icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科39巻4号

1985年04月発行

文献概要

特集 第38回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 特別講演

原発開放隅角緑内障の初期病態

著者: 岩田和雄1

所属機関: 1新潟大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.407 - P.424

文献購入ページに移動
 原発開放隅角緑内障(以下POAG)の極初期病態を追及することにより,従来考えられてきたいわゆるPOAGというものは単なるみかけ上のentityにすぎず,その本態は著しく異なったものであることを明らかにした.そして得られた諸データをもとにPOAGの発症に関する最も妥当な考え方として以下の仮説を提唱した.
(1) POAGは前房隅角のmeshworkを初発の場とするものではない.
(2)中枢性の眼圧上昇をもって初発する.従来知られているmeshworkの病変は眼圧上昇によって惹起された続発性病変で,これが原因となって更に眼圧が上昇する.
(3)眼圧上昇が持続すれば基本的には何らかの視神経障害が必発する.
(4)高眼圧症(OH)の約90%に視神経障害がくる.これらはすべて広義のPOAGである.そのうちとくに視神経障害が著明となるもののみが,いわゆるPOAGに相当する.
(5)視神経障害の軽重は篩板部の圧に対する易障害性の程度によって決まる.易障害性の高いものは低眼圧でもおかされ,難障害性のものは高眼圧が続いてもおかされ難い.いわゆるPOAGはその中間の易障害性をもつものである.
(6)易障害性は一つの篩板の内でも部位により異なるし,個体差も大きい.
(7)易障害性の本態は次の3要素より成り立つ.
1)眼圧上昇に伴う篩板の脆弱化による後方湾曲と,軸索の支持力低下.
2)篩板の上,下耳側部の軸索孔の結合織のうすいこと,孔も大きいこと.
3)篩板直後で,有髄で著しく重くなった有髄神経が1)が原因で支えを失って下鼻  側につよく屈曲しこの力が軸索孔を横くずれさせる方向に働き,軸索をしめつげる.   特に3)は飾板の軸索孔を横くずれにっぶす原動力として重要な位澱を占める. 以上から将来は中枢性の眼圧コントロールが治療の本質となることであろうし,すでに飾板に軸索支持力の低下の始まっている場合は,節板後に始まる有髄視神経を下鼻側に屈曲しないように水平に支える形成手術が主体となるものと思われる.それが不能の現在,可能なかぎり早期から眼圧を十分に下降せしめその支持力の低下を防ぐのが最良の策で,初期暗点が出現するまで待つ現行の方法では著しく遅きに失し,進行を停止せしめえないことに留意されねばならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?