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臨床報告
外傷性視神経乳頭離断の1例
著者: 横山理子1 窪田まゆみ1 神立敦1 上岡泰雄1 堀内二彦1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学眼科教室
ページ範囲:P.1111 - P.1115
文献購入ページに移動初診時(受傷4日)より全経過を通して,左眼視力は光覚弁を認めえなかった.初診時の左眼眼底には正常視神経乳頭は全く見られず,視神経乳頭が存在したと思われる後極部に約3乳頭径の不正円形の陥凹を認め,陥凹部辺縁には網膜表層性出血ならびに下方網膜血管にスラッジ現象が見られた.
後極部綱膜全域は網膜血流途絶のためと思われる浮腫状混濁を呈していた.初診時の螢光眼底検査で,脈絡膜循環はほぼ正常と思われたが,網膜血流は完全に途絶し,わずかに陥凹底部ならびに外下方網膜血管に,箸しく遅れた螢光色素の出現を見た.
受傷11日後には陥凹部辺縁の網膜表層性出血は吸収傾向にあり,出血塊の吸収に伴って,陥凹部は増殖性組織のために陥凹度が減少してきた.螢光眼底検査でも腕-網膜循環時間はほぼ正常に復していた.
網膜電位図は受傷45日ではb波の低下が見られたが,受傷101日にはa波b波ともに正常範囲であった.
以上から本症は鈍的外傷による完全型視神経乳頭離断で,しかも網膜血流は一時完全途絶したものも,網膜主幹動静脈の切断をみなかった極めてめずらしい症例と考えたので,文献的考察を含めて報告した.
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