特集 第38回日本臨床眼科学会講演集 (その3)
学会原著
前房フルオロフォトメトリーによる眼内レンズ挿入眼の侵襲と予後
著者:
河合憲司1
直原修一1
船橋正員1
早野三郎1
所属機関:
1岐阜大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.469 - P.472
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眼内レンズ挿入後の20例(嚢内法(ICCE)後虹彩支持レンズ4例4眼,嚢外法(ECCE)後後房レンズ16例17眼)を対象として,術後血液房水柵の経時的変化を前房フルオロフォトメトリーならびに虹彩螢光血管撮影により,虹彩毛様体への侵襲と程度を検討した.10%フルオレセインNa液10mg/kg体重静注5分,60分,120分後の前房内フルオレセイン濃度を測定し,非手術眼を対照として比較した.(1)術後1週〜3カ月は眼内レンズ挿入眼の前房内フルオレセイン濃度はコントロール眼より高値であるが,経時的に低下し術後9カ月〜1年で両者の間の差は縮小し,60分値における濃度比は1となった.このことより,少なくとも血液房水柵の修復は9カ月〜1年要するものと推定した.(2)手術時年齢60歳以下と以上では,前者に前房内フルオレセイン濃度が低い傾向にあった.(3)虹彩支持レンズ挿入眼の症例は術後1年半〜7年で,コントロール眼との差を認めなかった.(4) Cystoid macular edema,術後早期に炎症を認めた症例では,5〜15分の初期前房内フルオレセイン濃度が著しく高かった.(5)臨床的に前房フルオロフォトメトリーを5分〜60分測定することにより,虹彩毛様体への侵襲による血液房水柵の傷害を察知できることが示唆された.