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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科39巻10号

1985年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・335

眼窩腫瘍と毛様体CystよりIgGκ型の単クローン性を証明しえた多発性骨髄腫の1例

著者: 河西庸二郎 ,   森禮子 ,   政岡史子 ,   上野脩幸 ,   園部宏

ページ範囲:P.1168 - P.1169

 多発性骨髄腫(M.M.)は形質細胞系の腫瘍性増殖を本態とする原発性骨腫瘍であり,眼科領域では,眼窩への腫瘍浸潤による眼球突出や眼球運動障害,さらにpara-proteinemiaによる様々な眼球病変が報告1,2)されている.今回我々は,M.M.の一剖検例を経験し,眼球および眼窩腫蕩を病理組織学的ならびに免疫学的に検索したので報告する.
 症例 :35歳,男性.

第89回日本眼科学会総会印象記 1985年5月16〜18日於京都市

—特別講演Ⅰ—網膜・硝子体の発育期における特殊性,他

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.1171 - P.1201

演者:植村 恭夫
 昭和60年5月18日,第89回日眼総会最終日に,慶応大学植村恭夫教授による特別講演「網膜・硝子体の発育期における特殊性」が東大三島済一教授の座長のもとに行われた.日本における小児眼科の育ての親であり,現在もこの方面の第一人者として国際的にも活躍しておられる教授の講演とあって,定刻の9時前にあの広い国立京都国際会館のメインホールも熱心な聴衆で埋められていた.
 講演は,網膜・硝子体異常は数多く,重篤な視覚障害をおよぼす疾患があり,網膜・硝子体疾患の原因の解明は現代眼科学の重要な課題である,と一見難解と思われるこの演題を選ばれた目的の解説から始まった.そして代表的な疾患として第一次硝子体過形成遺残(PHPV)をとりあげ,その臨床的,病理学的研究と硝子体の発生に関する研究結果を述べられた.PHPVは,我々の日常の臨床においても,手術的治療の対象になるものから強度の小眼球を呈するものまで種々の程度があり,その発生過程にも未解決の問題が残されている上に,講演でも指摘されたように現代の進歩した検査法を行っても網膜芽細胞腫との鑑別が完全にはできない例もある重要な疾患である.

臨床報告

OSCAR Color Vision Testerによる色覚検査成績

著者: 本橋孝彦 ,   野寄忍 ,   関明 ,   宮本正 ,   清水金郎 ,   太田安雄

ページ範囲:P.1203 - P.1206

(1)今回我々はOSCARを用いて先天性色覚異常者83名に検査を行い,その結果を他の検査方法と比較した.
(2)本器による分類はAnomaloscopeの成績と良く一致したが,木器を用いて程度判定を正確に行うことは困難であった.
(3)本器は他の色覚検査法の結果とも良く一致し,しかも操作が容易なため,幼小児に対しても検査を行うことができた.

片眼性視神経無形成の1症例について

著者: 田中悦子 ,   田中靖彦

ページ範囲:P.1207 - P.1211

 生後1カ月,女児の他眼および全身に異常を認めない片眼性視神経無形成の1症例について報告し,併せてこれまでに報告された31例についての文献的考察を行い本疾患の病態について検討した.

一側の視神経障害で発見された頭蓋内アスペルギルス肉芽腫の1例

著者: 平田昭 ,   内田璞 ,   山口玲 ,   脇川恵美子

ページ範囲:P.1212 - P.1216

 右眼窩尖端部症候群を呈し,最終的に頭蓋内アスペルギルス肉芽腫と診断された57歳の男性について報告した.
 本症例は頭蓋内アスペルギルス肉芽腫としては視神経管内病変を伴った極めてまれな症例である.全身的には寛解したが右眼は失明した.
 本症例のごとく,視神経障害等以外に他の神経症状を示さずに発症する例のあることから,頭蓋内真菌症は今後,視神経原発腫瘍等との鑑別上留意の必要がある.

多症候性真性多血症に伴う網膜動脈閉塞症の治療

著者: 真舘幸子 ,   河村洋一 ,   斉藤裕 ,   力丸茂穂 ,   井上一彦 ,   上野恭一

ページ範囲:P.1221 - P.1225

 37歳男性の真性多血症患者に,左眼網膜中心動脈閉塞症,表在性血栓性静脈炎,下肢動脈閉塞症,肺血栓症および腸間膜血栓症が発症した.網膜動脈閉塞症の治療にウロキナーゼ大量静脈内点滴注入(最大1日量24×104U,6日間で総量88.8×104U)および潟血(250ml/日,4日間)が有効であり,左視力は0.04から1.0まで改善した.

標準色覚検査表第2部後天異常用の検出能力—その3.外来スクリーニング検査としての能力

著者: 市川一夫 ,   中嶋潤 ,   宮川典子 ,   徳田浩子 ,   水上寧彦

ページ範囲:P.1227 - P.1230

 後天性色覚異常の検出を目的に作られた標準色覚検査表第2部後天異常用(SPPpart 2)とAO-HRR表を用い,社会保険中京病院眼科外来を受診した外眼疾患を除く新患100症例について検査し,以下の結論を得た.
(1) SPP part 2は,今回検査した症例中で従来の方法で後天性色覚異常を示す症例をすべて検出した.
(2) SPP part 2は,AO-HRR表より検出能力が高い結果を得た.
(3)矯正視力1.0以上の症例66例中,20症例(30.3%)に色覚異常を検出した.
(4)第3表の文字「2」は,93症例が誤り,屈折異常しか有しない26症例中23症例も誤っていることから,この検出用文字は不適当と思われた.
(5) SPP part 2の検出用文字で第3表の文字「2」を除くと第12表の文字「4」が最も誤りやすく,このことから,後天性色覚異常では青黄色覚異常と思われる症例にも赤緑色覚異常が,かなりの高頻度で混在していると考えた.

低出力・短時間照射法によるアルゴン・レーザー虹彩切除術の治療経験

著者: 松嶋三夫 ,   西本ゆかり ,   野口良子

ページ範囲:P.1231 - P.1235

 原発閉塞隅角緑内障41例61眼および続発閉塞隅角緑内障3例3眼に低出力・短時間照射によるアルゴン・レーザー虹彩切開術(以下ALITと略す)を施行し,全例に虹彩切開を得た.
(1) ALITの治療効果については,64眼のうち治癒{薬物不用}は44眼(69%),軽快{薬物で眼圧コントロール可}は17眼(27%)であったが,1眼(1.5%)は眼圧コントロール不能となり濾過手術を,2眼(3%)は膨隆水晶体摘出術を要した.また周辺虹彩前癒着率が25%までの閉塞隅角緑内障に対するALITは著効した.
(2)原発性慢性閉塞隅角緑内障に対して,ALITにより投薬を減じることができる症例も認められたが,周辺虹彩前癒着の量の多い症例では減圧効果は認められなかった.
(3)予防的虹彩切除術としてのALITの効果は著明に認められた.
(4)網膜色素変性症に合併した閉塞隅角緑内障に対してALITは有効であった.
(5) ALIT術中・術後の重篤な合併症は認められなかったが,術中の角膜内皮・実質混濁の発生頻度については,第2段階のレーザー照射出力を従来広く用いられている1000mWより更に低出力(600 mW)にすることで減じることができた.

黄斑部の網膜剥離を来たした先天性網膜動静脈吻合症の1例

著者: 松島正史 ,   金井清和 ,   宇山昌延 ,   浜田幸子

ページ範囲:P.1237 - P.1240

 片眼の眼底後極部に存在した先天性網膜動静脈吻合症で,中心性漿液性網脈絡膜症様の扁平な漿液性網膜剥離が黄斑部に発生した1例を経験した.症例は53歳男性で急に発生した中心暗点を訴えた.
 乳頭に近い耳上方の動脈の本幹部にソーセージ様の拡張と絞扼がみられ,耳上方と耳下方の静脈は強く拡張していた.
 螢光造影により,黄斑部周囲の3カ所に小血管を介する網膜動静脈吻合を認め,Archerの分類のI群と判断した.吻合部血管の1カ所から血管外漏出があり,それが網膜剥離の原因と判断された.
 特に積極的治療は行わなかったが,約4カ月の経過で,血管壁が自然に修復されて,血管外漏出がとまり,網膜剥離は消褪した.

Vogt—小柳—原田病患者のEpstein-Barrウイルス抗体価

著者: 幸道智彦 ,   砂川光子 ,   新井一樹 ,   詹宇堅 ,   沖波聡

ページ範囲:P.1245 - P.1248

 京大病院眼科ぶどう膜炎外来に通院中の,Vogt-小柳-原田病患者23名(Vogt-小柳病11名,原田病12名)および対照健康人144名についてEpstein-Barr (EB)ウイルス抗体価の変動を検討した.Suppressor T cellの機能を反映する抗Viro-Capsid-Antigcn (VCA)抗体価の幾何平均は,Vogt-小柳病患者群で対照群と比べて高値を示し,Killer T cellの機能を反映する抗Epstein-Barr Virus Nuclear Antigen (EBNA)抗体価の幾何平均は,原田病患者群で対照群と比べて低値を示した.同じ疾患群であっても,前部ぶどう膜炎では抗VCA抗体価が高値を示し,後部ぶどう膜炎では抗EBNA抗体価が低値を示した事は,前に報告した一般のぶどう膜炎と同じ傾向を示した.これらの事より炎症反応の場の相異により,EBウイルスに対する免疫応答も異なってくるのではないかと考えた.

原田病患者の臨床統計

著者: 皆川玲子 ,   大野重昭 ,   広瀬茂人 ,   小竹聡 ,   宮島輝英 ,   田川義継 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1249 - P.1253

 昭和41年から58年の18年間に北大眼科を受診した原田病患者男101例,女85例計186例について臨床的な検討を行った.
 発症年度別患者数はほぼ一定し,発病の季節は春と秋に多くみられた.
 初診時眼症状として,前房内炎症細胞は56%,乳頭浮腫87%,漿液性網膜剥離,網膜浮腫は93%にみられた.夕焼状眼底は64%,角膜輪部色素脱失は85%と高頻度にみられた.
 眼外症状では,髄液細胞増多が84%,聴力低下74%,頭髪の接触感覚異常72%と高頻度にみられた.
 視力予後は概して良好であるが,眼合併症,初診時視力,発症年齢が大きく影響した.

慶大眼科における最近5年間の全層角膜移植手術例の検討

著者: 坪田一男 ,   樋田哲夫 ,   浜田恒一 ,   秋谷忍

ページ範囲:P.1255 - P.1259

(1)最近5年間の慶大眼科における全層角膜移植手術99例の手術成功率は,術後1年目にて,角膜の透明度からみた場合80.8%,術後視力からみた場合69.7%であった.
(2)角膜白斑群,角膜ジストロフィー群,再手術群,水疱性角膜症群の4群に分けて検討したところ,角膜の透明度よりみた成功率はそれぞれ1年目1にて,87.2%,100%,53.8%,0%で再手術群,水疱性角膜症群が不良であった.
(3)手術不成功例19例の原疾患としては,角膜ヘルペスが6例32%を占めた.また不成功の原因としては,角膜内皮障害が,7例37%,拒否反応が6例32%を占めた.
(4)水晶体嚢外摘出術または水晶体嚢内摘出術の同時手術19例の1年後の角膜透明率は84.2%と良好であった.

カラー臨床報告

アデノウイルス37型(Ad37)角結膜炎の臨床像

著者: 青木功喜 ,   中園直樹 ,   J.C.de ,   G.

ページ範囲:P.1241 - P.1244

 1979年から1984年までの6年間にわたって札幌市内の一眼科診療所で認められたアデノウイルス37型(Ad 37)による角結膜炎の患者44名について臨床像を総括した.対照として同じ流行性角結膜炎の所見を呈したAd 8:149名,Ad 19:29名につき,その比較検討を行った.
 Ad 37は急性濾胞性結膜炎が両眼に出現し,その結膜炎の程度は他の流行性角結膜炎の病原Ad 8とAd 19と似ており,特に耳前リンパ腺腫脹,角膜炎,結膜炎の程度は同様であった、しかし結膜下出血,眼外症状はAd 19に多く,家族内感染はAd 19で少なかった.院内感染はAd 8が他よりも有意に多かった.Ad 37は60歳以上には患者を認めることができなかった.

文庫の窓から

眼科諸流派の秘伝書(46)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1260 - P.1261

55.毛利氏療眼方
 本書は毛利氏の口話を筆記したものであるがこの写本は長峯氏所蔵本により安永9年(1780)3月,元甫堂主人鼎庵が書写したものと思われる.本書の成立について次の様な後書が識されている.
「已上方法日向諸懸本荘毛利氏節愛者之所授節愛称新右衛門次家君之好授予於其常所試用方法及鍼揆之法蓋亦特恩云毛利氏時年七十有七,安永九年庚子春三月,元甫堂鼎庵書」

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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