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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科39巻1号

1985年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・326

Hurler病の1例における結膜生検所見

著者: 原田敬志 ,   田辺吉彦 ,   菅原美雪 ,   仁木雅恵 ,   加藤智明

ページ範囲:P.6 - P.7

 Hurler病では角膜混濁のかげにかくれた形で結膜所見は余り注目をひいていない.角膜移植を必要とするほど角膜混濁が著明でない場合には結膜生検による結膜の病理組織学的検査から病変の情報を得ることができる.
 症例は7歳の女児である.ムコ多糖代謝異常症のため眼科受診を依頼された.視力はV.d.=0.5(n.c.), V.s.=0.3(0.5Х+0.5D), T.o.d.=12mmHg, T.o.s.=12mmHgである.

臨床報告

先天性涙嚢羊水瘤

著者: 長嶋孝次

ページ範囲:P.9 - P.12

 9年間に取り扱った先天性鼻涙管閉塞約550例中,生後5〜89日の乳児9例に涙嚢羊水瘤の合併をみた.すなわち8例は生下時から,1例は生後10日目に,内側眼瞼靱帯直下の腫瘤をあらわした.急性炎症も伴ったものが2例あった.前部下甲介嵌入が1例に認められた.これには下甲介折骨術が奏効した.他はいずれもブジー法だけで全治した.本症に涙嚢切開は無用である.

傍乳頭網膜色素上皮過誤腫と思われる1症例

著者: 永石順子 ,   高久功

ページ範囲:P.13 - P.17

 17歳男子,右眼の乳頭周囲に色素性病変を認め,その検眼鏡的所見,螢光眼底像,臨床経過から傍乳頭網膜色素上皮過誤腫と診断した症例を報告し,文献的考察を加えた.

網膜剥離を発症したbattered child syndromeの1例

著者: 本多文夫 ,   馬嶋昭生 ,   橋本勝

ページ範囲:P.19 - P.23

 白色瞳孔を呈したbattered child syndromeの1例を報告した.症例は4歳の女子で左眼に虹彩炎,前嚢下白内障,全網膜剥離による白色瞳孔がみられ,右眼は下耳側から下鼻側にかけて周辺部に強い網脈絡膜萎縮が認められた.これらの眼症状はいずれも反復して受けた鈍的外傷が原因と考えられ,battered child syndromeが疑われた.家庭環境を調査した所,母親による虐待を1歳半頃から受けていたことが明らかになった.眼科医は原因が曖昧な外傷が疑われる幼児の眼異常を発見した場合には本症候群の存在を念頭におき,重篤な障害を残す可能性を考え,児童相談所および福祉事務所に連絡して調査すべき責任がある.

先天白内障に対するpars plana lentectomy—福大眼科における手術成績

著者: 大塩善幸 ,   大島健司 ,   百枝榮 ,   林英之

ページ範囲:P.25 - P.28

 先天白内障に対し,硝子体切除吸引装置を用い,pars plana lentectomyとanterior vitrectomyを併用した術式を行い,その手術成績を従来の手術方法と比較検討したところ,術後1年から3年半の経過観察期間では,術後合併症,手術の回数の面で明らかに従来の方法より良好な成績が得られた.よって,先天白内障に対し本術式は,現時点では最も有効な術式の一つであると考えられる.

偽落屑症候群の硝子体螢光測定

著者: 塚原陽子 ,   小椋祐一郎 ,   斎藤伊三雄 ,   近藤武久

ページ範囲:P.29 - P.31

 偽落屑症候群(pseudoexfoliation (PE) syndrome)におけるPE物質の沈着は,前眼部のみならず眼瞼結膜下,眼窩内にも認められ,Eagleら(1971)により"basementmembrane exfoliation syndrome"という概念が提唱されている.PE症候群においては血液房水関門等前眼部の血液眼関門の透過性亢進の存在が証明されているので,われわれは血液網膜関門等後眼部の血液眼関門の障害の有無を検討した.
 神戸市立中央市民病院眼科でPE症候群と診断された8例15眼にvitreous fluorophoto-metryを施行し,以下のような結果を得た.
(1) PE症候群と診断された8例は,いずれも57歳以上で,高齢者に多かった.
(2) PE症候群と対照群のvitreous fluorescein levelには統計学的有意差は認められなかった.
(3) PE症候群の緑内障障合併の有無は,vitreous fluorescein levelには影響を与えなかった.
 以上の結果から,PE症候群にみられる血液眼関門(blood-ocular barrier)の障害は,主として血液房水関門(blood-aqueous barrier)等前眼部血液眼関門に限局しているものと推論された.

クローン病にみられた蚕食性角膜潰瘍の1例

著者: 島川眞知子 ,   田村正

ページ範囲:P.33 - P.36

 我々は最近,大腸クローン病に蚕食性角膜潰瘍の合併した症例を経験した.この両者の合併例の報告は今までには認められない.
 症例は39歳女性で,頻回の粘液血性の下痢,腹痛などの臨床所見と,内視鏡,注腸造影および生検の結果から,大腸クローン病と診断された.一方,腸病変の悪化と同時に,右眼の疼痛,充血を自覚し,角膜鼻側辺縁部に急峻な侵蝕像を伴った深い潰瘍を認め,Mooren's ulcerと診断した.プレドニゾロンとサラゾスルファピリジンによる全身療法および,4%グルタチオン点眼を行った.腸および眼病変は,ほぼ同じ頃に改善した.これら両病変の発症機構について,免疫学的立場から検討しな.

網膜血管形成異常の1例

著者: 大島崇 ,   島崎潤

ページ範囲:P.42 - P.46

 在胎34週,生下時体重1,850gの男児の片眼に認められた網膜血管形成異常の1例につき報告した.本症例はCoats'病,未熟児網膜症, familial exudative vitreoretino-pathyおよびこれに類似の硝子体網膜症と類似点をもち,網膜血管の発育異常に起因する一連の疾患群に属するものと考えられた.

反復性多発性軟骨炎(relapsing polychondritis)の2症例と本邦眼科領域報告症例の総括

著者: 内匠勝秀 ,   平島節生 ,   冨宿紀夫 ,   中嶋康幸

ページ範囲:P.51 - P.56

 反復性多発性軟骨炎と思われる2例につき眼症候を中心に報告した.また,本邦眼科領域で過去に報告された4症例の眼症候をまとめた.眼症候としては虹彩毛様体炎・強膜炎(上強膜炎)・角膜混濁が多くみられる.これらの症候は長期にわたり増悪・緩解をくり返す特微がみられる.治療は副腎皮質ステロイドが有効である.本疾患に合併した眼病変の予後は比較的良好である.

散瞳剤点眼による外眼部アレルギー反応

著者: 友田隆子 ,   岸本伸子 ,   井口伸子 ,   宇山昌延 ,   西嶋摂子 ,   河村甚郎

ページ範囲:P.57 - P.61

 最近1年間に散瞳剤点眼後に,眼瞼,結膜にアレルギー症状をきたした症例を15例経験した.当科では眼底検査所見の散瞳に,ミドリンP®(以後My.Pとする)とネオシネジン®(以後Necs.とする)の点眼を併用していた.この15例中My.Pのみにアレルギー症状を示したものが6例,My.PとNeos.の両方にアレルギー症状を示したものが9例あった.Neos.のみにアレルギー症状を示したものはなかった.
 前者は瞼結膜球結膜の充血を主症状とし,眼瞼には反応をみなかった.皮膚パッチテストにより,防腐剤として含まれている塩化ベンザルコニウムが原因と考えられた.後者は眼瞼の発赤腫脹をきたし,結膜の反応は軽く眼瞼に主症状があり,皮膚パッチテストより,主成分である塩酸フェニレフリンが原因と考えられた.
 散瞳剤の点眼は頻用され,その結果経結膜的に感作される機会がふえているため,今後このようなアレルギー症状を示す症状はさらに増加すると予測される.

剥離網膜の晩期自然復位

著者: 本田孔士

ページ範囲:P.63 - P.69

 手術による復位に失敗した自験網膜剥離眼19例の経過観察の中から,最終手術後1年以上して,自然に網膜が復位した2症例を経験したので報告した.この復位は,残存硝子体の前方移動に伴う網膜牽引の解除によると思われたが,過去のこの種の自然復位(網膜下液の術後吸収遅延ではない)の報告をも調べ,たとえ復位が得られなくとも,網膜裂孔が閉じてさえすれば,長期的に観察していると,網膜が自然に復位する両可能性があることを述べた.もちろん,剥離が長期にわたれば,復位しても視機能の改善に多くを期待できないが.

家族性滲出性網膜硝子体症での網膜血管と眼底病変との関連

著者: 宮久保寛 ,   宮久保純子 ,   得居賢二 ,   坂本道子

ページ範囲:P.71 - P.79

 家族性滲出性網膜硝子性症を示す81例138眼について,網膜血管異常と眼底病変,視機能との関連を検索した.本症の網膜血管異常を増殖性変化,網膜無血管野の有無から5型に分類して分析した.典型例では広い網膜無血管野,血管吻合,多分岐,咬合不全を呈するが,最軽症例では網膜無血管野がないこと,本症の特微である視野異常は,広い無血管野を示す血管型での検討から,その成因に網膜無血管野,V字型変性が関与しており,本症の遺伝型式については突発性のものがあることが明らかになった.眼底病変と分類された血管型とは,密接な関連を有していることから,網膜硝子体癒着,網膜分離症,黄斑偏位,牽引性網膜剥離は網膜血管異常の続発病変と考えられた.

カラー臨床報告

Q-switched Nd-YAGレーザーによる隅角切開術 第1報

著者: 弓田彰 ,   白土城照 ,   山本哲也 ,   北沢克明

ページ範囲:P.37 - P.41

 Q-switched Nd-YAG レーザーによる隅角切開術を行い,7眼中4眼で眼圧下降を得た.Dcvelopmental glaucoma 2例4眼では有効であった.先天緑内障の陳旧例およびSturge-Weber症候群の症例では無効であった.しかし全例で隅角切開が得られたことから,原発先天緑内障の発症後早期の症例においては,特にその有効性が期待され,今後検討に価する方法と考える.

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(37)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.80 - P.81

46.真嶋流眼病之書
 馬嶋流眼科の"馬嶋"という名称には真嶋,麻嶋,間嶋等いろいろな文字が当てられているが,それは唯その異を示そうとしたに止まるのではなかったか,それぞれの内容は大同小異であるといわれている.本書の識語にはこの一巻は高田左衛門大夫が相伝の書で,尾州真嶋流の秘伝書であるとしている.また,慶長15年正月の年号が識されているところより,多分この年に書写(某氏により)されたものと思われる.高田左衛門大夫という人が如何なる人物か不詳であるが,本書の相伝由来を識した条に,『抑々此書というは神武天皇の御代の時,丹波の国,高田左衛門大夫,和気の典薬吉之といへし人,一中略—薬師如来夢想に見来あつく此書を伝へ給う.一中略—末代の重宝として此一巻の書かながきにうつし伝へるなり』とあり,高田左衛門大夫が薬師如来夢想のお告を秘伝として伝えられたものと推察される.
 この「眼病之書」は35葉,全1冊(18:121.5cm)の横長本よりなり,本文は平仮名を交えた和文で記され,全体に閲読者の朱が入っている.また全体を眼抄上巻下巻に分ち,内容見出しに以下の項目が挙げられている.

GROUP DISCUSSION

超音波

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.82 - P.84

1.眼科における総合画像診断と起音波検査法の役割
○松本匡彦・梯 龍洋・小松 章・染谷恵美子・   太根節直(聖マリアンナ医大) 我々は種々の眼疾患に対して,echography, CT-scan,RI-scintigraphy, angiography, thermography等を駆使して眼科の総合画像診断を試みたので報告する.対象とした疾患は,過去11年間のうち代表的なRetinoblastoma,PHPV, Xantogranuloma, choroidal hemangioma, mali-grant melanoma, C.C.F等である.その結果,CT-scanは眼窩内の病変の映像化に有利であるのに対し,echo-graphyは,眼球内病変の診断や,計測・組織鑑別に長所を有し,また,RI-scintigraphyは,tumorの性状やmetastasisの発見のために有用であった.echography,CT-scan, RI-scintigraphy, angiographyおよびthermo-graphy等の総合画像診断を行うことにより,より高い正診率を得ることができた.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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