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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科38巻9号

1984年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・322

Foreign body giant cellを思わせる眼内レンズ前面の付着物

著者: 大原國俊

ページ範囲:P.928 - P.929

 白内障に対する外科的療法としての人工レンズ(IOL)移植術については,素材,形,挿入手技等の敬良によって手術そのものの安全性が向上してきている。しかしながら,IOL自体が生体河でいかに眼内環境に順応して行くかについては良く知られていない。IOLに対する生体反応の一つには異物反応としてmacrophage由来のfbrelgn body giant cellの付着する事がhisto—pathologyによって証明されているが1),大多数の経過良好な術後根に同様の反応が生じているかについては不明である。我々は,IOL術後眼のIOL表画への照明方法を工夫すると,通常の検査では虹彩色素とされる付着物がfbrelgn body giant cellに酷似する像を呈する事に気付いた。この所見は眠内レンズの長期予後を検討するうえに極めて重要と考えられるので報告する。
 対象:当科で後房レンズの移植を受けた症例を対象とした。何れ毒重篤な合併症はなく視力予後も良好な者である。本報で示す症例1は58歳の女性で両眼に嚢外摘出価と後房レンズの移植術を受けた。左眼は術後1年8カ月目,右眼は術後1週目である。症例2は73歳の女性で右眼の嚢外摘出術と後瀕レンズの手価後3週目で術中にはNa-hyaluronateを使用している。

印象記

第88回日本眼科学会総会印象記

著者: 清水昊幸・他

ページ範囲:P.931 - P.958

 「白内障手術その適応と予後」と題する永田誠博上の特別講演が,東北大学川内記念講堂で行われた。
 白内障手術は近時,その方法がいろいろ変化してきており,各術式の適応症例をどうとるかが大変問題になっている。司会の水野教授もいわれたように,永田博土はこれまで約20年間にわたって多数の後進を育てつつ,いつも最新最良の眼科手術を行ってこられた方で,今,この時期に,この問題を論じられるのに最もふさわしい方である。そして講演の内容は我々の期待どおり,統計数字に裏づけられた精密な内容と広闊な視野とを介せ持った格調の高い白内障手術の展望であった。

臨床報告

網膜中心静脈閉塞症の発生機序に関する病理組織学的研究

著者: 石橋達朗 ,   岩崎雅行 ,   大西克尚 ,   猪俣孟 ,   谷口慶晃

ページ範囲:P.959 - P.963

 網膜中心静脈閉塞症を惹起した41歳男性の眼球を難治性緑内障治療のため摘出し,網膜中心動静脈を電顕的に観察し,下記の結果を得た。
(1)網膜中心静脈のlaminar portionに血栓形成が認められた。
(2)血栓は主に血小板,フィプリンからなり,血小板は内皮細胞剥離部に粘着,凝集していた。また一部には器質化血栓もみられた。
(3)静脈内皮細胞の細胞間隙が離開し,静脈壁への血漿成分のしみ込みがみられた。
(4)動静脈壁の中膜平滑筋細胞には変性,壊死,消失,また基底膜様物質の増加がみれた。
(5)動静脈の共有する外膜には膠原線維の走行の乱れ,消失がみられた。
 以上より,網膜中心静脈閉塞症の閉塞の原因は静脈内腔の血栓形成であり,この血栓形成には静脈壁内皮細胞の剥離が重要な意義を有すると考えられた。

網膜剥離を伴う糖尿病性網膜症眼の硝子体手術成績—2.視力不良眼の検討

著者: 安藤文隆 ,   三宅養三 ,   松浦雅子 ,   太田一郎 ,   松浦正司

ページ範囲:P.965 - P.969

 網膜剥離を伴う糖尿病性網膜症126眼の手術成績を,術前測定したEER(electrically evoked response)および汎網膜光凝固の有無との関連で検討した。
 EER不良群に視力改善例が少なく,また剥離網膜の復位しなかったものが多かった。術前施行された汎網膜光凝固のうち,argon laserによる症例群で予後不良例の割合が多かった。
 さらに予後不良例を術中裂孔形成と視神経萎縮様外観を呈した群で検討したところ,術中裂孔形成はEER不良眼に多く,術後視神経障害はargon laserによる汎網膜光凝固を受けた眼に有意に多かった。そしてこれに対する星状神経節ブロック療法は無効であった。術前argon laserによる汎網膜光凝固施行眼で,術後視力を回復した症例は全て黄斑部非剥離眼であった。
 このことから,EER不良眼では術中の網膜裂孔形成に細心の注意を払う必要があること,argon laserによる汎網膜光凝固施行眼では,硝子体手術は網膜剥離が黄斑部に及ぶ前に行われた方がよいことが示唆された。

朝顔症候群

著者: 東範行 ,   小口芳久 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.975 - P.981

 朝顔症候群23例25眼について電気生理学的検討を含めて臨床的検討を行った。黄斑部を認めるか否かで視力は0.1を境に大きく異なり,視力不良群は良好群に比べて血管異常,種々の綱膜脈絡膜異常を多くともない,ERG, EOG, VEPも不良であった。本疾患の視力不良には黄斑部を含む広範な網膜脈絡膜異常が強く関与していると思われた。

Type III Fucosidosisの三姉妹例—眼症状ならびに結膜生検所見

著者: 野呂瀬一美 ,   瀬川雄三 ,   谷野洸 ,   小野謙三

ページ範囲:P.983 - P.991

(1)低身長,gargoyle様顔貌,短頸,全身皮膚の被角血管腫(angiokcratomacorporis diffusum),精神運動発達遅延,神経症状,骨異常を呈し,末梢血白血球および,培養皮膚線維芽細胞中のα—L-fucosidase活性が著明に低下〜消失していたtype III fucosi—dosisの三姉妹例を検査する機会があり,種々の興味ある眼科的所見を得たので報告する。
(2)角膜には,実質深層に微細な点状白色混濁がび漫性に存在し,輪部から約1.5mmの透明帯が認められた。
(3)結膜・網膜血管はビーズ様,一部aneurysma様変化があり,視神経乳頭付近の後極部静脈の口径不同が強く,螢光眼底造影により,拡張血管に組織染が認められ,血管内皮細胞の障害が証明された。
(4)結膜生検を行い,結膜上皮細胞,線維芽細胞,血管内皮細胞,Schwann細胞,macrophageに多量の細胞内沈着物を認めた。
 組織化学的検索にて,多量の細胞内沈着物はfucoseを含む事を確認した。
 また,電顕にて上記細胞内に2種類のinclusion,すなわち微細なレース様構造物を含むclear inclusionと均一なdense inclusionを認めた。各inclusion内には,myeline様層状構造を示すvesicleも存在していた。

3歳児健康診査における視機能スクリーニング(第3報)

著者: 神田孝子 ,   川瀬芳克 ,   内田尚子

ページ範囲:P.993 - P.997

 3歳児健診時の視力検査の可能率は事前に家庭で練習させると向上することがわかったが,今回は更に家庭で視力検査をさせ,その結果と健診時の視力検査の結果とを比較した。家庭での検査の可能率は71.7%で健診時のそれとほぼ同じであった。またそれぞれの検査結果による判定は視力正常群,異常群共にかなりの一致がみられた。家庭で視力検査をさせる方法は現在の3歳児健診にも導入しやすい方法と考える。
 今回の健診時視力検査で検査不可の者および基準に達しなかった者に対し1〜2ヵ月後に視力を再検した。その結果検査可能者は全体の87.2%と上昇し,specificity (正常者が正常と判定される率)も80.6%となり効率が良くなった。異常者については数が少なく断定はできないが,弱視のある者などは検出されほぼ満足な結果であった。この結果から3歳児健診時の視力検査では再検が必要でかつ有効であるといえる。

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(33)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.998 - P.999

42.眼療秘伝書
 わが国の中世末より近世初めにかけては実地医術の勃興で,多くの眼科流派が現れ,その各々が秘伝主義を固執し,自己の一流一派を競い,数多くの伝書を作成した。それらの内容はもとより中国(明代)の眼科をもとに和漢文にて書かれたもので,原著は人体限られていた。しかしこれが個々に師から門人へあるいは親から子に伝えられる段階で,その重要部分は口伝,口授の方法がとられたために,そこに流派が興り,秘伝書が作られた。そのの重要部分を示す箇処には"口伝有之可秘"としるされた。この「眼療秘伝書」もこうしたしるしが何箇処もあるいわゆる秘伝書とみられるもので,当時の社会的必要が生んだ実地眼科医術書の一つとみることができる。
 この秘伝書は29葉全1冊(23.5×16. 5 cm)よりなり,和文の記載で,初めに眼目五輪八廓説,五輪之図,八廓之図,五輪所属主病之図,八廓所属主病之図を掲げ,次に眠病図入療治法,入薬,洗薬方等の順に述べられている。

薬の臨床

Cefmenoxime点眼剤の基礎的検討および臨床使用経験

著者: 富井隆夫 ,   福田正道 ,   川崎智寿子 ,   渡辺のり子 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.1001 - P.1005

 0.5%および1%Cefnenoxime (以下CMXと略す)点眼液の家兎眼での基礎的検討と,外眼部感染症に対する臨床効果の評価を行い以下の結果を得た。
(1)結膜嚢内残留濃度は,点眼単独では60分以後180分まで残留を認めたが微量であった。しかしソフトコンタクトレンズ(以下SCLと略す)を併用する方法では,180分まで高い残留濃度が維持できた。
(2)角膜内移行濃度は,0.5%および1%点眼液とも5分毎5回の点眼法で,6時間まで良好な移行濃度を示した。
(3)房水への移行はSCL併用法以外は不良であり,硝子体へは今回用いた方法ではCMXの移行は認めなかった。
(4)臨床検討例18例に対する効果は慢性涙嚢炎では60%,その他の感染症では全例有用であり,CMX点眼液の副作用は認めなかった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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