特集 第38回日本臨床眼科学会講演集 (その4)
学会原著
糖尿病性網膜症のvitreous fluorophotometry
著者:
藤井正満1
能美俊典1
渡辺正樹1
金森美智子1
古瀬なな子1
瀬戸川朝一1
所属機関:
1島根医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.607 - P.612
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糖尿病性網膜症115例211眼を病期別に分類して,vitreous fluorophotometryを行い,次の結果が得られた.(1)各病期とも年代別vitreous fluorophotometry値(以下VF値)は,正常眼と同様,高齢になるにつれて増加する傾向にあった.(2) Scott 0期およびScott Ⅰa-Ⅱa期(50歳代を除く)の年代別VF値は,正常眼と比較すると全例高値を示したが,t検定では有意差を認めなかった.(3) Scott Ⅲa-Ⅲb期とScott Ⅳ-Ⅴ期の年代別VF値は,Scott Ⅰa-Ⅱa期の50歳代を含め正常眼と比較すると有意に高値であり,病期の進展につれ血液網膜柵の障害は増大する傾向を示した.(4)罹病期間別VF値は,Scott 0期,ScottⅠa-Ⅱa期,ScettⅣ-Ⅴ期では,罹病期間が長くなるほど増加する傾向にあった.(5) ScottⅢa-Ⅲb期の罹病期間別VF値は,罹病期問が長くなるほど増加傾向にあったが10年以上では減少を認めた.(6)治療別VF値は,ScottⅣ-Ⅴ期を除く各病期では,インスリン療法が最も高値で,以下,内服療法,食餌運動療法,未治療の順であり,ScottⅢ期まではインスリン依存型糖尿病患者において,血液網膜柵の障害が最も大きいことが思惟された.