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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科39巻12号

1985年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・337

アトピー性皮膚炎と鎌状巨大裂孔を伴った網膜剥離の1例

著者: 本田実 ,   小島徳郎 ,   菊地隆二 ,   桐淵利次

ページ範囲:P.1344 - P.1345

 1914年にAndogsky1)が初めて白内障を伴ったneuro-dermatitis4例を報告して以来,アトピー性皮膚炎に伴う白内障は皮膚原性白内障として良く知られているが,アトピー性皮膚炎と網膜剥離の合併については1937年Balyeat2)がneurodermatitisに起きた両眼性の網膜剥離を初めて報告して以来,現在までに約30例の報告がある.文献的には鋸状縁あるいは色様体扁平部に裂孔が存在する症例が多いが,今回われわれは後極に奇妙な裂孔が出現したアトピー性皮膚炎の症例を経験したのでここに報告する.
 症例:24歳,男性.

臨床報告

網膜静脈分枝閉塞症の自然経過と視力予後

著者: 綾木雅彦 ,   桂弘

ページ範囲:P.1347 - P.1351

 網膜静脈分枝閉塞症53例54眼に対して光凝固,線溶療法,抗凝固療法を施行せずに視力予後の検討を行い,以下のごとき結論を得た.
(1)最終視力は0.1以下が9眼(17%),0.2以上0.4以下が12眼(22%),0.5以上0.7以下が11眼(21%),0.8以上が22眼(40%)であった.
(2)高齢者,中心窩周囲毛細血管網の障害が1/2周以上,黄斑部浮腫のある症例では最終視力が不良である傾向が認められた.
(3)最終視力0.1以下の症例には経過中視力に大きな変動は認められなかった.一方,最終視力0.8以上の症例の中には発症後2カ月以内に一時的な視力低下を示す例が多く認められたことから,発症初期の視力不良例の視力予後の予測は難しいと考えられた.また,少なくとも発症後3カ月以上経過観察をしなければ視力の自然改善の有無は判断できない場合が多く,したがって,視力改善を目的とした早期の光凝固の適応は慎重に決定すべきであると考えた.

先天性眼瞼下垂と視機能

著者: 木井利明 ,   中川喬 ,   鈴木泰 ,   森繁樹

ページ範囲:P.1353 - P.1357

 先天性眼瞼下垂96例192眼に対し視力,屈折,眼位などにつきretrospectivestudyを行い以下の知見を得た.
1)健眼遮閉は96例中24例(30%)に行った.最終受診時に0.5以下の視力障害を示したものは192眼中21眼(11%)であった.
2)顕性斜視は96例中17例(18%),不同視は96例中37例(39%)に認めた.
3)視力と下垂の程度手術時期に関係はなかった.
4)0.5以下の視力障害は不同視弱視,屈折性弱視,斜視弱視によるものが多かったが視性刺激遮断弱視はなかった.
5)以上の結果より,視性刺激遮断弱視の発生をおそれて手術を急ぐ必要はないと考えた.屈折異常,斜視を高率に合併するので,それらを可能な限り早期に診断・治療する必要があると考えた.

眼部異常を伴うdermolipomaの下にみられた上強膜骨性分離腫

著者: 真舘幸子 ,   岡本剛 ,   林守源 ,   内山伸治 ,   松原藤継

ページ範囲:P.1359 - P.1362

 12歳女子の右眼の外直筋と上直筋との間に拡がるepibulbar dermolipomaを切除したところ,その下にキノコ状隆起を呈するepiscleral osseous choristoma上強膜骨性分離腫を認めた.本症例では,右外眼角部の眼瞼欠損がみられ,外直筋鞘と癒合したdermolipoma組織が眼瞼欠損部の皮膚に連なっており,さらに重症筋無力症による両眼瞼下垂に加えて右眼外方の部分的眼瞼下垂も合併していた.

Iridocorneal endothelial syndrome5例におけるスペキュラーマイクロスコープによる観察

著者: 原田敬志 ,   三浦元也 ,   田辺吉彦 ,   後藤修

ページ範囲:P.1363 - P.1367

 5例のIridocorneal endothelial syndromeについてスペキュラーマイクロスコープによる角膜内皮細胞の観察・撮影を施行した.1例だけはその形態や細胞面積が正常であったものの,残りの4例では内皮細胞の形態が正常でも細胞面積が増加していたり,あるいは細胞面積の増加とともにモザイク構造の乱れや細胞の大小不同がみられた.正常のモザイク構造は反射の少ない暗調の細胞に置き換えられている場合もあった.

後頭骨陥没骨折による同名4分盲性暗点の1例

著者: 山田一義 ,   白井正一郎 ,   塚本純子

ページ範囲:P.1375 - P.1377

 後頭骨の陥没骨折により,きわめてまれな視野欠損である,左右一致性の黄斑回避を伴う右下同名4分盲性暗点をきたした症例を経験した.障害部位はその特異な視野の形状から,左鳥距溝上唇部後端と推定した.またCTスキャンや脳血管造影など脳外科的検査では,障害部位の検出が不能であったことから,とくに視野検査が頭部外傷の際に重要であることを述べた.

3歳児健康診査における視機能スクリーニング(第5報)

著者: 神田孝子 ,   川瀬芳克 ,   水谷典子

ページ範囲:P.1383 - P.1387

 3歳児健診において二段階に分けた方法,すなわち一次検診として保健所医師,保健婦がアンケート,問診,視診を行い,問題のある者に対して二次検診として眼科医,視能訓練士が眼位眼球運動検査,視力検査,屈折検査,眼底検査などを行う方法で眼科的異常のスクリーニングを行った.昭和56〜59年度の4年間で11,127人の受診者のうち一次検診で問題ありとされた者は618人(5.55%)で,そのうち管理中であった128人(1.15%)を除いた490人(4.40%)が二次検診対象者であった.二次検診では142人(1.28%)が要精検とされ,さらに精検はこのうち120人(1.08%)が異常ありとされた.このスクリーニングでの異常者は管理中も含め248人(2.23%)であった.斜視群は148人(1.33%)で,この頻度は眼位眼球運動検査で検出した頻度に近い.弱視群は29人(0.26%),屈折異常群は55人(0.49%),その他39人であった.以上の結果からこのスクリーニング法は斜視の検出に有効であること,視力異常者の見落としが予想されるが,これを減らすには家庭での視力検査と組み合わせて実施すると良いと結論した.

白内障手術中に駆逐性出血を生じた2症例

著者: 鎌尾憲明 ,   鈴木敬 ,   湯口修次

ページ範囲:P.1389 - P.1392

 白内障手術中に駆遂性出血を生じた2症例について報告した.症例1では,水晶体全摘出後の強角膜縫合糸を結紮しようとした時に駆逐性出血が起こり,眼球内容除去を行った.症例2では,虹彩切除後の排尿直後に生じ,後強膜切開で一時的に視力0.4まで回復したが,その後,虹彩ルベオーシスが発生し眼球癆となった.駆逐性出血の発生要因は発生基盤になる要因と発生のひき金になる要因の二つに分けた方がわかりやすく,とくに高血圧と緑内障は発生基盤と発生のひき金の両者として作用するので術前に十分コントロールすることが大切である.われわれの症例の発生要因としては,発生基盤として症例1では糖尿病と強度近視が,症例2では高血圧と強度近視があげられ,発生のひき金として症例2では高血圧と排尿にともなう力みが考えられた.駆逐性出血の治療は出血部に後強膜切開を行うが,超音波検査は出血の部位だけでなく,その程度,形がよくわかり,後強膜切開の部位決定や以後の経過観察に有用であった.

特殊な角膜表層移植の3症例

著者: 三浦昌生 ,   斎藤伊三雄 ,   三木正毅 ,   近藤武久

ページ範囲:P.1393 - P.1396

 周辺表層角膜移植はいわゆる治療的角膜移植術に属する手術である.本法は主に角膜入手の困難さから施行される機会が少なかったが,eye bankの整備に伴い,その施行例も増加しつつある.われわれは,角膜穿孔,再発を繰り返す翼状片,結膜扁平上皮癌の3例にこの手術を施行し,全例で良好な結果を得ることができた.本法は,これらの前眼部疾患に対し,従来の結膜被覆術や単なる切除術より良好な結果を期待できるものと考える.

カラー臨床報告

硝子体出血を伴った結節性硬化症の眼底病変

著者: 桐渕和子 ,   伊藤景子 ,   内田幸男 ,   丸山博

ページ範囲:P.1369 - P.1373

 片眼の黄斑部を中心とする眼底後極部に,広範な輪状白斑,網膜腫瘤とそれに連なる新生血管を伴う網膜隆起部(滲出性網膜剥離)を認め,経過観察中に硝子体出血を生じた21歳の結節性硬化症例を報告した.若年の本疾患例における内長型(endophytictype)の網膜腫瘤およびこれに連続する隆起病変は,網膜硝子体癒着および後部硝子体剥離に伴う硝子体出血などを生じ,高度の二次性視力障害の原因となることを示唆した.

文庫の窓から

鵬氏新精眼科全書(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1398 - P.1399

 本書の内容をその目次によって紹介すると以下の通りである.
巻1:視官理学説 視官機目的ノ論,検鏡上解剖ノ論,光線窮理ノ論,視官窮理ノ論,虹彩作用ノ論,片眼検察ノ論,両眼検察ノ論,眼球諸筋ノ作用

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臨床眼科 第39巻 総目次・1985年(第1号〜第12号)

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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