光濃度は,凝固前の測定結果と有意の差がなくなり,治療量での光凝固による網膜色素上皮の破壊の結果生じる血液網膜柵の損傷は,少なくとも硝子体螢光でみるかぎりでは,硝子体に影響を与えないことが結論され,併せてPRPが糖尿病性網膜症の治療として安全であることが推定された。

コーツ病—治療効果の検討

著者: 桂弘 ,   松橋正和

ページ範囲:P.287 - P.291

 コーツ病28例29眼の光凝固および冷凍療法による治療結果と,治療効果を左右する種々の因子について検討し,次のごとき結論を得た。
(1)眼底所見の改善は29眼中22眼76%に認められた。
(2)視力の改善は術前視力1.0未満の17眼中6眼35%に認められた。術前視力0.1未満の症例には視力改善例は無く,視力が0.1未満に低下した場合には,視力の改善は極めて困難であると考えられた。
(3)年齢と治療効果との関連はなかった。
(4)網膜下滲出物の範囲が狭いほど,また,滲出性網膜剥離が存在しない症例の方が,治療効果は良好である傾向は認められたが,血管病変の部位および範囲と治療効果との関連は認められなかった。
(5)長期間放置された症例でも眼底所見の改善は得られたが,視力の改善は,視力低下自覚後6ヵ月以内に治療を開始した症例にのみ認められ,早期治療が重要であると考えられた。

学術展示

Specular microscopeによってとらえられる角膜周辺部の病態

著者: 江波戸文秀 ,   葛西浩 ,   崎元卓

ページ範囲:P.292 - P.293

 緒言Speculor microscopyの適応は角膜内皮に止まらず,最近では上皮あるいは実質にまで及ぶようになり角結膜疾患の病態の理解に役立っている。一方透明組織である角膜に臨床上観察される変化,例えば細胞浸潤,新生血管,浮腫などのうち角膜周辺部にみられるものは比較的多く,その発生機序には未解決のものがある。今回我々は,角膜輪部近傍に発生する病変に対しspecularmicroscopyを行い興味ある所見を得たので,これらを臨床上細隙灯顕微鏡検査により観察される知見と比較し検討を行ってみたので報告する。
 症例1:アレルギー反応。19歳,女性。春季カタル(眼球型)。13歳時よりアレルギー性結膜炎として近医にて加療を受けていたが,1983年4月より視力低下があり緑内障と診断され当院を紹介される。保存的療法では眼圧低下が見られず,視機能障害の進行があるため手術療法を施行し現在経過観察中である。入院中に充血と掻痒感が強くなり,新生血管のある上方角膜輪部に小水疱を伴うやや隆起した帯状の混濁が出現した。

わが国における円錐角膜の発症頻度

著者: 小川昭彦 ,   中野恵子 ,   上田俊介 ,   藤木慶子 ,   金井淳 ,   中島章

ページ範囲:P.294 - P.295

 緒言わが国における円錐角膜の発症頻度については,未だはっきりしない。今回,我々はアンケート調査によりその発症頻度を推定して検討を試みた。
 方法および対象全国各大学病院および医院に対して昭和57年度に受診した円錐角膜の新患と再来患者についてアンケート調査を行った。アンケートの内容は,患者の氏名・生年月日・性別・角膜移植術の有無とした。さらに,昭和31年から昭和58年6月末現在までの当院眼科を受診した患者を加えた。なお,患者の氏名および生年月日から重複者を除いて集計した。

骨髄移植後にみられた重症角膜障害

著者: 田邊詔子 ,   田渕保夫 ,   平野潤三

ページ範囲:P.296 - P.297

 白血病,再生不良性貧血の治療として行われる同種骨髄移植後の対宿主移植片病(Graft-versus-Host-Disease)は,肝,皮膚,胃腸,眼などにあらわれる1,4,5)。眼症状は涙液分泌減少を基盤とするもので,骨髄移植後に高率に発症するが,本邦ではまだ骨髄移植の症例そのものが少ないためか報告例がない。
 当院内科における骨髄移植19例のうち眼症状がみられたものは11例である。症状の大部分は点状表層角膜炎,結膜充血,時に偽膜形成などで視力に影響を及ぼさなかったが,ここに供覧する2例は角膜潰瘍から穿孔を来しそのうち1例は失明した。今までの報告では角膜穿孔をおこしたものは稀で,特に症例2のような重篤なものはごく最近に1例報告3)されたのみである。

特異な角膜病変を伴った多発性骨髄腫の1例

著者: 中瀬佳子 ,   上野真 ,   渡辺郁緒 ,   池田靖

ページ範囲:P.298 - P.299

 緒言多発性骨髄腫は形質細胞系の悪性増殖を本態とする疾患であり,眼科的にも多彩な症状を呈する。我々は霧視を主訴に眼科を受診し,両限の角膜混濁を発見され,内科的諸検査より多発性骨髄腫の診断の確定した症例を経験したので報告する。
症例

飛蚊症と網膜裂孔

著者: 荻野誠周 ,   西村晋 ,   小林博

ページ範囲:P.300 - P.301

 緒言飛蚊症は網膜裂隙による網膜剥離の重要な前駆症状である。多くは後部硝子体分離後におこり,飛蚊症のある後部硝子体剥離眼の約6%に牽引性網膜裂孔を伴い,裂孔合併率は男性に高く,硝子体中の赤血球は裂孔を強く示唆することを既に報告した1)。症例を追加して網膜裂孔(内分層裂孔,限局性牽引性網膜剥離,網膜血管剥離を含む)の頻度と疫学的特微について述べる。
 対象と方法1981年6月から1983年8月までの約2年間に飛蚊症を唯一の主訴として当科を受診した675例862眼を対象とした。視力,屈折検査の上,充分な散瞳下で倒像鏡検査と生体顕微鏡検査を施行した。

連載 眼科図譜・316

前房内に迷入した宮崎肺吸虫の1例

著者: 芳賀照行 ,   杉本由佳

ページ範囲:P.224 - P.225

 眼内に寄生虫が迷入することは稀であるが,最近著者らは前房内に迷入した肺吸虫の症例を経験した。
 症例:34歳,男性。

臨床報告

単純ヘルペス脳髄膜炎にみられた壊死性網膜炎の1症例

著者: 越生晶 ,   村田佐民 ,   武市吉人 ,   駒井杜詩夫 ,   宮森正郎 ,   中道明

ページ範囲:P.303 - P.309

 39歳の男性で,片限の壊死性網膜炎に脳髄膜炎と脳内出血を合併した症例を報告した。眼底病変は乳頭炎と黄斑部網膜に限局した小出血,浮腫で始まり,やがて網膜に濃厚な黄白色滲出斑と動脈炎の所見を生じ,閉塞性網膜動脈炎と壊死性網膜炎に進展した。脳病変は眼病変と同時に発生し,片側の側頭葉内側に出血をみた。ペアー血清で単純ヘルペスウイルスの補体結合抗体価に8倍の上昇をみた。以上の特徴から単純ヘルペスウイルスの感染が原因と考えられた。

日本(京都)における上強膜脂質沈着およびscleral plaquesについて

著者: S. Norn ,   直井信久

ページ範囲:P.310 - P.312

 脂質沈着lipid depositsとは上強膜あるいは結膜下に存在する球状体で,特に前毛様血管の周囲に認められる。日本人189名中52%に脂質沈着を認めた。この頻度は,デンマークの白人,グリーンランドのエスキモー,ヨルダンのアラブ人の頻度を上まわるものである。
 Scleral plaqueとは強膜表層の境界明瞭な透明体で水平筋付着部の前方に認められる。日本人189人中0.5%にしかみられなかった。Scleral plaqueは白人の間ではよくみられるがエスキモーではまれである。
 両現象の頻度に地理的な差ができる原因につき考察した。

Superior limbic keratoconjunctivitis

著者: 櫻庭晴美 ,   櫻木章三

ページ範囲:P.313 - P.316

 本邦では未だ詳細な記載のないsuperior limbic keratoconjunctivitisの1例を報告した。
 症例は甲状腺機能亢進症の治療をうけていた29歳の女性で,眼痛を主訴とし,眼所見としては,上眼瞼瞼結膜の乳頭増殖と亢血,上部角膜輪部の肥厚増殖と上方球結膜の充血,上方角膜にフィラメント形成などの特微を示しており,眼症状は甲状腺機能亢進と平行して増悪寛解を見せた。
 球結膜の擦過標本では,結膜上皮の角化と核のsnake-like-apPearanceを認めた。

航空機墜落事故時の介達性外傷による視力障害の1例

著者: 谷瑞子 ,   早川純子 ,   秋山健一

ページ範囲:P.317 - P.321

 1982年2月の羽田沖日航機墜落要故機に乗り合わせ,軽徴な頭部打撲後に左視力障害を来たした27歳男子の症例につき報告した。左眼底は網膜の小出血を2ヵ所に認めたのみであったが,受傷直後に施行した螢光眼底検査では網膜血管からの著明な色素漏出が認められ,特異な所見であった。墜落時の衝撃が介達外力として網脈絡膜・視神経の微小循環に異常をもたらしたことが原因と推定された。

両眼の視神経乳頭小窩を伴うWaardenburg症候群について

著者: 藤原久子 ,   古谷朱美 ,   土肥潤子 ,   栗本良子 ,   片山寿夫

ページ範囲:P.323 - P.326

 遺伝歴のない2歳男児に典型的なWaardenburg症候群を認め,その両眼に視神経乳頭小窩および脈絡膜萎縮を認めたので種々の検索を行い報告した。染色体および血液尿中アミノ酸の異常はなかった。CT scanにて頭部に軽度の皮質萎縮およびEEGにも軽度の異常が認められた。網膜やぶどう膜に色素異常を有する疾患と聴器異常を伴う疾患群について考察した。
 また視神経乳頭小窩は両眼性は比較的稀でWaardenburg症候群との合併は現在まで報告はない。本症例における両者の関連は不明である。

カラー臨床報告

傍乳頭網膜血管腫の1症例

著者: 萱沢文男 ,   薗田桂子 ,   島本史郎

ページ範囲:P.333 - P.336

 45歳,男性の左眼乳頭耳側下方に隣接して,約1/2乳頭径大の赤澄色のendo—phyticな網膜血管腫を認め,腫瘍の周囲には新生血管網を認めた。3年間の経過観察で,腫瘍の拡大はなく,3年目に新生血管網由来と考えられる硝子体出血をきたしたため,新生血管に対して直接的光凝固を施行した。その後,硝子体出血の再発および腫瘍の増大なく経過している。

眼科手術学会

活動期未熟児網膜症の網膜剥離に対する硝子体手術

著者: 大島健司 ,   中間宣博 ,   西村葉子 ,   生井昭子 ,   京野真三 ,   橋本芳昭

ページ範囲:P.327 - P.331

 激症型未熟児網膜症の活動期病変において網膜剥離を来たすのは牽引性の要素が強い。
 その機序は超音波検査により赤道部付近から硝子体腔内に向かって襖型の像がのびるのが認められ,次第に水晶体後面でいわゆるcyclitic membrane様の像を形成して網膜が剥離してくる。
 したがって手術は光凝固や冷凍凝固を行っても網膜剥離が生じてくる場合に,牽引を除去するためにこのcyclitic membrancの形成をさまたげるように,中心部および前部硝子体を切除すべきで,そのためには水晶体切除を併用した方がよい場合もある。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.337 - P.339

 今年は教育的な話を有名な先生にしていただく様にお願いしてあったのです。会長に伺ったところ,受益者負担の原理で謝礼を集めればよいとのことだったので話を進めていたところ,その後になって会場で集金してはいけないとの通達があってご破算になりました。
 講師の謝礼にかぎらず,G.D.の運営は資金の出どころがありません。会員制度にすることを世話人会ですすめられましたが,維持会員で他に何もメリットが無ければ会員になる人があるとは思われません。

超音波

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.344 - P.346

1.座位による眼軸長測定用探触子(ゼネラル製)の使用経験
 最近Goldmann圧平眼圧計のチップの部に振動子を内蔵したような探触子を用いて座位にて測定できる装置が普及してきている。今回私どもはこのような探触子をもつゼネラル製眼軸長測定装置を使用する機会を得たのでその操作性と精度について検討する。
 この装置はZK−2560形超音波診断装置,ZM−2950形眼軸長計測用カウンタとスタンド型探触子よりなる。探触子はニオプ酸リチウム,10MHz,5mmφ,30 mmRの凹面振動子を内蔵しその中央部に透明部をもちこの部より後方の視標を固視できる。接眼部は合成樹脂のチップの先にシリコンゴムの薄膜をはり,振動子との間は蒸留水で満たされている。

手術ノート

初心者のためのKPE手術事故防止ポイント集(4)

著者: 上野山謙四郎

ページ範囲:P.340 - P.341

 KPEを手掛げる術者ははじめ色々と迷い,失敗を重ねるが,ある時点で突然悟りを開いたようになり,精神的安定を得る。そして何時の問にか後房法で不安なく手術している自分を見出す。
 初心者に最適な力法は前房法とされ,著者の教室では,これに対し二手前後房法を採用していた。最近は,はじめから後房法で教育を行っており,はるかに良い成績である。ここでは初心者が後房法でKPEを習得する場合の注意点を述べる。近く発表予定の後房法ビデオも参照されたい。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(27)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.342 - P.343

36.眼科法相秘伝書
 古来眼科諸流派の治療法にはそのことごとくが「銀海精微」や「眼科全書」に論ぜられる五輪八廓説に基づく方法が用いられていたが,江戸時代後半に至り欧米医学,殊にオランダ医学の導入により杉田立卿翻訳の「眼科新書」,本庄普一著「眼科錦嚢」(正続)等が行われ,中国漢方眼科の伝統を守ってきた馬嶋流眼科にも漢蘭折衷眼科(「眼科集要折衷大全」馬嶋円如著)が採用されるようになった。こうした限科漢蘭医説の過度期ともいえる時期に眼科要言として伝えられたものが「眼科法相秘伝書」である。
 『愛に邨上家秘伝雀目之方論並秘方アリ,論ヲ素問二随ヒ,方ヲ傷寒論ニモトメテ神ノコトシ,秘中ノロ伝也』とは本書の中に記されている一端であるが,本書は邨上家の秘伝書の一つと思われる。その末尾に,

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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