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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科39巻4号

1985年04月発行

文献概要

特集 第38回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 学会原著

糖尿病性網膜症に対するクリプトンとアルゴンレーザー光凝固の比較

著者: 岡野正1 米谷新1 村岡兼光1 岸章治1 沼賀哲郎1

所属機関: 1群馬大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.439 - P.443

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 糖尿病性網膜症光凝固例489眼にレーザー光凝固治療を行い,赤色クリプトンレーザー例171眼と青緑色アルゴンレーザー例318眼について,平均8.5カ月の経過と治療成績を比較した.
 糖尿病性網膜症の治療上,赤色クリプトンレーザーは従来の青緑色アンゴンレーザーと少なくとも同等の臨床効果を有し,術後の後部硝子体剥離化が少なく,硝子体牽引性障害の発生が低率であった.光凝固後の眼内臨床像の改善例はクリプトン群では77%,アルゴン群では76%であり,悪化例はクリプトン群15%,アルゴン16%で,ともにほとんど同率であった.光凝固後の矯正視力は,両群とも類似の分布を示した.両群とも,術中術直後の特記すべき合併症は生じなかった.
 光凝固前に後部硝子体の剥離がなかった例(クリプトン群,アルゴン群ともに107眼)で光凝固後に不完全あるいは完全に硝子体が剥離した頻度は,クリプトン群では19%で,アルゴン群の53%より有意に低率であった.これに関して,光凝固後に新たに発生した硝子体牽引性出血例は,クリプトン群では11%でアルゴン群の19%より少なかった.また,光凝固前にすでにあった硝子体出血が光凝固後に持続・増強したものは,クリプトン群で23%,アルゴン群で31%あった.牽引性網膜剥離もクリプトン群の方が少ない傾向を示した.
 以上から,赤色クリプトンレーザー光凝固は,特に眼底の汎網膜光凝固には有用な方法であるといえる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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