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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科4巻10号

1950年10月発行

雑誌目次

綜説

結膜炎の化学療法

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.399 - P.401

 Penicillinの発見以來Streptomycin, Aureomycin,Chloromycetin, Terramycinと相次いで新しい抗菌製剤が造られ,これは眼科領域の傳染性疾患の治療を全く新しい色に塗りかえようとしている.特に結膜炎の治療は,今後短い期間の間に,旧態をとどめないまでになつてしまうであろう.
 私共はこれらの抗菌性物質が,眼科のどんな疾患にどんな効果があるかということ,更に実用上それらのものがどの疾患に何の樣に用いたら,最も便利であるかということを檢討しつづけて來た.それらの一部のものは既に文献にあらわれているものもあり,又殆んどこれを見ないものもある.併し実地医家の應用に都合の良いような形でまとめられた文献はあまり多くない.

臨床實驗

網膜血管樣線條症とアクロメガリーの合併例

著者: 河本郁雄 ,   永井陽太郞

ページ範囲:P.402 - P.404

 網膜血管樣線條症(網膜色素線條症)の発生機轉に関しては剖檢例を得て殆んど鮮明の域にあるが其の最後的原因に関しては尚明瞭を欠くものがある.私等は偶々定型的なアクロメガリー患者に表記眼症の伴うを認め本症究明上意義あるものと思い記録する.

色視標に對するマリオツト盲點に就て

著者: 川端義雄 ,   阪本善晴

ページ範囲:P.405 - P.407

 謹んでこの小著を故江原教授並びに故舍野孝氏の御霊前に捧げる.
 マリオツト盲点に関する諸問題は從來多くの人々によつて檢討されてきたが,その成績は区々たるものであり,盲点の大いさ,位置並びに色視標に対する変化等について,その生理的限界は如何なる範囲内にあるか,或は又如何なる変化を認めるかについては余り檢討が行われていない.私共は之等の点を推計学的に檢討し,いささか見るべき成績をえたので報告する.

視認傾向線

著者: 小島克

ページ範囲:P.408 - P.409

 視力表で5mから1m毎に視力を測りその視力経過を結ぶと視距離での一つの傾向線が得られる.視標は視測距離で一定の規準の下に作られてあるから,上述の如き條件での傾向緑では,視距離が限定されるので,個人差は,その視距離での視力の良否によつて判定されるし,又,視認の性質を定める一方法といえよう.斯る傾向線を視認傾向線と仮称しておく.
 本篇ではその傾向線に関する2-3の問題について触れたい.

精密試視力表における視認傾向線

著者: 小島克

ページ範囲:P.410 - P.411

 視認傾向線は,その傾きが個人的に可成り異つて居るが,又,5m視力の良否によつてもその傾きや経過が異る.私は,精密試視力表で,視力3.0から視力1.1程度迄の者を以つて上記の問題を調べてみた.
 〔方法〕精密試視力表で,3mから10m迄1m毎に視力を測る.例表は表記の如く,両眼,片眼で測り,片仮名と「ラ」環を用いた.便宜上,表には片仮名片眼のⅡ,Ⅲ,Ⅳ群の例を拔記した.

青色眼鏡に関する一考察

著者: 飯沼巖

ページ範囲:P.412 - P.413

 近頃盛夏になると青色眼鏡を掛ける人が急にふえて來たようだ.しかし此の種の眼鏡に就て中村(文)教授1)は「日本人には海水浴登山スキーにも色眼鏡は不必要である」と云い,大塚教授2)は「コバルト色眼鏡は眼科的に見てもよくないから,こんな流行は早くやめさせねばならない」と云つておられる.又私共もよく患者に「こんな色眼鏡は不必要だ」と指示を與えるのである.併しそれにも拘わなず増々流行の傾向にあり,しかも彼等の殆んど総ての人が「大変氣持がよい」,「非常に樂に見える」とその裝用感を述べている.そこで私は果して今迄の考えが当を得ているものか再檢討の必要があると考えたので,次の小実驗を行い,些か考察を試みようと思う.

風邪後の眼底疾患の2例

著者: 宮田正治

ページ範囲:P.414 - P.415

 下熱剤投與後に1例は炎性視神経萎縮症を,他は前者にヒステリー性弱視及び黑内障を併発した2例を報告する.

胎兒眼球の視束の發育過程に就て

著者: 中村康

ページ範囲:P.416 - P.418

視束
 〔成人の視束〕視束は外層より,硬膜,蜘蛛膜,軟膜に包まれ,各視束鞘間に鞘間腔を有する.
 軟膜より内側に結合組織纖維侵入し,結合組織隔壁即ち纖維束中隔を造る.此の中に血管侵入す.纖維束中隔に包まれて髓鞘を有する神経軸索が一定の束となつて集束し存在する.

毛樣體ゴム腫の1例

著者: 田坂純行

ページ範囲:P.419 - P.420

 毛樣体ゴム腫に関する報告は,内外共に多数見られ,外國にては百数十例,内國にても20数例が見られる.然し眼梅毒の中では,ゴム腫は比較的少く,其の好発部位は葡萄膜である.而して毛樣体は,之を外部より直接観察し得ぬ爲めに,本症の早期診断は困難であり,從つて駆梅療法の強行にも不拘,其の予後は不良なる場合が多いとされて居る.
 私は初診時,急性炎性緑内障の状態を呈して,対緑内障療法に強く反抗し,又梅毒性機轉を予想しての梅毒反應も陰性を示し,既往症にも梅毒感染を思わせる事実を証明し得なかつたが,駆梅療法に適確に反應して,速かな炎症消退と,顯著な視力恢復を見た本症の1例に就て報告する.

網膜剥離の臨床知見補遺—第Ⅰ篇 先天脈絡膜欠損眼に起る網膜剥離に就て

著者: 百々次夫

ページ範囲:P.421 - P.423

 先天脈絡膜欠損のある眼に網膜剥離が起る場合の報告は,河本重次郞(3例),Wagener-Gipner(2例),浜田(2例),中林,Tertschを数えるだけで未だ多いとは言えない.然し著者の経驗(網膜剥離約850例の観察)に於て,昭和12年に2例,昭和17,19,20年に各1例の計5例が見出される事に基いても,又剥離に続発した併発白内障に妨げられて見過ごされる症例の存在するであろう事--著者の第5例は白内障摘出後に確認されたものである--を考慮するならば,必ずしも甚だ稀ではないと思われる.而も此の場合の網膜剥離が,著者の観察によると決して在來考えられた続発性のものではなくて明かに自発性であり,それにも拘らず自発剥離に於て一般に必ず証明される筈の裂孔形成を示さないと言う事実は,治療上に重視すべきことである.故に実驗症例の概略と之に処する著者の見解を此処に少し述べたいと思う.

交感性眼炎を惹起した前房内睫毛異物

著者: 二宮以敬

ページ範囲:P.424 - P.425

 前房内睫毛異物は前房異物の中では比較的多いもので,その報告は1853年Lercheに始まり,明治39年大西氏の報告によれば87例と算えられ,昭和9年大橋氏によれば150例に及んでいる.最近の浦山,淸水氏の報告によると,大橋氏以後18例が加えられている由である.私は最近眼に外傷を受けると同時に,睫毛が前房に刺入し,視神経炎と共に種々の刺戟症状を呈し,睫毛摘出後,更に交感性眼炎を惹起した1例に遭遇したので,此処に報告し,諸賢の御批判を得たいと思う.

メチルプロミゾールの眼結核に對する小經驗

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.426 - P.430

 結核の化学療法として,現在用いられる藥剤はStreptomycin.PAS.(Para-aminosalicylic acid)Acetylamino-benzaldehyde-thiosemicarbazone(Tbl.Conteben).Diphenyl-sulfone藥剤(Pro-min, Promizol, Diasone)の4種が主なものである.此のDiphenyl-sulfone系藥物は1941年Hinschow及びFeldmanによつてProminが創製されて,抗酸性菌に有効な事が発見されたが,次いで毒性の更に少いDiasone, Promizolが発見されるに至つた.メチルプロミゾール(メ・プと略す)はPromizolに類似した化学構造をもつ新スルフオン化合物で,抗菌作用及び血中濃度の点に於いてもまた其の効力の点に於てもPro-mizol其他のスルフオン剤に優つて居ると考えられて居る.私は此のメ・プを眼結核に應用して刮目すべき著効を得たので報告する.

保險のしをり

健康保險點數問答

ページ範囲:P.404 - P.404

 眼底檢査の請求
 問 眼底檢査は二点とあるも眼底疾患は治療日毎に殆んど眼底を檢査して居る。從つて其都度請求して差支なきや或は月一回,週一回位に減じて請求すべきや。又は初診時に一回初診料の外に請求すべきや。(3S生)
 答 視野又は眼底に異常を及ぼす眼疾患では眼底檢査を行う事は内科的疾患の診察に準ずるものであるから診療の都度請求する事は妥当でない。さればと云つて全期間を通じて請求が出來ないのも不合理であるのでいろいろ檢討の末現在では一週に一回以下が妥当であろうとされているからこれによられたい。初診時に眼底檢査を行つた場合その点数の請求を初診料以外に請求することは差支ない。

眼科醫の知識

眼鏡の製作と醫療行爲

ページ範囲:P.409 - P.409

 眠鏡店に於て專門眼科医の檢眼に依らないで暗室檢査,檢影法を施行して眠鏡を作ることは医療法上いかに取締られるか.
 上の問題に対して厚生省の解訳は次の通りである.

眼病に對するACTH

ページ範囲:P.411 - P.411

 関節炎を征服する脳下垂体ホルモンのACTHが今や盲目をもたらす眼病に対する鬪いに参加しようとしている.
 この仕事はまだ予備的の段階に属するので細心の注意をもつて愼重に,ニューヨークの2人の眼科医は虹彩炎(iritis),脈絡膜炎(choroiditis)及び葡萄膜炎(uveitis)など眼球内の炎症性のもの二,三の症例に,この藥を試用した報告を発表している.

視力を囘復させる新藥

ページ範囲:P.413 - P.413

 新藥剤が老人性変化を甦らせ,衰えた視力を囘復させることを,イリノイ州RockfovaのFrancis W.Parker, Jr.博士がイリノイ州医学協会の会合で報告した.
 この藥剤というのはdicumarolとrutinとcevitamin酸の三つである.これは血管を弛緩させ拡張して,血液の循環を助ける作用をなすと同博士は説明した.なおこの藥剤治療で快くなる患者は,網膜動脈が硬化している人達である.網膜は眼球の背後にある組織でその役割はカメラのフイルムに相当し,この所の動脈に障害が起れば,視力の欠損を來すのである.それで博士は以上のような患者の視力の鋭敏さは,囘復も出來,また維持もされると語つた.

トラコーマの化学療法

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.433 - P.433

 トラコーマは世界的の大きな問題の一つで病原体はプロワツエク小体である事が定説である.即トラコーマの病原体はプロワエツク小体であつてこのものは物質学的にはリケツチアヒウイールスとの中間的性状を持つたミヤキガワネラに属するものである.
 同じ種族に同じ化学療法が効果をあらわすのが一般の通性である.第4性病にサルフア剤が特効があるのでトラコーマにもサルフア剤が利くであろうとは誰も考える事である.我國でも弓削教授,伊東教授,岡村博士等の業績がありいずれもサルフア剤の有効を認め輿ている.私自身の経驗によると急性期のトラコーマにはサルフアダイアヂン1日3乃至5瓦の内服によりプロワツエク小体は数日以内に消失する臨床所見もかなり急速に軽快するが濾胞は簡單には消退しない慢性状態をつずけているものでは著しい効果を認める事は困難である.千葉の伊東教授はホモスルフアミン軟膏の局所使用が相当有効だと述べている.併し私自身の経驗ではこの方法には殆んど効果を認めることが出來ない.

消息

昭和25年度文部省科学研究費(眼科学關係者)

ページ範囲:P.430 - P.430

◇翼状贅片における角膜神経の組織学的研究(3万円)
前橋医大 靑木八平

臨床講義

眼窠腫瘍

著者: 宇山安夫

ページ範囲:P.431 - P.433

患者 南○文○ 女子 28歳
 〔既往症〕今から10年前の18歳の時,左眼の外眼角の上部に眼瞼に掩はれて腫瘍の出て來るのに氣付いたので某医を訪れたところ,これは眼窠から発生した腫瘍だから摘出しなければならないと言われたので手術を受けた.其の時手術をするのに今一人の應援の先生が來て,2人で手術をして呉れたと言う.(この話によると,其の医師はこの手術を相当重視して愼重に行つたことが想像される).然し手術をして貰つた後に,どうもまだ腫瘍の一部か殘つている樣な氣がしたが,だんだん後になつて吸收するであろうとのことにその儘に放置していた.
 ところでそれから2〜3年する中に,その腫瘍が少し宛大きくなり,外眼角の下方え拡がる樣になと,腫瘍の増大する速度が次第に増して來たが,其の間10年を経過して本年春,今囘は他の眠科医に診て貰つた.その医師は手術をためらつてして呉れなかつたが,外科え行くと直ぐ手術をして呉れたが,腫瘍の一部を切除したのみで.充分取除けていないことが自分にもよく了解出來たと謂う.

私の經驗

老眼鏡を眼から離すことによる度の變化

著者: 今井晴一

ページ範囲:P.434 - P.435

 老人が眼鏡を鼻の先にかけて読書して居るのは,老眼鏡の度を強めるためであるとして,從來説明せられて來たが,石原は之を訂正して,老眼鏡を眼から離すことは一般に度を弱める事になると書いて居る.此の記載は中村の眼鏡学にも採用せられ,そこには計算による証明が行われて居る.石原の指摘した樣な誤が通用し來つた原因は,遠視眼では,凸レンズを眼から遠ざける事によつて,その度が強くなると云う事が,その儘近用眼鏡にも應用せられた点にあると思われる.レンズの凹凸の如何を問わず,眼鏡の度は,遠点とレンズとの距離の逆数に相等するから,遠視眼者の遠用眼鏡に於ては,レンズを眼から遠ざけると,遠点と眼鏡との距離は大きくなるから,同一レンズであるならば,眼から遠ざける時は,もとの位置により強い度の凸レンズを裝用したのと,同じ作用をする.即ち度が強くなると云う事は正しい.近視眼鏡レンズでは勿論其の逆の事が起る.
 近用眼鏡では,正視眼で且つ無調節の状態である場合には,レンズの度は物点と眼鏡との距離の逆数で表わされるから,レンズを眼から離し,從つてレンズと物点との距離が短くなれば,強い度のレンズを必要とし,同一レンズであるならば度が弱くなる事は,極めて了解し易い事で,中村の眼鏡学にも此の樣に説明せられて居る.

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消息

ページ範囲:P.435 - P.435

 ◇森井正義氏(日赤大津病院眼科医長)京大に提出の学位論文「深径覚の研究」は最近文部省より学位授與を認可さる.
 ◇鎌尾保氏(熊本医大助手)熊本医大を通過した学位論文「眼圧整調に関する実驗的研究」は文部省より学位授與を認可さる.

外文抄録

Archives of Ophthalmology '49

ページ範囲:P.436 - P.437

1)β—放射線療法(A.D.Ruedemann)
2)眼窩深部注射による外眼筋運動障碍(HaroldGifford)

手術メモ・ⅩⅦ

瘢痕性眼瞼外飜症手術(3)

著者: 中村康

ページ範囲:P.439 - P.440

 皮膚弁移植に依つて外反の整形を行うとき皮弁の剥離を行うのに,
1)表皮を擦過剥離する.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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