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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科39巻4号

1985年04月発行

文献概要

連載 眼科図譜・329

多発性内分泌腺腫症Ⅱb型での角膜神経肥厚

著者: 大路正人1 東晶子1 清水芳樹1 木下茂1

所属機関: 1大阪大学医学部眼科教室

ページ範囲:P.404 - P.405

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 我々は多発性内分泌腺腫症Ⅱb型(以下MENⅡb)の1例を経験した.MENⅡbはWilliams1), Schimke2),Gorlin3)らによりひとつのclinical entityとして提唱された疾患であるが,そのclinical entityとは粘膜神経腫に甲状腺髄様癌,副腎褐色細胞腫のいずれかあるいはその両者を合併し,他に全身所見としてMarfan様体型,凹足,脊柱の後彎や側彎,肥厚した口唇(bumpy lip),ヒスタミンの皮内反応の異常などを認めるというものである.眼科的には著明に肥厚した角膜内神経線維,結膜の神経腫,眼瞼の神経腫による肥厚および外反,涙液の分泌減少.涙点の鼻側変移などの報告がなされている4).MENⅡbは非常に稀な疾患で,本邦では約10例の報告を数えるにすぎず,眼科的領域での詳細な記載は我々の知る限りなされていない.
 症例は20歳の女性で眼球乾燥感を主訴として外科から紹介され眼科を受診した.幼少期より著明に肥厚した口唇(図1).多数の結節のある舌が認められていた.1979年に甲状腺髄様癌のため甲状腺摘出術,1984年,副腎褐色細胞腫のため両側副腎摘出術を施行された.現病としては,視力,眼圧は正常で,中間透光体および眼底には異常を認めなかった.角膜は透明であったが,神経線維が著明に肥厚していた(図2).この神経線維は角膜輪部で太いtrunkとして8〜10本認められ,角膜実質のほぼ中央の深さで輪部より進入し,放射線状に分枝しながら進行し,角膜中央部に近づくにつれて上皮側にむかっていた(図3).結膜には神経腫と考えられる病変が数カ所に認められた.眼瞼の軽度肥厚は認められたが眼瞼外反は認められなかった.角膜知覚はCochet-Bonnetの知覚計で測定し,左右ともに55mmと正常範囲であった.角膜中央部の厚さばVIDA 55(VIDA祉製)で測定し,右534μm,左525μmと正常範囲であつた.シルマー試験は5分値が左右とも6mmと正常ド限を示した.以上のことより本症例では角膜内神経線維は肥厚を示したが機能的異常は認めないと考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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