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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科39巻11号

1985年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・336

有茎性半月形の上眼瞼soft fibromaの1例

著者: 四日剛太郎 ,   大井章史 ,   堀尾武

ページ範囲:P.1270 - P.1271

 乳児期の麦粒腫あるいは霰粒腫から発生したと推定される66歳の男性の上眼瞼の腫瘍の症例を経験した.本腫瘍は切除後,病理学的に調べた結果,Soft fibromaと判明した.本腫瘍が変った形態をとったことは調べた限りの文献では他に例がなく報告する.

臨床報告

網膜血管病変に対するクリプトンとアルゴンレーザー光凝固の比較

著者: 友田隆子 ,   加藤直子 ,   西村哲哉 ,   板垣隆 ,   大熊紘 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1273 - P.1279

 クリプトンレーザー光凝固器が新しく開発され,臨床に用いられる様になってきているが,今回網膜静脈閉塞症および糖尿病性網膜症において,治療効果および視機能に及ぼす影響について従来のアルゴンレーザー光凝固との比較を行った.
 概括的には,治療効果に両者に差は認めなかった.クリプトンレーザーは硝子体出血や白内障など中間透光体の混濁があっても凝固可能であり,このことが臨床的にもっとも有利な点であった.
 視機能に対する影響では,ERG,視野ともクリプトンレーザー凝固後の方が障害されにくい傾向を認めた.しかしこの点は症例数が少ないので明確な結論は出せなかった.

初期緑内障における長期予後と初診時乳頭所見

著者: 勝島晴美

ページ範囲:P.1281 - P.1284

 3年以上薬物にて治療した原発性開放隅角緑内障の初期例48眼を対象に,長期予後と初診時乳頭所見との関係を検討した.
 初診時垂直C/D比0.3以下の群と0.4以上の群での予後を比較すると,前者の視野改善頻度は高く(38%対21%),悪化頻度は低かった(4%対50%).C/D比と予後との間には有意の相関がみられ,初診時垂直C/D比の程度から初期緑内障の予後の異なることが明らかにされた.
 視神経の眼圧に対する抵抗性には個体差があり,それは生理的乳頭陥凹の大きさに起因すると推測された.

斜視手術時に悪性高熱症を発症した1例

著者: 北川雄士 ,   西村葉子

ページ範囲:P.1285 - P.1288

 斜視手術直後に悪性高熱症を発症し,救命しえた1例を経験した.
 症例 は4歳女児で,外斜視のため右眼内直筋前転術を笑気,ハロセン(GOF)麻酔下にて施行したところ本症を発症し,全身冷却,ダントロレン静注などですみやかに処置し救命した.後遺症は認められていない.
 眼科領域では,斜視・眼瞼下垂などの小児の外眼筋手術の際に発症することが多いといわれており,特に全身麻酔時には本症の存在を銘記すべきことを強調した.

Amphotericin Bの結膜下注射が奏効したScopulariopsis brevicaulisによる角膜真菌症

著者: 小沢勝子 ,   土平仁

ページ範囲:P.1289 - P.1292

 前房内吸引物の検索により早期に診断できたScoputariepsis brevicaulisによる稀な角膜真菌症の1例を報告する.初診時には右眼角膜中央部の全層混濁,角膜中央から下方にいたる灰白色後面沈着物および眼圧上昇を認め,後にデスメ膜の皺や典型的な角膜潰瘍を呈した.PimaricinとAmphotericin Bの点眼,5-fluorocytosine (5-FC)の内服を施行したが効果が不十分であり,Amphotericin Bの点滴静注は副作用が強いために使用に耐えず,Amphotericin Bの結膜下注射が著効を呈した.

後房レンズ移植時使用粘稠液の比較検討

著者: 金谷いく子 ,   溝上国義

ページ範囲:P.1293 - P.1297

 後房レンズ移植時使用粘稠液としてヒアルロン酸を主成分とするHealon®,DE O50®,コンドロイチン硫酸を主成分とするCDS II,CDSを使用する機会を得たので,使用粘稠液群別に術時の有用性,安全性および術後の経過等を比較検討した.Healon®とDE 050®は粘性が高く,とくにHealon®の粘性は著明に高く,前後房の形成,維持が確実であった.一方,CDS II,CDSは粘性が低く,前後房の形成が不完全で,また術野の赤血球の凝集が認められた.術後炎症はHealon®,DE 050®は軽度で早期に消退したが,CDS ll,CDSは遷延化した.
 今回の検討では,粘稠液として,術操作,安全性の点で,Healon®,ついでDE050®が最も有用であると考えられた.

仮性同色表の自動提示装置に関する研究—1.SPP-1による試み

著者: 深見嘉一郎 ,   島本史郎

ページ範囲:P.1299 - P.1302

 仮性同色表は便利なものであるが,使い力に関しては一般に正確でないことが多い.照明,視角,視距離,提示時間などに関して正確にできるような装置を作り,同時に全ての操作を自動化し,結果についても自動記録できるような装置を試作した.これによって231名を検査したところ,1人1分で検査できた.検査に熟練を必要としない,便利な器械である.なお,さらに改良すべき点があることもわかった.

β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌による小児眼窩蜂巣炎の1例

著者: 秦野寛 ,   三井啓司 ,   望月昭彦

ページ範囲:P.1319 - P.1322

 副鼻腔炎に続発した10歳女子の眼窩蜂巣炎の1例を報告した.本例は穿刺膿の塗抹検査とリムルス・テストでグラム陰性菌感染を疑い,培養にてインフルエンザ菌が検出された.本菌株は血清型別non-typable,生物型I型,かつβ-ラクタマーゼ産生株であった.

眼多発奇形を認めた染色体異常(モザイク)の1例

著者: 堀田喜裕 ,   佐久間敦之 ,   上田俊介 ,   稲垣有司 ,   加藤和男

ページ範囲:P.1323 - P.1326

 精神運動発達遅滞,けいれんにて小児科に入院中の患児で,非常にまれな染色体構造をもち,眼多発奇形を認めた1例を報告する.
 症例 は2歳男児,37週2,600g正常分娩.黄疸の遷延のため小児科にて精査,全身的に外表奇形,臓器奇形を認めなかったが眼科的に両眼隔離と瞼裂縮小,眼振,小眼球,小角膜,瞳孔膜遺残,球状水晶体,乳頭脈絡膜コロボーマを両眼に認めた.染色体分析の結果,父母は正常,症例には45,XY,−22,−14,+der (22)(22qter→22p13::14q112→14qter)の核型を79%認め,45,XY,−1,−14,+der (1)(1q ter→1p 363::14q 11.2→14qter)を21%に認めた.この奇形はこの染色体異常に特異的なものではないが,染色体異常による眼発生異常と考えられた.

三叉神経節ブロック後に生じた角膜潰瘍の1症例

著者: 柳英愛 ,   江本一郎 ,   木村吉孝 ,   石田誠夫 ,   金井淳 ,   宮崎東洋

ページ範囲:P.1327 - P.1329

 三叉神経痛治療目的で,純アルコールによる三叉神経節ブロック後より発症した角膜上皮障害の1例につき報告した.症例は62歳男性で,角膜潰瘍および前房蓄膿にまで至り,種々の薬物治療に対し難治性であった.
 三叉神経節ブロックを行うにあたって十分な観察が必要であると思われた.

レーザー暗点による視野検査法

著者: 真壁祿郎

ページ範囲:P.1333 - P.1336

 眼底レーザー光凝固の要領でGoldmann三面鏡を通して,指標の補助レーザー光線を眼底に投影して,網膜上で暗点を検出した.
(1)網膜面での光点の明るさは,普通使用する光線強度で既に視野計視標に較べてはるかに強力である.したがって,浮腫,滲出や出血を伴う黄斑部疾患などで,潜在的の機能回復能力が把握できる.
(2)透光体混濁で眼底検査,視野検査の困難な症例でも暗点,視野欠損を検出しうる.
(3)耳側囲辺の病巣など視野計でとらえられない視野欠損も発見できる.
(4)適切な微弱光線を使用すれば比較暗点も検出される.
(5)眼底レーザー凝固施行の際に併用して有益である.

カラー臨床報告

両眼性脈絡膜骨腫の家族例

著者: 青木順一 ,   宮下浩平

ページ範囲:P.1311 - P.1318

 両眼性に発症した典型的な脈絡膜骨腫choroidal osteomaを,24歳女子と26歳の姉に観察し,さらにこの姉妹の49歳の父の両眼に,乳頭鼻側から黄斑部下方にかけて,広い帯状の網脈絡膜萎縮に脈絡膜骨腫が混在すると推定される病巣を観察した.また,これら3症例のすべてに,梨子地眼底として形容できる,周辺部眼底にびまん性に網膜背景の黄褐色の不透明化と,不規則な斑状の色素増殖が見られた.
 脈絡膜骨腫がこのような家族内発症をしたことは,本症が常染色体優性遺伝をしていると解釈された.また,梨子地眼底が眼底周辺部に起こることは,脈絡膜骨腫の前段階ないしはその素地となっている変化であり,脈絡膜骨腫の診断ならびに発症機転の解明に重要な意味を持つ所見であると判断された.

手術ノート

初心者のための安全な眼内レンズ手術(2)

著者: 上野山謙四郎

ページ範囲:P.1304 - P.1305

 第1報(臨眼39巻684-685,1985)以後新しく導入したことを追加する.ECCEを安定して行える術者ならば,我々の経験からしてもIOL導入は難しくない.開始後1年で十数名の医局員がIOL手術を行えるようになった.現時点で初心者にとり最短かつ最善の方法はヒーロン®を用いて前房を確保し,シムコCループ型またはクラッツ型IOLを入れるやりかたと思う.この方法なら角度付きでも容易である。ヒーロン®高価であるが自己への資本投下と考えてほしい.前房保持ワイヤーやレンズグライドは次善の策であり,空気を使う方法は熟練してから試みるべきであろう.
 もう一つの可能性としてシリコンレンズがあり,まだ治験段階であるが,著者の経験では6ミリ程度の創から入れるなら後房へのレンズ挿入は容易であり,現在入手できるPC-IOLの中でも最も初心者にやさしいレンズではないかと感じる.

文庫の窓から

鵬氏新精眼科全書(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1330 - P.1331

 幕末に蘭医ボードウィン(Dr.Anthonius FrançoiseBauduin)が来日し,初めて近世の眼科全般を日本に伝えたことはよく知られている.
 ボードウィンは長崎精得館(長崎大学医学部前身)や大阪府医学校(大阪大学医学部前身)その他の医育機関で教鞭を執り,生理学,眼科学を初め数科目を教え,患者の治療も行い,その門人や,患者の数も多数にのぼったといわれる.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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