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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科4巻1号

1950年01月発行

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座談會

ペニシリンの實際的使用法(其の1)

著者: 桑原安治 ,   桐沢長德 ,   中村康 ,   中泉行正

ページ範囲:P.1 - P.4

 中村 一寸御換拶申上げます.今夜はお忙しい所をおいでいただいて有難う御座いました.ペニシリンの問題が眼科の方にも随分入つて來てる樣で,大方分つた樣なことですが,実際の場合には案外な所に問題があるもので,開業医の方から.色々質問を受けたりしますので,今夜は一つゆつくり專門の方からお教えを戴だこうと云うことで……….
 それからも一つには,ペニシリンの点眼ということが,此の頃は,眼科以外の所で相当行われているらしいのですが,そこから色々のさしさわりが起つて來ているらしいので,そういう誤りが起らずに済む樣にしていただきたいと云う考えで,お願いしたわけであります.勿論これは,出來れば眼科の方にまわしていただきたいのですが.

綜説

現代アメリカに於ける原發緑内障の問題—(第3囘関東眼科集談会特別講演)

著者: フオレスト,エドガー,ホール

ページ範囲:P.6 - P.9

 本日皆樣と共に一堂に会する事を喜ばしく存じます.私の演題は「現代アメリカに於ける原発緑内障の問題」であります.御承知のように從來の分類は原発,續発及び先天白内障であります.本日は原発緑内障について丈け考えて見ようと思います.原発緑内障は多年次のように分類されて参りました.
 第一に慢性緑内障,充血性でなく代償性のものであります.

病理組織上より見たるトラコーマの治療に就て—(第3囘関東眼科集談会特別講演)

著者: 中村康 ,   初田博司 ,   原博 ,   川村俊郞

ページ範囲:P.9 - P.22

(A)結膜の機能(1)健康結膜の構造を見ると1.上皮層2.纎維層3.結膜下組織に分つことが出來る.
(2)上皮層の基底細胞下には基底膜があり此直下に特種な列の細胞が並列している.

臨床実驗

脈無し病の眼症状について

著者: 柳田長子

ページ範囲:P.23 - P.28

 脈無し病に関しては1948年淸水—佐野両氏のくわしい記載があるが(臨床外科第3卷第10号),元來本病は眼症状を主とする疾患で,1908年高安氏の報告以來眼科方面に文献が多い.私は上述両氏の報告例の殆んど全部及び他の2〜3の症例を眼科的に観察する機会を得たのでここに報告する.

視距離と視標の見え方Ⅰ.

著者: 小島克

ページ範囲:P.29 - P.32

 「ラ」環と片仮名の見え方に就いて.中島教授の試視力表(之は精密型と別に作られたので普通の視力別より細別してある)を以つて,視距離との関係を調べた.
 5mから10m迄1m毎に視力を測つて視認差をみる.5m視力2.0群に就いて行つた.

フカラ手術の経驗

著者: 庄司義治

ページ範囲:P.32 - P.33

 Holthは網膜剥離の治療の目的で眼球の赤道部に近く鞏膜をトレパンを用いて切除したところ眼の屈折が減ずることを知り,剥離なき近視眼に其方法を用いてTrepanatis Sclerae prae-ae—quatorialisと名づけてハイデベルグ学会(1911)に報告した.山森昭君は細刀を用いて鞏膜の一部を切除し縫合することによつて屈折を減少せしめ得ることを経驗した.併し之等の方法は今日殆んど行われて居らないし,又強度の近視の屈折を充分に減少せしめる程の力はない,此目的のために行われる手術はフカラ(Fukala)の手術である.
 白内障が強い近視に起つた時に白内障手術を行つて無水晶体眼になると眼鏡なしに,或は弱い眼鏡でよく見える事は古くから知られて居つた事であるが.強度の近視の治療の目的で透明なる水晶体を摘出する事を実行したのはAbee Desmonceaux (1776)が始めてであると云われて居る.其後之を迫試した人も2-3あつたが余り省みられなかつた.然るにフカラが19例の手術例を1890年に発表してからにわかに有名となり,今日に至るまでフカラ手術と呼ばれて居る.日本では河本重次郎先生が日本眼科学会雑誌第2巻(明治31年)に「私が明治23年(1890)に一商人に行つたのが最初の例であろう」と述べている.フカラの報告と同年の話になる.

結膜嚢内に蛔虫の幼虫5匹の生存せる症例

著者: 緖方昇

ページ範囲:P.34 - P.35

緒言
 結膜嚢内に蛔虫の幼虫5匹が生存していた症例に遭遇した.斯る事は当然あり得べき事と思えるが,私の浅い経驗では初めての事てあつたが文献的にもその臨床例は極めて珍奇な事であるのに氣付き報告する次第である.

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こわれた螢光燈に注意なさい

ページ範囲:P.28 - P.28

 リーダーズダイジエスト24年11月号に表題の樣な記事が出てゐる.我々眼科医は常日頃通常の電球も破片硝子が薄くて小さくて眼に入つたり或は負傷口に入つたりして取り除くのに苦勞するのに,又々大いに苦勞するものが出てきた.同記事によると螢光燈の硝子の面には燐の化合物が塗布してあるのである.だから螢光燈硝子の破片で傷つくと燐の化合物が傷面に入る事になる.燐の傷がなほらない事は我々耳にたこが出來る樣にきかされた.思い出してもいやな事,防空演習警防團等で(若い方は軍医として)燐化合物の射彈や毒瓶斯の傷面がなをらぬ事はよくよく聞かされた.又その燐が出てきたのである.螢光燈はどんな山間でも田には誘蛾燈として日本國中にあるあの廢物を子供などがおもちやにしてけがをする事は随分考えられる事である燐が少量でも眼に入つたら特に注意して処置しなければならぬ.

避妊藥というもの

著者: 杉靖三郞

ページ範囲:P.35 - P.35

 この春始めて避妊藥が公認された時は7種であつたそれが現在では40種にもなつている.中には「有害無益」どころか「無効有害」なものが流れ出している事が考えられる.もともとこの藥といふものがどんな化合成分を持つ殺菌剤を含有していてもその溶媒や賦形藥がよくなくては何にもならぬ現在の我國では最良の避妊藥はのぞめないわけである.又これが使用法も解剖生理の知識が充分になければいけないし家屋の構造も我國のでは充分の事はのぞめない.それにまだ日が淺くかかる事に一般が習熟していない.あらゆる條件が最もよいアメリカの有効率の統計を見ても次の樣である.ニユーヨークのインテリの婦人が用いた場合は受胎率が普通の場合の6分ノ1になり.プエトリコ1婦人では受胎率が3分ノ1であつた.これから見ても避妊藥の効果は絶対的のものでははるかにない.これから考えて我國の藥の惡い家屋構造の惡い知識のない習熟しない現状ではこのアメリカの例より考えて受胎率が2分ノ1になつたらよい方であろう.
 このように避妊藥を使つてもそれだけ直ちに産兒を減らすといふ結果にはならない.それにたよれば避妊藥が使われてかえつて子供がふえる危險が充分である.いずれ本年度の出産率がこの事をはつきり示してくれるであらう.

手術メモ(8)

著者: 中村康

ページ範囲:P.42 - P.43

〔1〕内眥贅皮手術
 内眥贅皮のある場合は,一般に,角膜内縁と内角との幅がせまく,且つ,上眼瞼皮膚が下垂しているので,甚だ美貌を害する.此整形には,眼瞼皮膚の一部切除,或は,二重眼瞼成形等が考えられるけれども,普通は,鼻梁に向つての整形手術が試みられる.此処に,表示する二法がある.即,鼻梁より余分な皮膚を切除縫合する方法と,鼻梁を高くし,外貌をよくすると共に,内眥贅皮を除去する方法とである.
 隆鼻術の象牙は,網目尠く緻密なものを撰び,5cm長,1cm巾,1cm高の材を,一面鼻梁の形にけずり,第2図(a)の形にする.

臨床講義

眼球鐵症

著者: 藤山英壽

ページ範囲:P.36 - P.38

 患者;錢○良○,33歳,会社員.
 主訴;夜盲と視力低下(右眼).

私の経驗

思い出すままに

著者: 植村操

ページ範囲:P.40 - P.41

 余が我医学部の診療医と共にビルマに行つたのは昭和19年の夏であつた.非常に澤山の医療器械と藥品とを携行して,原地の人々の診療に從事する爲めであつた,ラングーン市に病院を開設したが,打續く敗戰の爲めに翌年の4月には医員,事務員の大部分は原地召集となつて,医師3名と看護婦21等名だげが残されたが,之等も全く九死に一生を得てラングーンを脱出して,タイ國に逃げた.それ以後は内地からの送金が全くなかつた爲めにバンコツクの陸軍病院に軍属として働いて1年余を遇した.以上の期間ビルマ人,インド人及び我傷兵の診療に從事して,色々経驗し,又多少の調査をした記録もあつたが,歸國に際して書類を全部燒却してしまつたので,詳しいことを書き残すことが出來ないのが残念である.しかし今尚お記憶に残つていることを少し書いて見よう.
 ビルマ國には眼病患者が非常に多い.「トラコーマ」も相当にあつて,矢張り特に中流以下の人々に多い.重症のものも相当あつた.眼底病もあるには違いないが,病院を訪れたものは非常に少かつた.白内障は相当に多かつた.もつと長く滯圧して,詳しく調べたら非常に多いのではないかと感じた.而かも老人性のものが40歳臺位に來るのである.手術をすすめると容易に承知するから,手術を恐れて医者を訪れないのではなく,手術の可能のことを知らないのが多いらしい.

保險のしをり

社会保險診療質疑應答集(其の1)

ページ範囲:P.43 - P.43

 社会保險の診療及その規則は開業医は勿論病院勤務医師も大学教授も今後決してゆるがせにすることはできない.
 医学といふ眞理の探求もある程度実施面に於ては保險規則によつてゆがめられる事もいなめない事実である.さらゆる医師が保險規則をよく咀嚼理解してあやまたず出來る限り医学の眞理にもどらない樣又当局者をして眼科なる特殊なる医学をよく理解せしめる樣にせねばならない.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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