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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻7号

1984年07月発行

雑誌目次

特集 第37回日本臨床眼科学会講演集 (その6) 学会原著

CO2レーザーによる緑内障減圧術(trabeculo-trephin)の臨床成績

著者: 寒河江豊 ,   千代田和正

ページ範囲:P.723 - P.727

(1)低出力(1W以下)で安定性のよいCO2レーザー装置を,顕微鏡下での緑内障手術(trabcculectomy)に応用した。
(2)対象は薬物でのコントロールが不良な緑内障眼21例23眼である。全例で術後6カ月以上経過を観察した。このなかには従来の濾過手術では眼圧のコントロールが困難とされる出血性緑内障が9眼含まれている。
(3)手術方法は従来のtrabeculectomyに準じて行った。術中,強膜弁および濾過孔の作成に,また一部の症例では虹彩切除にもCO2レーザーを使用した。
(4)その結果,23眼中19眼(出血性緑内障9眼中6眼)で眼圧が20mmHg以下にコントロールされ,従来のtrabeculectomyと同等以上の効果が得られた。
(5) CO2レーザーは切開と凝固が同時に行われるため,出血しやすい組織(出血性緑内障の虹彩切除等)の切開に特に有用であった。
(6)強膜・結膜の切開においてもメスでの切開に比較して炎症が少なく,過剰な肉芽形成や瘢痕化が少ない。そのため濾過孔の閉塞がおこりにくく,持続的な濾過効果を期待できた。

涙液のβ2—microglobulinについて

著者: 大谷浩子 ,   新谷千佳子 ,   中沢君代 ,   植田達子 ,   北野周作

ページ範囲:P.729 - P.732

 健常人56眼の涙液中β2—microglobulin (β2m)濃度を測定した。同時に唾液は24例,血清・尿は22例についても,β2m濃度を測定し,以下の結果を得た。
(1)25歳〜53歳までの56眼における涙液中のβ2m濃度は,10.52±4.01mg/lであった。
(2)18例36眼については,左右の涙液をほぼ同時に採取し,統計学的に左右差の有無を検討したが,有意差は認められなかった(p<0.05)。
(3)年齢との相関・男女別による差は認められなかった。
(4)24例の唾液のβ2m濃度は1.45±1.12mg/lであった。
(5)22例の血清のβ2m濃度は1.15±0.23mg/lであった。
(6)22例の尿中のβ2m濃度は0.09±0.03mg/lであった。

シェーグレン病の眼科的治療に関する研究—第3報涙液の浸透圧および点眼液の影響

著者: 宮川公博

ページ範囲:P.733 - P.736

 シェーグレン病における乾性角結膜炎の治療を目的として,人工涙液を改良するため浸透圧について検討を行った。被験者の下結膜嚢に直径約6mmの濾紙を挿入して5μlの涙液を採取し,米国Wescor社製浸透圧計Model 5100Cを用いて浸透圧の測定を行った。
 シェーグレン病患者確実例の涙液浸透圧は平均299.5mmol/kgで,正常者の平均292.6mmol/kgに比べ有意に高かった。シェーグレン病患者に0.3% hydroxyethyl celluloseを含有する人工涙液を点眼し,点眼前と点眼5分後の涙液浸透圧を比較した。浸透圧216mmol/kgの人二涙液点眼後,軽度低下したが有意差はなかった。浸透圧110mmol/kgの人工涙液点眼後有意に低下し,正常者よりさらに低くなった。また一部の患者に110mmol/kgの人工涙液を使用したところ,刺激を訴える者があった。
 以上より,シェーグレン病患者治療用人工涙液の最適浸透圧は216mmol/kgより低く110mmol/kgに近い値であり,110 mmol/kg以下の人工涙液は用いるべきではないと考えた。

実質型角膜ヘルペスに対するlevamisoleの細胞性免疫能に対する効果について

著者: 日山昇

ページ範囲:P.737 - P.741

 Levamisole (LMS)の実質型角膜ヘルペス患者における細胞性免疫能に対する効果を調べることを目的として,実質型角膜ヘルペス患者の末梢血中リンパ球の各種mitogenに対する反応性を調べて,以下の結果が得られた。
(1) LMSの投与を行っている症例では,実質型角膜ヘルペス患者の末梢血中リンパ球の3種mitogen (PHA, ConA, PWM)に対する反応性は正常例と有意差を認めなかった。
(2) LMS投与を中止して7カ月以上経過した症例およびステロイド剤治療を行っている症例においては,末梢血中リンパ球の3種mitogen (PHA, ConA, PWM)に対する反応性は,LMS投与中および正常例と比較して有意に上昇していた。
(3)これらの結果から,実質型角膜ヘルペス患者において,LMSはT-cell系の機能を正常に保つことによって,その臨床効果を発揮する可能性があると考えられる。

単純ヘルペス性角膜炎に対する硫酸亜鉛点眼の有効性

著者: 山本覚次 ,   藤原久子 ,   河野通久 ,   栗本良子 ,   花房通子

ページ範囲:P.743 - P.746

 1975年,Joseph Shlomaiら1)は実験的研究によりZnイオンがhcrpes simplexvirus DNA dependentのDNA palymeraseの阻害をおこす事を証明したので,我々は1977年4月よりこれを臨床的に応用し単純ヘルペス性角膜炎の症例に0.3% Zinc水を点眼した。症例は表在型16例,混合型13例,実質型21例の50例で,この結果,Zinc水の点眼は副作用もなく,すべての症例に使用可能で連用がきき,併用禁忌もなかった。表在型ではZinc水単独でも効果があり,他の型においては再発防止の意味でも有効であった。またZinc水は長期間安定で安価でありヘルペス性角膜炎の治療薬として期待される。

角膜変性症の移植後再発

著者: 大薗澄江 ,   小川憲治 ,   木下茂 ,   森山穂積 ,   真鍋禮三

ページ範囲:P.747 - P.749

 角膜変性症のうち,顆粒状・斑状・格子状・膠様滴状角膜変性症の角膜移植後再発率を検討した。移植後3年における再発率は,顆粒状変性症12眼中8眼67%,斑状変性症11眼中0眼0%,格子状変性症4眼中0眼0%,膠様滴状変性症22眼中21眼95%であった。高頻度に再発する頼粒状角膜変性症と膠様滴状角膜変性症は,上皮細胞が異常物質を産生する変性症である可能性がある。これらについては,再移植のしやすい表層角膜移植を可能な限り行うべきである。

角膜移植片の透明性と内皮細胞面積について

著者: 松原正男 ,   木村内子 ,   佐藤孜 ,   矢野真知子 ,   水流忠彦 ,   稲葉和代 ,   水落笙子 ,   神鳥高世 ,   谷島輝雄 ,   澤充

ページ範囲:P.751 - P.755

 角膜移植427眼について,生命表理論を応用し移植片の累積透明治癒率を算出した。その中で252眼については移植片の内皮細胞面積を経時的に測定した。原疾患が円錐角膜または水疱性角膜症であった症例に同様の検討を行った。
 累積透明治癒率は全症例では12年で65%であった。円錐角膜群では12年で90,5%,水疱性角膜症群では4年で29.0%であり,両群間に有意の差を認めた。内皮細胞面積は全症例では10年で1168μm2であった。円錐角膜群では5年で1340μm2,水疱性角膜症では3年で1840μm2であり,両群間に有意の差を認めた。水疱性角膜症における累積透明治癒率と内皮細胞面積との関係から,移植片に浮腫混濁を生ずる内皮細胞面積は2700μm2と推定された。
 角膜移植後,内皮細胞が長期にわたって変化し透明な移植片が徐々に減少することから,手術に際しては移植片に内皮細胞を多数残すことが重要であると考えられた。

網膜疾患の電気生理学的分析—Stargardt病と伴性遺伝性若年網膜分離症

著者: 若林謙二 ,   米村大蔵 ,   河崎一夫 ,   田辺譲二

ページ範囲:P.756 - P.760

(1) Stargardt病の症例では高浸透圧応答がう異常であり網膜色素上皮の障害が示唆された。
(2)伴性遺伝性若年網膜分離症の症例では網膜色素上皮および視細胞には異常は検出されず,主な異常は網膜内層にある。
(3)上記の両疾患は電気生理学的に明らかに主病変層を異にしており,電気生理学的検索は両者の鑑別に有用である。

網膜脈絡膜萎縮症の臨床的研究—第2報病的近視の黄斑部病変の進展過程

著者: 白神史雄

ページ範囲:P.761 - P.766

 病的近視の黄斑部病変の進展過程に関して,マルコフ過程をもとにその病態推移を推計学的に解析した。
(1)40代までは,網膜下血管新生の発生が,重篤な視機能障害をひきおこす病態であるのに対し,40代以後になると,脈絡膜の萎縮性変化が,重篤な視機能障害をひきおこす主たる病態となることを明らかにした。
(2)網膜下血管新生の生じた病変(neovascular maculopathy)では,40代以後,高率に脈絡膜の萎縮性変化が周囲に生じてくることを明らかにした。
(3)びまん性の過螢光像を示す病態を除いて,全体的に,本病変は,より重篤な病態に加齢とともに推移するものと推定した。
 今回は,時間を独立変数として扱えるマルロフ過程を応用したが,眼軸長等の他の因子の影響を考慮に入れたモデルの作成が今後の課題であると考えている。

Birdshot chorioretinopathyの2症例

著者: 川島みはる ,   湯沢美都子 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.771 - P.776

 Birdshot chorioretinopathyは1980年RyanとMaumenecによって報告された新しい疾患概念である。今回,筆者らは本症と考えられる2症例を経験し,臨床経過および検査所見から,次の結果を得た。
(1)眼底には後極部から中間周辺部にかけて黄白色の平坦な散在病巣が観察された。
(2)螢光眼底造影では,白色病巣に一致したtissue stainingによる過螢光,網膜静脈壁のstainingおよびCMEがみられた。
(3)前眼部にはほとんど炎症所見は認められないが,硝子体中には大型の硝子体混濁や多数の炎症細胞浸潤が認められた。
(4)全身検査所見には異常は認められず,HLA typingでは特異な抗原typeは検出されなかった。
(5)経過観察にて検眼鏡所見は軽快し,視力も回復傾向を認めた。

学術展示

中心窩部に負荷を与えた時の量的動的視野について(抄録)

著者: 友永正昭 ,   太田安雄 ,   浜野薫 ,   宮本晴子

ページ範囲:P.777 - P.777

 実験目的注視点に負荷刺激を与えながら,量的動的視野を計測した時,中心窩より周辺に至る網膜感度がどのような変化をきたすかを調べる目的で下記の実験を行った。
 実験方法ゴールドマン型視野計に,ネオンフリッカー装置の視標部分を改造した固視標を組み込み,量的動的視野を計測した。固視標は,ネオンランプを発光ダイオードに変え,1°45'の赤色三角視標の中心に41'の小三角形を設け,輝度0.6cd/m2とし,10Hzでフリッカーさせた。そしてフリッカー視標の小三角形を固視させて視野を計測した。検査視標の最高輝度は318 cd/m2で,背景輝度は10cd/m2である。

興味ある眼症状を呈したhypolipoproteinemiaの1例

著者: 三浦孝博 ,   山名忠已 ,   松浦啓之 ,   藤永豊 ,   西村悟子

ページ範囲:P.778 - P.779

 緒言脂質代謝異常疾患はさまざまな眼症状を呈し,限症状は,その診断にいたるまでの臨床症状として重要な位置をしめている。今回,hypolipoproteinemiaを示す症例について,眼科的に精査する機会を得たので報告する。
 症例5歳男児。

他覚式オートレフラクトメーターによる測定時の調節の介入の分析

著者: 武田啓治 ,   鈴木満喜子

ページ範囲:P.780 - P.781

 赤外光を用いた他覚式オートレフラクトメーターは,従来の可視光を用いたレフラクトメーターよりも調節の介入が少ないのが特徴とされる。しかし実際には明らかに調節が介入する。我々は調節の介入の程度を分析するためにNidek製オートレフ2000S 340眼,Topcon製RM100 180眼,Nikon製オートレフ1000F 163眼の他覚屈折値と自覚検眼による屈折値とを比較した。また可視光を用いた自覚式屈折器AO製SR IV 130眼の分析から,他覚式オートレフとの調節の介入の違いを検討した。なお,更にオートフォグの効果についても検討した。屈折値には自他覚とも等値球面値を用いた。
 結果①他覚値と自覚値はy=ax+bのような直線的相関をしめさず,他覚値には調節安静位様の調節が介入する。②度数別に比較すると,各社により多少の違いはあるが,次のような傾向がある。−1〜−2D以上の近視は+寄り,±ID以内は受に+寄り,+1D以上の遠視は−寄りをしめす。③年齢別に比較すると,20歳中頃までは+寄り,20〜40歳は−寄り,40歳以上は最+寄り,若年者はバラツキが大きい。④NidekとTopconのデータは同一被検者を用いてあるが,両者とも同程度の調節の介入がみられる。このことからオートフォグ機構が有効に作用しているとはいいがたい。

最新の眼科用電子スキャン超音波診断装置Renaissance A/B scanの使用経験について

著者: 馬場幸夫 ,   澤田惇 ,   横松美登里 ,   鳥井秀雄 ,   山元章裕

ページ範囲:P.782 - P.783

 緒言Kinetic echographyに特長的な眼科専用としては初めて市販された電子スキャン超音波診断装置Renaissance A/B scanを使用する機会を得たので,その臨床的有用性について検討した。
 本装置の特長①7.2 MHzのリニア・アレイ・トランスデューサーを使用し,走査を電子的に行っている。このため,従来のメカニカルスキャンのようにトランスデューサーを動かすことがないためディスプレイがちらつかず,たとえば腫瘍内の栄養血管のような細かな動きを映像することができる。②1秒間に60フレームの画像が電子的に描かれるため,ノイズレベルの低いリアルタイム像が得られる。③Bモードには,従来一部の眼科用Aモード装置にしか採用されていなかったS-curved ampli—ficationが用いられているので,より低いレベルの入力をとらえることができる。④64段階のグレイスケールを活用することにより,三次元表示法にも劣らない情報を得ることができる。⑤キャリパーにより画像上の距離の計測が0.1mm単位で可能である。以上の様な多くの特長をもった直接型装置であり,さらに場合によっては水浸法をも用いて各種眼疾患の検索にあたった。

螢光眼底造影剤(fluorescein Na)に関する免疫学的研究(第3報)

著者: 雑賀寿和 ,   宮里和明 ,   八木さえ子 ,   清水由規 ,   竹内良夫 ,   木村義民

ページ範囲:P.784 - P.785

 緒言螢光眼底撮影時,fluorescein Na溶液(FL)静注に伴い種々の副作用の発現がみられるが,その発現機作については,現在一定の見解は得られていない。先に,著者らはFLをモルモットに投与した場合,(1)血清中に抗FL抗体が検出されうること,(2)血中補体価(CH50)が低下すること,(3)一部の血清蛋白に対して変性作用を有すること,さらに(4) in vitroにおいて,FLが好塩基球よりhistamineをreleaseせしめることなどを明らかにした。
 以上の結果より,FLの副作用発現にアレルギー性の機作が関与している可能性が示唆された。そこで今回,患者血清を用い,人における抗FL抗体の検出,補体活性作用を検討し,以下の結果を得たので報告する。

外傷性低眼圧の臨床的検討—自然寛解機序と手術時期について

著者: 難波彰一 ,   白木京子 ,   山内昌彦 ,   北庄司清子 ,   松山道郎

ページ範囲:P.786 - P.787

 緒言眼球打撲後に起こる低眼圧はそのほとんどが一過性で,数日以内に回復するものであるが,稀に毛様体剥離が原因となり低眼圧が長期間持続することがある。この様な場合でも自然寛解することが多く,しばらくは保存的に経過を観察してもよいと思われる。しかし一定期間以上続くと,不可逆性の視力障害を招く危険がある故1),何らかの手術的処置を施し,眼圧を正常化させる必要がある。この保存的に経過を見てよい期間はどの程度なのか,何時手術に踏み切ればよいのか,手術方法も確立されていない現在では考え方はまちまちである。今回我々は眼球打撲後長期間にわたり低眼圧を持続し,1年以上経過を追えた10症例を検討し,自然寛解の機序と手術時期について若干の知見を得た。

連載 眼科図譜・320

樹氷状血管炎を呈した小児ぶどう膜炎の1例

著者: 坂西良彦 ,   金上貞夫 ,   大原国俊

ページ範囲:P.720 - P.721

 1976年,伊藤らは健康な小児の両眼に急激な視力低下を初発症状として発症したぶどう膜炎の1症例をその特有な眼底所見により,樹氷状血管炎と命名し報告した。今回,我々は伊藤らの報告例と同一疾患であると考えられる特異な小児ぶどう膜炎の1例を経験したのでここに報告する。
 症例:9歳,女子。

臨床報告

愛知県における重度視覚障害児の実態(第2報)

著者: 唐木剛 ,   太田一郎 ,   堀口正之 ,   三宅三平 ,   市川宏 ,   薗部光子 ,   尾川尚子 ,   田辺竹彦

ページ範囲:P.789 - P.794

 我々は,重度視覚障害児の実態を把握する目的で一連の調査を行ってきた。今回アンケート調査により,愛知県における重度視覚障害児の実態を,かなり正確に把握することができる結果を得たと考え報告した。今回の結果より得られた知見は以下のとおりである。
(1)愛知県には毎年約30名の重度視覚障害児が存在している。
(2)1976・1977年は有意に重度視覚障害児が少ない。
(3)男子は女子よりも,やや重度視覚障害を持つ割合が高い。
(4)視覚障害原因疾患についてでは,原因として先天素因が全体の60%を占め,部位では眼球全体,水晶体,網脈絡膜,視神経・脳が全体の95%以上を占める。
(5)視覚障害原因疾患の構成は,眼科治療の向上に伴い未熟(児)網膜症等は減少してきた半面,視神経・脳の炎症等の後遺症によるものが,救命されるようになったためか増加している。

コンドロイチン硫酸ナトリウムの使用経験

著者: 稲富誠 ,   河井克仁 ,   谷口重雄 ,   杉田達 ,   小出良平 ,   深道義尚

ページ範囲:P.795 - P.797

 コンドロイチン硫酸ナトリウム(以下CDS)を前眼部手術(222眼),主に後房レンズ移植術(213眼)に使用しその有用性を検討した。使用方法は後房レンズ挿入直前に前房内に約0.2mlのCDSと少量の空気を注入し前房形成を行った。その結果,空気単独使用の場合に比べ術中の前房からの空気の脱出は減少し,持続的な前房形成を行うことができた。また前房内の透見性も増大し,後房レンズ移植がより容易になった。術後3日以内に眼圧上昇を示したのは11/200眼(5.5%)でコントロール群(5/130眼,3.8%)との間に有意差はなかった。術後3カ月における角膜内皮細胞減少率は17.06%であった。

最近6年間の網膜剥離自験手術236眼の検討—II.手術術式と合併症

著者: 本田孔士

ページ範囲:P.798 - P.802

 1976年から1981年にかけての網膜剥離の自験手術例の術式,合併症につき,前,中,後期に分け調査した。前期に半数を越えたDEK凝固が,後期にはCryoにとって代られていた。強膜短縮術の割合が後期ほど減り,プロンベ縫着の割合が大きくなった。術中,術後の眼内出血が累計で14.3%あり,術後高眼圧を呈した症例は後期ほど少なかった。術後ステロイドホルモン投与を要した症例が,各期ほぼ10%あり,PVRの発生率は,7.0%であった.私の剥離手術の手技につき,スペースの許す範囲で述べた。

いわゆる樹氷状血管炎を呈する小児ぶどう膜炎

著者: 坂西良彦 ,   金上貞夫 ,   大原国俊

ページ範囲:P.803 - P.807

 伊藤らが1976年,樹氷状血管炎(frosted-branch-angitis)として報告した症例と同一症例と思われる稀有なる小児ぶどう膜の2例につき報告した。症例は9歳の女子と8歳の男子であり,これらの特徴は下記のとおりである。
(1)発症:健康な小児に急激な両眼の視力低下を初発症状として発症する。
(2)眼底:網膜は浮腫状に混濁しており,網膜血管は動静脈共,白鞘化している。しかし螢光眼底造影によりこの白鞘化部位は末梢迄造影された。
(3)治療・予後:ステロイド大量投与に劇的に反応し,悪化,再発をみない予後の良い疾患である。

標準色覚検査表第1部(SPP−1)の検討—(1)スクリーニング能力

著者: 深見嘉一郎 ,   島本史郎

ページ範囲:P.809 - P.812

 先天性色覚異常者411名に対して,1)標準色覚検査表第1部(以下SPP−1と省す),2)石原表(コンサイス版),3)東京医大表(TMC炎),4) HRR表,さらにランタン・テスト,アノマロスコープにて検査を行い,4種の仮性同色表のスクリーニング能力を検討した。
 強度の色覚異常(2色型色覚)に対しては,SPP−1,石原表,TMC表共にスクリーコング能力は優れている。しかし,軽度の異常者の中には,ほとんどすべての仮性同色表を正読してしまうものがいる。
 そうした軽度の色覚異常のあるものは,ある仮性同色表を正読し,他の表は異常読する場合がある,,軽度色覚異常苦の色覚の劣りの型がさまざまであり,他方仮性同色表の検出能力の様態もさまざまであるので,ある型のものは,ある表にて見つけ出され,また他の表では見つけ出されないこともありうるわけである。
 したがってスクリーニングには多種類の仮性同色表を使用する必要がある。
 その意味で標準色覚検査表第1部,石原表,東京医大表の3種をスクリーニングに使用すると精度の高いものとなるであろう。

寄稿

硝子体顕微鏡手術用に開発された電動遠隔操作による定位微細操作装置

著者:

ページ範囲:P.813 - P.821

 本装置は,硝子体手術を容易にかつより正確に行い,患者が安全に手術を受けられるよう開発されたものである。
 本装置は,別個の操縦箱にある操縦桿で術者が遠隔操作することによりモーターが動いて作動する。特殊なアダプターを用いれば,既製のほとんどの硝子体器具と併用できるしスイッチを切り換えるだけでモーターが電気的に逆転するので,160°の広角視野が得られるRodcnstock社製Panfundoscopeを用いた倒像下での操作が容易となる。
 本装置を用いれば,現在の硝r体手術操作の多くの点が改善されるばかりでなく,今後手動では不可能であったより繊細な手術方法も開発されてくるであろう。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(31)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.823 - P.825

40.獺祭録
 わが国における西洋流実験的眼科医の始祖といわれる土生玄碩の事蹟については多くの諸先輩の詳しい研究によりよく知られている。
 そもそも土生家の祖先は足利義教の臣下であって,渡辺氏といわれた。足利義教が殺された(嘉吉の変)時に,渡辺義実という人が朝鮮に逃れたが,そこで眼病を煩い季圭仁という眼科医の治療を受けて愈った。それから眼科の医術を学ぶこと7年あまり,再び日本へ戻り,安芸国豊田郡土生村(広島県)に住みつき,姓を土生と改め(異説もある),土生流眼科を起した。その後,代も変り元亀天正(1570〜1591)の頃,玄碩より数えて8代前の義賢という人が安芸国高田郡吉田村に移り,眼科医としても利家に仕えたといわれる。

GROUP DISCUSSION

色覚異常

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.826 - P.830

1.桿体一色型色覚の1例
 桿体一色型色覚の1例に,従来の精神物理学的手法による検査にあわせて,最近の電気生理学的検査を行い興味ある結果を得たので報告する。
 症例は14歳男子,羞明を主訴として来院,視力右0.15,左0.2,水平眼振あり,眼底異常なく,仮性同色表はほとんど読めず,パネルD−15でscotopic pattern,アノマロスコープで桿体一色型色覚を示した。視野ほぼ正常,single fiash ERG正常,flicker ERGにてCFF低下,pattern VECPにて低振幅,コントラスト閾値上昇,空間周波数特性異常を示した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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